MUSIC 2025.11.17

Report:TORI ROCK FESTIVAL’ 25 音楽を奏でる者と聴く者に強い力を与えてくれた濃密なKOTORIによる宴

Text_Shuichi Aizawa(PineBooks Inc.)
EYESCREAM編集部

音楽には不思議な力がある。11月1日、豊洲PITに集まったバンドマンたちは、この日だけ世のために音楽を鳴らしたわけではないだろう。
きっと目の前にいる誰かひとり、そして呼んでくれたKOTORIに向かって音をかき鳴らしたのだ。

その音は、聴く者に何か熱く、そして行動させようとする強い力があった。だからこそKOTORI主催のライブイベント「TORI ROCK FESTIVAL ’25」には、数々のエモーショナルなシーンがあったのだ。前回の開催から約1年。パワーアップして帰ってきた本イベントを振り返る。

Photo by toya

12:00
昨年の開催終了時から今年の開催を宣言していたトリロック。前回は神奈川・CLUB CITTA’で2DAYSだったが、今年は全11バンドによる濃厚な1DAY開催。トップバッターのライブが始まる少し前に会場に到着すると、「TORI ROCK FESTIVAL ’25」オリジナルゲートがお出迎え。出演バンドたちのTシャツを着たオーディエンスらが記念に写真を撮る姿が目に入り、思わずテンションが上がる。

物販ではAge Factoryとbachoのブースに長い列が。
本イベントと彼ら2バンドの関係性の深さを感じさせてくれる。もちろんKOTORIブースは大行列。さあ、一番手だ。

12:30
トップバッターを任されたのは、大阪から3ピースロックバンド、Hump Back。<夢はもう見ないのかい?>の歌詞とともに鳴らした1曲目は、彼女たちの1枚目のシングルでもあり名曲「拝啓、少年よ」。

パンパンのフロアのオーディエンスに火が灯る。さあ、「TORI ROCK FESTIVAL ’25」が本当の意味で幕を開けた。初のトリロックと話す彼女たちだったが、そんなことを微塵も感じさせないフロアの盛り上がりに、プレイする者にオーディエンスがとても楽しそう。MCでは林萌々子(Vo, Gt)が「KOTORIに救われたバンド、いっぱいいると思う。自分もそう。ここから先の10年もよろしく」と、感謝を捧げながらラストに「星丘公園」をプレイして、次へとバトンを託す。

Photo by toya

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13:10
この日のステージは、フロントのPHOENIXステージと後方に用意されたSUNSETステージを交互にプレイしていく2ステージ制。SUNSETステージは目線がほぼオーディエンスに近くて、迫力がすごい。こちらのステージのトップを飾ったのは、東京発のポップパンクバンドのSee You Smileだ。

Photo by Goku Noguchi

スタートは「In and Out」で、オーディエンスの熱は冷めることなくシンガロングが起きる。さらに「I Wanna Die」では、ダイブにモッシュ・サークルと、両者攻めまくり。ちなみにSee You Smileは豊洲PITでのライブは初だそうだが、とても楽しそうにライブをしていた。ラストはライブにぴったりな「Stereo Gang」を放り込んでステージを後に。

Photo by Goku Noguchi

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13:55
See You Smileの興奮もさめやらぬうちに、PHOENIXステージではw.o.d.のリハが始まる。バンドの魅力がより深化に進化を重ねていく彼らは音出しから気合十分なご様子。メンバーのサイトウタクヤ(Vo, Gt)曰く、この日は喉の調子が悪かったようで、オーディエンスに一緒に歌おうと呼びかけていた。

もちろんみんな「OK!」と歓声で応えたように、1曲目の「STARS」からシンガロングが起きる。このシーンはプレイする側もそうだろうけど、観ているこちらもグッときた。ライブでは「イカロス」に「1994」「TOKYO CALLING」と、ぶっといビートと響く歌声で、みんな思い思いに身を委ねていた。声の不調や3ピースとは思えないヘビーさ、かっこよすぎです。

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14:35
SUNSETステージのTENDOUJIは、スタートの「TOKYO ASH」からTENDOUJIワールド全開でフロアを沸かせに沸かせる。
とにかく楽しい。曲によってヴォーカルは代わり、曲調もハートフルなナンバーからハードなサウンドと、いろんなものを飲み込んでひとつのバンドに仕立て上げていた。

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MCではアサノケンジ(Vo, Gt)が、自分たち主催のフェスにずっと出てもらっているKOTORIに感謝しつつ、好きなバンドに呼ばれていることに意味があるんだと話す。確かにリスペクトし合う同士であり、それを理解するオーディエンスだからこそ、作り上げたアツいライブだったと思う。ラストは壮大な前奏から幕開けた「COCO」でフィニッシュ。最後までTENDOUJIらしさあふれたステージングだった。

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15:20
あっという間に過ぎ去っていく時間。気がつけば折り返しだ。バンドキャリアがKOTORIとほぼ同じであるガールズバンド、リーガルリリーがPHOENIXステージに。

疾走感あるバンドサウンドに、浮遊感のある歌声でふわふわと不思議な気分にさせてくれた「60W」から始まった。時に優しく、時に強く3人の息がぴったりと合わさったサウンドに、フロアは体を揺らさずにはいられない。みんな手を上げたり、体を動かしたりと楽しんでいた。

個人的にはメンバーの生まれ年でもある「1997」に、「蛍狩り」のギターの音色の美しさとズシっとくる音に、ここはどこだろうという感覚になったのが忘れられない。

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16:00
音楽は旅をする。その旅は国境はもちろん、時空すら軽く飛び越えていく。SuiseiNoboAzの「3020」を聴くとそう感じずにはいられない。

遠い未来世紀の住人にも向かって歌っているのだろう。東京・新宿からやって来た彼らのライブは、シンプルなライティングの中、始まった。シンガロングが起きて胸打たれた「liquid rainbow」に、魂を削りながら高く歌い鳴らした「PIKA」と、どのナンバーも目が離せない。

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優しさや怒りや悲しみも、いろんな感情を音に乗せてぶつけてくる。まるで俺たちについてくる勇気はあるのか? と問いかけられているようだ。楽しむことはもちろんだけど、考えさせられるのも音楽だ。心地よい疲労感に包まれたあっという間の4曲だった。

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16:45
SuiseiNoboAzのライブの余韻に浸っていると、PHOENIXステージにさよならポエジーがSEなく登場。

ステージが暗転し始まった1曲目は「拘束のすべて」。スタートからギターが車のエンジンのようにうなりを上げる。拳を突き上げるオーディエンスの多さと音に飛ばされながら、オサキアユ(Vo, Gt)が体の奥底から声を張り高らかに歌い叫び、その姿に圧倒される。

続く2曲目もフロアが爆発した「ボーイング」。今、この一瞬を全力で楽しむかのようにダイバーが群衆の上を飛び交う姿が美しい。

MCではオサキが「僕らを呼んでくれるのはあたりまえ。楽しもう」と話したように、フロアにいるみんながとても楽しそうだ。「二月の中を / February」や「前線に告ぐ」で広がった、前から後ろまでのハンズアップの光景に、音楽が持つ力を感じずにはいられなかった。

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17:25
フロアのすべてを飲み込むような爆音と、時が止まったかのような静寂、この相反する2つの世界を交互に行き交わせてくれたのは、この日最年少の4人組ロックバンド、ひとひらだ。

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山北せな(Vo, Gt)がMCで話すには、トリロックには学生の頃に遊びに来ていたそうで、今日は自分たちが影響を受けてきたバンドが多くて、このステージに立てたことが光栄とのこと。ということは、緊張はひとしおだろうと思いきや、そんなことを感じさせない圧巻のステージングを披露する。

「つくる」でスタートし、「Seamless」や「風船」と、どのナンバーも先が読めない展開を見せる。彼らの音は捕まえていないと遠くに行ってしまうかのような気持ちになりながら、突然の爆音に脳天をブチ抜かれる。音に酔うとは正にで、心地がいい。11月12日には2ndアルバム『円』がリリースされ、ツアーではKOTORIとの対バンが3月に京都であるそうなので、お忘れなく。

Photo by Goku Noguchi

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18:10
12時からスタートしたトリロックも気がつけばもう日が沈んでいる時間。ここでPHOENIXステージに登場するのは、奈良からやって来たロックバンド、Age Factoryだ。次に控えるbachoもそうだが、トリロックとは切っても切れない関係のバンド。それはリハの段階でのオーディエンスの熱量からも十分に伝わってきた。

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1曲目は<加速していく 僕らの鼓動が 鳴り止まないんだ>の歌い出しから歓声が爆発した「Dance all night my friends」。一気に会場をひとつにまとめ上げていく。オーディエンスのシンガロングがすごい。そのまま続いた「HIGH WAY BEACH」でもシンガロングはやまず、みんなのジャンプに会場が揺れるかのようだ。

力強い増子のドラムに、タフな低音が響く西口のベース、疾走感あるサポートの有村のギター、そして体全部を使ってシャウトする清水、4人のプレイがラストのKOTORIに向けてぶつけられていく。「CLOSE EYE」「TONBO」「向日葵」と、最高のセットリストを惜しみなく披露しながら、「KOTORIのためにこのイベントを最大限上げて行きたいんで、まだ行ける?」と清水が話し、ラストに投下したのは「SONGS」。その時その瞬間でしか得られない何か大きなものを作り出していた。

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18:50
カッコよぎるライブを見せつけたAge Factoryが終われば、SUNSETステージに登場するのは、そう、兵庫県は姫路が産んだエモーショナルハードコアバンドのbachoだ。虚飾なくシンプルに音と言葉で、ありのままを曝け出すそのステージは、昨年のトリロックにおいて大きな感動を呼び、オーディエンスとKOTORIの脳裏に焼きついているはずだ。

フロアにいたほとんどのオーディエンスが歓喜の声で出迎え、ライブがスタート。1曲目に選んだのは昨年と同じ「ビコーズ」から。バンドあってのオーディエンス、オーディエンスあってのバンドと、互いが互いを支え合っているかのように、全員で歌う。なんと美しい光景だろうか。

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続くは「決意の歌」。観ているだけで奮い立つ。土臭くてもいいから全力で生きてやろうと思う。
そしてイントロだけでみんなが沸き立った「最高新記録」。bachoがいかにトリロックに欠かせないかがわかった。

ステージ脇を観れば横山が歌っている。他にも「UDDUP」「平和のかたち」と、もうたまらない名曲の数々。トリロックに呼んでくれて、出てくれてありがとうと思っていると、北畑欽也(Vo, Gt)が「最高の仲間たちに混ぜてくれて、ほんとうにありがとう。KOTORIと君たちがスーパーヒーローだ!」と話し、「さよなら」へ。深くすばらしく親しみやすい声と音が、オーディエンスのシンガロングとともにこだました。

Photo by Goku Noguchi

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19:40
さあ、全10バンドがつないできたバトンがいよいよ、首謀者であるKOTORIに託される。神秘的にライトアップされたステージに登場する4人。横山が「お待たせしましたKOTORIです。音楽で大切なものが守れました」と話し、始まりに鳴らしたのは「We are The Future」。シンプルなステージライトとシンプルなサウンド、だからこそ余計に胸に刺さる歌詞。そしてオーディエンスのシンガロング、これがKOTORIだ。つながってきた思いが空高くへと昇って弾けて広がっていくようだ。

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続くは「Masterpiece」。「歌ってくれ!」を合図に、ダイバーが空を飛び跳ね、それを観ながら横山が歌い叫ぶ。曲が終わって横山が「今日は199が多かったですね。俺たちは1995!」と、「1995」をプレイする。

そう、w.o.d.の「1994」に、リーガルリリーの「1997」と、打ち合わせでもしたかのように曲名に“199”が付いていたのだ。この流れにフロアは呼応するかのようにモッシュ&ダイブに、シンガロングと嵐を起こす。その勢いそのままに「unity」「魔法」「秘密」が披露されていく。

「理想のメンツに理想の流れで、音楽の可能性を見ました。ここまで積み重ねて来た歴史がこの日です」と、ここまでを振り返り、「RED」に。昨年のトリロックと同じフロアの頭上に用意された夕日のオブジェに光が当たっていく。やまないシンガロングと美しい景色が、最高にカッコいい。

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これが最高地点かと思いきや、このままで終わらないのがKOTORIであり、トリロックだ。

ライブ中盤を向かえたこともあってリラックスした横山が、ビールを片手に「乾杯!」と話して「素晴らしい世界」を。ステージにはHump Backから林、さよならポエジーからオサキ、そしてbachoから北畑が登場し、みんなで音を鳴らし、歌う。おそらく長かったこの日のイベントで、最高に盛り上がったであろう瞬間だ。

それを証明するように、ステージ横から次々と出演者が登場し、フロアにダイブしていく。演者だけじゃなく、フロアも含めて音楽でつながる仲間たち。みんなでないと作れなかった最高すぎる景色。これだから音楽はやめられない。ラストは「TORI ROCK FESTIVAL ’25」のテーマソング、「SKY」。会場にいるすべての人で作ったアンサンブルでフィーナーレを飾った。

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20:20
とは終わらず、もちろんアンコールに応えて再びステージに戻って来たKOTORI。

プレイしたのは「Dive into your Dreams」「YELLOW」「遠き山に陽は落ちて」の3曲。フロアは自然発生したかのようにダイブとモッシュが生まれ、シンガロングが響きわたる。トリロックでは全バンド通じてシンガロングがとにかくすごい。みんなホント、出ているバンドと音楽が好きなんだなというのが伝わってくる。まさにバンド主催、KOTORIだからこその“絆”を感じることができた1日。

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今や全国各地で開催されているフェスだけど、好きなバンド主催なら絶対に足を運ぶべきだ。知らないバンドも出ているだろうけど、好きなバンドが声をかけたバンドなのだからカッコいいのは間違いない。来年はあるのだろうか。いずれにしてもすばらしすぎる景色を見せてくれたKOTORI、そしてアンカーのKOTORIに向けてアツいライブでバトンをつないだ出演バンドたち。彼らの今後が楽しみすぎる。

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INFORMATION

KOTORI pre.『TORI ROCK FESTIVAL ’25』

開催日程:2025年11月1日(土)

会場:豊洲PIT

出演アーティスト ※出演順
Hump Back / See You Smile / w.o.d. / TENDOUJI / リーガルリリー / SuiseiNoboAz / さよならポエジー / ひとひら / Age Factory / bacho / KOTORI

KOTORI オフィシャルサイト:https://kotori-band.com/

KOTORI X:https://x.com/KOTORI_band

KOTORI Instagram:https://www.instagram.com/KOTORI.band/

KOTORI pre. 「LOCAL MATCH 2026」

※O.Aは後日発表

1月 <企画/制作:small indies table × FOB企画>
w/w.o.d.
2026年1月23日(金) 長野・松本ALECX (OPEN 18:30 / START 19:00)
2026年1月25日(日) 富山・SOUL POWER (OPEN 17:00 / START 17:30)
2026年1月26日(月) 金沢・vanvan V4 (OPEN 18:30 / START 19:00)

2月 <企画/制作:small indies table × WESS>
w/さよならポエジー
2026年2月19日(木) 北海道・札幌 SPiCE (OPEN 18:30 / START 19:00)
2026年2月21日(土) 北海道・旭川 CASINO DRIVE (OPEN 17:00 / START 17:30)
2026年2月22日(日) 北海道・苫小牧 ELLCUBE (OPEN 17:00 / START 17:30)

3月 <企画/制作:small indies table × 夢番地>
w/Maki
2026年3月6日(木) 山口・周南rise (OPEN 18:30 / START 19:00)
2026年3月8日(土) 広島・Live STAR (OPEN 17:30 / START 18:00)
2026年3月9日(日) 岡山・CRAZYMAMA 2nd Room (OPEN 18:30 / START 19:00)

Ticket info 
ADV. ¥4,200(tax in)
https://w.pia.jp/t/localmatch/
オフィシャル2次先行受付:11/16 (日) 12:00 ~ 11/23 (日) 23:59

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