MUSIC 2026.11.02

Interview: lili maua “22歳の私にしかできない” 1stアルバム『ID22』に刻んだR&Bとの出会いと決意

EYESCREAM編集部
Photography_Masashi Ura, Edit&Text_Ryo Tajima(DMRT)

宮崎出身、2003年生まれのシンガーソングライター、lili maua(リリーマウア)。ネオソウルやR&Bを下地にした柔らかくも洗練されたメロディと、透明感のある歌声。2024年春に活動をスタートさせて以来、「24-5」は多くのDJやダンサーにプレイされ、「SWEAT」は各ストリーミングサービスの主要プレイリストに相次いで選出。同世代を中心に、静かに、しかし確実にその名を広げてきた。

そんな彼女が10月28日、待望の1stアルバム『ID22』をリリースする。KID FRESINOやJJJ、KANDYTOWNとの作品で知られるNoshがプロデュースしたリード曲「Stay with me」をはじめ、既発曲5曲に新曲5曲を加えた全10曲。11月22日にはShibuya WWWで初のワンマンライブも控えている。

また、今回がlili mauaにとってメディアで初めてのインタビューとなる。そのルーツやR&Bとの思いがけない出会い、そして22歳の“今”をまるごと封じ込めたアルバムのこと。凛とした佇まいの奥にある、揺るぎない意志に迫るインタビュー!

どこか遠くて特別な存在でありたい

ーまずはアーティスト名の由来から伺えますか?

lili maua:自分の名前に“花”が入っているので、花にちなんだ名前にしたかったんです。リリーは英語で百合のこと。百合の花言葉には「気品」や「高嶺の花」といった意味があります。マウアはスワヒリ語で花を意味する言葉で、その神秘的な響きに惹かれました。高嶺の花のように、どこか遠くて特別な存在でありたい。そんな想いを込めて名付けました。

ーとても素敵です。では、音楽を好きになり、歌うことを志すまでの話を聞かせてください。原体験として、どんな音楽がそばにありましたか?

lili maua:父がR&Bやソウル、ジャズ、クラシックまで、本当に幅広く聴く人で。幼い頃から自然と耳にして育ったので、その影響は今も根っこにあると思います。通っていた保育園は毎日歌を歌うようなところで、小学校では合唱部、中学では吹奏楽部。高校からは音楽の専門学校に進んで、ゴスペルを1年間学んだり、バンドの授業を受けたりしました。物心ついた頃からずっと音楽に触れてきたので、気づけば音楽しかない道を歩いていた、という感覚です。

ーでは、高校に進む頃にはもう、音楽で生きていくと決めていたんですね。

lili maua:そうですね。

自分が好きで選んでいた音楽がR&Bだと後から知った

ー「このアーティストのようになりたい」という明確な目標があったんですか?

lili maua:それがなかったんです。母が保育士だったので、私も保育士になろうかな、くらいに考えていて。ところが高校進学を決める時期に、知り合いの占い師さんに見てもらう機会があったんです。「何を目指してるの?」と聞かれて、「保育士になろうと思っています」と答えたら、「あなたが本当にやりたいことは、それじゃないよね」と言われて。そこで、ハッとしました。私、音楽がやりたいのかもしれないって。すぐに両親に話して、翌月には福岡の音楽学校を見学に行っていました。そこから淡々と、音楽の方へ舵を切っていった感じです。

ーまさか占い師さんのひと言が人生の分岐点になっていたとは。その頃から、音楽の好みは今と変わらないですか?

lili maua:実は高校2年生くらいまで、音楽にジャンルがあること自体をまったく知らなかったんです。当時、毎回自分で課題曲を選んで持っていき、その曲を演奏する授業があったんですけど、私が持っていく曲はいつもR&Bで。そのことを先生に教えてもらって初めて、自分が好きで選んで聴いていた音楽はR&Bだったんだと気づきました。それが、私とR&Bとの出会いです。

ーどんな曲を持っていっていたんですか?

lili maua:日本の曲だと宇多田ヒカルさん。海外だとアレサ・フランクリンやThe Emotions、それから90年代のR&Bをよく持っていっていました。どれも今でも聴いています。

ーlili mauaさんの歌い方から静けさが感じられます。いわゆる拳が入ったパワフルな歌唱とはまったく違いますよね?

lili maua:そうですね。しっとりとしたメロウでスローテンポなR&Bが好きなんです。今やっている音楽も、自分の好みをそのまま形にしている感覚です。

ー参考にしているシンガーはいますか?

lili maua:私はシンガーそのものを追いかけて聴くことがあまりなくて、純粋にその曲自体が好きで聴くことが多いんです。なので、誰が歌っているかよりも、音の雰囲気やメロディ、ビートとか、曲そのものに惹かれるタイプだと思います。その中でも、Kiana Ledéからは影響を受けている部分が多いと思います。

最優先しているのは心地よいメロディライン

ー曲はどのように作っているんですか?

lili maua:高校で作曲の授業も一応受けてはいたんですけど、当時から感覚でなんとなく作っていたものを、周りが「いいね」と言ってくれるようになって。だから、基礎から理論を積み上げてきたというより、今もずっと感覚で作っています。

ープロデューサーやアレンジャーが入ることも多いと思いますが、原曲はlili mauaさんが作って、そこから編曲していくようなやり方ですか?

lili maua:そのパターンもありますし、最初から「こういう感じでやってみるのはどう?」とプロデューサーから提案してもらって、一緒にスタジオに入って作っていくこともあります。

ーこの曲で今の自分の基盤ができた、と思える1曲はありますか?

lili maua:全曲そうなんですけど、一番思い入れがあるのは1stシングルの「わがままな僕を許して」です。正直に言うと、決して万人受けする曲ではないと思っていて。でも、私にとってはど真ん中の曲だった。それをあえて1stシングルとして出して、今振り返ってみても、この曲で始められてよかったと心から思えるんです。

ーストリーミングやライブで、明らかに反応が変わったと実感した曲は?

lili maua:「I’m into you」は1番反響が大きくて、ストリーミングでもっとも聴かれている曲です。最近はプロデューサーさんにビートをお願いして、そこから作っていくことが多いんですけど、この曲は、私が基礎のピアノコードを弾いたり、ドラムを打ち込んだりしたデモをビートメイカーさんに渡して作り上げたもの。自分のデモありきで生まれた曲が1番聴かれているのは、何より嬉しいですね。

ー歌詞はどのように書いているんですか? 全体を通して、都会の夜の情景が浮かぶ曲が多い印象です。

lili maua:実は私、「このテーマで書きたい」というところから歌詞を書いたことが、まだないんです。ビートをもらって、聴いたときのインスピレーションで書くことがほとんど。それもメロディを最優先に考えているので、そのメロディに一番はまる言葉を探していきます。優先するのはメロディライン、2番目に言葉。ずっとその順番で作っています。

ー実体験を歌詞にする人もいれば、物語を作り込む人もいます。lili mauaさんの場合は?

lili maua:私の曲は、ほとんどが実体験と妄想から生まれています。

ーその妄想は情景的なものですか? 誰かの感情を表現するものですか?

lili maua:感情が多いと思います。その中でも恋愛が一番書きやすくて、だから私の曲には恋愛ものが多いんです。

22歳の私が、今生み出せるアイディア

ーそして1stアルバム『ID22』。タイトルの由来を教えてください。

lili maua:今、私が22歳なので、そこから取りました。“ID”には2つの意味を込めています。1つは、自分自身を証明するアイデンティティ。もう1つは、22歳の私が今生み出せるアイディア。今だからこそ生まれるアイディアと、今の自分そのものを、記憶として残せるタイトルにしたかったんです。

ー20歳から22歳までの2年間、lili mauaとして活動してきた経験がそのまま詰まっているわけですね。収録曲の中で、特に歌詞にこだわった曲、あるいは悩んだ末に手応えをつかんだ曲はありますか?

lili maua:Noshさんがプロデュースしてくれたリード曲の「Stay with me」ですね。もともとビートにボーカルサンプルが入っていて、サビでもずっと鳴っていたんです。すごく耳に残るメロディラインで、私にはそれを超えるメロディが思いつかなかった。だったら、いっそそのまま活かそうと。サンプルは英語で何かをつぶやいているんですけど、その母音や響きに近い言葉をはめていく作業に、とにかく時間がかかりました。さらに、その言葉の意味を「Stay with me」というタイトルにつなげていくところが、1番こだわった部分です。

ーどのようにつなげていったんですか?

lili maua:サンプルのメロディの最後で、「Stay with me」という言葉だけが聞き取れたんです。じゃあもうタイトルは「Stay with me」にして、それをテーマに書こうと。曲自体もどちらかというと乗れるタイプだったので、フロアでの男女の情景を描いた方がイメージが膨らむかなと思って、そういうテイストで書きました。

ーリラックスできる曲が多い中で、「Stay with me」はかなりアップテンポ。lili mauaさんにとっても新境地と言える1曲では?

lili maua:正直、アップテンポすぎる曲は自分の好みではないんです。でも、アップテンポでやるならこれしかない、というど真ん中のビートが返ってきたので、自分の中でもすごく気合いの入った曲になりました。

ー5曲目の「give me,give me」もサウンドがとても特徴的です。

lili maua:私も初めてビートを頂いた時、何とも言えない不思議な空気感が漂っていて、すごく惹かれました。その分、自分の中でもハードルが上がりましたね。『チャンスは待つものではなく、自分から掴みにいく強さ』みたいなものを描きたくて。夢を夢のまま終わらせず、ちゃんと現実にしたい。これからもっと大きくなりたい。そんな今の私の気持ちを、真正面からぶつけました。

ーそして「Last Love Song」。ピアノのソロフレーズから始まる構成も、実にlili mauaさんらしいです。

lili maua:このビートを聴いたとき、すごく孤独感というか切なさを感じて。それをこの曲のテーマとして大切にしながら作りました。あとは、日本のバラードとしても聴けるような曲にしたくて、耳馴染みのあるメロディや、どこか懐かしさを感じるメロディラインを意識して書いています。

ーたしかにポップスにも通じる雰囲気を感じます。そしてラストを飾るのが「Sing」です。

lili maua:アルバムの中で一番最後に完成した曲で、『ID22』のワンマンライブのラストに、歌うことを想像しながら書きました。私の中でも、1番感情的になって書いた曲です。ここまで音楽を続けてこられたこと、ここまで連れてきてくれた人たちへの感謝、そしてこれからもずっと音楽の道を歩み続けていくという決意。それを込めたからこそ、22歳の私を刻む『ID22』の最後に置きました。

ーアルバムを通して、lili mauaさんの音楽に対する“決意”が強く伝わってきます。初アルバムを介して、自分自身のことをしっかりと世に提示したい、という思いがあるのでは?

lili maua:そうですね。1stアルバムですし、22歳の今だからこそ出せる音楽があると思うんです。今の私を証明する、とまでは言わないけれど、22歳の私の記録として残しておきたい。それが幅広く認められたら、すごく嬉しいです。

lili mauaという1つの世界観を作っていきたい

ー11月22日のShibuya WWW、初のワンマンライブですね。

lili maua:このワンマン自体は1年ほど前から決まっていて、そこを目標にライブを重ね、リリースもコンスタントに続けてきました。もうすぐなのにまだ実感はなくて、緊張感だけがずっとある、という感じです。

ーライブは好きですか?

lili maua:最初は、人前に出て歌うのがあまり好きではなかったんです。でも、場数を踏んで慣れてきたのもあるし、自分の好きな曲を歌えているからこそ、聴いてほしいという気持ちの方が大きくなってきて。最近は、ライブも好きになってきました。

ーWWWでは、どんな空間を作りたいですか?

lili maua:ステージの演出や見せ方も含めて、lili mauaの世界観を表現したいと思っています。今の自分だからこそ表現できるものを、1つの作品として残せる場にしたいです。

ーアルバムもライブもそうですが、この年齢だからこそできること、5年後にはできないかもしれないこと、と考えるものはありますか?

lili maua:私の曲って、恋愛ものが多いじゃないですか。周りからはずっと、「恋愛ものを書けるのは、たぶん今だけだよ」と言われていて。年齢を重ねるにつれて、歌詞のテイストも変わっていくのかなとは思います。まだそこを意識して書いているわけではないんですけど、今だからこそ書けるリリックではあるのかなと。

ーアルバムを出し、ワンマンを終えた先に、描いているアーティスト像はありますか?

lili maua:音楽を入り口にして、ファッションや映像、アート、魅せ方も含めて、lili mauaという1つの世界観を作っていきたいです。それから、自分が影響を受けてきたR&Bやソウルミュージックを、lili mauaの音楽や活動を通して知ってもらう、そのきっかけになれるような動きもしていきたいと思っています。

INFORMATION

lili maua

1st Album『ID22』
2026年10月28日(水)リリース

1. Intro
2. Last Love Song
3. Stay with me
4. Uh la la

5. give me,give me
6. Without you
7. SWEAT
8. 24-5

9. We won’t last forever
10. Sing

1st Oneman Live「ID22」
2026年11月22日(日) Shibuya WWW
OPEN 17:30/START 18:30
チケット:e+(イープラス)

https://www.instagram.com/lilimaua_/
https://x.com/lilimaua_

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