MUSIC 2026.10.05

POWER PUSH! Collaboration: kurayamisaka 生粋のロックバンドが令和で表現するバンドのカッコよさ

EYESCREAM編集部
Photography_Masashi Ura, Edit&Text_Ryo Tajima(DMRT)

スペースシャワーTVによる歴史と熱意が込められた極推しプログラム『POWER PUSH!』とのコラボ連載企画!
『POWER PUSH!』は、毎月1組のアーティストの旬な1曲だけをピックアップしその楽曲を集中オンエアする、スペースシャワーTVのローテーションプログラム。EYESCREAMでは、選ばれたアーティストにインタビューし、そのクリエイションをご紹介していく。

第5回目はkurayamisakaの「summer film」。2022年結成、瞬く間にロックリスナーの心を鷲掴みにした東京は大井町の5人組バンド、kurayamisaka。今やライブハウス好きで彼らの名前を知らない者はいない。昨今、次世代の中にオルタナ、シューゲイズ再燃の気配があるが、ある意味で、その筆頭とも言えるバンドの1つではないか。ここでは内藤 さち(Vo, G)と清水 正太郎(G, Vo)に、改めてkurayamisakaとはどんな思いを持って活動しているバンドなのかを聞く。そこで見えてきたのは、純粋なバンドという存在への思い。

始まりは“バンドをやりたい”という純粋な思い

――まずは、kurayamisakaがどんなバンドなのか教えてください。

清水正太郎(以下、清水):僕らはメンバー全員、ずっとバンドが好きな“兄ちゃん姉ちゃん”という感じだったんですよ。5人それぞれが今まで好きだった音楽や、『こうなりたい』という憧れ、『自分だったらこうする』という純粋な気持ちを詰め込んだバンドなのかなと思っています。

内藤さち(以下、内藤):本当に5人全員、バンドをやりたいというピュアな気持ちだけで集まったメンバーなので、まさに清水の言う通りですね。

――そもそも、バンドをやりたいと思ったきっかけは何でしたか? 例えば、音楽をやるという意味だけでしたら、バンド以外の形態もあるとは思うのですが。

清水:たしかにそうですね、なんでなんだろう(笑)。僕は愛知県の田舎町出身で、高校に軽音楽部がなかったんです。学園祭で披露する場はあっても自分で曲を作ることはできなくて、ずっとバンドをやりたいと思っていました。大学進学で東京に出てきて、やっとバンドができた時は本当に嬉しくて。それ以来、その嬉しさがずっと続いている感じなんです、今も。だから、なんでバンドじゃなきゃいけなかったのかはあまり考えたことがないです。

内藤:そういう意味だと、最初はシンガーソングライターに憧れていたんですが、チャットモンチーに出会って『高校に入ったら絶対バンドをやりたい!』と思っていました。でも、歌いたいって人に言うのは恥ずかしいじゃないですか(笑)。そのまま言い出せずに高校3年間が過ぎてしまい、大学の軽音サークルでコピバンをするようになって、やっと募らせていた思いを昇華させることができて、今でもずっとバンドが楽しいという気持ちでやっています。なんでバンドを選んだのかというと、やっぱりチャットモンチーの影響が大きかったのかなと。

ーそういった原体験という意味だと、どんなバンドに衝撃を受けましたか?

清水:やはりASIAN KUNG-FU GENERATIONです。親の車で移動している雨の日にラジオから流れてきたのを覚えていて。それまでアコースティックギターを弾いていたんですが、『あ、もうこれからはエレキ弾こう』と思ってお年玉で初心者セットを買いました。そこからずっとです。

――バンド共通のルーツになるようなバンドはいますか?

清水: メンバーの共通項でいうと、toddleだと思います。最初に内藤を誘ったのも「toddleみたいなバンドを組みたい」と連絡したのがきっかけでした。toddleは僕らにとって、というかバンドを続けている人たちにとっての理想形なんじゃないかと思います。こういう在り方が1番カッコいいと思うバンドマンは多いんじゃないかな、と。僕らもまたtoddleの振る舞いや、楽曲や演奏する姿にすごく憧れています。でも、本当にメンバーそれぞれ聴いている音楽はバラバラですよ。堀田(Dr. 堀田 庸輔)や阿左美 (Ba. 阿左美 倫平)はBloc Partyとかが好きだし、ドラゴン(Gt. フクダリュウジ)はTHE NOVEMBERSがヒーローだったりするのでルーツはバラバラです。

――楽曲はどのように作っているんですか?

清水: 基本的にほぼすべての曲を僕が書いていて、デモをメンバーに投げています。その後のアレンジや弾き方などは各々に丸投げですね。メンバーそれぞれに今まで培ってきた経験や吸収してきた音楽があるわけですし、各々の要素が染み出て“ごった煮感”が出るのもバンドらしさだと思うので。特にアルバム『kurayamisaka yori ai wo komete』くらいからは、僕が細かくディレクションするのではなく、もっと任せた方が楽だと思って、そういう作り方になってきました。

ー歌い方に関しても内藤さんにお任せするスタイルですか?

清水:最近はほぼ任せちゃっています。ライブを重ねて、どんどん歌が良くなってきていて……。いや、もともと良かったんですけど、これまでの経験が歌に反映されていると思いますし、その良い部分をもっと前面に出していきたいと思っている次第です。

内藤:昔は「もっと淡々とAIみたいに歌ってほしい」とリクエストされていたこともあったんです。感情が入りすぎると曲が活きてこない部分もあったんですけど、アルバムの制作からはしっかり内容を噛み砕いて、自分の中で景色を見れるように解釈してから歌うようになりました。

自分もバンドをやりたい と思われるようなライブをしたい

――そのように制作の仕方が変わった理由は何だと思いますか?

清水:1番はライブを重ねてきたことだと思っていて。そもそも結成当初は、そこまでライブはできないだろうと思っていたし、「ライブはあんまりやらないから」ってメンバーを誘ったんです。自分は、せだい(清水がギターを務めるバンド)、阿左美はyubiori(阿左美がギターを務めるバンド)をやっていましたし。それが、いざ活動を始めたら、やっぱり「ライブ楽しいな」ってなっちゃって(笑)。そこからライブが増えるにつれて、ライブを意識して曲を作ることが多くなりました。

内藤:ライブ以外にも、スタジオで練習している時に「この曲めっちゃいいな!」って毎回新鮮にワクワクしながら演奏しています。お客さんにとっても『自分にもできるかもしれない、やりたい』って思ってもらえるようなライブにしたいですね。それが大きいと思います。

ーおっしゃる通り、kurayamisakaはライブがカッコいいからこそ多くのリスナーを惹きつけているわけですが、自分たちにとってkurayamisakaのライブが楽しいと思えるところはどういう点ですか?

清水:めっちゃいい曲だなって思いながら演っているんですよ。自分で好きな曲を作っているから当たり前ではあるんですけど、曲がいいと思えるところが楽しいです。

内藤:私もそう。大学の頃から今も、いつも新鮮な気持ちで曲に向き合って、カッコいいと思いながらやっているので、お客さんにとっても、自分もバンドをやりたいなって思われるようなライブにしたいと思ってステージに立っているんですよ。いつか自分たちのライブを客席から見てみたいって思うんです(笑)。

少年時代に過ごした夏を思い返すような
やや感傷的になりすぎているような

――真夏の8月にリリースされた楽曲「summer film」について。7インチが11月3日の発売となります。この楽曲はタイトルや歌詞にあるように“夏の歌”ですよね。どういった流れの夏の歌を作ろうと考えたんですか?

清水: 去年の秋から冬にかけてシングルのリリーススケジュールが決まり始めて、『そろそろ曲を作らなきゃいけないかも』という雰囲気が出始めたのが制作に至ったきっかけです。夏のリリースだったのと、個人的に夏が好きなので自然と夏の曲になりました。曲作りに関しては、最初につま弾いていたギターのコード進行のストロークをそのまま採用しました。実は2個目のコードをミスっちゃったんですけど、その響きが面白いなと思ってそのまま採用したんです。そこから広げていきましたね。

ー歌詞については曲やメロディと並行して考えたんですか?

清水:自分の場合、作詞がもっとも苦しい作業で、最後に出来上がることが多いんですけど、「summer film」に関してもそうでした。最初に歌い出しの<夏の匂いに灼かれて>というフレーズがメロディと共に降ってきて、『ふむ、夏の匂いに灼かれたのか……』と思って。

ー他人事のように思ったわけですね(笑)。

清水:これまでの曲の歌詞は、意図的に実体験を具体的に表現することを避けていて、自分ではない他の誰かの曲にしようという考えのもとに書いていることが多いんですけど「summer film」に関しては、自分が少年時代に過ごした夏を思い返すような、それでやや感傷的になりすぎているような、そういう思いを散文的に詰め込んだイメージです。

ー自身の夏の思い出が歌詞に落とし込まれていると考えられるわけですが、内藤さんはそれをどう自分自身のこととして昇華していったんですか?

内藤:この曲はすごく時間がかかったんですけど、夏の気温や風の空気感をふんわりと思い出せるようなナビゲーションをしたいと思って歌ったんです。実は1回録った後に日を改めてリテイクしているんですけど、その録り直しまでの期間、たまたま二子玉川の方を散歩して、川辺で人々が各々に過ごしている光景を見ていたんですよね。ランニングしている人もいれば散歩をしている人や、映像を撮っている高校生がいたり、それを眺めている大人がいたり。そこで、何年か先に『ああいう日があったな』とふと思い出せるような、その一瞬を表現したいと思ったんです。特別な日じゃない、あの1日の光景がパッと想起させるような歌にしたいって。

ーボーカルをリテイクしたのは何か特別な理由があったんですか?

内藤:「hikari」をセルフカバー(※)した時のレコーディングで、歌い方や曲に対する向き合い方も含めて、新たな発見が多々あったんです。そこで、自分はこういう表現ができるんだってことを自覚したんですけど、「summer film」の最初のレコーディングでは、それができなかった悔しさはめちゃくちゃあって。それでリテイクに至ったんですが、今後も「hikari」でつかんだレコーディングへの向き合い方に対する感覚は大事にしていくことになると思っています。

※「hikari」は清水正太郎(G, Vo)が2025年に長瀬有花へ提供した楽曲。

ー「summer film」のラストには「シャボン玉」の民謡をシンガロングするパートが盛り込まれていますよね。これまでになかった表現だと感じたのですが、こういうアプローチをしたのはなぜですか?

清水:今年の5月に「sagittarius」(※)をセルフカバーしてリリースしたんですけど、アウトロに<La, la, la, la>というボーカルパートがあるんですね。そのボーカル録りをどうするかという話になった時に、メンバーが「みんなで歌うんだよね」ということを言ってきたんです。ただ、僕としてはそういうつもりじゃなかったんですけど、その話がずっと心の隅に引っかかっていて、そういうアプローチをする曲があっても面白いんじゃないかと思うようになっていたんですよ。メンバーも(シンガロングを)やりたいんだろうし。そういう背景があったので、試しに「シャボン玉」を入れてみたんですけど、これがめちゃくちゃしっくりきてしまったので、このままいこうと思ったんです。

※「sagittarius」は清水正太郎(G, Vo)が2025年にRAYへ提供した楽曲。

――MVも物語性があり、夏の切なさや儚さが感じられます。映像に対しては、何かリクエストした部分はありますか?

清水:監督は川口潤さんで今回が初になります。もう、ご一緒できて感無量でしたね。そもそも僕らはbloodthirsty butchersの『kocorono』(2011年公開のドキュメンタリー映画)を観てきたわけで。以前、eastern youthの『極東最前線』にツーマンで出演させていただいた時に(※)初めてお会いしたんですけど、どちらのバンドも僕らのルーツですし憧れなわけなので、ダメもとでも頼んでみたいと思ってお願いしたら二つ返事でOKをいただいたんです。僕らから何かをリクエストすることなく、自分たち的にこういう風に映っていてほしいと思う絵を撮ってくれて、すごく嬉しかったです。

※2025年8月30日に渋谷CLUB QUATTROで開催されたeastern youth主催のライブイベント『極東最前線 106 ~暗闇でしか聴こえぬ歌がある~』にkurayamisakaが出演。川口潤さんはeastern youthのMVも手掛けている。その日が「summer film」のMV制作に至る始まりとなった。

――最後に、バンドとしての今後の目標や夢を教えてください。

内藤:リスナーにとって、友達がやっているバンド、みたいに見られる、身近な存在でありたいです。どんな大きいステージに立っても、『自分にもできそうだな』って思ってもらえるような演奏をし続けるバンドでありたいですね。

清水:僕も本当に同じで、僕らのライブを見て『バンド始めたい』と思ってくれたら嬉しいです。今までバンドに1ミリも興味がなかった少年少女を振り向かせたいという気持ちがすごく大きいです。今、僕は『バンドをやりたい』という夢がずっと叶いっぱなしの状態なわけなので、具体的にどうしたいという目標が明確にあるわけではなくて、何年かに1枚アルバムを作って、東京だけじゃなく色々なところに行ってライブし続ける状況が続いたら本当に夢みたいだなと思います。ゆくゆくはアジアのインドネシアや台湾など、海外にも行ってみたいですね。

INFORMATION

kurayamisaka「summer film」

https://kurayamisaka.com/

POWER PUSH!
これまでの楽曲はこちら▼
https://tv.spaceshower.jp/recommend/powerpush/

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