MUSIC 2026.07.31

POWER PUSH! Collaboration: Trooper Saluteに見る令和のロック×ポップスの形

EYESCREAM編集部
Photography_Yuji Sato, Edit&Text_Ryo Tajima(DMRT)

スペースシャワーTVによる歴史と熱意が込められた極推しプログラム『POWER PUSH!』とのコラボ連載企画!
『POWER PUSH!』は、毎月1組のアーティストの旬な1曲だけをピックアップしその楽曲を集中オンエアする、スペースシャワーTVのローテーションプログラム。EYESCREAMでは、選ばれたアーティストにインタビューし、そのクリエイションをご紹介していく。

第3回目はTrooper Salute。名古屋発、5人編成のシンフォニックインディロックバンドだ。本格的に活動をスタートさせたのは2024年。これまでに2枚のEPをリリースし、早くもロックやAOR好きの間で話題沸騰中。彼らの奏でる音楽にはノスタルジーがあり、ロックの生々しい初期衝動が感じられる。そのオルタナティブな質感がたまらない。6月にはアルバム『友達がいました』をリリース。POWER PUSH! に起用されたのは表題曲「友達がいました」。7月から9月にかけてリリースツアーも敢行する彼らにインタビュー。答えてくれたのは小宮颯斗(Key)とムサシ(Vo)の2人。

王道のロックを通過してアルバム『友達がいました』のサウンドへ

ーまずはバンドの成り立ちから教えてください。もともとは大学の軽音部で結成されたそうですね。

ムサシ:そうです。小宮が「大学に入ったらバンドをやりたい」ということでメンバーを探していたのがきっかけになります。そこから小宮を中心にメンバーが集まり、最後に私が2代目のボーカルとして加入して今の体制になりました。

ー小宮さん、「バンドをやりたい」と思ったのはなぜですか?

小宮颯斗(以下、小宮):高校の頃、iPadを使ってGarageBandで曲を作るようになったのが原点です。当時、BiSHにめちゃくちゃハマっていたんですが、BiSHの全楽曲を手掛けた音楽プロデューサー、松隈ケンタさんが福岡のローカルラジオ番組をやっていたんです。その番組に、リスナーが送ってきたデモ音源を聴いてコメントするコーナーがあって。大きな野望があったわけではなく「せっかくだから送ってみよう」と応募したら、何度かオンエアしていただけたんです。その5回目くらいに送った曲を聴いた松隈さんが「これはDTMでは良さが伝わりきれない。バンドで聴いてみたい」といったコメントをくださって。それで、大学に進学したらバンドをやろうと思うようになったのが結成したきっかけなんです。

ーじゃあ、松隈ケンタさんがきっかけとも言えるわけですね。そこから活動をスタートし、Trooper Saluteの音楽はどのように変化していったんですか?

小宮:結成当初は僕が高校や浪人時代に好きだった音楽の影響が色濃くて、ソロプロジェクトにバンドセットがついたような形でした。でも、大学の軽音部に入ると、先輩たちからいわゆる部活の王道バンドを叩き込まれたんですよ、あるあるだと思うんですけど(笑)。「ナンバーガールは絶対に聴け」とか。それまで特定のバンドしか聴いてこなかったんですが、初めてそういった王道のロックに出会って、音楽性がどんどんロックに寄っていき、アルバム『友達がいました』のサウンドへと、少しずつ近づいていった感じです。

ムサシ:結成当初は、もっとポップスというか、明らかにキャッチーな曲が多かったよね。小宮は川谷絵音さんのことも尊敬しているし、テクノを聴いたりしていたから、どっちかと言うとDTM寄りな音楽を聴いていたと思うから。最初はピアノのメロディが主体のポップスから、だんだんと「ギターをデカい音で鳴らすのがカッコいい」ってなって。それで徐々に音楽性がシフトしていった印象があります。

ー「王道のロックを経て」ということですが、今のバンドの音像やアルバム『友達がいました』に影響を与えているバンドやアーティストはどの辺りでしょう?

小宮:踊ってばかりの国やthe cabs、MASS OF THE FERMENTING DREGSですね。最近だとkurayamisakaもそうです。平成の終わりから令和の今にかけてのロック、特に2010年代以降のプログレッシブなロックやフォークが交ざり合ったロックからの影響は、あのアルバムにすごく入っていると思います。

ー今挙げてもらった2010年以降の日本ロックシーンで活躍しているバンドには各々にさらにルーツがあると思います。そういった過去の音楽、洋楽も含めてディグったりしていますか? というのも、Trooper Saluteの音楽には70~80’sのロックやAORなどの風合いも感じられるので。

小宮:最近は過度にルーツを掘り下げることはしなくなりました。でも、今お話ししたバンドを遡っていくと、ゆらゆら帝国だったり、ガレージもサイケも内包した日本のロックに回帰していくはずなので。さらに昔の洋楽まで遡るとなるとまだまだ、かもしれません。

ームサシさんは、ボーカリストとして影響を受けたり、参考にしているアーティストはいますか?

ムサシ:この人のように歌いたいと意識している特定の歌手がいるわけではないのですが、高校生の頃はずっと吉澤嘉代子さんを聴いていました。だから自然と歌い方が寄っている部分はあるかもしれなくて、周りの人からもよく「似ているね」って言われます。あと、最近聴いてすごく素敵だなと思ったのは、フィッシュマンズの佐藤伸治さんです。「こういう歌の届け方があるんだな」とハッとさせられたので、自分の歌い方もこれからどんどん変わっていくのかなと思います。

ー吉澤嘉代子さんといえば、それこそアルバム『友達がいました』にもコメントを寄稿されていますよね!

ムサシ:そうなんです! 2nd EP『Trooper Salute 2』にゲストボーカルで参加いただいたご縁でコメントをくださって。私たち2人のことを「キキララが歌っているみたい」と表現してくださって。自分たちではそんなに可愛らしくないと思っているんですけど、素敵に表現していただけたのがすごく嬉しかったんです。

バンドで繰り返し演奏することで曲をアレンジしていく

ーでも、たしかに<キキララっぽさ>はちょっと感じますよ(笑)。楽曲制作はどのように行なっているんですか?

小宮:基本的には僕が作詞・作曲をしてバンドに持っていきます。ピアノやデスクの前だと何も思い浮かばないのでお風呂に入っている時やバイト中など生活をしながら頭の中でメロディを考えて、ある程度アイディアが固まったらスタジオに入り、メンバーにはコード進行だけを伝えて、ムサシには歌のメロディだけを教えて、「とりあえず合わせてみよう」と。

ーじゃあ、セッションのような形で作られているんですね。

小宮:そうですね。最初はただ楽器陣がコードをなぞり、ムサシがメロデをなぞるだけですけど、それを繰り返すうちに各々がフレーズを考えて入れたりして、徐々に肉付けされてくんです。最初はDAWでデモを作っていたんですけど、ここ2、3年はほとんどしていませんね。デモを渡すと、その固定概念に引っ張られてしまって曲が広がっていかなくなることも多いので。

ーバンドが持つフィジカルの質感を大切にしているわけですね。その感じが楽曲から伝わってきます。ムサシさんは小宮さんから渡されたメロディや歌詞をどのように自分自身へ落とし込んで歌に昇華させているんですか?

ムサシ:小宮の作るメロディは譜割りがものすごく細かくて、最初は「なんでここがこうなるんだろう?」と戸惑うことも多いんです。でも何度も歌い込んでいくうちに、「なるほど、このアクセントがあるからこの譜割りなんだ」と曲の意図が見えてくる。そこまでいけば、あとは自分の歌としてプラスアルファのニュアンスを自由に足せるようになっていて自分の歌になっていくんです。

ームサシさんがおっしゃる通り、Trooper Saluteのボーカルラインは歌の切れ目が独特で、そこがフックになっているように感じます。何か意図的に意識されている部分はありますか?

小宮:ボーカルラインはいつもDAWの編集画面のようなグリッドで考えていて、1番気持ちいい場所に助詞を置きたいんです。4分音符の拍にぴったりはめてしまうと平坦になってしまうので、「それならボーカロイドでいいじゃん」となってしまうんですよ。人間が歌うからこそ、32分音符や64分音符レベルの、直感的な部分に徹底してこだわりたいんです。一文字、歌詞の位置がズレるだけで駄作にもなり得るし、逆にマスターピースにもなり得る。だから歌詞の内容よりも韻や音韻としての言葉の響きと五感の気持ちよさを最優先して歌詞を考えています。

ーフロウ重視、けっこうヒップホップ的な作り方ですね。

小宮:中学生の頃、『フリースタイルダンジョン』が始まって、地元で日本語ラップが一気に盛り上がったんですよ。その影響が強くて、韻を踏んでいないと聴いていて気持ちよくない」という感覚が根底にあるんです。あのスッと入っているラッパーのフロウの心地よさをバンドミュージックでも大切にしたいんです。

ー6月17日に発表された1stアルバム『友達がいました』は大作ですね。バンドの魅力はもちろんですが、いろんなロックの要素が凝縮されているような気がしました。自分たち的にはどんな作品に仕上がったと思いますか?

小宮:軽音部の部室というすごく狭いコミュニティで、内輪で熱くなっていたものが急にパン! と世の中に出てきたような印象です。これまでのEPと比べてもパーソナルな部分がスッと出てきて。

ムサシ:制作時期がちょうど私たちの大学卒業と重なっていたんです。これまで一緒にいた後輩たちと離れ、私たちは上京することになって。そんな別れあれば、このアルバムの制作を通して出会う方との新たな繋がりもあって。そこがアルバムのコンセプトにもなっていますし、ずっと悲しいし、なんかちょっと切ないんだけど、最後にはちょっと希望があるような感じがアルバム全体に感じられて、そこが気に入っています。

今までの全部を出し切ったアルバム『友達がいました』

ーでは、今作はバンドのスタート地点でもある? ここからバンドがさらに進んでいくためのものというか。

小宮:そう言いたいところなんですが、ぶっちゃけ今できることを本当に全部出しきった感があって、これ以上のものは作れないって思ったりもしているんです。次にどういう曲を作ればいいのかも決まっていない状況で。

ムサシ:持ってるもの全部出して作ったアルバムなので、逆にすっからかんになって、ここから新しく始まる感じでもあるよね。

小宮:どこまでアルバムの空気感を引きずるのかっていうのがちょっとあって。そろそろ「次のレコーディングに向けて心機一転頑張りますか」って切り替えなくちゃ本当はいけないんですけど。まだそこまでいけないというか。個人的にはツアーが終わるまでアルバム気分でいたいです。やりたいことは無限にあるんですけど、それをそのうちのどれを選んでいくか、ですね。

ムサシ:完全に岐路に立っているというか、自分たちが選ぶべき道みたいなのを模索している最中なんです。

ー表題曲でもある「友達がいました」ですが、この曲はアルバムの中でも古い曲だそうですね。2023年夏頃に制作されたということですが、やはり思い入れの深い1曲ですか?

小宮:大学2年生になりたて頃に作った曲です。それまではわりと明るい、踊れる曲を作っていたのですが、大学に入って初めて先輩たちの卒業を経験した時に、ものすごく寂しくなってしまって。同時に、ふと「高校時代に毎日のように一緒にいたあいつらの顔や名前を、少しずつ忘れていっているな」と気づいたんです。今、別れを寂しいと思っている大学の先輩たちも、10年後には一切連絡を取らなくなっているかもしれない。そういった対人関係の諸行無常が身に沁みた時期で、その感傷をそのまま歌にしたんです。これまでと全く違うトーンの曲ができたことで、「自分たちはキャッチーなポップスを作り続けるより、こういう生々しいロックの方が性に合っているんじゃないか」と気づかされた、僕たちの原点と言える大切な1曲です。

ー冒頭に仰っていたロックに寄っていったタイミングでできた1曲が「友達がいました」でもあるわけですね。

小宮:まさにそうです。大学1年生の時に先輩たちから教わったロックの栄養分が、ようやく自分の中で実を結び始めた時期でした。

ーMVもモノクロの世界観で哀愁を感じますね。まさに楽曲の世界観が形になっていると思います。

小宮:これは監督からのアイディアだったんですが、僕らも「この曲の世界観には絶対にモノクロが合う」と確信していました。演奏シーンなしのドラマ仕立てにしたいと相談していたのですが、監督の意見もあって、僕らの演奏シーンも入れていただいて。山中湖の近くにあるロケ地で、夕日が沈む直前のわずかな時間帯に撮影したのですが、木の影が大胆に伸びていって、だんだんバンドに影がかかっていく様子がモノクロの陰影で美しく表現されていて。映像を観た時にすごく感動しました。

ムサシ:タバコの煙や水、人の肌って、モノクロになるとグラデーションになって境目が曖昧になるんです。それがすごく幻想的で、だんだんと記憶が薄れて疎遠になっていくという曲のテーマにこれ以上ないほどマッチしていました。私も観た時に「すごい」って感動しちゃって。

ポップスとロックの境界線に立っていたい

ーアルバムのアートワークはこれまでムサシさんがイラストを手がけてきたものから一転して写真を採用されていますよね。ここにはどういう理由がありますか?

小宮:ポップなイラストだと、どうしても可愛らしさが残ってしまって、今回のシリアスな音像と噛み合わないだろうなと思ったんです。今回は最初から、洋楽のジャケットのように、子どもが写っている印象的な写真を使いたい」という構想があったんですよ。

ーそういえば、あのジャケットに写っている男の子は誰なんですか?

小宮:えっと……(笑)。

ムサシ:もう言っちゃってもいいんじゃない?(お互い顔を見合わせて)実は、うちのギタリスト(岩井純成)の子供時代の写真なんです(笑)。

ーそうでしたか! めっちゃいい写真です。

ムサシ:お父さんが撮影されたものらしくて、他にもいくつか候補をいただいたんですけど、あの写真がすごく印象的だったんですよ。

小宮:こけているのに、どこかシリアスで、構図もいいし、どういう状況なのかわからない不思議な空気感がアルバムの世界観にぴったりだと思ったんです。

ーまさにそうですね! さて、Trooper Saluteは今後どのようなバンドになっていきたいですか?

小宮:僕たちの強みは、ポップな方向にもロックな方向にも、どちらにも転がれるグラデーションを持っていることだと思っています。それはイベントの時も思うことですね。新しい形を提示するポップなバンドと、これまでの歴史を今に表現するロックバンド。本来なら交わらないような両者の境界にTrooper Saluteがいることで、ポップスとロックの距離感を狭めていくような存在になりたいです。

ムサシ:今はまだポップな曲とロックな曲がバンドの中でわかれている印象があるのですが、その距離感を取っ払って、自分たちなりに両方を面白く昇華した方向性を模索していきたいと思います。

INFORMATION

Trooper Salute 「友達がいました」

https://troopersalute.com/

POWER PUSH!
これまでの楽曲はこちら▼
https://tv.spaceshower.jp/recommend/powerpush/

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