ART 2022.09.15

ハンディスキャナで街をスキャニングする。路上での新たな試み「SCAN THE WORLD」が金沢を舞台に開催

《SCAN THE WORLD [STAGE: COLLECTIVE BEHAVIOR]》2018 / photo by たまえ
EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

石毛健太BIENという2名のアーティストが中心に行なっている、ハンディスキャナで街をスキャニングするプロジェクト「SCAN THE WORLD」が、10月1日より金沢21世紀美術館の長期インスタレーションルームを軸として開催される。

SCAN THE WORLDはこれまで「3人で肩車をしてスキャニングをする」「逆立ちしてスキャニングをする」といったルールのもと、街をハンディスキャナによってスキャンしながら再発見していく遊びを実践してきたプロジェクトの総称。路上表現の現在形のうちのひとつであり、同時に誰もが参加できる新しい遊びでもある。

《Image from STW》2018
《Image from STW [STAGE: TELEPHONE GAME]》2021

本展[NEW GAME]では、金沢21世紀美術館の長期インスタレーションルームがSCAN THE WORLDに参加するための集合場所へと変貌。来訪者にSCAN THE WORLDの方法を伝え、SCAN THE WORLDの過去の実践だけではなく、新たな参加者との未来の実践が展示される。また、今回の展示の中心であり、これまでに実践されてきた遊びとこれからの遊びをつなげるプラットフォームとしてウェブサイトも制作。ここでは誰もが街のテクスチャのデータをアップロード・鑑賞することができ、世界中の場所や人がイメージと遊びを共通項につながることができる状況を作り出すという。

scan-the-world.net
2022-
In Cooperation with: Konel inc.
Design: NUMATA Sou

会期中、石毛健太とBIENは金沢に長期滞在し、参加者を募りながらSCAN THE WORLDを実践。金沢21世紀美術館をスタート地点にして、まだ見ぬプレイヤー達とともに現在進行形の路上の遊びとしての進化を続けていく。

以下、作家ステートメントだ。

SCAN THE WORLDは当初、イベントに出展する際にZINEを制作するためのプロジェクトでした。普段からZINEやグラフィックを作るために使っている家庭用複合機のスキャナを外に持ち出したら面白いのではないかと思い、見つけたポータブルなハンディスキャナを片手に夜の渋谷を一晩練り歩いたのです。
ハンディスキャナを持って街に出ると、そこかしこに魅力的なイメージがあふれていることに気づきます。古びた外壁や、看板、地面、草木、ゴミ、標識、車、自販機、銅像、様々なイメージの集積で街は作られています。また、ハンディスキャナを使い、それらのイメージを収集するときに、そのモノ自体に自らの身体をもって接触する必要があります。そのため、面白そうなイメージを見つけたらその場に行かなければならない上に、その人の身体性がスキャンイメージに個性として表われます。実践を通してそれらのことに気づくにつれて、これを自分たちだけの制作として終わらせるのではなく、ルールを作り、街を使った開かれた遊びとしてのプロジェクトとするべく、STWは続いてきました。
街、ひいては世界には様々な素材があふれています。それらを今一度確認し、利用することで普段見ている世界を人知れず遊び場に変えられるのではないでしょうか。
そうして今回、SCAN THE WORLDは以前よりも、もう少し開かれたルールを設けて金沢を訪れます。そこは様々な人と交流することを目的としています。この機会に是非、一緒に街で遊びましょう。
——BIEN

SCAN THE WORLDは、自分たちで考えた遊びにBIENがつけた名前だった。アフリカの飢餓と貧困を解消するため、マイケル・ジャクソンとライオネル・リッチーが作詞・作曲した世界的名曲、『We Are The World』から思いついたらしい。「よくわからないけど面白いからそれでいいんじゃないか」みたいに決定した記憶があるが、せっかくの機会だしこの名前についてもう少し掘り下げてみたい。
「scan」という単語について調べると、その語源はラテン語の「よじ登る」を意味する「scandō」らしい。その後、ラテン語が各ヨーロッパ言語へ借用されていく中で、ラテン語詩韻律の上昇・下降を精査する「scannen(詩の韻律を調べる、注意深く精査する)」に意味が転じていったようだ。そこからさらに後年になり電子機器が登場することで、「scan」はようやく我々が普段から使用している「デジタルな情報として取り込む」という意味になる。
単純な人間の行動を指す言葉が、時代を経るにつれ、古典への情熱と共にまなざすという意味を、科学の発展に伴い電子機器で情報を取り込むという意味を獲得していったようだ。
高速・大量に情報が飛び交う情報化社会が到来して久しい現代、あるいはスキャンされた情報も飛び回っていることだろう。しかしインフォデミック、フィルターバブル、情報格差等々……大変シリアスな問題の中で我々のまなざしはかえって閉ざされつつあるようにすら思う。
その渦中にSCAN THE WORLDは直接に世界を見て触れる喜びへ再度思い至るため、壁をよじ登り、注意深く観察し、デジタルな情報を取得する遊びを実践したい。
——石毛健太

《SCAN THE WORLD [STAGE: COLLECTIVE BEHAVIOR]》2018
photo by たまえ
《Image from STW
[STAGE: COLLECTIVE BEHAVIOR]》
2018
《Image from STW
[STAGE: TELEPHONE GAME]》
2021

INFORMATION

アペルト17 SCAN THE WORLD[NEW GAME]

会期:2022年10月1日(土) – 2023年3月19日(日)
会場:金沢21世紀美術館 長期インスタレーションルーム
休場日:月曜(ただし10月10日、10月31日、1月2日、1月9日は開場)、 10月11日(火)、11月1日(火)、12月29日(木) – 1月1日(日)、1月4日(水)、1月10日(火)
開場時間:10:00 – 18:00(金・土曜は20:00まで
料金:無料
問合せ:金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800

キックオフパーティ
SCAN THE WORLD[BOUNUS STAGE : PPPP]

第一部[BONUS STAGE:PPPP. free]
日時:2022年10月1日(土)15:00 – 18:00
会場:プロジェクト工房、創作交流工房
定員:50名程度 入場料:無料 申込:不要
参加心得:SCAN THE WORLDを実践してくださる方

第二部[BONUS STAGE:PPPP. max]
日時:2022年10月1日(土)18:00 – 21:30
会場:プロジェクト工房、創作交流工房
定員:50名程度 入場料:1,000円 申込:要事前予約
参加心得:SCAN THE WORLDを実践してくださる方

※第一部、二部ともにSTW、参加アーティストのグッズ販売あり ※詳細情報は後日発表

https://scan-the-world.net/
https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1808

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