Interview:藤田織也
1st EP『Enfant Terrible』で唱える新世代R&B

Photography_Jun Yokoyama
Text_Shiho Watanabe
Styling_YUDAI MURAKOSHI

Interview:藤田織也
1st EP『Enfant Terrible』で唱える新世代R&B

Photography_Jun Yokoyama
Text_Shiho Watanabe
Styling_YUDAI MURAKOSHI

2023年7月に待望の1st EP『Enfant Terrible』をリリースした藤田織也。本作には配信シングルの「Starry Eyed」、「Mask In Love」に新曲を追加した全6曲が収録されている。伝統的なR&Bのマナーを尊重しながら21歳の彼の目線を通して再解釈された楽曲群は、どこか懐かしくも目新しい仕上がりで、現在のシーンすらも変えてしまうような予感がしてくる。今回は藤田織也にEPへの想いや、LAでの制作の裏側など話をきいた。

―海外でのセッションから帰ってきたばかりと伺いました

先月末にLAから戻ってきたばかりなんです。今回は、カニエ・ウエストやジョン・レノンらも使っていたNightBird Recording Studiosで制作をさせて頂いたのですが、スタジオのアトモスフィアがすごくてレジェンドたちがレコーディングした部屋で歌った時は初めてステージを踏んだ時の感覚でした。他には17歳の頃から仲良くしている友人のGab3が、プレイボーイ・ カーティのレーベルであるOpiumのメンバーなのですが、彼らの家からスタジオに行ったんですけど、音楽を作っている人はもちろん、写真のエディットをしてる人もいたり、スタジオをコワーキングスペースとして使っている感じがあった 。音楽でも写真でも、専門じゃない人にも「これ 、どう思う」って互いのパソコンを回して意見を共有し合い、黙々と作業をする姿に感化されました。

―織也さんはティーンエイジャーになったばかりの頃から、常に国を跨ぎながら活動しているイメージです。日本の外に出る、ということはどんな意味合いを持ちますか?

自分が歌っているジャンル、R&Bは輸入してきたカルチャーなわけで。日本で一から作るのも楽しいけど、結局、向こうのサウンドだし、向こうが”ホンモノ”って感じるんです。この1年でLAに3回行ったんですけど、向こうの人はストイックだし、エナジーもすごい。そのエナジーが欲しいのと、現地での意見交換も大切だと感じています。向こうのA&Rやエンジニア達と世界的なトレンドの話から、何時にスタジオ入って、何時にスタジオ出るの?って細かい話もする。とりあえず行って自分のことを知ってもらうという、”外交”ですね、マジで。

―今年の8月に、1st EP『Enfant Terrible』がリリースされました。EPのタイトルやコンセプトは、どのように決めていったのでしょうか

この作品には、10代の自分に対する別れと、20代の自分に対して扉を開けていく、という強い意味があって。“Enfant Terrible(アンファン・テリブル)”というワードは、直訳すると“恐るべき子供”という意味で、自分にニックネームをつけるとしたら、まさに”Enfant Terrible”なんです。常にアナーキーで、反骨精神を持っていて、アバンギャルドで、既存のものに対して破壊と再生をしていく。10代の自分は、大人に対しても生意気に反抗して「僕はこうしたいんだ」って意見を持って生きてきた。だから、「かつてはこうだった」ということを表すには、この一言に尽きる。同時に、今後もシーンにおいての“Enfant Terrible”でありたいなと思っているところです。

―サウンド面やボーカルのテクニック、スキル的なところで気をつけていたところはありますか?

まず、自分はシンガーなので歌は大事にしたいという気持ちがあるので、何よりも歌がファースト。テクニック的なところだと、これまで結構、トラップっぽい歌い方が多かったんです。例えば「RHRN」とかはそれが多すぎたから、ちゃんと歌っぽくしているものを作ろうと、そこのバランスも気にしましたね。「You feel me」や「Heartbreaker」は、2010年代のトラップ・ソウル的なスタイル。僕は当時のトラップ・ソウルに影響を受けて今に至るんですが、こうしたジャンルを今後自分で作るかどうかも分からない。でも、ラップぽい歌の乗せ方も含めて、今の自分がやらなかったら日本に歴史として残らないなと思って、今回収録しました。

―織也さんと話していると、いつもR&Bへの強い愛情が伝わるとともに、R&Bというジャンルを歌うことにとても使命感を持っているようにも感じます。

それは大事にしています。意外と、アメリカのソウル・ミュージックってJ-POPとすごく密接だなと思っていて。フィリー・ソウルやモータウン・サウンドのサウンドを聴いていると日本の歌謡曲っぽいところも多いし、僕らのDNAにも、絶対にソウル・ミュージックがあると思うんです。だから、上の世代へは、「今の世代の、僕らのR&Bはこれだよ」って掲げたいし、若い世代や同世代には、今までの先人がやってきたことを伝えたいと思っています。

―普段の活動を見ていると、音楽以外のクリエイションやアートにも敏感なイメージです。エッジーで、常にアンテナが研ぎ澄まされているような。普段はどんなところで、誰と遊ぶことが多いですか?

完全に裏原ですね。もう、原宿が大好きで、幼稚園の頃から歌を習い始めたんですけど、当時から週3くらいで原宿に通って歌っていたんです。小さい頃からHYSTERIC GLAMOURを着ているような子供だったし、16歳の時にニューヨークから戻ってきた次の日も原宿にいた。僕の周りの友達も、そういう人が多いんです。同い年なのに、マジで原宿に骨を埋めるくらいの勢いで動いているパンクのデザイナーとか、藤原ヒロシさんたちと仕事をしている同い年のグラフィック・デザイナーの子とか。あとはDJもいれば、ショップ店員もいるし、ファンの子もいる。みんな、上の世代がやってきたことについて本当に調べていて、先人たちのことも大好きなんです。だけど、そのままファンの立場で居続けたらダメ。自分たちは、先人たちのことを誰よりもリスペクトしている自信はあるけど、先人がやったことを壊していこうというか、それくらいのことをしていこうぜっていうアナーキーさみたいなものを持っているんです。みんなのそうした姿勢に、僕も影響を受けていますね。

―アーティスト・藤田織也として将来的にこうありたい、というビジョンはありますか?

引き続き、『世の中にあったら良いな』と思うものは作り続けたいし、「そのやり方があったか、やられた」みたいなものも、仲間と作り続けていきたいです。それに、もっと広い世界も見てみたいですね。僕はR&Bも好きだけど、POPなものにも憧れて歌を始めているんです。だから、そういう世界ももっと勉強させてもらいたいし見てみたい。そして、その中で、着実に結果を残していきたいです。今は、日本の中でどうやったらもっと大きなステージに立てるか、日本人としてどうやって世界に食い込んでいくか、ということを常に考えています。やるからには、自分の音楽を多くの人に聴いてほしいですね。

INFORMATION

藤田織也 『Enfant Terrible』

https://lnk.to/Enfant_Terrible

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