TOKYO BLUE EYES
by TETRO.
VISITORS : 001 高良健吾
渋谷は鴬谷町の片隅に構えるヘアサロン、TETRO。目印は鮮やかな青いブルーのアパートメント。この場所には現代のサブカルチャーを形成するアーティストやクリエーターが足を運んでいる。カルチャーの発信地になりつつあるこの場所で聞こえる会話に耳を澄まそう。新たなるエネルギーの発見ができるかも。
壁が“TETRO BLUE”と呼ばれていることにちなんで”青き眼”=人の訪問を歓迎する目を持つ、この場所から東京の今を覗いてみる。連載第一回目に登場するのは俳優、高良健吾。
今回、TETROのヘアメイクアーティスト、森田康平の元を訪れたのは、彼の古くからの友人である俳優、高良健吾。2人とも九州から東京へ上京してきて、森田がシャンプーもままならないような頃から仲良くしてるそう。そんな長くの付き合いであり同年代だという2人の間には、お互いに対して絶対的な信頼関係がある。活動しているフィールドは違えど、互いの業界で活動し続けてきた姿にリスペクトしあっている。そんな2人が語り合う、仕事に対しての意識や姿勢とは。
ヘアメイクアーティスト、森田康平が作り上げたヘアスタイルによって完成した高良健吾の姿を、写真家、嶌村吉祥丸による写真と共にお届けする。
もっと知りたいって常にワクワクしている人たちが集まる場所。
ー知り合ってからもう9年ですか?
高良健吾(以下・高良):そうですね。森田が佐賀。僕が熊本で。九州の田舎から出て来てすぐに仲良くなりました。なので気持ちがよくわかるんです。お互いの苦しい時も見てるし。今日の服とかも被ってるし(笑)。
ー本当ですね(笑)!
森田康平(以下・森田):見事に被ったね(笑)。
ーいつもはどんな会話を?
森田:僕が音楽が好きなので、健吾くんに「これいいっすよ」ってオススメすることが多いです。逆に映画は健吾くんの方が詳しいのでたくさん教えてくれて。そうやっていいなと思ったものをすぐに共有しています。
高良:とにかくいいと思ったらすぐに教えてくれます。彼の音楽の掘り方が尋常じゃないので。マニアックで情報が早いんですよ。また、知ることだけに留まらず、どんどんいろんな人たちと繋がっていくんです。だから今の東京で面白いなって感じる若い20代の方が友人に多いよね。新しいものだったり、今、流行っているものを知っている。
森田:いつも新しいことだったり、エネルギーを持っている方に興味が向いてます。いろんなカルチャーを知りたいなって常に考えているので、表には出さないけど反骨精神のような抗う感情というのはずっと持っています。
高良:僕は、そのバランスが昔のものの方が多い。昔の良いものってなんでこれは、なぜここまで残ってきたんだろうって気になるから。
森田:もちろん、昔のいい作品や音楽、すごい人はいっぱいいるのは僕も感じでます。でもやっぱり新しいモノのパワーには圧倒されますね。
高良:努力家だよね。目を向ける力とか仕事とか、自分が好きなものに対してのラインを超えてる。頭の思考回路が少し変わってないとできないとこまでやっているよね。ギリギリのライン(笑)。でも、彼の探究心が人一倍だから、TETROにそういう同じ感性を持った面白い人が自然と集まってくるんだと思う。
森田:そんな場所であってほしい。全然ジャンルが違っても、そうやって同じように知りたいってワクワクしている人たちと話してることが本当に好きだし、楽しい。
ー刺激しあえる関係っていいですね。
森田:僕は今ままで、すごく健吾くんから刺激をもらってきて、本人はそのつもりはないかもしれないけど、たくさんのことを教えてもらってきました。直接的に『こうしたらいいんだよ』とは言わないけど、向き合い方や考えを学びました。
高良:精神面では、出会った頃の森田と今の森田では、全然違くって。時には闇の部分も出てくるし、それが嫌なのは自分でもわかっていて克服して。ちゃんと言葉にしたことを形にしてきているよね。それをずっと見てきたから、目には見えない本音の部分が見れるんだと思う。自分もそうだと思うけど、若い時ほど、わかりやすく落ち込んでいたり、悩んでいたりすると思います。でも、そうやって表に出る時の方がまだ楽だよね。これからは、表に出さない感情と向き合うのに、もっと大変な時期になってくるんじゃないかな。
森田:そう感じます。今みたいに健吾くんの言ってくれることは、僕の肩を持つんじゃなくて中立な立場での意見を言ってくれます。おかげで気づくことがたくさんあったし救われてきました。
高良:自分と似ているからこそ言い合えるところがあるよ。でも、お互い自分自身に根っこが無いとそこまで本音は出せないです。
森田:でも、ずっと一緒に仕事がしたいね。って言っていて今こうやってお互い頑張ってこれて、一緒に出来ていることが本当に嬉しい!
高良:9年経って口に出してきたことが実現されている。普通、言ってできないことの方が多いから当たり前じゃないなって感じています。それも、ちゃんと自分もやってきたら話せるわけで。20代はそういうことなのかな、だから、これからも、まちまちにならないようにしようって思います。
森田:人に感謝するとか、基本のことは忘れない。調子に乗らない。謙虚な気持ちは大切にしながらやってやる、という精神を持つ。周りにもその精神を持った人がたくさんいます。
高良:丁寧って大事だよね。いろんなことを勘ぐるし、勘ぐることも時には必要だけど、その中で何を信用しようってやっぱり丁寧なことだよ。
森田:まだまだ、ずっと頑張りたいな。20代だから30代だからとかではなくチャレンジ精神! 健吾くんはそれを持っている人だからすごいと思うし、それに大人になるに連れて本当に大事な部分がピュアになっていってる。自分もそうなりたい。
満足しない。ずっとチャレンジし続ける。
ーTETROというサロンの根本でもあると思うのですが、人との向き合い方で大事だと思うことは?
森田:“対”人なのでフラットな考え方でいます。健吾くんに対しても、俳優“高良健吾”では接していないです。お店に来てくれるミュージシャンだったり、アーティストだったり、その人が何をやっているとかじゃないです。もちろんその人が、やっていることを見て、いちファンとして感動することはありますが、人と人で会ってる時はお客さんとしても友達としてもフラットです。
高良:ほんとそうだよね。でも、通う身としては本当に面白くていい環境だなって思います。この場所が。
森田:常に面白いことを探していられる環境だからね。毎日本気だし、“美容師”という職業を僕は命かけてやっているから生半可な気持ちではなく、腹くくってます。健吾くんも命懸けだよね?
高良:それは、僕はわからないな(笑)。 本気って言葉に出したら、急に恥ずかしくなってきた(笑)。 今があるのは、やりたいなって思った先の結果です。やる時はちゃんと締める。そんな感じ。
ー普段、一緒にいるときはどう遊んでるんですか?
高良:最近は、お互い共通の知り合いの舞台を観に行って、その舞台の話しをしました。あとはよく一緒にライブに行ったりするよね。
森田:そうですね。これは好きそうだなってのは予定が合えば誘います。
高良:僕も映画で面白そうな作品を見つけたら「これ観てみて」って連絡します。タイミング合えば一緒に行くよね。気楽に一緒にいける友達は本当に貴重です。
ー最近オススメし合った作品は?
森田:去年の『マンチェスター・バイ・ザ・シー』はかなり良かった。あと、クラッたのはエドワード・ヤン監督の『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』!
高良:ほんとしっかり観に行ってるね。それを観に行って感想言い合えるのが良いです。普通、人に薦められて行くことの方が少ないと思います。あと、森田がちょっと違ったなって思ってる時とかは絶対にわかります(笑)。
森田:お互いに嘘つけない性格だから、健吾くんに薦めた音楽でハマってないやつは反応でわかる!
高良:そうだね(笑)。
ー仲良いだけあって、似てるんですね。
森田:他に九州男児なのにお酒が弱いってところも(笑)。
高良:森田とか飲めそうなのにね。
森田:最近、久々に飲みに行って瓶ビールを一緒に一本飲んで。それだけで強くなったねって話してました。
高良:健吾くん強くなったっすね。って言われた時にはちょっとバカにされた気がしました(笑)。
森田:してない!だから、2人の共通してる言葉は“飲みに”行こうじゃなくて“飯食いに”行こうです。
高良:あったかいお茶が一番いいです。健康志向。
ーフィールドは違えど、仕事でも人としても今後の変化が楽しみですね。
森田:明確には見えてないけど、すごい楽しみだなって思います。今まで、いろんなことをやれてきて、満足する自分もいたと思うのですが、いい意味で満足しない。もっと頑張りたいって思いたいです。ずっとチャレンジしていきたいです。
高良:これからも好きなことを形にしていていけたら良いな。
森田:健吾くんが僕をフックアップしてくれたとも思っているので、今度は僕も、出て来て欲しいなと思った子達が活躍できるように、僕なりのやり方でフックアップができたら良いな、と思います。そんな存在になりたい。
高良:それは、森田の音楽を掘る力ではないですけど、感性でこそ、できることでもあるし。それにヘアメイクっていう仕事もありがたいし、自分たちが表に立つために綺麗に恥ずかしくないようにしてくれて、すごく大切なことだと思います。しかも、そこにカルチャーが交差出来るのは強みだと思うよ。メジャーとはまた違った視点で感じるものに、すくい上げたいって思う瞬発力とアプローチは持ってるはず。
森田:健吾くんは、これからも自分が想像するより先に行くんだろうな。想像できることはやれちゃうんだと思います。僕もそれくらいのことをやっていきたい。
高良:お互いの関係としては、これからどんどん歳を重ねていくけど、だんだん言葉を使わなくなっていきたいですね。30代の理想。 言葉がなくても伝わるので。森田のフィールドには僕はいけないし、違う環境でしか見つからない面白さがあるから、まだまだもっと楽しくなっていきそう。
SEASON STYLE DATA : Usual Short
高良:今は髪をテカらせるのが気分、結構ペタッとした感じ。
森田:たっぷり艶感を出すのには、グリースとかポマードをたくさんつけてスタイリングしています。
高良:役者の仕事をしていると、あんまり好きな髪型が出来ないので、役と役の間でどれだけ自分の好きな髪型にできるかなってことをよく考えます。だからその時に森田に相談します。「今やってるのは、こんな役なんだけど、どんな髪型ができる範囲なんだろう?」って。
森田:基本、スタイリングをしていない時でもキマるナチュラル感を意識しています。スタイリングしないと成り立たない髪型じゃなくて、普段でも役を演じている時でも馴染むよう、彼のファッション感が自然にでるようになっていると思います。
森田:でも、健吾くんはずっと坊主にしたいと言っていて、少し前ですが、やっと坊主に出来たよね。
高良:そうそう。坊主にすると出来る役も限られるから、ずっと伸ばしてた。昨年、タイミングがあったから「よし、坊主にしよう!」ってやっとだったね。
森田:今までも坊主ぐらい短い時は、たくさんあったけど、王道の“坊主”っていうのは久々?
高良:10年ぶりくらい。もともと高校の時は坊主でした。
ーでは、年齢を重ねてまた印象の違うスタイルになりましたか?
森田:そうですね。健吾くんに合うよう坊主は坊主でも長さでグラデーションを出して変化をつけました。
ー今後、似合いそうだと思う髪型は?
森田:坊主がいいなぁ、と思いますね。普段のファッションの好みも考えると一番似合います!
高良:昔から未だに変わらずストリートなブランドが好き。そう考えると、森田が坊主が似合うって言ってくれるのは、なんかわかる気がします。