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BEHIND CULTURE VOL.01 団塚唯我
◼︎団塚唯我
https://www.instagram.com/danzuka_yuiga/
◼︎au Shortについて
話題のドラマ・アニメ紹介/ヒット曲MV/動物など、10,000本以上の様々な動画コンテンツを視聴できるサービス。累計DL数は660万人を突破している。
https://aushort.auone.jp/lp/index.html
作品が生まれ、シーンとして広がっていくまでの裏側には無数の判断と選択、そしてそれを担う人たちの仕事がある。「BEHIND CULTURE」は、KDDI「au Short」サポートのもと、音楽・映像・ファッション・アートといったカルチャーの現場で、その“裏側”を支えてきた担い手たちに光を当てる連載企画だ。職業や肩書きの紹介ではなく、思考や判断の基準、そして次の時代のカルチャーをどう見ているのか。インタビュアーは、カルチャーのさまざまな側面に光を当てるジャーナリスト/研究者の竹田ダニエル。
今回話を聞いたのは、映画『見はらし世代』で第78回カンヌ国際映画祭・監督週間に選出された映画監督、団塚唯我。世界的な評価を受ける一方で、制作の現場ではどのような判断や思考を重ねてきたのか。

ーまず最初に、仕事や役割について伺います。映画の企画が動き出してから完成するまで、監督として特に意識している一日のリズムやルーティーンはありますか?
団塚:一日のリズムとしては、僕は基本的に時間がかなりフレキシブルで、何時に起きて何時に寝る、という決まりは特にありません。ただ、できるだけ一日に1万歩くらいは歩くようにしています。考え方をフレッシュにするためでもあって、家の近くから駅まで、だいたい20分くらい歩きながらシナリオを考えたり、いろんな発想を整理したりしています。そういうことは基本的に、家から駅まで歩いている時間にやっている感じですね。
ー撮影期間中も、そのリズムは続いていましたか?
団塚:撮影中は、帰りに本当に疲れてしまって、途中で帰っちゃう時もあるんですけど、それでも意外と歩くのは好きで。疲労度にあまり関係なく、割と意識せずに続けられていることかなと思います。
ー次に、撮影現場で監督として「ここが一番腕の見せどころかな」と感じる部分や、他の監督と比べてご自身らしいところはどこだと思いますか?
団塚:監督って、いろんな決断をしていく仕事だと思うんですけど、自分の強みがどこにあるかは、正直よく分からないところもあります。
ただ、できるだけスタッフも含めて、現場が楽しく過ごせるように、言いやすい環境をつくることは意識しています。僕が先導して「これが正しい」と示すというよりは、照明助手や撮影助手の方からアイデアをもらったり、エキストラとして衣装助手の子に出てもらったり、そういう形で現場を作っていくことが多いですね。自分が他の監督より年齢が低い分、そういう関係性の中で現場を作れたらいいな、というのはぼんやり考えながら、いつもやっています。
ー『見はらし世代』の中で、脚本にはなかったけれど、「みんなで作ったな」と感じる場面はありましたか?
団塚:脚本になかったもので言うと、ラストシーンですね。
もともとラストのイメージはぼんやりあったんですが、セリフの指定は全くありませんでした。ラストでキックボードが出てくるんですが、その中で一人だけセリフがあって、他の三人は、『見はらし世代』のスチールで入ってくれている人や、照明助手、プロデューサーなど、現場で「いいな」と思った人たちに声をかけて出演してもらいました。
最終日に近いタイミングで撮影したので、その日に向けて少しずつオファーして、最後の“キックボードの軍団”を作っていった感じです。本番では「何を喋ってもいい」という形で撮影しました。
最初から作り込まないつもりだったわけではないんですが、自然とそういう形になって。
それは今回の映画の現場作りや、スタッフ、チーム全体のグルーヴ感が、この映画をそうさせたんだろうなと思っています。
ー経験を重ねる中で、現場の乗りこなし方が変わってきたと感じることはありますか?
団塚:それも、今話したことと少し似ているんですが、僕は自主映画出身で、自主演を撮っていた頃は映画学校の同級生と一緒に作ることが多かったんです。
意見が衝突すると、正直、ぐちゃっとなってしまうこともたくさんありました。でも次第に、自分が思っていたこととは違うアイデアを取り込んだ方が、最終的に20分、30分、あるいは長編になった時に、作品が豊かになる、ということに気づいていきました。
『見はらし世代』は初めての長編映画でしたが、それを特に意識していました。その方が自分のストレスも少なく、広く構えていることで、現場の環境を保ちながらクオリティも上がっていく。そういうサイクルを作るのがベストなんだな、と考え方が変わったのは、まさに今回の映画でした。
映画学校の同級生同士だと、みんな意見が違うので、「ああじゃないか」「こうじゃないか」と言い合いになったり、カメラマンも交えて議論が白熱したりすることは普通にありました。
でも次第に、その言い合い自体をお互いが乗りこなせるようになっていって。
今回の映画では、映画学校の同級生もメインスタッフとして入っていて、そのまま長編映画にステップアップしていく中で身についた乗りこなし方だと思います。自主映画の頃から地続きで、自分の中では作り方が緩やかに変わっていっている感覚があります。
ーこれまで手がけてきた作品の中で、特に学びが多かった作品を一つ挙げるとしたら?
団塚:もちろん初めて長編を監督した『見はらし世代』もそうなんですが、その前に撮った短編の『遠くへいきたいわ』という作品があります。30分ほどの短編で、『見はらし世代』の前身のような作品です。スタッフも制作陣もかなり近いメンバーで作りました。そこで初めて、自分のお金ではない形で映画を作る経験をして、プロのスタッフと、これまで自主映画をやっていたメンバーが一緒になって、垣根を越えて作った。その経験は、僕の中ではすごく大きかったです。
昔ながらの映画業界では、自主映画から商業に上がるときに苦労する作家も多かったと思いますし、今もいると思います。でも僕は良いプロデューサーに巡り合って、その垣根を軽やかに越えられる環境を、スタッフ含めてみんなで作ってもらったなと感じています。
自主映画と商業映画の間にあるものを許容してくれた、最初のプロデューサーだったなと、振り返って思います。
ーその作品を通して、監督として一番アップデートされた考え方は?
団塚:映画を作るときの「ドキュメント性」ですね。『遠くへいきたいわ』と『見はらし世代』のプロデューサーと制作会社はドキュメンタリーを作っている会社なんですが、そこの社長がよく言っていたのが、「ドキュメンタリーも編集が入ることで、ある種フィクションになるし、フィクションも俳優のドキュメンタリーという側面がある」という話でした。
その言葉がすごく好きで、フィクション映画を作る時も、どれだけ“ドキュメントである瞬間”をキャプチャーできるかによって、「今この瞬間が撮れている」という感覚が生まれる。
それが映画の質として、新しい広がりを見せるんだろうな、というのを強く感じています。それが一番大きいですね。

ー『見はらし世代』について、当時は悩んだけれど、今振り返ると「あの判断でよかったな」と思えることはありますか?
団塚:編集の段階では本当にいろんな編集案が出ました。最初のラッシュは、初めてつないだ時点ではたくさんのシーンがあって、その段階で結構たくさんの人を呼んで意見を募る回をやったんです。普通はプロデューサーと監督陣、編集部だけでやることが多いと思うんですけど、今回は録音の人を呼んだり、演出部で助監督の応援に来てくれていた人を呼んだりと、いわゆるスタッフのトップだけではない人たちにも来てもらいました。正直、意見が散漫になって取りまとめづらいなと思う瞬間もありましたが、できるだけフラットにいろんな人の意見が飛び交う場を作れたのは、今思うとすごくよかったと思っています。
最初に見せた時は「ここはもっとこうした方がいい」「本当に完成するのかな」と不安になるくらい意見が一気に出たんですけど、無事に完成して今こうして多くの人に見てもらえていることを考えると、やっぱりあの過程は大事だったんだなと思います。
ーキャリアの中で、一度立ち止まって考えるきっかけになったタイミングはありますか?
団塚:正直、映画を始めてから「立ち止まって悩む」ということがすごく多かったかというと、そういうわけではなくて、作りながら学んできた感覚の方が強いです。なので、あえて「立ち止まった」と言うなら、小学校1年生から高校3年生まで、12年間続けていた野球が終わったタイミングですね。高校までは硬式野球をやっていたので、それが終わった時に「次は何をやるんだろう」という感覚がありました。大学に進学してからの1年間は、本当にただの大学生みたいな感じで、サークルに入って掛け持ちしたりして楽しく過ごしていたんですけど、今思えば、あれは楽しんでいたというよりも、次にやりたいことを見つける前の停滞期だったんだろうなと思います。普通の大学生活を送る中で、「何か作りたい」という気持ちが出てきて、それが映画だった。映画は一人で絵を描いたり写真を撮ったりするのとは違って、たくさんの人と関わる団体競技みたいなものなので、そういう点では野球の経験が大きく影響しているのかなと思います。
ー小中高と野球を続けて、その後大学に進学されていますが、映画監督として映画を撮りたいと思ったきっかけは?
団塚:大学ではバンドサークルや文化祭の実行委員会に入っていて、特別に文化に精通していたわけではなく、本当に普通に過ごしていました。そんな中で、大学1年生の春休みに、大学3年生の先輩が僕の一人暮らしの下宿先に突然居候することになったんです。ワンルームの小さな部屋で、3〜4カ月くらい一緒に暮らしていました。その先輩は音楽や本がすごく好きな人で、いろんなことを教えてもらった感覚があります。その流れの中で、ある時ふらっと「映画作ればええやん」と言われた記憶があって、その一言が、今思えばきっかけだったんだと思います。
ー最初はご自身でカメラを買うところから始めたんですよね。
団塚:そうですね。「映画作ったらええやん」と言われて、そういう道もあるんだと思って、まずカメラについて調べ始めました。とりあえず撮るってどういうことなんだろう、というところから入って、カメラを買って触ってみて、さらに調べていくうちに「映画学校」というものがあることを知りました。そこから映画美学校に入学して、気がついたら大学に行かなくなっていた、という感じですね。
ー映画業界に入る前に抱いていた理想やイメージと、実際に入ってみて違った部分はありますか?
団塚:違いという意味で言うと、映画業界に入った瞬間は本当にただただ作りたかった、というのが正直なところで、明確な理想像があったかというと、そういうわけではありません。ただ、そのままここまで来たという感覚です。むしろ現実の方しか知らない、という言い方の方が近いかもしれません。ただ、映画業界自体が今すごく変革期にあって、映画という産業がどう残っていくのか、そのはざまにいる時期だなとは感じています。制作費の面でも難しい現場があれば、まだ勢いのある現場もあって、今後どうなっていくのかは、ちょうど微妙なラインにいる感覚があります。
ー年齢や経験を重ねる中で、映画との向き合い方も変わってきましたか?
団塚:最初は、長い物語を語ることで、人にいろんなものを持ち帰ってほしいという思いで脚本を書いたり編集したりしていましたし、それは今も続けていくつもりです。ただ、時代の流れもあって、ショート動画が当たり前のように流れてくるようになり、ミュージックビデオや広告など、短い動画が一般的な消費の形になりつつある中で、そういう短いものにも目を向けるべきなんじゃないかと思うようになりました。実際、自分もYouTubeの短い動画や短尺のクリエイティブをつい見てしまう瞬間があって、その「見入ってしまう感覚」は何なんだろうと考えるようになっています。拒否せずに一度そこに入り込んだ上で、それをどう映画やドラマといった長い物語に還元できるのか、今はぼんやり考えています。
ー映画業界が変化のはざまにある理由として、ショート動画の影響は大きいと感じますか?
団塚:やっぱり、消費者が見る動画の本数がどんどん短くなってきている感覚はあります。これまで大衆芸術だった映画が、今どれくらい大衆芸術としての価値を持てているのか、という時期に差しかかっている気がしますし、配信がものすごいスピードで伸びている中で、韓国ではNetflixなどが収益を伸ばす一方、映画は作られる本数や規模が減ってきています。去年は10館以上のシネコンが閉館したという話もあって、映画館自体が縮小している国がすぐ近くにある。その現実を見て、日本が同じ道を歩まないために、映画業界がどう残っていけるのかは、すごく考えています。
ー生き残っていくために、映画業界はどんな方向に動く必要があると思いますか?
団塚:映画館がなくなると、映画体験そのものが少しずつ失われていくという感覚があります。だからこそ、どうやって映画館に人に来てもらい続けるかが大事だと思いますし、そのためにはクオリティの高い作品を作り続けるしかない。作り手としてできることは、結局「面白いものをどう作るか」に尽きると思っています。その上で、映画産業にお金がちゃんと循環する仕組みが必要で、欧米では配信サービスの収益の一部が映画の制作費に還元されるシステムが整えられている国もあります。そういった仕組み作りが進めば、作り手として映画を続けていくための一つの支えになるのではないかと期待しています。

ー今振り返ってみて、「あの時頑張っていてよかったな」と思うことはありますか?
団塚:ちょっとスポ根の話になってしまうんですけど、やっぱり野球は頑張っていてよかったなと思います。もちろん「大変な練習を乗り越えたからよかった」という単純な話ではなくて、僕の学校は部員が100人以上いて、その中に指揮を取る監督がいる、という環境で動いていた経験自体が、今思えばすごく貴重だったなと感じています。汗水垂らした経験そのものが生きているというより、多くの人数で動く上で大切なことや自分が部員としてどうすればモチベーションを保てるのかなど、モチベーションが下がっている時期に考えていたことが今につながっている気がします。そういう時にコーチからかけてもらった一言が励みになった記憶も、今振り返ると強く残っています。
ー2025年に、ご自身の作品以外で観た映画の中で、特に印象に残っている作品は?
団塚:2025年で一番印象に残っているのは、昔の映画のリマスター作品なんですが、年末に観たエドワード・ヤン監督の『ヤンヤン 夏の想い出』です。今でも強く記憶に残っています。新作でいうと、昨年の3月か4月頃に公開されていたと思うんですが、福徳秀介さん(ジャルジャル)原作の『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』という作品で、大九明子監督が撮られた映画です。本当に素晴らしくて、強く感銘を受けました。
ー次は映画カルチャーについて伺いたいと思います。映画や映像の分野で、前向きな変化だと感じている動きはありますか?
団塚:前向きな変化でいうと、若い作家がどんどん出てきていることですね。これは映画業界だけでなく映像業界全体に言えることで、若いカメラマンなども含めて、コロナ禍以降、映像分野には勢いが出てきていると感じています。ずっと停滞しているよりは、すごくいい流れだと思いますし、僕自身も若い世代でデビューさせてもらった立場として、これからさらに若い人たちが出てくるんだろうなと思うと、日々精進しなければと感じます。
ー具体的に、どんな点に刺激を受けていますか?
団塚:今は一人で全部できてしまうカメラや高性能なマイクがあって、iPhoneで動画を回すこともできる時代ですよね。僕はどちらかというと、スタッフがいるから映画を作ろうと思ってきたタイプなので、一人でアグレッシブに動いているミュージックビデオの映像作家の方々を見ていると、自分とは違うバイタリティを感じて、素直に尊敬しますし、憧れます。
ー映画業界自体は厳しい状況もありますが、映画カルチャーという点では盛り上がっているようにも感じます。現在地や今後についてはどう見ていますか?
団塚:日本の映画カルチャーは、ものすごく発達していると思います。『見はらし世代』をカンヌ国際映画祭で上映した時に強く感じたのは、東京にはフランス以上に、昔の監督の作品や自主映画などを、きちんと映画館で観られる劇場がたくさんあるということでした。あらゆるジャンルの映画が、あらゆる場所で上映されている街は、世界的に見ても珍しいと思いますし、それは誇っていいことだと思っています。だからこそ、そうした多様な映画を守り、維持していく環境づくりが本当に大事だと思います。
一方で、中国や韓国では、多様な映画を作る流れが徐々に難しくなってきている側面もあります。そう考えると、日本では若い監督がデビューでき、ベテランも精力的に活動し、旧作がリバイバル上映されて観客が入るという循環がまだ保たれている。昨年のカンヌ国際映画祭でも多くの日本映画が上映されていましたが、世界的に見ても、今の日本映画は注目されていると実感しています。
ーカンヌ国際映画祭をはじめ、海外でのリアクションを経験して、日本映画はどのように受け止められていると感じましたか?
団塚:日本映画への注目度は昔から高かったと思いますが、ここ最近は特に高まっていると感じました。昨年カンヌ国際映画祭に行った時も、5〜6本以上の日本映画が上映されていて、アジアの中でも日本映画の潮流が世界的に強くなってきている印象がありました。『見はらし世代』と同じ部門で『国宝』が上映されていたのも象徴的で、ベテランの作品から、僕のような若い監督の映画、大規模な作品から小さな作品まで、世界が幅広くアンテナを張って紹介しようとしているのを強く感じました。
ー監督週間に選出されたと聞いたときの経緯や、その瞬間のことを教えてください。
団塚:プロデューサーが監督週間にネット応募できるということで応募してくれていたんですが、その時点ではまだ編集中で、「編集中」という但し書き付きでの応募でした。初めての長編映画ですし、海外映画祭に行った経験もなかったので、正直、選ばれるとは全く思っていませんでした。そのまま制作を続けていて、応募したこと自体も忘れていたくらいです。
ちょうどその連絡が来た日は、編集は一応終わっていたものの、どうすればもっと良くなるかを考えていた時期で、夜に友達とドライブしていました。深夜にプロデューサーから電話がかかってきて、「また何かトラブルかな」と思いながら、少し不機嫌な感じで出たんです。すると「驚かないで聞いてください」と言われて、「何が起きたんだろう」と思っていたら、「監督週間に選ばれました」と伝えられて。本当にびっくりしました。喜ぶというより、ただただ驚いた、というのが正直な感覚です。

ー監督週間に選出されたことで、ご自身の中や周囲で起きた一番大きな変化は何でしたか?
団塚:まず、日本国内での上映後に加えて、カンヌでの上映をきっかけに大きな反響があり、取材の機会が増えたことは、身の回りの変化として大きかったです。それと同時に、初めての長編映画を、初めて観てもらう相手が日本の観客ではなく、海外の観客だったというのは、僕にとってすごく貴重で、少し不思議な経験でもありました。実際に公開してみると、日本の観客と海外の観客ではリアクションが違っていて、「海外の人はこういうふうに受け取るんだ」ということを知れたのは、自分の中で大きな変化でした。これから映画を作る時には、そういう人たちが観る可能性もある、ということを少し意識せざるを得ないだろうなと思っています。
ー今作は渋谷を中心に描かれていますが、東京や日本という国を映画で捉える際、どんなことを伝えたいと考えていましたか?
団塚:『見はらし世代』を撮っている時に強く考えていたのは、いわゆる東京タワーやスカイツリー、渋谷のスクランブル交差点のような、海外から見た「観光的な東京」ではない側面を、どうやったら正しく映し出せるか、ということでした。そういうことをぼんやり考えながら作っていましたし、今後、都市を扱う時にも続けていけたらと思っています。
僕自身は東京出身ですが、東京出身だからこそ描けることと、逆に描けないことがある、という自覚もあります。そこを意識しながら、どう場を作っていくかが、今後映画を作っていく上で大事だと思っています。地方ロケにスタッフとして参加したこともありますが、他の映画を観ていると、「自分にはこんなふうに美しく撮れないな」と感じる瞬間もあります。自分が経験してきた街や、見てきた景色は、撮影という行為にすごく直接的に関わってくるものなので、そこにはとにかく自覚的でありたいと思っています。
ーショート動画やAI、SNSの影響で集中力が落ちていると言われる中で、観客を引き込む映画を作るために意識していることはありますか?
団塚:『見はらし世代』を制作していたのは、ちょうどAIが進化し始めて、ショート動画が一気に普及していく狭間の時期でした。今は本当に、みんなが一日中短い動画を見ているような時代で、僕自身も例外ではなく、つい短い動画を見てしまう瞬間があります。集中力をどう持続させるかということはもちろん大事ですが、あまり考えすぎないようにもしています。
映画館で映画を観る体験と、家でYouTubeや短い動画を観る体験は、やっぱり別物だと思っていて、暗闇の中で携帯も触れず、2時間スクリーンと向き合う環境が用意されていること自体が、映画の醍醐味だと思っています。だから、ファストなコンテンツと同じ土俵で戦おうとはしていなくて、映画館で上映された時に、どれくらい興味が持続するかを意識しながら作っています。
ー映画館で観客の集中を持続させるために、具体的に意識している演出はありますか?
団塚:僕の映画には、時々かなり長回しのカットがありますが、ただ長く回すことはしないようにしています。長く回すなら、その理由や、画面の中で状況が変化していることがきちんと映っている必要があると思っています。ただ長いだけだと、観客に甘えている気がするので、必ず「なぜこのカットを長くするのか」を自分の中で見つけるようにしています。役者さんの動きだったり、状況の変化だったり、画としてどれくらい持つのかを考えていますし、スクリーンサイズで観た時にどう見えるかも常に意識しています。撮影中はモニターで確認しますが、そのスケール感と映画館で観た時のスケール感はやっぱり違うので、そのギャップを想像しながら、このカットが集中を持続させられるか、面白く見えるかを考えています。
ー撮影中、特に印象に残っている役者さんや場面はありますか?
団塚:皆さん本当に素晴らしいお芝居をしてくださいましたが、主演の黒崎煌代くんは、撮っていてずっと楽しかったですね。台詞が多いわけではないんですが、ただ黒崎くんを見つめているだけの瞬間が映画の中に結構あって、表情ひとつひとつに「これならずっと見ていられる」と思わせる説得力がありました。
それと、遠藤憲一さんや井川遥さんといったベテランの方々のお仕事は、僕にとって本当に勉強になりました。お二人とも、こちらの意図をきちんと汲み取った上で、リスペクトを持ってディスカッションしてくださるので、とてもやりやすかったです。例えば、お父さんとお母さんが二人で話すシーンでは、「この人たちじゃなければ成立しなかった芝居だな」と強く感じました。
ー団塚さんにとって、映画が持つ力とはどんなものだと思いますか?
団塚:映画館で映画が流れているという体験自体が、映画の持つ大きな魅力のひとつだと思っています。暗闇の中にスクリーンがあって、そこに映像が投写されて、2時間ほどの時間をそれぞれが一人で観る。その体験自体が映画の醍醐味だと思いますし、観終わって映画館を出た瞬間に、現実の景色が少し違って見える感覚がある。その感覚がすごく好きで、映画を作り始めたところがあります。スマートフォンやタブレットで観る体験とは違って、映画館を出た時に世界が少し新しく見える、その感覚こそが、映画が持っている大きな力のひとつなんじゃないかなと思っています。

なおインタビューの様子はau Shortで映像でも楽しめるのでぜひチェックしておこう。
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◼︎団塚唯我
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話題のドラマ・アニメ紹介/ヒット曲MV/動物など、10,000本以上の様々な動画コンテンツを視聴できるサービス。累計DL数は660万人を突破している。
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