TOKYO BLUE EYES
by TETRO.
VISITORS : 002 jan and naomi
渋谷は鴬谷町の片隅に構えるヘアサロン、TETRO。目印は鮮やかな青いブルーのアパートメント。この場所には現代のサブカルチャーを形成するアーティストやクリエーターが足を運んでいる。カルチャーの発信地になりつつあるこの場所で聞こえる会話に耳を澄まそう。新たなるエネルギーの発見ができるかも。
壁が“TETRO BLUE”と呼ばれていることにちなんで”青き眼”=人の訪問を歓迎する目を持つ、この場所から東京の今を覗いてみる。連載第二回目に登場するのはミュージシャン、jan and naomi。
今回、TETROのヘアメイクアーティスト、森田康平が待ち合わせたのは、ミュージシャンのjan and naomi。どこか孤高な風貌ながら、垣間には親しみ深き空気感を纏う。光と影が交互に流れ、宙を漂う美しい景色をみているような音を紡ぎ出すふたりだ。感性が呼び寄せたかのように、気の合う3人は、まさに出会うべく出会ったのか。彼らが感じた友情の形、暖かくも律儀な“愛”について。
前回に引き続き、ヘアメイクアーティスト、森田康平が作り上げたヘアスタイルによって完成したjan and naomiの姿を、写真家、嶌村吉祥丸による写真と共にお届けする。
会話していても背筋が伸びるような感覚、緊張感があるのは心地いい。
ー森田さんとjan and naomiの出会いは?
森田:2年前のフジロックです。jan and naomiがフジロックに出演していて、でもその時はまだjan and naomiを知りませんでした。
naomi:その時のステージは、見てないでしょ?
森田:そう、今思えば本当に見たかったな。場内をふらふらしていたら、ビリビリのハーフデニムパンツに革ジャン着て、右のポケットにワイン1瓶入れてるスキンヘッドの人が、前から歩いて来たんですよ。もう気になりすぎて、目が合ってつい「何してんの?」って話しかけちゃって(笑)。そしたら「音楽やってる!」って。
jan:もうあれが夜だったのか、朝だったのかも覚えてない…。二言ぐらい話して、連絡先交換したんだよね。
森田:フジロックは見れなかったけど、「渋谷でもやってるよ!」って言うから、「じゃあ行くね!」って会話でじゃあまたって感じでした。
jan:森田くんと菅谷くん(TETRO)の2人が、タケノコみたいに元気そうにニョキニョキ歩いてたのは覚えてる。
naomi:え、タケノコって元気そうに歩くんですか?
森田:タケノコ(笑)!
jan:いや、ニョキニョキしてたんだって彼ら!それが面白くて会話が弾んでね。そのフジロックの余韻に浸っていたところに、次の日まさかの森田くんから間違い電話がきて、その流れで「髪切りに来てよ!」って会話になって。
naomi:その頃、もうスキンヘッドだから切る髪無いでしょ。
jan:でもちょうど、スキンヘッドに飽きてきた時だし、気が合いそうだったからすぐにお店に遊びに行ったんだよね。そしたら、新しい髪型を提案してくれて、それが最初かな。
naomi:それから、ライブに欠かさず来てくれるようになって、俺も喋るようになったよね。
森田:そうですね、でもライブに行きすぎて、naomiさんに「そのペースで来てると、来年には飽きてるよ」って言われました(笑)。
一同:笑!
naomi:jan and naomiの曲が好きって言ってくれるから、嬉しくてテキーラをたくさん飲ませたら、ベロベロになっちゃった事もあったね。
jan:その後、大変だったんでしょ?
森田:失神した!楽しくてたくさん飲んじゃったみたい(笑)。
ーどこで会うことが多いんですか?
森田:やっぱり、音楽のある場所で会うことが多いよね。
naomi:そうだね、森田くんだいたい音楽系どこに行ってもいるもんね。
森田:完全にストーカーかも(笑)。
naomi:でもそれって、好きなアーティストみんなのストーカーってことでしょ?俺ら関係ないところに行っても「あ、森田くんいた。」って会うことあるし、すごいよね。
jan:俺は、そういうところ好きだよ!
ー音楽の場所以外で会うことは?
naomi:この間TETROに行ったあと、ふたりで初めて飲みに行きました。その時、走馬灯のようにたくさん話したんだよね。
森田:たくさん話しましたね!その時も話しましたが、いつも思うのが、ふたりともお互いが自由で、各々でやってる雰囲気がすごくいいなって思います。jan and naomiの音楽もそうだし人柄とか。新しいアルバムも聴いたよ!めっちゃ良くて今まで以上に、janくんとnaomiさんのそれぞれ別の魅力を感じました。その魅力がインヤンマークみたいに一つになってるイメージ。
naomi:On Your Markってチャゲアスの?
jan:インヤンマーク(笑)!
naomi:あ、陰陽マークの事か、なるほどね。
森田:そうそう!janくん主体の曲、naomiさん主体の曲ってすごくわかります。それでいて、どの曲もjan and naomiだなってしっくりくる。めちゃくちゃ聴いてるもん。
jan:お店でもたくさん曲を流してくれてて、嬉しい。
森田:そういえば今回のアルバムの『Fracture』って、naomiさんが年末に骨折したからタイトルが、骨折なんですか…?
naomi:それもあるかな。janも鼻の骨やってるから、骨にまつわるエピソードがお互いにあって。そもそも“骨折”って面白いテーマだったし、“破壊と再生”みたいなことを感じたんだよね。渋谷の再開発とかさ、壊されてビルが建っていく様子。2017、2018年を象徴してるんじゃないかな。
naomi:森田くんってさ、いろんな人知ってるよね。ミュージシャンもファッション業界の人も。どうやったら、そんなに友達できるの?
森田:いや、僕結構友達少ないと思う。
jan:本当に純粋で素直な魂の持ち主だから、みんな寄ってくるんじゃない?
ーでは、3人に共通する内面的な感性は、どんなところだと思いますか?
naomi:フィーリングが共有できること。ご飯が美味しいとか、虹が綺麗とか、100%感じたままに相手に伝えるのは難しいと思うけど、「あれはお母さんのおっぱいの味がする」とかすごく抽象的な表現をした時に、“なるほどね”って思う人“え?なに甘いってこと?”って思う人。捉え方はそれぞれだと思います。そんな風に、抽象的な説明でも、理解しあえる間柄なんだろうな。それは、俺がjanとバンドをやって、こんな曲を作ろうっていうこととなんとなく似ているんだと思う。フィーリングが合うって重要かも。
森田:それはすごくわかります。僕が感じるのは、naomiさんが「jan and naomiの音楽は普通でいいんだ」って言っていて。それが僕にはポジティブにしっくりきたんですよね。なんでかってjan and naomiの曲って昼夜問わず聴けるし、そのまま流してても寝れるし、奏でる音楽に嫌悪感な音が一音も無いんです。それって自然の音と一緒で、日常の小鳥のさえずり、川のせせらぎみたいに、それくらいナチュラルにスッと入れるんですよ。僕も仕事では、どれだけナチュラルに日常に馴染めて魅せれるかってことを常に思っていて、音楽と一緒なんだなと感じました。いかに自然を演出できるかってクリエイティブなことですよね。それがふたりのいう普通なのかもと感じて、共感できました。
jan:……わかった! 僕がなんで森田くんを好きなのかって、緊張感があるところ。すごい好き。純粋で優しい人だけど、その真逆な面も持ち合わせているんじゃないかな。割と少しでも脱線すると発狂しかねない、狂気的な部分も持っている。それをお互い第六感で感じとって、会話していても背筋が伸びるような感覚、緊張感があるのは心地いいですね。俺がnaomiさんのことを好きな理由もそれで、一緒なんだと思う。
森田:僕たち、気の使い方のベクトルが一緒かもね。
jan:親しいからこそ、ちゃんとしたい。そういった高貴な一面があった方がいいと思う。
森田:まさに“親しき中にも礼儀あり”。僕もふたりのことリスペクトしてるからすごく。
jan:でもさ、すごい珍しいことだよね。心を許すのって意外と簡単で、いいソリッドな緊張感を友情の中で生み出すのって割と難しいことだなって思います。なのでそんな間柄でいれる人には、素敵な言葉で伝えたいなと感じます。
ー友情の中にある緊張感。なかなか気づけない事でもあり、大事なことですね。
jan:それって友情以外にも、言えることなんじゃないかな。真摯にモノを作ってると、自ずと緊張感は生まれるんだと思う。
森田:うん、そうだね。
jan:あと共感できるのは、TETROって美容院としては、ある意味アナーキーな普通のセオリーに添ってない気がするけど、そこが俺らの音の届け方と、少し共通するんじゃないかな。
森田:naomiさんも言ってましたよね、TETROに来てわかったって。僕たちは席を4席でやっていて、jan and naomiもCallasとかBARのスペースでライブをやってるのが似てるねって。もしTETROの席数が3,40席あって、jan and naomiも大きいホールとかで音楽をやるのとでは、また力の出し方とか違ってくるよねって。
naomi:そうそう。自分たちが目の届かないところに、物事が及んじゃった時に、自分たちの看板を背負って表現する自信が本当にあるのかないのかってところ。規模を拡大することによって、濃度が薄くなるのであれば、そうする必要がないから、やっぱり今はこの感じが居心地がいいって思うんだろうな。
jan:でもほんとすごいよね。5人で立ち上げてチームワーク良くバランスが取れてるから。バンドでもやっぱり誰かの舵取りがないと駄目になっちゃう。
naomi:人数が多くなるほど、難しくなるよね。
森田:確かに、ビジネスパートナーって感じじゃない。かといって友達でもない。どっちかっていうと家族かな。ふたりも僕からしたら、夫婦のような雰囲気がする。深い信頼があるんだなって感じるな。
naomi:ふたりだからできてるってことあるよね。人数が増えると、それだけ大変だと思う。
jan:チームワークの秘訣ってあるの?
森田:毎日会うことかな。ミーティングを実はそんなにしていなくて。それぞれ完璧でもないからこそ、みんな個々に長けてる部分を伸ばしつつ、補っていきつつだね。変な話バンドと一緒で、自分たちのパートをみんなで奏でる。ベースも必要だしリードギターも必要、ドラムだって必要って感じ。そう考えるとメンバーが揃うって奇跡だと思う!でもnaomiさんとjanくんが会ったのも奇跡だよね。この2人じゃなかったら今の音楽は無いわけでしょ?
jan:奇跡かもね。あとさ、森田くんって愛がすごいよね。それって美容師としてのポテンシャルが高いんだと思う。もちろん技術は大事だけど、サロンにいる時間の中で、リフレッシュさせてあげたいって気持ちというか、胸いっぱいの愛を感じる!
森田:ただ髪型をいい感じにしてあげたいどころじゃないかも。僕の場合は思いが強すぎて、もはや呪いの域に達してる(笑)。
jan:それだ(笑)! いい意味での母性が強すぎて、呪いになってる!でもすごくロマンチックなことだよね。
森田:家に帰ってからも、カッコよくなったってずっとテンションが上がっていて欲しいし、自分でもスタイリングしやすいようにってすごく考えています。何も考えないでやるのとは全然違うし、だから僕に髪型を任せてくれたみんなには、そんな呪いをかけようと思っています。
jan:それは、本当に素敵なことだと思う。なんか、熱すぎる愛ってクールじゃないな。って思ってる人とかもいると思うけど、もちろんそれが、トレンディだったりもするけど。暑くるしすぎて嫌なくらいの愛って、本当に気持ち悪くて気持ちいい!そうじゃない?汗だくの男が抱き合うみたいな熱い感じ、すごくいいと思うんだよね。
森田:ふたりもライブ中、寄り添ったりしてるよね。
naomi:俺とjanが? え〜、汗臭いの嫌いだもん。
一同:笑!
jan:いや、汗と汗のハグは生々しくてカッコいい美しさなんだよ!
naomi:汗はカッコいいよ!それはわかる。見てる側だといいけど、自分以外の汗に触れるのはちょっと(笑)。
jan:なんで、生命を感じれていいじゃん!だから俺は、森田くんともっと汗をかきたい!でも森田くんはその反面、機械的なブレーンさも持ち合わしてるから、もっとRawな魂って感じ?ドライな質感のあるウェットな男。
一同:笑!!
森田:なんか、ありがとう(笑)!
naomi:あーそれはいいね!それだったら、受け入れられる!なるほどね、ドライな質感のあるウェットな男か、インヤンっぽいね。
SEASON STYLE DATA :
Shaggy Medium & Rayhawk
naomi:TETROでjanの髪型はバージョン1から18までだっけ?カラーも赤くしたりとか色々やってたね。
jan:そうそう、バージョン1から提案してくれて。スタートがスキンヘッドだったからね。それを2ブロック風ににしてくれたり。
森田:後ろも全部2ブロックみたいな感じにしたね。
jan:リハビリのように頻繁に通ってたなぁ、TETROに通院…(笑)! 坊主だと2日くらいですぐ変に伸びちゃうから「伸びるまでちゃんとやるから!」ってね。でも、せっかく通っていい感じに伸ばしてたのに、外国に行った時にメキシコ人がやってる美容院で、モヒカンにされた。
naomi・森田:笑!
jan:森田バージョンアップのピリオドですよ。
森田:だから今は、モヒカンバージョンで似合う幅とか長さとかで新しさを出して、楽しんでるよね。
森田:naomiさんは、つい最近初めて来てくれてましたね!
naomi:そう、美容院ってすごく苦手なんだけど、遊びに行く感覚で行かせてもらいました。
森田:楽しかったです!みんなコンスタントに来てくれことが多いので、naomiさん来てくれて超嬉しかった。
naomi:恥ずかしかったね。やっぱり美容院は恥ずかしい(笑)。でも本当行ってよかった。
edit_Asami Yamane
TOKYO BLUE EYES by TETRO
VISITORS : 001 高良健吾
VISITORS : 002 jan and naomi
VISITORS : 003 Meirin
VISITORS : 004 山田智和
VISITORS : 005 yahyel
INFORMATION
jan and naomi | ヤン アンド ナオミ
という新たなミュージック・スタイルを確立し、儚く切ないメロディーセンスでリスナーを虜にしている。
2018年4月18日に、待望のニューアルバム『Fracture』をカッティングエッジからリリースした。
『Fracture』
1THE END
2 Forest
3 TIC(Requiem for Tokyo)
4 CSKE
5 Temple of Blue
6 Fracture
7 City of love
8 X
9 The Devil
CTCR-14941
¥2,600(税抜)
LIVE
4月27日 VACANT(原宿)「Fog.」
5月4日 Bar Music(渋谷)「Roarers on the road」
7月6日 リキッドルーム(渋谷)「Tokyo Cutting Edge」
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https://janandnaomi.localinfo.jp/