世田谷にローカルを持つ16人組のHIPHOPクルー、KANDYTOWN 。2016年にメジャーデビューを果たし、それぞれソロとしても活動する一方で、音楽シーンはもちろんファッションシーンにもその名前は浸透している。
そんな彼らの魅力を改めて探るべく、現在発売中の最新号 EYESCREAM No.173 では、クルー全員への貴重なインタビューを決行。WEBでは、その一部をお伝えするとしよう。
1stアルバムから3年を経て発表された、2ndフルアルバム『ADVISORY』を介して、今聞きたいKANDYTOWNの存在と意義とは。
それぞれがスキルアップした1stアルバムリリースからの3年間
ー まずはKANDYTOWNの成り立ちについて伺いたく思います。
KIKUMARU: 最初のきっかけは、YUSHI(※)がいたから、ですね。オレは幼稚園の頃からYUSHIと一緒で、彼と一緒にいるうちにHIPHOPやスケートボードのカルチャーを教えてもらったんです。YUSHIが中学生の頃からラップを始めていたので、それで必然的に自分も、という感じでした。「一緒にラップをやろう」と誘われたのは中3の時だったんですけど、それが今のKANDYTOWNの活動に繋がる出来事だったかと思います。
※YUSHI:KANDYTOWNの中心人物とも言える存在であり、BANKROLLのメンバー。ハマ・オカモトやオカモトレイジらとともにバ
ンド、ズットズレテルズを結成し、MCとして活動していた。2015年2月14日、逝去。
Dony Join: 僕たちはもともとBANKROLLとYaBastaという2つのクルーに分かれていたんです。BANKROLLは世田谷区の喜多見がフッドで、みんないつも、遊びがてら良く集まっていたんですが、その遊びが音楽だった。それと並行してYaBastaというちょっと年下世代のグループもいて、それぞれ同じところでイベントに出たり一緒に楽曲制作をやっていたりしたから、「だったら一緒にやっちゃおうか」って。それがKANDYTOWNの始まりですね。
ー KANDYTOWNはそれぞれのソロ活動も盛んですが、この3年間におけるソロでの経験が、今回のアルバム作りに活かされたという自負はありますか?
DJ MASATO: 僕はDJの立場からみんなのことを見ていますが、それぞれのソロ活動を経て、今回のアルバムは、これまでとは全然違うテイストの曲ができたという感じはあると思います。そこが、前作との大きな違いかもしれないですね。より強い個性が出せたというか。
KIKUMARU: それぞれがスキルアップした、っていうのはすごく実感しています。
Gottz: 僕の場合、今になって思うのは「前まではどこか遠慮していたのかな」ということ。でも、自分のソロ曲を作っていく中で、自分が本当に感じたようにビートにアプローチしながら「これで行くぞ!」って感覚を掴むことができた。そういう経験を経て、自信を持ってレコーディングできるようになったかなと思います。
BSC: 僕は自分のソロ・アルバム『JAPINO』のレコーディングが終わってすぐに、KANDYTOWNのレコーディングに入ったんです。(ソロから)KANDYTOWNのモードに問題なく切り替えられるだろうと思っていたんですけど、結果、結構大変でした。KANDYTOWNのレコーディングが始まってしばらくしても、まだ『JAPINO』の哀愁が残っていましたね(笑)。
ー 前作のアルバムと比べて、今回はよりビートがスケールアップした印象を受けました。全体のバランスがさらに洗練されたと言うか。
DJ MASATO: 今回、うまくバランスよく仕上がったかなと思います。ファーストはこれまでの集大成って感じのサウンドだったんですけど、『ADVISORY』はこれまでの要素をベースに、打ち込みやアレンジをより加えた構成になっている。そこは、KANDYTOWNにとって新しいチャレンジだったと思います。まず、ビートを完成させるにあたっては(KANDYTOWN内の)ビートメイカーやDJチームで、インスピレーションになるような曲やアプローチなどの意見交換をしたり、ビートのイメージを共有したり、というプロセスもありました。
ー 先行シングルになった「HND」はまさにKANDYTOWNの新章を感じさせるような仕上がりでした。
DIAN: ビートがカッコいいなってことで、気合い入れて録ったんですよ。
Gottz: 結構最後の方にできた曲なんですけど、録る前から「シングルはこれだ」みたいな雰囲気でした。ここに入るのは、とりあえずMUDだろ、とMUDが先にヴァースを入れてから、BSCとDIANがハマったんだよね。
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ー そのほか、今回、ビートに関して特に意識した点はありますか?
Ryohu: そうですね。『ADVISORY』の制作をスタートした段階では、すでにZEPPでのライブが決まっていたので、デカいところで(音を)鳴らすっていうのは意識して作りましたね。今年の5月にはOEASTでも1200名規模のワンマンをやりましたけど、ZEPPはその倍くらいのキャパになるんで。その人数を盛り上がらせられるような音にする、という意識は言葉で(メンバー全員に)伝えていたわけではないですけど、どこか共通している点でもあったかと思います。
Neetz: これまでとやってることは変わらないですけど、その着地点を踏まえて派手さを求めにいったというか、「そういう気持ちで作ろう」といった意識はあったかもしれません。
ー ちなみに、リリック面で何か変化を意識した点などはありますか?
DIAN: 個人的にはないかもしれません。前作と同じテンションで挑みました。ただ、ラップを書くっていうのは人として自分に整理をつけるために必要なこと、みたいになってるんですよね。だから、自分の経験に応じて言っていることや内容が変わることはあると思います。でも、ラップそのものにに対して意識が変わったということはないですね。
DJ WEELOW: 僕としては、MUDとGottzの勢いがすごかったですね。2人の曲やリリックは、KANDYTOWNの中でも新しい空気やノリができていて。他のメンバーもそれに混ざっていって、さらにいい曲ができる瞬間がいくつかありました。今回の収録曲でいうと「Last Week」とかがそんな感じなんですけど、それは新しいKANDYTOWNっぽくてカッコいいなと思いましたね。
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ー また、Holly QさんはKANDYTOWNのメンバーとしてアルバムに参加するのは今回が初めてですよね。どんな思いでレコーディングをスタートさせましたか?
Holly Q: 僕はちょうど、『ADVISORY』のレコーディングの直前にBSCのアルバムに客演として呼んでもらえたことがあったので、そのタイミングと被って、そのまんまレコーディングに挑んだ感じですね。
ー これまでライブの現場でHolly Qの姿を観ることはありましたが、その時点でもすでにヴァイブスの高さを見せていたので、アルバムになると一体どれだけのポテンシャルを秘めているんだろうと個人的にも楽しみでした。
Holly Q: これまで上杉柊平という名前で俳優としてやらせてもらっていて、それが4年前くらい……ちょうどKANDYTOWNの前のアルバムが出たくらいから、僕も俳優をやっているんです。だからずっとそれぞれのキャリアが並行しているというか。僕の場合はKANDYTOWNとして活動できない期間もあったんですけど、その間、誰よりもKANDYTOWNのアルバムを聴き込んでいましたね。だから、ネガティヴな意味じゃなくて、みんなに対して思うことはいっぱいありました。KANDYTOWNのみんなの動きが、俳優・上杉柊平の動きにも影響していたので、「だから頑張ろう」と思えた瞬間もたくさんありましたし。だから『ADVISORY』には、溜まっていた自分の思いが全部出た、っていう感じです。
BSC: 今回は、GottzとHolly Qの参加曲が最多かも。Gottzもかなり頑張って最初からレコーディングに挑んでくれていたんです。僕は、その2人のヴァイブスを受け継ぎながら徐々にレコーディングに参加していくって感じでした。かなり影響でかいですね、その2人は。
Neetz: ビートだけの状態のところに、一人分のラップが入るだけで、BSCや他のメンバーも意欲を掻き立てられたり、いろんな想像ができたりするんで、こっちも「じゃあ、この曲はこういう風にしよう」って提案ができるんですよね。そういう意味でも、Holly QとGottzは『ADVISORY』のスタートを切ってくれた二人だと思います。
ー 先ほどもZEPPでのワンマン・ライブの話が上がりましたが、ライブに関してというと、これまでにフェスからワンマン・ライブまでかなり多くのステージを踏んできたかと思います。これまで、特にKANDYTOWNの変遷において印象的だったライブってありますか?
KEIJU: 今年、O-EASTでやったワンマンも、人が入るのかって不安でもあったし、お金を取って見せる自分たちのワンマンだったので、成功してすごく嬉しかったのを覚えてます。
MUD: 3年前にメジャーデビューして、ワンマン以外にも、今まで出たことのないようなでかいフェスでライブする機会も増えたんですよね。そのおかげで、自分たちのいいところも見えたし、(ライブに関して)これからもっとやっていかなきゃいけないところも見えた感じはします。それまでは、ライブにおける演出とか、あまりそういうところまで気を配ってなかった。
Dony Join: 3年前はライブの演出とか、そこまで考える余裕がなかったって感じだったしね。
MUD: だから、この3年の間にそういうことも常に考えていかなきゃなと思わされましたね。まさに、“意識”ですよね。
(※去る11月3日(日)に行われたZEPP TOUR「ADVISORY TOUR ’19」東京公演のレポートはこちら から。)
ー ちなみに、IOさんが持つ“KANDYTOWNのヴィジョン”とはどんなものですか?
IO: 1人1人がどこに行っても勝負できる、というのが1番の理想の形ですね。それぞれが自分の考えを持って、どこでも輝ける男になれるというか。成長していければといいなって思います。たとえ、音楽を辞めたときでも、その時にKANDYTOWNとしての経験が活かされていけばなと思います。とはいえ、音楽を辞めてもずっとみんなで遊んでいるだろうし、KANDYTOWNが無くなることはないと思う。色んなところで何でもできるって言うのも、KANDYTOWNの魅力だと思います。
ー KANDYTOWNとして3年ぶりのアルバムが完成した今、改めてリスナーに伝えたいことはありますか?
IO: KANDYTOWNには色んなメンバーがいていろんな音楽があるので、これをきっかけに、それぞれの音楽にも触れてほしいですね。それでライブにも来てくれたら嬉しいです。