Dear Upcoming Actors #09 石川瑠華

photography_Masaya Tanaka, styling_Riki Yamada, hair&make_KATO, text&edit_Shu Nissen

Dear Upcoming Actors #09 石川瑠華

photography_Masaya Tanaka, styling_Riki Yamada, hair&make_KATO, text&edit_Shu Nissen

いま、若手俳優たちがおもしろい。きらり光っている。ってことで、これからのスクリーンを賑わせるアップカミングな役者を追った、というよりも彼ら/彼女らへのラブレター的に編んだシリーズ「Dear Upcoming Actors」。第九弾は、1997年生まれの石川瑠華が届ける相手。
柔らかな雰囲気でありながら、ふいに向けられる強い眼差しの奥には、演じることへのプライドと哲学を持った女優魂が見える。ファッションシューティングは初めてと言うが、モードなスタイリングも難なくものにしていた。

「自分の知っている自分には正直に」

ーまずは、役者を志したきっかけを教えてください。

大学生まで役者になりたいとは思わなかったし、そういう世界に行くとも考えてなかったんですよ。ただ大学がすごく嫌いで、どこか違うところに行きたかった。多分、最初は有名になりたいって考えから、演技のワークショップを受けたんです。そこで、演技っていうものが自分の想像と違うものだと気づかされて、面白いなと感じました。最初に出演する映画までは、半年くらい週1でワークショップに通っていて、初めてオーディションに通って、撮影が始まりました。それが大学3年生の時です。

ーそこから2年くらい経って、主演作もあったりと活躍されていますが、どんな時に演じることの魅力を感じますか?

自分が役に変わったなって思う時、その役を通じて相手とやりとりするのが楽しいです。あと、一番嬉しいのは、劇場公開後のお客さんの反応ですね。『イソップの思うツボ』と『左様なら』って作品だと、賛否はありつつも、映画について話してくれたり、考察してくれたりするんですよ。実際、自分としてはそういう感情で演じていなくても、こうだったのかな?って予想してくれるのはすごく嬉しい。別に正解とかはないと思うし、それが醍醐味でもあるじゃないですか。お客さんに届いて、考えてもらって、そこでようやく完結するというか、映画ってそういうものだなと思います。

ー演じる上で何か心がけていることはありますか。

自分の知っている自分には正直になろうって思っています。

ー自分の知っている自分?

自分の知っている自分も、自分の知らない自分もあるって本に書いてあって。知らない自分はまだ分からない面だけど、役柄として自分にない部分を引き出さないといけないこともあります。その中でも、自分なりに表現できる部分を探して、心から正直に演じたい。ただ、自分が演じるんですけど、必要ない時に自分を出すのは絶対に嫌なんです。一年くらい前にSuperendrollerの舞台に立って、稽古中に、「それは瑠華だから」って言われたことがありました。”役を演じてるつもりでも、自分だから”って言われたことがすごく悔しくて。絶対言われたくないことだから、これからもずっと言われないようにしようと心に誓いました。それが今でも心にずっとあります。

「見せたくないものも、見せる」

ー影響を受けた映画とかドラマとか、自分のルーツになっている作品はありますか。

ラース・フォン・トリアー監督の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』が一番芯になっているというか、芯にしていきたいと思っています。一番好きな映画です。監督と主演のビョークさんが、心中するかのような強い思いで作っているのが伝わる。一番見せたくないものまで、監督自らも辛いものを見せているのが素晴らしいなと思って。きっといろんな思いがあってすぐに言えない台詞を、どうにか言おうとする時、台詞にたどり着くまでの感情が見えて、人間らしさが大好きです。

ーある小説家が先輩の作家にもらったという言葉を思い出しました。「校長先生の話ってなんでつまらないか分かる?自分が聞いて欲しいことを話してるからだよ。あなたは、誰にも聞かれたくない話を書きなさい」って。

すごく分かります。自分の言いたいことだけを押し付けたみたいな映画がわたしは好きではなくて。苦しんで苦しんでたどり着いた先だけを見せられても違うなって思ってしまいます。小説家の人の言葉って心に響きますね。

ー映画以外でも何か最近気になることはありますか?

最近またお笑いを見るようになって、今はYouTubeでノン・スタイルばっかり見てるんですよ。前までくりぃむしちゅーしか好きじゃなかった(笑)

ー渋いですね。

有田さんが小さい時からずっと好きで、お笑いもくりぃむしちゅー以外興味ないしって思ってたんですけど、お笑いの視野が広がりました。

「役者は演じなくなった瞬間が一番面白い」

ー役者としての将来像を教えてください

芸能人じゃない人。普通の人を普通に演じられる人。日常で思っていることが言えなかったり、我慢してる人っていっぱいいて、私もそうでした。そういう人たちを救えるような言葉を届けられる役者になりたいですね。石川瑠華って名前はあまりいらないと思っていて、役名で覚えててもらえるような役者さんになりたいです。

ー役者を始めた頃の、有名になりたいという思いからすると、真逆のようですが、どんな心境の変化があったんでしょうか?

演技を間違えて捉えていたんですよね。上手に演じているつもりでも上辺だけの感情だと伝わらない。本心から言わないと伝わらないし、それが求められていることを学びました。だから役者さんの演技を見ていてもそこに惹かれちゃうんですよね。

ー確かに、見る側としても全然台詞っぽくない演技だと、よりその作品に没入できるように思います。

『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』ってドラマがあって、主演の高良健吾さんが、まさにそうなんです。芸能人じゃないですか、でも全くそれを感じさせない普通の人が言うぽろっとした一言だったり、伝えようとするわけじゃない、ごにょごにょとした一言がすごくリアルでした。生きてるんだなって。役者は演じなくなった瞬間が一番面白いと思っているんで、私もそういう表現をしていきたいです。

[wear credit]
look1:コート¥69,000/MAISON EUREKA、ワンピース¥47,000/AKIKOAOKI、ハイネック¥21,000/MAISON EUREKA、ブーツ¥113,000/Acne Studios
look2:ジャケット/Acne Studios、ドレス¥55,000/Chika Kisada、ブーツ¥63,000/MAISON EUREKA
look3:トップス¥23,000/kotohayokozawa、スカート¥200,000/AKIKOAOKI、パンプス¥58,000/AKANE UTSUNOMIYA
[INFORMATION]
Acne Studios Aoyama 03ー6418ー9923
ChikaKisada 03ー3373ー7493
ON TOKYO SHOWROOM 03ー6427ー1604
kotohayokozawa http://kotohayokozawa.com/
AKIKOAOKI 03ー5829ー6188
BRAND NEWS 03ー3797ー3674

Dear Upcoming Actors

PROFILE

石川瑠華
1997年埼玉県出身。2017年8月の舞台「SUGAR WORKS」でデビュー。初の映像出演は第2回未完成映画予告編大賞出品作の『猿楽町で会いましょう』のヒロイン・ユカ役で、同作はグランプリと小原信次賞を受賞し、2019年に本編の製作が決定。2020年から渋谷シネクイントから全国順次公開が予定されている。出演する映画『恐怖人形』が公開中。

INFORMATION

映画「猿楽町で会いましょう」
2020年初夏全国公開予定

POPULAR