2020年、オリンピックを控えた首都・東京。渋谷をはじめとする都心部の至る所では急ピッチに工事が進み、街の景観がガラリと変わると、追い打ちをかけるようにコロナ禍によって物寂しさが増して見える。
そんな中、渋谷のシンボルとして長きに渡り街の喧騒を眺めてきたパルコは、新たな時代におけるカルチャーの発信地として生まれ変わった。その9Fにはアーティスト・宇川直宏が2010年にDIYで開局した日本初のライブストリーミングスタジオ兼チャンネル・DOMMUNEが「S/U/P/E/R/ DOMMUNE」へとアップデートを遂げ、唯一無二の存在感を放っている。
そんな同所にてBEAMS × SPACE SHOWER TVの共同プログラム「PLAN B」による無観客ライブ配信、PLAN B PRESENTS『BORDERLESS BEAT TAPE』が8月6日(木)に開催された。
昨今、エンターテイメントの楽しみ方の1つとして定着してきたライブ配信。それを予見するかのごとく10年前より「THE FINAL MEDIA」と称して時代を記録してきたDOMMUNEの窓から、KM、田我流、Ramza、Campanella、16FLIP、Aru-2といった強固な面々が、未来への希望を込めて音を鳴らした一夜をプレイバックする。
スタートを飾ったのは、多くのアーティストへ楽曲を提供しヒップホップシーンで注目を集めるトラックメーカー/プロデューサーのKM。
自身がプロデュースを手掛けたヒットチューン「Heaven’s Drive feat.vividboooy」を軽快に鳴らしイベントの幕が開くと、その後も、Lil Uzi Vert「Xo Tour Llif3」、kZm「TEENAGE VIBE feat. Tohji」、舐達麻「100MILLIONS」、Kendrick Lamar「Alright」などの楽曲がKMならではのアレンジで繋がれていった。
次のアーティストは、KMとの楽曲「夜のパパ」を制作したことから親交が始まり、全国ツアーも共にした田我流、そしてビートメーカーで彼のバックDJも務めるMAHBIEが登場。
お客さんが(会場に)いないと本調子が出ない。と正直な気持ちを吐露しつつも、ライブが進むに連れて詩人・田我流ここにあり、と言わんばかりのMCが際立つ。DJ・MAHBIEとのお馴染みの掛け合いとともに、コロナ、ソーシャルディスタンス、東京アラート、政治、しがらみ、そして音楽・ライブ・エンターテイメントといったテーマを、ユーモアをもって等身大にマイクパフォーマンスした。
“おかしいことはいっぱいあるよね。勘ぐっちゃうな~と思いますけど。ここを乗り切って皆さんとライブをやる、その日までって感じですよね。とりあえず今できることは、テレビは見ず、真実を見つめ、それをノートに書き、音にして、アートで伝えるって感じですかね。”
「Broiler」「Walkin」「JUST」「Space Brothers」「センチメンタル・ジャーニー」などの楽曲を、叙情的に歌い上げるといよいよ終盤。“ここが耐え時、みんなの遊び場はみんなでキープしていこう。みんなで回してこう。奴らは守ってくれないぞー!”と力強く話すと、最後にKMが再登場。共作「夜のパパ」を披露し、KM、MAHBIE、田我流はパフォーマンスを終えた。
続けて、緊急事態宣言下で制作が行われた全12曲の限定音源『NOODLE』のリリースも記憶に新しい、ラッパーのCampanella、ビートメイカーのRamzaが登場。
変幻自在に音を操りコラージュしていくスタイルでクールに鳴らすRamzaは、環境音楽とも聴いてとれるような心地の良いビートを展開したかと思うと、時折怒りにも近いハードな音を紡ぎ、フロアのムードを一変。投影されたビジュアルもRamzaのテンポに呼応するように変化しながら、シリアスなテンションを保ちつつ、Campanellaのライブへと移った。
Campanellaは「Douglas fir」、「YUME no NAKA」、「The Habit」、「NINE STORIEES」などRamzaがプロデュースする楽曲を立て続けてストイックに披露。
最近思ったことと、ちょっと前に思ったこと。と話してラップした未発表曲では、“でもまあ、俺たちに大事なのはこのスペース。少しの沈黙守り今はこのホームにステイ。手を重ねてプレイ、そして日々をレップ。スマパンで言うとこの「Today」”と、困難な情勢にあっても毎日を丁寧にキープする、Campanellaらしい独特な言い回しで心境を表現した。
イベントも終盤に差し掛かりここで、ISSUGIのプロデューサー名義で知られ、MONJU、仙人掌、5lackらのプロデュースやDJミックス、ビート・アルバムのリリースなど多岐に渡る活躍をみせる16FLIP、さらに最新アルバム『Little Heaven』をリリースしたばかりのAru-2が登場。
16FLIPは、何とも贅沢な60分に渡るDJプレイを披露。緻密にセレクトされた楽曲と、彼の一貫したスタイルから生み出される唯一無二のグルーヴィーなサウンドが体の芯まで響き渡る。Joell Ortiz、KXNG Crooked、MRK SXによる「H.A.R.D」から、Gradis Nice、YOUNG MASの「f-turbo」の流れでは一気にテンポを上げると高揚感に包まれた。
ライブを通して、DOMMUNEを率いる宇川直宏のスイッチングが楽曲の魅力を拡張させていた。
いよいよラスト、Aru-2へと交代すると最新作よりISSUGIをフィーチャリングした「Bye My Bad Mind」を1曲目に投下。ISSUGIがサプライズでパフォーマンスを披露した。
約3時間半に渡り紡いできたビートを受け取ったAru-2は“DOMMUNE、お邪魔します!”と一言、軽快にプレイをスタート。「Go Away」(feat. Kid Fresino & Campanella)など最新作の収録曲を含めたセットで、時折激しいヘッドバンキングを見せつつも、メロウでダンサブルな音までをも網羅する懐の深さで視聴者を魅了し、音が鳴り止むのを惜しみながらもラストは、C.O.S.A.「Girl Queen」で大団円。
音楽・ライブハウス・エンターテイメント業界を取り巻く状況は未だ厳しいながらも、無理せずに折り合いを付けてできることをやる。自分たちの遊び場は自分たちで守り、そしてまた創っていく。といったスタンスはどの出演者にも共通しているように感じられた。
それぞれのスタイルは違えど純粋に音楽に没頭し、音に乗せて発信するメッセージやクリエイティビティは画面越しでも強度を伴って伝わる配信となった。
本企画を主宰した、PLAN Bの公式インスタグラム(@planb_mag)では今後も様々な企てを発信していく模様、是非フォローをお忘れなく!
INFORMATION
PLAN B PRESENTS『BORDERLESS BEAT TAPE』
@S/U/P/E/R DOMMUNE
配信先:S/U/P/E/R DOMMUNE
配信日時:2020年8月6日(木) 19時~
出演:KM/田我流/Ramza/Campanella/16FLIP/Aru-2 ※出演順
Flyer + T-Shirts Design:Marfa by Kazuhiko Fujita
http://www.beams.co.jp/special/plan_b/
@planb_mag