CULTURE 2020.11.25

[Interview] TAPPEI( 職業 / タトゥーアーティスト)

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
photography_Kenta Karima, text&edit_Shu Nissen

2020年、タトゥーは“アート”として認められた。

出現や消失を繰り返しながら発展してきた、日本の彫り物文化。
その新たな時代における”ニューノーマル”を、リベラルな若者世代が形作っていくように思う。

カルチャーシーンにおいて独自の存在感を放つタトゥーアーティストのTAPPEIに話を訊いた。

タトゥーを入れるハードルは下がっても
彫り師になるハードルを下げてはいけない

タトゥーに興味を持ったきっかけは

もともとは和彫りが好きだったんですよ。親がよく観ていた任侠映画の影響ですね。単純にかっこいいなという憧れから、刺青に興味を持つようになりました。いろんなカルチャーを知っていくうちに、スケーターが仲間内で彫ってるめちゃめちゃダサいタトゥーあるじゃないですか。あぁいう落書きみたいなユルい感じも気に入って、自分の今のテイストに繋がっていきましたね。

最初に入れたのはいつですか?

18の時ですね。絵がもともと好きで芸大にも行っていたんですけど、すぐ辞めちゃって。最初から彫り師になりたいってよりも、ただ絵だけ描いてても面白くないなと思って、タトゥーも好きだから、自分でやってみようと。だから僕はタトゥーに関しては完全に独学なんですよ。

独学でも、いけるものなんですか?

難しいとは思いますね(笑)もし自分もスタジオに入っていたら技術は、もっと早く上手くなっていたと思います。でもその分、僕は身体のほとんどに自分で彫っているんです。
背中は自分で入れられませんが、顔も鏡を見ながら自分でやりました。いま27歳なんですが、20歳になるまでの間に結構埋めてしまいましたね。結局、自分の身体が強さの加減や感覚が分かりやすいですから。練習用のゴムがあったり果物で試したりもできるんですけど、実際の人間に彫るのでは、やっぱり全然違うので。ただ、何よりも大事なのは、衛生面ですね。独学で学ぶのに一番苦労するし、一番重要です。僕は祖父が医者で、両親も歯科医師だったので、衛生面は学びやすい環境だったので良かったのですが、これから学ぶ人たちには特に気をつけて欲しい点です。

上手い人と下手な人の違いは?

まず分かりやすいのは、もともとのデザイン通りに完璧に入れらているか。そこは原理的には簡単な話なんですよね。肌に刺しているだけなので。正直、入れ立ての仕上がりは、下手な人もキレイに見えます。そこから先は、上手い人と下手な人で大きく差が出るんです。治った後のことを考えて入れているかどうかで全然違います。お客さんに彫った後だと、何年後かの経過って見られないじゃないですか。だから独学だと自分で彫ってみる以外ないので、最初は難しいかもしれません。あとは経験です。

TAPPEIさんのデザインには独特の世界観がありますよね。なにがインスピレーションになっているんですか?

なんだろう。昔の映画を観てどうこうとかそういうのは全くなくて。日常生活ですかね。例えばボーッとインスタを見ていて、たまたま人参を切っている写真があったら、人参が包丁を持ってウサギを追いかけているアイディアが浮かんだり。”逆にする”っていう発想は多いかもしれないです。豚の貯金箱が人間の頭を割ってるとか。あとは、宇宙人がNYヤンキースのロゴになっていたり。全く意味のない落書きもありますが、基本的には、ユーモアだったり、オマージュだったり、面白みのあるデザインにしたいとは思っていますね。意味を込めすぎたタトゥーを入れると、後から逆に後悔する人もいるので。もちろんそれが本来の醍醐味でも、何も考えないで入れるのも悪くないなと僕は思います。なんでか分からないんですけど、お客さんからは、天使系のオーダーはすごく多いですね。

近年の日本のタトゥー事情を見渡して、何か思うところはありますか?

昔よりタトゥーを入れている人も増えているし、身近になったり、寛容になるのは良いことだとは思います。僕はタトゥー大好きなので。でも、顔には絶対入れない方がいいですね。僕は彫り師だし練習なのでぜんぶ後悔はありませんが、一生モノですから。すごく思うのは、タトゥーを入れる人のハードルが下がるのはめちゃめちゃ良いことでも、彫り師になるハードルが下がってはいけないなと考えています。人の身体に彫らせてもらうことですし、儲かりそうだからってできる仕事ではないので。

昔と比べてタトゥーに対する感覚は変わってきていると。

こんな言い方したら、申し訳ないですけど、昔は変な人しか入れに来てなかったんです(笑)でも最近は、女性も多いですし、あれ?この人で合ってる?って思うぐらい普通の人がお客さんのほとんどですね。今ではそんなことすら思わないぐらいに当たり前になりましたけど、言われてみれば確かにここ数年でお客さんは圧倒的に変わってきてますね。見るからに刺青入れてそうな人が入れてるよりも、むしろかっこいい気がします。僕のお客さんで言うと、昔は8:2で男性でしたが、いまは7:3で女性が多いですね。彫らせてもらってる数も増えてますし、タトゥーを入れるハードルは明らかに下がっていると思います。嬉しいですね。

世間のリアクションに対してはどうですか?海外に比べて、まだ理解が遅れているというか、厳しい見方もあると思います。

無理に変えようとは思わないですね。お客さんと話していても「タトゥー入れてるからって、世間にこんな扱いされるのおかしいですよね?」って言われたりもするんですけど、大きさに関わらず、嫌がる人は嫌がりますからね。それは、もともと分かりきったことなのに、入れたのは自分なんで、じゃあ入れん方がいいんじゃないかな?って思いますし。生まれ持ったことで差別されるのは、おかしいですけど、タトゥーは完全に自分の意思でやっていることですから。

結局は態度かなと思います。僕が友だちと、熱海で温泉付きの旅館に行った時、もともと温泉に入るつもりはなかったけど、泊まることも断られるかもと思って、受付の人に「僕は温泉入らないので」って話をしたら、「最近はそういうお客さんも多いですし、うちは全然入ってもらって大丈夫ですよ」って言ってくれたんですよね。

自分が丁寧にしてれば周りの接し方も違ってくるはずだから、何かを変えるならそういうところからかなと思います。

タトゥーのいちばんの魅力ってなんだと思いますか?

“他にない”ってことですね。これは、タトゥーが好きっていう前提かつ、経験した人にしか分からないんですが、新しいタトゥーを入れた時って、とんでもなくテンションが上がるんですよね。ずーっと鏡の前で見てられるし、新しい服を買ったとかの比じゃないぐらい嬉しいんですよ。僕はここまでの気持ちになれることって”他にない”んですよね。彫り師は仕事として毎日お客さんの新しいタトゥーを見られるので幸せですね。

新しい動きとして、TAPPEI ROOMがオープンしましたね

タトゥースタジオに併設する形で、自分の絵画作品を展示販売するギャラリー兼アパレルショップのスペースを作りました。スタジオだけだと、刺青に興味がある人しか来られないじゃないですか。タトゥーを入れる人が増えて欲しいとは僕も思うんで、服だったりアートが好きな人たちも気軽に遊びに来られる場所になって欲しいと思っています。それでタトゥーのことをより知ってもらえたらいいなと。

コラボアパレルも面白いラインナップですよね

もっとゴリっとした、彫り師の人がやってるアパレルブランドもある中で、今回コラボしたTTT_MSW、RANDY、DAIRIKU は全く刺青感のないファッションブランドです。デザイナーと仲が良いっていうのもありますが、タトゥー=怖いってイメージ自体も少し変えていくきっかけになればと思っています。むしろ彫り師とのコラボっていうのを買った後に知るぐらいのアイテムの方が面白いかなという狙いがあって。

今日はありがとうございました。最後に何か言い足りないことなどあれば

どうやったら彫り師になれるんですか?ってよく質問されるんですよね。たぶんそういう人たちって、他の彫り師には質問してなくて、僕がこういうノリだから、簡単にできそうと思ってるんだろうなって。彫り師を目指すのはすごくいいことだと思いますよ。でも、繰り返しになりますが、本気じゃないなら気軽にはやらない方がいいってことは強調したいですね。よく考えて、まず自分に彫ってみてからでもいいかもしれません。

INFORMATION

TAPPEI ROOM

14:00-21:00
〒153-0051 東京都目黒区上目黒1-17-6 2F

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