吉岡賢人(kento hardware)× Shin(Heel Collective)対談
カルチャーとしてのスケートシーンが向かう先

Photography_Leo Ichikawa Text&Edit_Maho Takahashi

吉岡賢人(kento hardware)× Shin(Heel Collective)対談
カルチャーとしてのスケートシーンが向かう先

Photography_Leo Ichikawa Text&Edit_Maho Takahashi

遡ること数週間。なにやら話があると連絡を受け都内某所へ向かうと、吉岡賢人が手がけるkento hardwareHeel Collectiveによるイベントの情報をキャッチ。すでに彼らのSNSにてご存知の方もいるだろうが、迫る8月21(土)、スケートイベントしては異例のオールナイト企画「Hang over」がTRINITY B3 PARK & SHOPにて開催される。未だ急ピッチで進行中(?)な同企画は、ライブやDJといったスケートの枠を越えたシークレットなゲスト陣も名を連ねているようだ。

国内スケートシーンを牽引する吉岡賢人と東京ローカルを軸に名を轟かせるHeel Collective。東京オリンピックを経て、スケートが“スポーツ”として注目を集める今、“カルチャー”としてのスケートを担う両者のタッグはどのようにして行われるのか。イベントに至った経緯や今後のシーンについて、吉岡賢人とHeel Collectiveのディレクターを務めるShinに話を訊いた。

吉岡賢人 , Shin(L→R)

カルチャー寄りの動きをしている
俺らも一発かましたい

ーそもそも2人の出会いは?

吉岡:HeelのArashiから連絡をもらったのが最初っすね。

Shin:そう、去年の8月にHeelで試写会「Libetry」を開催するときに、映像に出てほしいって声かけて。沖縄にいる共通の知人、Chitoくんからも連絡入れてもらった。お互いなんとなく存在は知ってたけど、撮影で初めて会ったよね。

ーそのときHeel Collectiveのことは知ってました?

吉岡:知ってました。Arashiは元々お気に入りのスケーターで、高校生のころから一緒にスケボーを撮影してたんですよ。Chitoくんも、ホームレス時代に住ませてくれたり、俺のお世話になった友達がいるクルーって感じだったので、その流れで映像にも出ました。

Shin:こんな面白いやつは、東京によしけんくらいしかいないと思って。メディアやSNSで彼の動きを知るたび、死ぬほどくらったし、考えと行動が連動しているというか、口だけじゃないスタンスに衝撃受けちゃったね。共通の友人もいるし、これは声かけるしかないと思って。

ー今回のイベントはいつから計画してましたか?

Shin:割と早い段階に話はしてたよね。よしけんロンT着てたから去年の冬とかじゃない?

吉岡:うん、そうだね。

Shin:元々は映像だけで完結させる予定だったけど、紆余曲折ありイベントをやろうと。

吉岡:やっぱオリンピックの影響はあるっすね。日本人が金メダルを獲ったことはスケーターとしてアツいことだし、めちゃ刺激を受けて。表と言うか、スケートのスポーツとしての側面が盛り上がっている中で、カルチャー寄りの動きをしている俺らも一発かましたいって気持ちが湧きました。

ーなるほど。周りでオリンピックの影響は感じますか?

吉岡:今まではストリートで滑ると、街の人から冷たい目で見られていたけど、ニコニコ見てくれる人も増えてきて、変わってきた気がしますね。そんな感じで確実にいい影響は出ていると思うけど、スポーツの面だけのスケボーが広まっても、カルチャー的な側面でやってるスケーターにとっては、もどかしいので俺らもかましていきたいすね。

ーShinくんはフィルマーという側面がある分、よりカルチャーに近い位置にいると思いますが、その辺はどう感じてますか。

Shin:俺は逆にスケートはこっち側(カルチャー)でしょ、と思っていた部分もあって。選手をやっている友達もいるけど、今までスポーツとしてのスケートをあまりリアルだと思えなかったんだよね。だけど今回シーンが動いた瞬間を見て、そっちもアリなんじゃないかと思えた。こうやってスケート自体がフィーチャーされたり、メディアが大きく動く様子を見て、確実に自分の中での認識が変わった。いい流れだと感じてる。

吉岡:完全に革命が起きたっすね。

Shin:起きたね。

吉岡:次の日とか、緩くプッシュしてただけで、カフェの女の子がスケボーしてる! って湧いてくれたし。

Shin:それは元からなんちゃう(笑)。けど、俺も職場で世代の上の人たちと接する機会があるけど、そういう人からもスケボーの話を持ちかけられるようになった。みんな興味示してるんだなって思った。

吉岡:めちゃ変わってきてますよ。

吉岡賢人にだって負ける気がしない

ーオリンピックは、ストリートのスケーターにも良いムーブだったんですね。

吉岡:めちゃくちゃアツいすね! だからこそ黙ってられないというか、改めてやってやるぞって感じ。

Shin:確かに。

ーではイベントに話を戻して。今回はスケートはもちろん、音楽も盛り沢山だとか。どんなイベントにしたいですか。

吉岡:今回Heelとやるって決めたのは、身近から盛り上げようとする姿勢。俺は世界に発信したいとか、知らない人に見せようとしているけど、Heelはローカルを通じて身近から巻き込んで、盛り上げていくのが伝わるし、イベントでも集まったみんなで滑って楽しんでるのがいいなって。スケートイベントって、滑って、映像見る感じのが多いけど、今回は俺らのカルチャーを前面に出したいすね。バチバチに滑れるし、音楽もがっつりある、みたいな。だから今回は、エンターテイメントの最強版みたいな企画にしたいすね。

Shin:それが俺らの強みだと思ってる。強気な発言すると、この規模感でやれるローカルは俺らしかいないと思うしね。

ーそれは楽しみです。Heelはローカルに根付いている分、国内トップクラスとのコラボにおいてスキル面など、Shinくん自身はギャップを感じたりしましたか。

Shin:実際、俺らは劣っているとは思っていないんだよね。スケートってカルチャー的に何やってもいいし自由だから、俺らは面白いことをやっているって点で負けてないと思う。だから吉岡賢人にだって負ける気がしないし。

吉岡:Heelは俺らにない部分を持っていると思うんすよね。スケーターが忘れてはいけない感覚を持っているというか。彼らのイベントとかを見ても、スケートって本来こうじゃん! っていう瞬間がたくさんあるんすよ。だからスケボーをガチでやっている奴らにも、改めて見てほしいし、今後も忘れさせないように見せ続けていきたいです。

Shin:正直少し前までは、コラボ自体をしたくなかったし、独走したい気持ちが強かったけど、それを覆すくらい吉岡賢人が魅力的なやつだった。よく知らぬ間にHeelの映像に出てもらったけど、こんなフルでピースなやついるのかって衝撃で。その後に居酒屋で聞いた話の全てにくらったよね。自分より年下でこんなに魅力的なやつがいるんだって、言葉では表せないアツい気持ちが込み上げちゃった。だから、よしけんとジョブをしてみたくて、俺の人生をかけてでも面白いことをやろうって、思いの丈をぶつけた。おそらく彼は最高にピースなやつだから、ここまで伝えなくてもノリでやってくれたかもしれないけど。

吉岡:シンプルにそれ聞いたときは、めちゃ上がりましたね。やるならアツい人とやりたいし。熱意がない人とは難しいと思うんで。

ー今回のコラボを通じて、スケーター同士の壁なくしたいとも言ってましたよね。

吉岡:スケーターって上手い人の滑りを見たり、友達のメイク見て悔しがったり、セッションで上達すると思うので、そういう動きをイベントで作りたいですね。上ばかり目指して忘れてた気持ちとか、みんなで滑った方が楽しいじゃんっていうスケボーの本質に改めて気づいてくれたら嬉しい。

Shin:それは大事。俺はスケーター同士の壁もそうだけど、ローカルのスケート業界における限界を越えていきたいかな。音楽やアートのカルチャーと比べて、スケートって良くも悪くも自由な分、伸び代があまりないような気がしてて。外から見たときの差別化が難しいから、成功しているクルーやブランドって国内では片手で数えられるくらい。でも、そこを越えたくて今も動いているし、二十代のスケーターで突破できるのが、よしけんであり、俺らだと思う。今回は願ったり叶ったりの企画だから、ここで終わらずこの先もどんどん壊していきたい。

ー最後にイベントを来る人に向けて一言を。

吉岡:前にHeelの試写会で見たみんなの楽しそうな姿とか、お客さんを含めてHeelなところにくらったから、今回も上手い・下手は関係なく、とにかく楽しくセッションしたい。バチバチに滑りながら最高にピースな空間にするので、何も気にせず来てくれたら最高っすね。お客さんも含めてこのイベントは完成すると思うので、好きに暴れちゃって欲しいです。あとスケボーパークでのオールナイトイベントって初だと思うんですよ。スケーターの遊び場で、スケーターとしての新たな遊び方を見せるので、期待してほしいです。

Shin:俺らってかっこ良さというよりは、仲間で円陣組むような感じで活動してきたから、こういうかっこいい在り方もあることを提示できたらと。もちろん俺ららしいピースな感じも残しつつ。よくHeelのイベントに来てくれる子やローカル勢からしたら、メンツ的に恐縮しちゃうかもしれないけど、上手じゃなくても一緒に滑っていいんだ、こんな面白い仲間もいるんだって思ってもらえる場所にしたいね。

当日8月21日(土)は、吉岡賢人のバースデー(狙っての開催)でもあるので、みんなで存分に遊び、祝い、滑り滑ろうぞ。彼らの言葉の通り、上手い下手など気にせず、楽しむバイブスだけ持って集えばいいじゃないの。

INFORMATION

「Hang over」

Heel Collective × kento hardware
DATE:2021.8.21(sat)14:00- 22(sun)5:00
VENUE:TRINITY B3 PARK & SHOP

Instagram:
@kentohardware
@heel_collective


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