Crosstalk 山中拓也/THE ORAL CIGARETTES × 松岡那苗/NERD UNIT JAPAN CEO ストリートと音楽が密接に交差し合う今について

Photography_濱村健誉, edit_Ryo Tajima

Crosstalk 山中拓也/THE ORAL CIGARETTES × 松岡那苗/NERD UNIT JAPAN CEO ストリートと音楽が密接に交差し合う今について

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“好きなファッションを体現することで自分を表現するって意志を提示しています”
ー山中拓也

“自ら選ぶという思考がストリートで何か新しいものが生まれる原動力になる”
ー松岡那苗

自分らしさを表現するということとは?

ー松岡さんはファッションシーンにいる人間として音楽カルチャーをどのように捉えていますか?

松岡:ファッション界にいる人間として、意図的に音楽を聴こうとはしていないですね。ストリートが好きな人は音楽も好きな傾向が強いと思うので、音楽カルチャーを無理に意識するということはないです。たまたま聴いていた音楽が自分に繋がったりしますし。私もロック好きなので、そこからストリートに寄っていった気がします。知らぬ間に、2つのカルチャーを並行して考えているというか。

山中:生き方っぽいですよね。すべてに言えることかもしれないですけど、生きる過程で吸収してきたものが出ているという感じがします。その人が何かをクリエイトするにあたって刺激を受けるには、共通点があって、それがファッションにも表れてくる。生きて獲得してきた趣味嗜好が投影し合うものなんでしょうね。

松岡:
そうですよね。私、こうしてお話する間に、山中さんがこう考えているのかなーと思っていたことがあるんです。

山中:
どんなことですか?

松岡:山中さんは他人がしないファッションを実践しようと考えているのかな? って。それが結果として人と違うスタイルを形成しているんじゃないかと。他人と服が被りたくないとか、考えたりしますか?

山中:そうですね。誰かのマネはしたくないって常々思っています。

松岡:ただあるものを着て渋谷を歩くだけのスタイルとは違うじゃないですか。けっこう難しい着こなしを体現していると思うんです。それがTHE ORAL CIGARETTESの音楽性に繋がっているからこその着こなしなのかな? って。

山中:確かにそうかもしれないですね。僕はこうやって音楽を表現する人として生きていますけど、もともと“もの作り”が好きだったんです。そのなかでも、音楽が創造物として1番表現しやすいものだったんですね。根本的に作ることが好きで、だからこそファッションも好きですし。でも、色々ブランドの服を着たりすると『中途半端にファッションをかじってんじゃねぇよ』みたいに言われることもありましたよ(笑)。そんなときには、“僕は好きなブランドを着ることで自己表現する、ということをやります”っていうことを話して。それが今に繋がっているんです。

松岡:そんな風に言われることがあったんですね。きっと周りのミュージシャンも同じように自己表現している人はいたんでしょうけど、山中さんの方が、自分の音楽性にマッチしていたんだろうし、時代感に合っていたから、自分でも気づかないうちにアイコン的な存在になっていったんじゃないでしょうか。

山中;でも、ファッションに関しては、すごく意識してました。例えば、カート・コバーン。僕の中での音楽=ファッションな人で、完全にファッションも含めてロックして空間を構築していたレジェンドですよね。そんな風に音楽を介して空間として表現できることは、すごく素敵だと思うんですよ。自分の好みで服を選んで、誰もやっていないスタイルを作り上げるっていう。そんな憧れのミュージシャンがやってきたことも踏まえて、自分のファッションについて考えてきました。

松岡:ミュージシャンのファッションについても自分で掘り下げていったんですか?

山中:そうですね。最近のミュージシャンから何十年も昔のロックバンドがしていた格好まで。今では“ロックバンドだから、こういう服を着る”というセオリー的なものがないじゃないですか。象徴となる人もいないと思うんです。あの人の格好や服がカッコいい。自分もそんなファッションでステージに立ちたいーーそう思えるミュージシャンが、僕の周りにはいなかったので、もう自分でそんな存在になってやる! と思って。

松岡:着る服を選ぶうえで、ブランドを調べたりとかはしますか?

山中:そのブランドがどんな存在なのかを調べる、というよりも、作っている人が、どんな生き方をしているのか、という方が僕にとっては大事なことだと考えていて。もちろんトレンドやムーブメントはチェックしているんですけど。

松岡:ファッションシーンの情報として、自身の中で処理されているんですね。

山中:そういう風に頭にインプットされたブランドでも、きっかけがないと着ようとは思わないんですよ。でも、自分が求めていれば、何かのきっかけで、そのブランドと密接になることが絶対にあると考えているんです。そういう巡り合わせがあると思うんですよ。自分が着る服や似合う服っていうのは、人との出会いを通じて出会わせてくれるものだと思っているので、そういうことを大事にしていきたいと考えています。

松岡:そんな風に、ちゃんと考えている人って少ないと思いますよ。ファッション業界にも少ないと思う。もっとトレンドを追いかけて、服を選んでいる人が多いなか、自ら表現者として着る服を選ぶっていうのはすごいと思うし、大切な考えだと思います。そんな思考がストリートで新しい何かを生み出していく根源なのかな、と感じますね。好きなものを自分で選択していくという。好きが仕事になるのがストリートですから。カルチャーだし趣味だし、だからこそクリエイティブになれるんでしょうし。

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