MUSIC 2021.12.24

Review: SixTONESが6人で歌いつないで描いた、終わりのない『CITY』

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Text_Chie Kobayashi

初期衝動を詰め込み自己紹介的に作られる1stアルバムと比べ、そのアーティストの振り幅や意外性など、その技量が問われる2ndアルバム。楽曲の幅を広げたり、新たなことに挑戦したりと、多くのアーティストは2ndアルバム作りに頭を悩ませる。そんな2ndアルバムとして、SixTONESは形態ごとに曲順が違うという、コンセプトに沿った作品を放った。本稿では、彼らが2ndアルバム『CITY』で見せたグループとしての表現力の高さに着目したい。

『CITY』の収録曲が発表された際、収録楽曲のタイトルと同時に、楽曲ごとにイメージする“時間帯”が存在しており、初回盤Aは朝、初回盤Bは夕方、通常盤は夜をイメージした楽曲でスタートする形で構成されること、そのために形態ごとに曲順のスタート位置が異なることがあわせて明らかになった。

特設サイトには「歌(主人公)の数だけ物語があり、それが交差する場所を“街(CITY)”と呼ぶ」と、そのコンセプトが明記されている。

常田大希(King Gnu/millennium parade)が楽曲提供をしたことでも話題になった『マスカラ』のミュージックビデオでは「それは“SixTONES”という、一人の男のお話」をテーマに、SixTONESのメンバー6人が、主人公となる“一人の男”を演じた。また『マスカラ』のリリースに際し、「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」ではメンバーによる「SixTONES 土曜ラジオ劇場『マスカラ』」たるものが展開されていた。これは同曲の歌詞にある「凡庸なラブストーリー」から着想を得たもので、メンバーがリレー形式で毎週1話ずつ計6話の脚本を執筆し、番組内で朗読していくというもの。「オールナイトニッポン」ではふざけた姿を見せてきた6人だったが、このコーナーでは笑いを封印。6人は真剣に“凡庸なラブストーリー”を書き上げた。この企画の最大の難点は6人で起承転結を作り上げていくという点だと思うが、彼らは各々のバランス感覚と作家性、これまで培ってきたチームワークを見事に発揮。「まだ玄関なの!?」というメンバー間でのツッコミもありつつ、途中で視点が変わったり、終盤からラストにかけて突如物語が大きく動いたりと、期待と切なさが渦巻き、感動を巻き起こす物語を書き上げた。

「マスカラ」という楽曲を歌い、踊り、演じ、さらにさまざまな角度から解釈してきた彼らは、その過程で、6人で物語を紡ぐということ、楽曲を通して自身とは別の主人公を演じるということを、改めて習得した。そんな彼らの2ndアルバム『CITY』では、まさに“6人で物語を紡いでいく”姿を見ることができる。

インタールード「Night」で始まる“夜”のパートは「マスカラ」で幕を開ける。「マスカラ」では、冒頭でジェシーと松村北斗の2人で歌いつなぐパートを、末尾では6人が1フレーズずつマイクリレーでつなぐ。まさに“6人で物語を紡いでいく”形だ。続く映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』日本語吹替版の主題歌である「Rosy」はピアノの旋律が印象的な疾走感溢れるロックチューン。その世界観に誘うように6人が次々とボーカルを畳み掛けていく。

インタールード「Midnight」を挟むと、ファンキーな「Odds」やワイルドなEDMチューン「WHIP THAT」など“真夜中”にぴったりなナンバーが続く。ここでは出会いから永遠を誓うまでの男女の恋愛が歌われるが、例えば「Odds」ではラップをフレーズごとに歌い分けるなど、やはり6人はボーカルで歌いつなぎながら、真夜中の街を色気と共に描き出す。タイトルがすでに時間を示している「8am」で始まる“Sunrrise”ではさわやかな楽曲が続く。「Ordinary Hero」では<憧れてたheroならどうする>と問いかけつつも<work so hard day and night 十分カッコいいじゃない>と背中を押し、次曲「Your Best Day」では<誰かの憧れと比べて止まるなら お決まりのルーティーンたまには変えてみないかい?>と誘うなど、夜の街に消えていった男女から一転、主人公はリスナーへエールを送るヒーロー的存在となる。夕暮れ“Sunset”の始まりを告げる「Fast Lane」は80’sを思わせるイントロのフレーズや余白を感じさせる音像からなる、世界のトレンドを押さえた楽曲に。このサウンドに乗せて<道を切り開く><目指していく先はinfinity>と歌うのは、ジャニーズJr.時代から「ジャニーズをデジタルに放つ新世代」として、世界を視野に活動してきた彼らそのもの。この曲の主人公は自然と、颯爽とかつ力強く宣言する6人の姿に重なる。そして世界に向けて宣戦布告したあとには<テキトーに><先なんてワカラナイ>と肩の力の抜けたハッピーな「Good Times」が続き、そして時計の針はまた、夜へと戻っていく。

この12曲の中で、彼らは失恋に枕を濡らす者になり、あるときは恋の駆け引きを楽しむ者になり、またあるときは大切な人たちへ「誰もが誰かのヒーローだ」と告げる者に、世界を目指す者に、仲間との時間を心置きなく楽しむ者になる。12曲でどんな物語でも描けるのは、歌謡曲もピアノロックもEDMもスタジアムロックも歌いこなす彼らの表現力の高さと、それぞれの音楽に対する造詣の深さがあってこそ。そして、“6人で一人の主人公を演じる”ことが、自在にできるようになっているからこそだ。

また表現力はもとより、パフォーマンスのスキルが伸びていることも忘れてはならない。特に全般的に印象的だったのが、ボーカルの多彩さ。これまでは6人があわさることによりそのスキルの幅広さを持ちえていたような印象だったが、今作では6人ともが、ソウルフルな歌声を聞かせ、軽妙なラップを聴かせ、息を調節した高音を担うようになっている。これも“6人で1人の主人公”を演じるうえで会得してきたスキルなのだろう。また「Rosy」ではダンスクルー・GANMIによるしなやかで色気のある振り付けを、高速なナンバーにあわせてパフォーマンス。GANMIはBTS「Butter」の振付なども手がけるクルーで、当然そのコレオは世界照準。同曲がお披露目された「2021 FNS歌謡祭」では、そのクールな出で立ちと軽やかなパフォーマンスで喝采を浴びた。

実際にSixTONESの6人も、まさにこの1年は朝から夜まで活躍していた。朝は松村がNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』に、昼は高地優吾がバラエティ番組「スクール革命!」にレギュラー出演しているほか、ジェシーは舞台『スタンディングオベーション』、京本大我はミュージカル『ニュージーズ』、田中樹は舞台『DREAM BOYS』に出演。スクリーンでは松村が劇場版 「きのう何食べた?」、森本慎太郎が映画『燃えよ剣』に出演した。ゴールデンタイムにはバラエティ番組や音楽番組に引っ張りだこ、そして深夜には「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」。まさにどの時間帯をも彩ることができるのがSixTONESの6人であり、だからこそ、この『CITY』のコンセプトを自分たちのものにできたのだろう。“楽曲の数だけ物語の主人公を演じられる”ということが、彼らの実像であり本質なのだ。

街が変わり続けるように、どこから聴き始めることもできるこの『CITY』は、終わりがなく、いつまでも聴き続けることができる。……この構成、「マスカラ」の<終わりがあるのなら始まらなきゃ良かったなんて>の歌詞と一致するようにも思うのは、考えすぎか。同時に、トリーミングサービスが普及した現代において、いまだCDという形でのリリースを貫く彼らの、1つのアティテュードにも思える。

INFORMATION

SixTONES 『CITY』

2022年1月5日リリース

https://www.sixtones.jp/city/
https://www.sixtones.jp/

通常盤

初回盤A

初回盤B

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