Interview:Homecomings
黙認する隔たりと向き合う
「Shadow Boxer」で表現したルーツと新たな色

Photography_Hiroki Asano
Text&Edit_Maho Takahashi
Hair&Make_Natsuho Makino

Interview:Homecomings
黙認する隔たりと向き合う
「Shadow Boxer」で表現したルーツと新たな色

Photography_Hiroki Asano
Text&Edit_Maho Takahashi
Hair&Make_Natsuho Makino

Homecomingsがニューデジタルシングル「Shadow Boxer」をリリースした。あとがきにもある通り、“見えないものとされている差別”と闘うことを歌った本作は、手を差し伸べる優しさだけでなく、怒りを内包した一曲だ。立て続く書き下ろしを経て、改めて今バンドが鳴らしたい音。どこか新しいサウンドでありながら、それぞれのルーツを感じさせるHomecomingsらしさが色濃く映し出されている。同じ方向を向く4人だからできる表現について。来年10周年という節目を迎えるバンドが繋ぐ想いを訊いてみた。

「抗議的になりすぎない伝え方」(福富)

ーメジャーデビューから約1年4ヶ月が経ちますが、改めて今のモードはいかがですか。

畳野:今の体制になって、書き下ろしの曲の仕事もたくさんいただくようになり、充実しています。通年よりライブの本数は少ないですが、運良くツアーも中止にならず巡れて良かったです。

福富:メジャーデビューアルバム『Moving Days』のリリースから立て続けに、タイアップの曲を書く機会をいただき、3ヶ月に一度のペースでレコーディングをしている感じで。まだ思うようにライブをできない状況ではありますが、制作を続けられていることが嬉しいですね。

ーそんな中でリリースされた今作「ShadowBoxer」は、久しぶりのオリジナル曲になります。今回は、フェミニズムをテーマにしているそうですね。

福富:日本語で歌詞を書くようになってから、社会的なことを歌いたいと思うようになって。「Cakes」では、僕や私などの一人称を使わず、ジェンダーレスに捉えられるラブソングを作ったり、日常で考えている問題を題材として挑戦していく中で、フェミニズムを歌にしたいと考えていました。「i care」も、フェミニズムを歌っていたのですが、今作は感情の出し方が変わっています。

ー具体的には、どういう感情なのでしょうか。

福富:「i care」は一人ひとりが手を取り合うような優しさをテーマに書き下ろしましたが、今回は怒りという感情を込めています。今まで表現してこなかった部分でもあるので、Homecomingsとしての楽曲のバランスも考えながら、抗議的になりすぎない伝え方を意識しました。その辺は曲調に引っ張られる部分もありましたね。

ー今回はメロディが先にできていたそうですが、事前にイメージは共有されていましたか。

畳野:最近は社会的なことを歌う流れがあったのでそこも考慮しつつ、純粋に今やりたいと思う曲を作りました。年始のツアーを経て、次にライブをやるならどういう曲が良いか、自分たちのテンションや方向性が定まっている感覚もあったので。その流れで、がっつりギターサウンドをメインに制作していきました。

ーサウンドを作る上で、何か挑戦した部分はありますか。

畳野:ギターのチューニングをオープンDという特殊なチューニングを使いました。今までスタンダードなチューニングから変えたことがなかったので、全体的な印象も変わったと思います。

ーリリース後のリアクションはどうでした?

福富:タイアップの流れで知ってくれた人も増えたので、新鮮に感じてくれている人もいれば、昔から聞いてくれている人からは、久しぶりにこういう曲を聞けて嬉しいという声もいただいて、僕自身も嬉しいです。一見、今までとは違うことをやった曲ではあるのですが、それぞれのルーツ的な部分を出せた作品でもあるので。制作自体は遠隔でやったんですけど、お互いが今どういう感じが好きかを理解しながら作れたと思います。

ー具体的にどんなものがルーツになっていますか。

福富:スネイル・メイルやフィービー・ブリジャーズなど、バンドが好きなUSインディのアーティストを土台にしつつ、今自分たちの中で再熱している、エモラップから派生したエモリバイバルの流れや、ポップパンクのリバイバルはリファレンスとしてあって。そのままをやると言うよりは、そういうルーツを念頭に置くイメージでした。

ー今回ルーツ的な部分に回帰しようと思ったきっかけは?

福富:やっぱりツアーで、フィジカルならではの温度を感じたことですかね。コロナ渦になってから、ライブハウスを巡るというよりは、半年に一度のペースで単独をやるよう感じだったので。久しぶりに味わったライブ感が、僕たちのルーツ的な部分と合致したのかもしれません。

ーなるほど。改めて、書き下ろしとはどんな点が違うと感じましたか。

畳野:映画やドラマなど、作品の余韻が続くことを想像しながら作るのも楽しいので、書き下ろしもすごく好きですが、今回は自然と出てきた音や、今やりたいサウンド感を自由に落とし込みました。自分たちのルーツ的な部分にも回帰しつつ、いい曲ができたと思っています。

福富:書き下ろしが続いた後だったこともあり、今の自分たちのモードがより濃厚に出せた気がします。書き下ろすときは、自分たちのやりたいことを全面に出すというよりは、作品とちゃんと結びついたものを描いていくので。

「感覚的な部分が“らしさ”に繋がる」(畳野)

ー書き下ろしでは、作品に寄り添う中にもHomecomingsらしさがあると思うのですが、どんなことを意識していますか。

福富:“Homecomingsとして”何ができるかという意識ですね。「アルペジオ」(ドラマ『失恋めし』主題歌)ならバンドのルーツでもあるギターポップにしたり、「i care」(ドラマ『ソロ活女子のススメ2』EDソング)ではY2Kっぽいサウンド感にしていたり。書き下ろしだからといって無茶をしすぎないで、自分たちの中で一番良い答えを出すようにしています。

畳野:4人とも感覚でやっている部分もあるので、その時々の空気感や会話など、些細なことをヒントにしていて。タイアップにしても、自分たちなりの新しいことを模索しますが、根底の感覚は変わらないというか。見ているものや考えていることは更新されているけど、自然と共有されているので。言葉ではっきり伝えなくても、4人が同じ方向を向いているという、感覚的な部分が“らしさ”に繋がっているのかなと思います。

福富:普段からよくしゃべる4人なので、それが結果的にバンドとしても良いんだと思います。そのとき見ているドラマや好きな音楽を日常的に話すので、逆に改まった会議はしていないですね。

畳野:その方が自分たちにとっても良いし、それを楽しいと思える4人組なので。

福富:あと、昨年からやっているラジオ番組「RUSHMORE SUNDAY」もかなり共有の場になっていますね。

畳野:2名ずつパーソナリティを回しているので、ペアになった相手の好きそうな曲とかを無意識的に選んでいると思います。

福富:本当にそうだね。リスナーへの紹介は前提ですが、ペアになる相手に聞かせたい曲をなんとなく選んでいるかも。

畳野:わざわざおすすめの曲を聞かせ合うことも少ないので、いい機会になっています。

ー素敵ですね。テーマの共有という意味では、毎回ライナーノーツなどが出るので、リスナー的にも楽曲を深く理解できる気がします。

福富:インタビューやあとがきと合わせて、楽曲の意図が分かるように意識していて。あくまでポップスという枠なので、あえて歌詞の中では解釈を限定させずに、YouTubeの概要欄にコメントを載せたり、ライブのMCで話すことで補足しています。その伝え方が正解なのかはまだ分かりませんが、試行錯誤しながら自分たちの想いを伝えていきたいです。

ーInstagramの配信でも話していましたが、今回の歌詞やジャケットにある“花束”は、次作にも繋がるキーワードなんだとか。言える範囲で次の構想などを教えてください。

福富:来年を10周年としようと思っているので、記念のアルバムをリリースする予定です。今まではアルバムごとに色を統一していたんですけど、今回は一枚の中でカラフルさを出したいと考えています。その色鮮やかなイメージが“花束”であり、今回のフェミニズムというテーマは、女性の参政権を求める運動を描いた映画『未来を花束にして』からインスパイアされていたり、二つの意味を込めています。カラフル(=花束)の中には、多様性やサウンドの幅を表現したいですね。なので次に発表する楽曲は、また違う雰囲気になると思います。

ー楽しみです。では、10周年に向けての展望をお願いします。

福富:もっとライブができる状況になったら、海外にも行きたいですね。コロナ前は台湾に毎年行っていたので、現地の友達や待っていてくれるファンの方にも会いに行きたいです。

畳野:本当そうだね。まだ行ったことない場所もたくさんあるので、ツアーでいろんなところを巡りたいです。

福富:あとは展示や映画館でイベントをやったり、音楽以外にもチャンネルがあるバンドなので、今までやってきたことを欲張って全部やる一年にできたら嬉しいです。そのためにも準備をしていきたいと思います。

INFORMATION

Homecomings

「Shadow Boxer」
発売:2022年8月10日(水)
https://lnk.to/shadow_boxer

「House of Hummingbird」
日程:2022年9月6日(火)、7日(水)
会場:東京・新代田FEVER

9月6日(火)出演:Homecomings / SAGOSAID
9月7日(水)出演:Homecomings / Luby Sparks

開場:18:30 / 開演:19:00
前売:5,000円 (D代別)
※チケット整理番号付き
※ライブ当日会場にて学生証提示で¥1,000キャッシュバックあり

チケット一般発売
https://w.pia.jp/t/homecomings-t/
期間:8月6日(土)10:00〜

問い合わせ:
HOT STUFF PROMOTION
03-5720-9999
www.red-hot.ne.jp

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