Interview:Homecomings
New Album『New Neighbors』
ルーツから拡がるカラフルな音たち

Photography_Renzo Masuda
Text&Edit_Maho Takahashi

Interview:Homecomings
New Album『New Neighbors』
ルーツから拡がるカラフルな音たち

Photography_Renzo Masuda
Text&Edit_Maho Takahashi

今年10周年という節目を迎えたHomecomingsがニューアルバム『New Neighbors』を4月19日(水)にリリースした。岸田繁(くるり)をストリングスとピアノアレンジに迎えた「光の庭と魚の夢」やテレビアニメ『君は放課後インソムニア』のEDテーマ「ラプス」など全12曲を収録した本作は、バンドのルーツや各々の根源にある音を落とし込みながら、新しいサウンドが色鮮やかに揃っている。自作のサンプリングや同期の打ち込みなど、制作方法の変化による手応えとは。変わらない4人が遂げたブラッシュアップについてを訊く。

L to R
福富優樹(Gt)、福田穂那美(Ba)、畳野彩加(Vo/Gt)、石田成美(Dr)

変わらずに4人で音楽を続けていきたい

ー今回のアルバムのタイトル『New Neighbors』は、これまでイベント名にもなっていましたが改めて今作に冠した理由は?

福富:今回もアルバムのアートディレクションやイラストを手がけてくれたサヌキナオヤさんとやっている映画のイベント名なんですけど、今作の全体のテーマ的にも、隣人愛というか横の人に優しくする繋がりを掲げていたこともあり、作品と合っているというか。10周年という節目に出すアルバムというのは意識していたし、バンドとしても大切にしていきたイベントの名前をあえて付けしました。

ー前回のインタビュー「Shadow Boxer」(2022年8月)の際に、すでにアルバムに繋がるキーワード“花束”も出ていましたが、制作はいつ頃から取り掛かりましたか。

福富:配信でリリースした4曲と並行して、別の曲の制作やレコーディングを行ったり、1年くらいかけて作っていきましたね。明確なコンセプトはありませんでしたが、「Shadow Boxer」くらいから方向性というか、それぞれのルーツや好きな音楽を持ち寄ってごちゃ混ぜにさせた作品にしたいという想いが出てきたので、花束というワードやカラフルなアルバムにしようとは考えていました。

ー1月に先行リリースした「光の庭と魚の夢」は、ストリングスとピアノのサウンドアレンジで岸田繁さんが参加されていますが、経緯などを教えてください。

福富:最初にデモを作った時に、なるちゃんがストリングスを入れてくれていて、その打ち込み感やパーカッションの雰囲気が良かったので、この空気感を壮大すぎない形で広げたいと思ったときに、真っ先に岸田さんが思い浮かびました。基本はメールでのやりとりだったので、歌詞や曲の温度感を文章をお送りしたら、それに合うものを作ってくださいました。

ー映画監督/写真家の枝優花さんが手がけたMVも、ショートフィルムのような作品で印象的でした。

福富:曲自体は同性婚やパートナーシップなどの権利についてを歌っているので、MVにするなら自分達が信頼している人というか、曲のテーマ的な部分を理解している人にお願いしたいと思っていて。もともと二つ前のアルバムのアーティスト写真を撮影していただいたときに、いつか映像も撮っていただきたいと思っていたこともあり、この曲を作っている段階から枝さんがいいなと考えていました。

ー映像では、今おっしゃったパートナーシップの権利とは別角度で、10代ならではの感情の機微が描かれていますよね。

福富:枝さんに曲のテーマ的な部分を説明した際に、MVの世界ではあえて違う解釈というか、新しい視点から撮りたいとおっしゃってくれて。それが僕ら的にも嬉しかったし、ある意味コラボで作る感覚というか。歌詞の世界をそのまま映像にするのではなく、曲を聴いた枝さんが新しい解釈を生み出してくれました。

畳野:曲を聴いた枝さんのアンサーみたいものが映像として返ってきた感覚というか。今まであまりこういうやり方はなかったので、自分達としても新鮮でした。作品に対する枝さんの解釈が彼女の映像作品の雰囲気にも、曲のテンションにもピッタリだと思いましたし、枝さんでしか出来なかったと思います。

ー素敵ですね。今作はそれぞれのルーツを落とし込んだとのことですが、具体的にどのように反映しましたか。それを色濃く出せた/気に入っている曲と合わせて教えてください。

福富:バンドとしては、ギターポップから始まったところがあるので、これまでの10年間は僕らが聴いてきた洋楽的な要素を出していたんですけど、個人としては音楽を聴き始めた頃に聴いていた日本のロックシーンやポップパンクが根元にあるので、全体的にそれは結構意識しました。なのでそういう意味で「US / アス」が一番気に入っていますね。僕らがバンド組んだときにやりたいと思った洋楽やインディポップと、結成当時によく出演していたDJイベントで流れていたクラブミュージックを混ぜたような曲を漠然とイメージして作りました。そこにポップ・パンクやギターロックのテイストなど各々のルーツとかを加えていったので、アルバムの中でも一番自分達のルーツや好きな音楽を凝縮できました。Homecomingsとしてのルーツにも一番近い気がしています。

ー途中で入る英語のフレーズがタイトルの意味と一致していると思いました。

福富:最初に英語の詩がメモ書き的にできていて、それを曲に広げていったんです。

畳野:ダンスミュージックっぽい感じにしようという方向性は決まっていたので、昔よく聴いていた洋楽を参考にしたり、懐かしさを感じるダンスミュージックを聴き直して、Homecomingsだったらどうアレンジするかを考えました。それを踏まえた上で、どうしたら私たちなりの新しさの中に懐かしさを混ぜれるかを模索しました。個人的なルーツでいうと、ジェームス・イハ(スマッシング・パンプキンズ)がすごい好きで、アコギの雰囲気とかに影響を受けています。これまでの曲にも入れてきましたが、「ラプス」は特にそれが上手く反映できたと思います。あと大学生のときに好きだった80’s感も落とし込めたので、気に入っています。

ー「ラプス」は4月から放送されるテレビアニメ『君は放課後インソムニア』のEDテーマというとで、原作マンガを読んで書き下ろしたそうですね。

福富:原作が石川県を舞台とした漫画なんですけど、僕と畳野さんが石川県出身なので、情景的な部分は意識しましたね。石川ってすごい曇りが多いんですけど夜は晴れることが多くて、星が綺麗に見えたときの情景や空気感を言葉で表したいと思って書きました。

畳野:アニメ『君は放課後インソムニア』のイメージも入れつつ、自分が想像する夜の情景や季節感を上手く落とし込めたと思います。

石田:私は、これまでドラム的に出来なかったアプローチを「Shadow Boxer」や「ユーフォリア」で出来た手応えがあるので気に入っていて。ルーツ的な意味でも、バンドを始めた当初に好きだったガシャっとしたドラムの感じを出せた二曲でもあると思います。あと以前からやりたいと思ってなかなか出来ていなかったオルタナっぽいドラミングをできたのでよかったです。

ー今作でいうと、石田さんは「まばたき」を作曲されていますが、この曲はどんなイメージですか。

石田:バンドを組み始めた高校生のころに聴いていた日本の音楽や、当時のグッとくる感じを出すイメージで作曲しました。なのでそういうエモさみたいな部分は、編曲を含めて出せたんじゃないかなと思います。

福田:私は今回「Drowse」と「Elephant」を作曲しましたが、ルーツ的なことを考えると「Drowse」なのかなって思います。「Drowse」は、少ない音の中にピコピコした機械っぽい音を入れているんですけど、私がエリオット・スミスとか少し静かで暗めの感じが好きなのと、もう少しポップに寄ったマグネットに影響を受けている部分があるかもしれません。元々はインスト曲で、2020年にリリースしたボックスセット『STAIRS』のときに作ったものだったんですけど、今回のアルバムにメロディやリズムがない作品も入れようってなって、なるちゃんにトラップやリズムを入れてもらいました。福富さんから教えてもらった曲をリファレンスにしつつ、そこから膨らませて新しく音を足したり、音色とかもいろいろ考えて試行錯誤しながら作りました。

ーこれまでも過去の作品をサンプリングしたことはありましたか。

福田:「i care」は自分が前に作った短いデモを元に、畳野さんがサビとかを加えて作ってくれました。それが新鮮だったというか、一緒に作っている感じも楽しくていいなと思いました。

福富:既存のデモのデータを使って打ち込みをしたり、自分達の作品からサンプリングのような手法がしやすくなった気がします。以前からそういうアイデア自体はありましたが、ちゃんと形にして提示することで、口だけでは伝わらない部分も明確になったので、今作は制作の手法での変化は結構大きかったかもしれません。

ー具体的にはどんな変化を感じますか。

福富:昔はみんなでスタジオセッションしてから彩加さんがデモを作って、それを元にまたスタジオで作ることをしてたんですが、コロナ禍を経てそれぞれがある程度デモを作ってきたり、自宅用の機材も揃えたので宅録っぽい動きができるようになって。プラグインも結構使えるようになったので、今回からはそれを活かせるようになったと思います。理想のものに近づけていく作業というか、頭にあった音像を綺麗に再現できた感じはしています。もちろんスタジオで録る良さもあるんですけど、そういう調整が家でもできるようになったのも含めて、音的な手応えを一番感じています。なのでそれをライブでも再現する難しさはこれから感じるかもですね。

畳野:どこまで突き詰めるか、難しい作業でもありますが、楽しい作業でもあると思っています。

福富:それこそ今回のツアーは前半と後半で期間が1ヶ月ほど期間が空くので、アレンジを含めていろいろ調整しながら、同じツアーでも全然違うもの仕上がっていくかもしれないので、楽しみですね。

ーでは、最後にツアーへの意気込みをお願いします。

福富:世の中の状況的にも制限が緩和してきて、3年ぶりくらいに声出しも解禁されるかもしれないので、久しぶりにライブっぽい感覚を味わえると思うと純粋にかなりワクワクしています。アルバムのサウンド的にも解放的なニュアンスがあるので、お客さんにもたくさん踊ってもらって、ドライブ感のあるライブにしたいですね。

石田:フィジカル重視というか、グッと熱量があるライブになると思っていますし、それを出せるように今仕上げているところです。私たちの熱を受けとったお客さんの反応をみて、さらに私たちが熱量を高めるパフォーマンスをして、今まで以上にライブ感を楽しんでほしいですね。私たちも楽しみます。

福田:今までより同期演奏が組み込まれたり、4人以外の音が重なる曲もあるので、私たちもどういう感じにライブできるか良い意味でドキドキしています。あと、懐かしい曲もやる予定なので、今のHomecomingsがどう演奏できるかも楽しみにしてほしいです。

畳野:アルバムを提げたツアーはかなり久しぶりですし、新しい曲と昔の曲が混ざってどう変化していくのか、自分にとって新しい発見もある気がするので楽しみです。また、今年は10周年という一つの区切りでもありますが、だからといって何か大きな変化を求めるわけでなく、これからも変わらずに4人で音楽を続けていけたら良いですね。ツアーを含めて、みんなと一緒に盛り上がれる年にしたいと思っています。

・畳野彩加
ニットトップス ¥35,200
(オールド フォーク ハウス tel_03_5774_1408)
パンツ ¥46,200
(ヨーク/エンケル tel_03_6812_9897)
サンダル ¥46,200
(ビューティフル・シューズ/ギャラリー・オブ・オーセンティック tel_03_5808_7515)
その他スタイリスト私物
・福富優樹
トップス ¥55,000,パンツ ¥36,300
(ジョン スメドレー/リーミルズ エージェンシー tel_03_5784_1238)
ブーツ ¥25,300(クラークス オリジナルズ/クラークスジャパン tel_03_5411_3055)
その他スタイリスト私物
・福田穂那美
ニット ¥41,800,スカート ¥48,400
(08サーカス/08ブック tel_03_5329_0801)
ピアス 各¥9,350(ミラ/スタジオ ファブワーク tel_03_6438_9575)
その他スタイリスト私物
・石田成美
ジャケット¥69,300,中に着たトップス¥10,450,スカート¥37,400
(ブラームス/ワンダリズムtel_03_6805_3086)
リング¥19,800(ミラ/スタジオ ファブワーク tel_03_6438_9575)
その他スタイリスト私物

Homecomings 『New Neighbors』

配信:https://lnk.to/New_Neighbors

収録曲
01. ラプス
02. US / アス
03. ヘルツ
04. 光の庭と魚の夢
05. アルペジオ
06. i care
07. Shadow Boxer
08. Drowse
09. ribbons
10. まばたき
11. euphoria / ユーフォリア
12. Elephant

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