MUSIC 2022.10.05

Amazon Original HEAT Vol.00 -連載HEATという音楽現象を追う 番外編- : Interview_Koji Yahagi(Amazon Music Content Production Director)

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

雑誌EYESCREAM No.183のバックカバーで特集した『Amazon Original HEAT』。各シーンで活躍する20人のキュレーターが、20組のアーティストをピックアップし、新たな楽曲とMVがAmazon Musicで公開されていく。概要はこれまでにも紹介してきた通りだ。

新たな音楽との出会いを生むキッカケとなるプロジェクトAmazon Original HEATが始動!

この特異な音楽的体験を提供するプロジェクトを紹介する連載をスタート。各キュレーター×各アーティストの対談をお届けしていく。その連載スタートするにあたって、まずは『Amazon Original HEAT』の仕掛け人を代表して、Amazon Music Content Production DirectorのKoji Yahagiに本企画に込められた思いや意図を聞く。

共に日本の音楽カルチャーを盛り上げていきたいという願い

 

ーKojiさんは『Amazon Original HEAT(以下、HEAT)』にどのように関わっていますか?

Koji Yahagi(以下、Koji):Amazon Music内での担当はContent Production Directorになります。オリジナルコンテンツを企画し制作の指揮を行う立場ですね。今回の企画は、僕が信頼している制作チームと共に構想を考えてスタートさせたプロジェクトになります。
 

ーでは、HEATは、どのようなプロジェクトですか?

Koji:Amazon Musicが、次世代を担うアップカミングなアーティストのパートナーとなり、彼らと共に成長していくために立ち上げたプロジェクトです。もともと、日本の音楽シーンを根底から盛り上げたいという思いが制作チーム全員にあったことが出発点になっています。僕たちの考えに賛同してくれた20組のキュレーターが各々アーティストを選出するという、これまでになかった企画だと考えています。
 

ーそもそもHEATを始めようと思った理由はなんですか?

Koji:1年以上前の話になりますが、一緒にプロジェクトの制作を進めている仲間とBeatcafe(渋谷のバー)で「音楽は作れられた商品ではなくカルチャーなんだ」と話し合ったことがあるんです。日本の音楽業界を見渡すと、ビジネスが優先されて真の意味でカッコいいアーティストが実力だけで活動できないような現状が少なからずあると僕たちは感じていたんですね。音楽というカルチャーの魅力やカッコよさを未来へ良い形で繋いでいくためには、アーティスト、リスナー、音楽シーン全体を盛り上げたいと願っています。それに、自分が若い頃にあった、当たり前の文化的経験を若い世代に提供していきたい。HEATは、そういう機会を提供する場にしたいと思って始めました。では、Amazon Musicとして何ができるのか? を考えたときに、あらゆる分野で活躍する20人のキュレーターとコラボすることを思いついたんです。
 

ーあえてAmazon Musicからの直接オファーではなく、キュレーター陣からのピックアップするという形式を取った理由を教えてください。

Koji:我々の独断と偏見でアーティストを選定すると、どうしても自分たちの趣味に偏ってしまったり、仲の良いアーティストに声がけするような危惧がありました。それに、僕たちもシーン全体の細部に至るまでの情報を持っているわけではないので、キュレーターたちの存在が必要だったんです。それに、プロジェクトを広めていくことを考えると僕たちの力だけでは足りない部分があります。そういった懸念点に対応するという意味でも、ご協力いただくキュレーターの存在が必要だったんです。
 

グラスルーツ的なアーティストの発掘を行いたい

 

ーキュレーターに対しては、メジャーではなくインディーズで活動しているアーティストをピックアップするという条件がありましたが、これはなぜですか?

Koji:日本で活動しているカッコいいアーティストをグラスルーツ(草の根)的に発掘し、そこから共にアップストリームでカルチャーを作っていきたいという姿勢をHEATに込めているからですね。インディーズと言っても様々ですが、今回のラインナップを見ると、音楽フェスなどへの出演経験があまりないアップカミングなアーティストも大勢います。HEATが、新たな音楽の登竜門的な存在になって、長く継続できるシリーズになっていけたら最高だと考えていますね。現段階では何とも言えないのですが、やっぱり1回だけでは終われないなと思うので。
 

ーキュレーターが選出したアーティストのラインナップを見て、どう思いましたか?

Koji:今回、キュレーターは5組とか、多い人は20組とオプションとして出してくれたんですけど、本当に驚きましたね。多種多様な若い才能がこんなにいるんだって思いました。どれを聴いても音楽を愛しているゆえに作られている音だというのがヒシヒシと伝わってきました。実は最初は不安なところがあったんですよ。草の根的と言っても、そんなに多く才能あるアップカミングのアーティストがいるのだろうか? って。でも、キュレーターの皆さんは色んな音楽を知っていらっしゃるから、これだけジャンルレスで魅力的なラインナップになったんだと思いますし、僕自身これならいけるって実感がありました。現時点で、HEATは絶対に面白い展開になると思っています。
 

当たり前の文化的体験を若い世代に提供したい

 

ーこのプロジェクトでは、レコーディング費用とMV制作費をAmazon Musicが負担しつつ、原盤権などの権利をアーティスト側に託すという形式で行われます。普通に考えるとAmazon Music側が持っても良い内容だと思うのですが、アーティストを完全サポートする形式にはした理由は何ですか?

 
Koji:グローバルで行なっているAmazon Originalというアーティストとオリジナル楽曲を制作する施策があって、アーティストたちの音楽制作のプロセスにAmazon Musicが良い関係性で関わっていたいという思いがあります。そうすることで、シーン全体の信頼を得られるのではないかと考えているんですね。リスナーにはAmazon Musicをダウンロードしていただいて、これから来春にかけてリリースされる20曲のHEATの音楽もそうですが、既に存在するAmazon Musicのオリジナル楽曲を聴いていただけたらと思います。
 

ー聞けば聞くほど採算度外視というか。冒頭にあった「音楽は商品ではなく」という理念が先頭に立っているんですね。

Koji:そうですね。大事なのは中長期的に考えたときに、いかにカルチャーの信頼を得られているかどうかという点だと思うんです。カルチャーというものは複雑に編み込まれた生地のようなもので、そこにAmazon Musicという糸を色んな方向から通していくことで、カルチャー全体が分厚く鮮やかになっていくし、Amazon Musicもその一部になっていくと思うんですね。それを実現するのは時間がかかることだと思いますけど、長期的に考えると日本のミュージックシーンにとってもビジネス的にも重要な意味があるものだと信じています。
 

ーそういった考えの裏付けとして、Kojiさん自身の音楽に対する原体験というものが大きく影響していると思います。そこについて教えていただけますか?

Koji:1991年にLAへ引っ越したんですが、当時はMTV全盛期でもありました。で、兄がガンズ(GUNS N’ ROSES)を家でも通学の車中でも好んでかけてたんですけど、僕は当時出てきたNIRVANAとか、そっちの方がリアルなんだって対抗意識を持っていたんですよ。でも、僕はまだCDを買うお金もありませんし兄がかける音楽を受け入れるしかなくて。だからこそ「Smells Like Teen Spirit」がMTVで流れる度に兄の前でヘッドバンギングしてソファを飛び跳ねたりして(笑)。そういう自分らしさのアピールだったんですよね。そんな力が音楽にはあると、子供の頃から実感してきたんです。それが今にどこまで繋がっているのかはわからないですけど、単純に楽しむものというだけではなく、社会の一部であり、カルチャーであって、それを使って自分を表現できるというのを教わったのは音楽からでしたね。それと最初にお話した“当たり前にあった文化的体験”という点では、当時のMTVもそうですし数多くあった音楽雑誌とかレコード屋さん、ライブハウスから代え難い経験を僕が若い時にたくさんもらいました。今Amazon Musicでカルチャーを作れる立場にいられるのはその時の経験があってこそですし、アップカミングなアーティストと一緒に育ってシーンを作っていくことで、これからHEATを体験する若い世代が10年後に振り返って、「じゃあオレたちも若い世代のために面白いことをやってやろうよ」って思考に繋がっていったらいいと思いますね。繰り返しになりますけど、明確な結果をすぐに求めているわけではないんですよ。
 

ーリスナーはHEATをどのように楽しんでほしいと思いますか?

Koji:HEATでは、この秋から来年の3月頃まで新しい楽曲とMVがリリースされていきます。その都度プレイリストも更新されるので、まずはAmazon Musicをダウンロードして楽しんでほしいと思います。ただ、やはりHEATの意図としては、音楽シーン自体を盛り上げたいという願いがあります。だから、参加アーティストのライブやキュレーターの活動を調べて、それが体験できる場に足を運んでほしいと思いますね。僕たちも、リリースだけではなく、何かもっと大きなサプライズを仕込んで、アーティストもファンも楽しめるようなHEATの先にある企画を作ろうと企んでいますので、そちらも楽しみにしていてください。

下記、HEATにラインナップしているアーティストのプレイリストが公開!

CURATORS ー ARTISTS

EYESCREAMONENESS
GUCCIMAZEMiku The Dude
平田春果Sapphire Slows
HyoriAOTO
IMALUSHOW-GO
JIN KAWAGUCHINina Utashiro
JUN INAGAWAFrog 3
Katomanego apartment
吉岡賢人VMO a.k.a Violent Magic Orchestra
森田康平Gliiico
LEO鋭児
MAKOTO(SAND, afterbase®)WRONG STATE
MEGUMIJUMADIBA
奥冨直人Kabanagu
oka(jellyfish)mekakushe
山田岳彦BOARD
大野俊也(FLJ)JIJI
Vick(tokyovitamin)KONA ROSE
窪塚洋介Ken Francis
YOSHIROTTENYATT

※表記はABC順

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