MUSIC 2022.10.14

Amazon Original HEAT Vol.01 連載HEATという音楽現象を追う:Katoman×ego apartment

EYESCREAM編集部
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Photograph_Hidetoshi Narita, Edit&Text_Ryo Tajima[DMRT]

『Amazon Original HEAT』(以下、HEAT)。各シーンで活躍する20人のキュレーターが、20組のアーティストをピックアップし、新たな楽曲とMVがAmazon Musicで公開されていくプロジェクトだ。
本連載では、キュレーターと選出されたアーティストとの対談を行い、HEATがどのような内容なのか、まだキュレーターがどのような思いでアーティストを選び、アーティストはそれにどう応じるのかをお届けする。第1回目は10月12日リリースとなるego apartment。キュレーターはKatomanだ。両者ともHEATスタート時は面識がなく、この対談取材前日にKatomanが運営するBeatcafeでお酒を酌み交わしたばかりだったそう。そんな前夜の楽しい時間を引きずってのトークセッションをどうぞ。

Curator_Katoman

Artist_ego apartment(L to R_Zen, Dyna, Peggy Doll)

自分たちの経験から得たインスピレーションを新たな音楽へ

Katoman:この話をもらったとき、多分1番多くのアーティストをピックしたんですよ。20アーティストくらいAmazonのチームに提案したんです。ego(ego apartment)に関しては面識もなかったんですけど、音を聴いてこれはいいなと思ったんですよね。今活動している国内アーティストとはちょっと一線を画す感じがあって選出したんです。

ーego apartmentの音の、どんな部分が刺さったんですか?

Katoman:パッと聴いた時に、プロダクションに作られた音ではないなと感じたんですよ。音楽オタクなんで、ちょっと違う角度から聴いちゃっている部分もあるんですけど(笑)。egoがリリースしている作品は全部聴いて、色々と“出来ている”なって。ほどよく70年代から2000年代の音楽をわかっている感じがしたんですよね。選んだときには、こうやって会って話すことになるとは思ってなかったけどね。

Dyna:全部ほめ言葉で。本当にありがとうございます!

Katoman:いや、そんなにほめてないから。

一同:笑。

Katoman:あんまり固定概念的にegoの音楽を説明するようなことは避けたいんだけど、すごく良く出来ているなっていうのは本当にある。ちゃんと過去の音楽を聴いて、自分たちなりに解釈して表現しているんだと感じる部分があるね。

Dyna:僕らは、今まで自分たちが得てきたインスピレーションを経て新しいジャンルを作ろうってコンセプトでやってきたので、そう言っていただけるのはめっちゃ嬉しいです。

ーego aparment自体のことも教えていただきたいのですが、結成はいつ頃で今、何歳ですか?

Dyna:2020年の末頃に結成しました。メンバー全員1998年生まれの24歳で同い年ですね。僕らはバンドを結成しよう! って目的で3人集まったわけじゃないんです。自分が18歳頃からトラックを作っていて、3、4年前にZenと出会い、その1年後にPeggy Dollに出会って、僕の家に3人で集まって、打ち込みで楽曲を作りながら遊んで楽しんでいたんです。ライブをやることすら視野に入れてなかったんですよ。

ーDTMで遊んでたんですね。

Dyna:そうです。で『1998』を2021年にリリースして、いざライブするってなった時に、僕は軽音部でベースやってたからやるわって。そんな感じでパート分けしていったんで、ライブは後付けなんですよね。みんながゲームする感覚で家に集まって音楽を作るのが楽しくて。今も似たような感じですけど。

ego apaqrtmentをピックすることで自分のアティチュードを示せた

ーそのようにして配信リリースを重ねて。2022年6月には1stアルバム『EGO APARTMENT』が発表されましたよね。この作品についても教えていただけますか? どんな音楽から影響されていると言えますか?

Dyna:これは、アルバムを出そうと思って作ったんじゃなくて、全曲シングル並みにパンチがある曲が詰め込まれた作品にしたかったんですよね。だから、1曲ごとにコンセプトが違っているんです。例えば「Loose」や「huu」などは、ロックから受けた影響が反映されていたり、「TV」にはZenが考えたコンセプトがあったり。メンバーそれぞれのコンセプトをミックスさせて新しいものを生み出すことが目標なので、影響された音楽が具体的にあるような感じではないんです。むしろ意識したらダメだと思っていて。聴いてくれた人に「何々っぽいな」と思われるのも嫌なんです。

Katoman:多分そこだよね、オレが反応した部分は。何か固定のアーティストから影響を受けて、あからさまにそれがわかるようなサウンドで作られた音楽って全然面白くなくて。オレはHIPHOPも好きなんだけど、トラックにおいてはサンプリングソースも重要じゃない。そういう意味で、egoはHIPHOP的感覚で楽曲を作っているように思ったんだよね。このエレメントを、ちょっと変えてこのパートに入れてみようかって感じで曲を作っているんだろうなって。

Dyna:まさにそうです! ルーツがHIPHOPっていうのが大きくて。ラッパーの友達も多いし、ロックとHIPHOPの間で生きてきたので。もちろんソウルやR&Bだとか、色んな音楽が好きなんですけど。

ー実際にKatomanさんがキュレーターとしてHEATに誘われたときは、どんなことを思いましたか?

Dyna:最初に連絡をもらったときは、正直よくわかってなかったですね。何となく、こんなすごいラインナップの企画なんて絶対に面白いだろうし、この中に僕らが入れるなんてありがたいなって。というか、今も理解できているのかどうかって状態です。昨夜、バー(Beatcafe)に行って、こうしてKatomanさんと話をさせてもらいながら、ちょっとずつ実感してきています(笑)。

ーKatomanさんはキュレーターとしてHEATに呼ばれ企画概要を聞いたときに、どういう印象を受けましたか?

Katoman:自分の場合は、HEATの企画構想段階から、どういうものなのかを聞いていたので、アドバイザー的な立ち位置でもあったんですよ。Amazonとしては、ちゃんと現場レベルで音楽を知っている人をキュレーターとして配置したいということで呼ばれたんでしょうけど……。

Dyna:そういう流れがあったんですね。

Katoman:そうそう。それで、自分としては常にユースカルチャーへのこだわりがあるんだけど、10代20代の人たちが作るものを、今みんなが受け取れていないと思っていたんだよね。だから、色んなクリエイターがいる現代でもスルーされてしまうことが多くあって。HEATは、そこを見せることができるきっかけの場所なのかなと。だから、オレがegoをピックしたことに対して、意外に思う人もいるんじゃないかと思う。今まで自分がしてきたことっていうのはレコ屋だったり、海外バンドの招聘やレーベル業だったりしたから。でも、HEATでegoをピックしたことで、すごく自分のアティチュードを示せたかなっていうのはあるね。ただ、実際に会うまでは心配だったかな(笑)。

Dyna:会ってお話しして引かれなかったのが嬉しいです。『こいつ、なんなんだ』って思われても仕方ないような発言をしていて。会話の最中に「今かかっている曲、Shazamしていいですか?」とか言っちゃってましたし。

Katoman:いや全然、逆に好印象。話をしなくても音楽で反応してるっていうだけで、もうオッケーなんだよね。オレが選んだ曲なわけだし。今後、自分のプレイリストの中にegoも入っていくんじゃないかな? って期待感があるよ。

ーユースカルチャーから発信される音楽という意味で、ego apartmentのメンバーが20代というところも、Katomanさん的には大きかったですか?

Katoman:重要ですね。本当に若けりゃ若いほど良くて。荒削りで「こいつ何考えてんのかな?」って方が面白いというか。正解かどうかは置いておいて、egoの3人はこだわりが強いじゃないですか。だから良いなと思って。今後はさておき、現時点でピックアップできて良かった。

ライブを意識した楽曲「REACH!」について

ーでは、HEATでの楽曲についても教えてもらえますか?

Dyna:すでにライブでもやっている「REACH!」という曲をレコーディングしました。


Peggy Doll:Zenがワンフレーズ作って、僕が曲を広げていった感じです。Zen的に、あえてリズムをワンパターンでいきたいという思いがあったので、そこをキープしつつメロディラインを考えていって。僕はどっちかと言うと最近の音楽に影響されることが多く、Zenは過去のソウルやロックから持ってくることも多いんですけど、それらをミックスさせて1つにまとめている曲ですね。

Dyna:ライブのときにトラックを流して演奏するのではなくて、3人で完結できる曲を1度作ってみたいっていうのがコンセプトとしてもあったんですよ。自分らで歌って弾きながらっていう曲が今までなくてライブ感に欠ける部分があったし、ライブのバイブスを重視して、その時々に応じてBPMも変えられたりすることができるように、という課題があったうえで「REACH!」を作っていったんです。

Katoman:ライブ感がある楽曲だよね。聴いてて「これこれ!」っていう感じがしたし、ドラムに2000年代初頭感があったりして。色んなエレメントが入ってて良いなと思ったよ。

Dyna:僕ら3人とも、最近のポップスも聴くので、過去の音楽も踏まえつつ、それらをミクスチャーとして新しい曲を生み出すってことを目標としているので、「REACH!」を経て1つ前進できた感覚があります。

Katoman:それってバンドで1番大事なことだよね。今起きていることを拾って自分たちに取り入れるっていう。好きかどうかではなくて、トレンドも自分のものに変えてよくしちゃえばいいんだよね。今後、egoもどんどん進んでいけばいいと本当に思っているよ。いってもいいんじゃない?

Dyna:いっちゃいたいですね。僕がego apartmentを立ち上げたのも、J-POPシーンでトップテンに入ったり、テレビ番組に出たりとか。ああいう存在になっていくっていうのも目標としてあるんですよ。

Katoman:いいね。egoには色々とすっ飛ばしていっちゃってほしい。国内のシーンで上がっていくことを考えたら、もしかしたら日本語を歌詞に混ぜたりだとか、そういうのもありかもしれないよね。海外を視野に入れて活動していくことを考えても、そういう部分は今後の課題としてあるかもしれない。

もっともHEATっぽいラインナップなんじゃないか

ーちなみにですが、HEATの他ラインナップで気になっているアーティストは?

Dyna:ラインナップに入っている全アーティストを知っているわけではないので知人になっちゃうんですけど、鋭児が入っているのが嬉しかったですね。仲良いし音楽性もバイブスもすごく好きなんです。

Katoman:鋭児、昨日(Beatcafeに)来てたよ。

Dyna:マジすか! メンバー全員会ったことありますか?

Katoman:うん、会ったことあるよ。

Dyna:僕、ベースの寛人(鋭児のBa、菅原寛人)は兄貴って呼んでいて、ベースも教わっているんですよ。響一(鋭児のVo、御厨響一)も年上なのに同い年みたいに話してくれて。年齢じゃなくて音楽で話してくれているアーティストだなって思いました。

Katoman:そこに引っかからない人はあまり付き合わなくても良いんじゃない? 先輩でも後輩でも、自分の心にグッとこない人と無理して一緒にいなくてもいいと思うよ。

Dyna:そうですよね。僕も好きな人は興味あるけど嫌いな人は興味ないっていうスタンスなので。

Katoman:それがいいと思う。いや、話は尽きないよね。今後も、また一緒に飲みに行ったりしましょう。

Dyna:行きましょう! もうずっとKatomanさんのお話を聞いていたいです。またBeatcafeにも行きます。HEATに誘ってもらったのは本当に嬉しいんですけど、この出会いに1番感謝しています。

Katoman:オレも嬉しいよ。本当に良かったです。ぶっちゃけラインナップの中で、これが1番HEATっぽい、こういうプロジェクトなんですってことが、ちゃんとプレゼンできていると思います。

ARCHIVES

Amazon Original HEAT Vol.00 -連載HEATという音楽現象を追う 番外編- : Interview_Koji Yahagi(Amazon Music Content Production Director)

INFORMATION

Amazon Original HEAT

ego apartment「REACH!」10月12日リリース

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