Interview:ざきのすけ。
原点回帰に挑んだニューシングル
「In the Cell」で放つキャッチー

Photography_Ryusei Sabi
Text&Edit_Maho Takahashi

Interview:ざきのすけ。
原点回帰に挑んだニューシングル
「In the Cell」で放つキャッチー

Photography_Ryusei Sabi
Text&Edit_Maho Takahashi

シンガーソングライター/ラッパーのざきのすけ。がドロップした新曲「In the Cell」は、自身のキャッチーさを追求しつつも、バックボーンであるラップスキルが光るグルーヴィーなミドルチューンだ。“共依存の恋愛”をテーマに、これまでの彼の恋愛ソングとは一線を画す、閉鎖的な二人の世界を描きながら、音楽活動における自らの不安を危うい恋愛に重ねたダブルミーニングとなっている。ジャンルレスな音作りを示した前作EP『Identification』を経て、原点に帰り立ったざきのすけ。。内的なアウトプットから相互的なアクションを図る現在のアティチュードとこれからを探る。

「一方通行だったものを、
双方向にしていけたらいい」

ー前回のインタビューから約半年ぶりですね。以前はちょうど上京されたタイミングでしたが、環境には慣れましたか。

環境にもかなり慣れて、音楽へ集中できるモードに入っています。制作をしながら最近ではSNSへ弾き語りのカバーも投稿するようになりました。

ー弾き語りでは幅広いジャンルのカバー曲を投稿されていますが、そもそもやろうと思ったきっかけは何ですか。

今までは制作したものをリリースして完結、というような僕の内側におけるアウトプットに近いイメージで音楽をやっていましたが、前回のEP『Identification』のリアクションをいろんな方からもらっていくうちに、聴いてくださっている方に対してもう少しアクションしていきたいなと思って始めました。歌う曲はリスナーの方のリクエストにも応えつつ、季節感に合った曲など気分で歌いたいものを歌っています。一方通行だったものを、双方向にしていけたらいいですね。

ー加えて路上ライブもやられたりと、積極的にセッションを図っているのがうかがえます。

1人でも多くの人に自分の音楽を聴いてもらいたいと思って、北海道にいる頃から何度かは弾き語りで路上ライブをやったことはあったのですが、ギターを持たずにスピーカーから音を出すスタイルは初めてで、まだ少し緊張します(笑)。けれど路上の方がお客さんの反応が近くでわかるので、最近は慣れてきたのもあり、リラックスして歌えるようになってきました。Twitterの告知を見てわざわざ足を運んでくれる方もいるし、楽しそうにしてくれている様子も伝わるので僕も楽しんでやっていますね。

ーそんな路上での経験も重ねながら、今年はライブハウスへの出演も増えたかと思いますが、ステージでの経験は制作面にも還元されていますか。

そうですね。今まではいろんなジャンルにチャレンジしたり、面白い音を作ることをメインに制作していましたが、ライブを念頭に置いた曲を作ろうという気持ちが強くなってきました。最近だと「CASSIS」がお客さんもノってくれるので、僕の中でのライブチューンになりつつありますが、もっと楽しめる曲を作りたいと思って。

ーそれで言うと、新曲「In the Cell」を初めて聞いたときに、ライブで聞きたい曲だなと思いました。

ありがとうございます!今回はライブでも楽しめるように、ノリやすさを意識しました。リリース後も、ノリやすい曲だという声が届いてきて、想いが通じて嬉しかったです。

ー今回は“共依存の恋愛”がテーマですが、構想自体はあったんですか。

元々トラックだけが出来上がっていたので、それに対して世界観を付け加えていきました。歌を乗せないことを想定したトラックメイキングが個人的にめっちゃ好きで。これまで作っていたインスト曲がいくつかあった中で、リードを乗せたときに歌えそうだと思ったのが今回のトラックだったので、そのまま制作に移行していきました。

ーこれまでの恋愛ソング「MINT」や「CASSIS」とは一転して、トラックや歌詞の世界観が大人っぽい感じがしました。

今回“共依存の恋愛”を書こうと思ったのは、僕の実体験の恋愛でもあるんですが、僕が音楽に対して思っていることを表現したくて。上京してから、いろんなことを体験できる環境になって、有難いと思う反面で“怖い”と思う瞬間があったんです。自分の音楽がどこまで行けるんだろうという将来的な不安を抱きながら、音楽がなければ生きていけないという感情を、危うい恋愛に例えてみようと思って。なので、普通に聴く人には恋愛ソングとして捉えてもらえるような言い回しになっています。

ーそうだったんですね。具体的にダブルミーニングになっている部分はどのあたりでしょう。

『君だけに見せよう/丸裸の心も』と言う歌詞は、一見恋愛的な意味合いに見えますが、僕自身の音楽に対する表現について歌っていて。僕は家族や友達にも本心を晒け出すことがあまり得意ではないので、音楽というフィルターを通して心情を表現していることを書きました。先ほど言った“怖い”という不安な部分に対しては、『決して溺れていることを 怖がらないで』というフレーズが、自分が音楽に溺れていることを示唆していたり。要所でワードをかけています。

「バックボーンを大事にしながら
“キャッチーさ”を目指す」

ーサウンド面では、キャッチーなサビからスキルフルなラップへの切り替えがさすがだと思いました。

ライブで踊れる曲にしたかったのでラップまでの流れは、僕の中でのキャッチーさを追求しましたが、バックボーンとしてヒップホップやラップは強くあるので、あえてがっつりラップを入れてみました。元々は、ラップパートもトラックにあまり変化がない状態で入れていたんですけど、思い切り場面チェンジした方が面白いんじゃないかと、編曲の際に(大樋)祐大さん(SANABAGUN.)とも話しながら作っていきました。キャッチーな印象を持って聴いてくれた方にも、ヒップホップの印象がある方にも、どっちにも行けるというギャップを感じてもらえたら嬉しいです。

ー今回こだわった部分を教えてください。

めちゃめちゃ細かい部分になるんですけど、サビの裏で打感のある楽器が後半から出てくるとことです。僕の中でグルーヴを追求して入れた部分なので、結構こだわりました。

ートラック自体は普段から制作されていますか。

思い浮かんだ瞬間はパッと作れるんですけど、僕は考える時間が結構長いタイプなので、トラック数で言ったらそこまで多くないです。それこそ、細部にこだわってしまう性格なので、ニュアンスを詰める作業が好きで、そこに時間をかけてしまって。あと、浮かんだ時にできたトラックって、後から聞くと幼稚に感じてしまって、真っ新な状態に戻してしまうことが多いんです。なので、なんだかんだ制作が決まってから着手した方が楽曲としては上手くいきますね。

ーなるほど。いずれはトラック提供なども考えられていますか。

もし可能ならすごくやりたいですね。僕のトラックを求めてくれる方がいるのであれば、楽しいことになるだろうなって思います。まだどこにもトラックを上げていないので、これからアップしてみようと思います。

ーMVは今回もNasty Men$ahさんが監督されていますが、どのようなやりとりをされましたか。

今回は僕の中でキャッチーを追求した勝負作であり、ある意味で原点回帰に近い作品となったので、最初のMVとなる「The gifted…?」や「Feel Like」も撮っていただいた、僕のMVにおいての起源みたいな存在のNasty Men$ahさんにお願いしました。この曲自体も真っ直ぐに歌っている作品なので、映像自体もエフェクトをかけるというよりは、素材勝負でほぼ一本撮りに近い世界観にしてもらいました。シンプルでありながら、色や画がかっこよく仕上がっていると思います。

ーアートワークもこれまでの作品を踏襲したシンプルさを感じます。

そうですね。これまでシンプルなアートワークにすることが多かったので、そういう点でも原点回帰をしたというか。前作のEPは、僕の中で冒険した作品だったので、バックボーンを大事にしながら“キャッチーさ”を目指すという意味で、原点に戻したという感じです。

ー原点に戻ろうと思ったきっかけは何でしょう。

前作のEPで、音楽的にやりたい表現はある程度できた部分があったので、その制作段階から、次はシンプルなものを作ろうとなんとなく考えていました。僕はトラックメイキングや複雑な物を好むタイプなので、みなさんが受け入れてくれる音楽とは少し違う方向に走りがちだったので、聴いてくれる方の声に耳を傾けながら、波長を合わせられたらいいなと思って。先ほど言った“キャッチーさ”のように、エンターテインメントに寄せてみようと思うようになりました。

ーこれからが楽しみです。改めて振り返ってみて、今年はどんな一年でしたか。

今までの音楽人生で一番忙しかった反面、充実していました。おかげで成長ができた年でもあったので、忙しいことに対してネガティブな気持ちはなく、ポジティブに楽しみながら取り組めました。トラックメイキングにおいて、キャッチーさを取り入れるようなったり、メンタル的にも一人で抱え込んでいた部分をリスナーさんと共有できるようになってきたので、いろんな意味で純粋に音楽を楽しめるようになった点が一番の成長だと思います。来年は今年よりも成長の度合いを加速させて、振り返った時にさらに成長を感じられる年にしたいです。来年もリリースを考えているので、今言ったキャッチーさを目指した作品を発表できるように頑張ります。

ー個人的には、いつか弾き語りのオリジナル曲も聞いてみたいです。

僕自身もライブで楽器を持って、いつかライブセットでやってみたい気持ちは昔からあるので、それを目指した曲も作りたいと思っています。

INFORMATION

ざきのすけ。

Latest Digital Single
「In the Cell」
配信リンク:
https://orcd.co/inthecell
Music Video:
https://www.youtube.com/watch?v=8XM7YYvD3Fs

POPULAR