Kroiの飛躍は言わずもがな。弊誌の表紙を務めた1年前は、メジャー2ndアルバム制作の真っ只中だった。それからメインストリームを猛進し、タイアップ曲を立て続けにリリース、年明けにはツアーの追加公演として自身最大規模となるLINE CUBE SHIBUYA公演を大盛況に収めた。そんな中発表した最新EP『MAGNET』は、Kroiをより世に知らしめるキャッチーさを内包しながら、成長を遂げたバンドのコアを表現した一枚になっている。幾多の過渡期を迎えた彼らが鳴らす音とは。ツアーを目前に控えるKroiの今のモードを探る。
L to R→千葉大樹(Key.)、長谷部悠生(Gt.)
益田英知(Dr.)、関将典(Ba.)、内田怜央(Vo.)
Kroiをもっと大きくさせるタイミング
ー年明けには、全国ツアー「BROADCAST」の追加公演として自身最大キャパとなるLINE CUBE SHIBUYAでライブをされましたが、改めていかがでしたか?
関将典(以下、関):前回のツアーは公演数が過去最多だったので、かなり駆け抜けましたがLINE CUBE SHIBUYA公演までは2ヶ月ほど空いたので、制作をしたり心機一転な感覚でライブに臨めました。ホールの規模だとお客さんとの距離感や音の届け方が違う印象はありましたが、今後それをスタンダードにしていく意識を持てたので、新年早々いいスタートが切れたと思います。
千葉大樹(以下、千葉):関さん言った通り、空いた期間で制作をしながら新曲「Hard Pool」も披露したので、スタートダッシュ的な意味合いが強いライブでしたね。
長谷部悠生(以下、長谷部):より多くの人に聴いて頂ける嬉しさを感じながら、やはりライブハウスとは違う感触や必要な要素も分かったので、収穫の多いライブになりました。
内田怜央(以下、内田):あと、ホールはMCが難しいなと思いました(笑)。例の如く俺らはかなりふざけたんですけど、普段よりみんなとの距離がある分ちゃんと伝わっているか不安な瞬間もあったので、MCでのふざけ方も考えていきたいと思いましたね。
益田英知(以下、益田):(ゆっくりとした話し方で)まぁそうですね…。一言で表現しますと“感謝”、この一言に尽きると思います…。
ー(笑)。ここからはEP『MAGNET』について伺っていきます。前作の2ndアルバム『telegraph』を録り終える前から構想があったとか。
内田:今思えば全然そんなことなくて、嘘ですね(笑)。
関:自分たちはレコーディングが完パケした後に次の話をするのが好きで、いつも喫煙所でワイワイ構想を膨らませて盛り上がるんです。なので前作のときも『次はこんなのを録ろうぜ』って話をしましたが、結局それは無しにして今作に取り組みましたね。
内田:そのとき構想していたのはニッチな感じだったんですけど、Kroiをもっと大きくさせるタイミングでもあると思ったので、色んな人にアプローチできる作品でありつつ、自分たちのやりたいものを示した方がいいと思って、今作のような内容になりました。
ーそういう意味でも、1月に発表した先行シングル「Hard Pool」はキャッチーさもありながら、これまでのKroiにはない曲の展開だと思いました。
内田:これまでKroiが避けていたアプローチをやれた曲というか。今まではあまりビートの乗りを変えずに他の部分でとっ散らかせるイメージでしたが、今回はビートのアプローチをほぼセクション毎に変えて展開しているので、新たな領域に踏み出せた感覚はありますね。
関:今作の中で最初に出来たのが「Hard Pool」で、その次に「風来」が出来て。そのタイミングで当初の構想からガラッと変わりました。
内田:「Hard Pool」があったから「風来」が出来たというか。「Hard Pool」はかなり強い曲を作りたかったのと、実験的な要素を多くしようと考えていたので、ビートアプローチを変えたり、ロックやネオソウルをあえてごちゃ混ぜにしたんです。それを経て、もう一度自分たちのルーツ的な部分も表現したほうがいいと思って。シンプルなR&Bに近い「風来」を出すことで、バンドのスタンスを提示しようと思いました。
ーなるほど。そんな楽曲の幅がある中で、インスト曲「cranberry」はEP全体を締めている気がしました。
関:たしかに今回のEPは、パワフル系が多かったのでこういう引き算の曲が締めとして効いていると思います。毎回ジャムシリーズとして、パンに塗るジャムと掛けて果物の名前をつけたインストを入れているんですけど、今回は録る3日前くらいに『ブルースにしよう』ってノリで決まって。最初のタイトルが「飛ばさないでブルース」だったくらい、自分たちでも渋くしすぎたと感じたんですけど、ジャム然としているというか。
長谷部:ブルースやるならスローブルースをやろうってなって、曲自体は千葉さんが作ってくれました。
千葉:毎回俺がジャムを作るのは決まっているし、前回何も考えずにスタジオ入ったら6〜7時間かかっちゃったので、ある程度作っておこうと思って。考えてみたら、悠生がブルース好きなのに音源ではあんまりやってないと思って挑戦したらこうなっちゃいました。
長谷部:エゴが強くなりすぎちゃった(笑)。俺もビンテージの竿を買ったり、関さんもアップライトを使ったよね。
関:ちょうどアップライトやコントラバスとかを始めたいと思って、試しに買ったやつを使ったら意外に良くて。怜央以外の4人が同時にブースに入って録ったので、その空気感や大切にしてる生感を伝える意味でもかなりいい曲になったと思いますね。
革命を起こす余地を残しておく
ーちなみに、皆さんの推し曲は何ですか?
(順番決めの末、身長順で発表)
長谷部:「風来」ですかね。デモ自体は去年の春頃には上がっていて、その時からいい曲だねとっ話していて。最近やれてなかったR&Bやソウルのアプローチで、今までよりビンテージのサウンド感に寄せられました。さっき言ったビンテージの竿も実はこのために買ったんですけど、見事にハマってプレイも気に入っているので、私の推し曲にさせていただきます。
益田:私は…「風来」ですかね。70年代のニュー・ソウルを現代の音で表現したらこうなるというか、おしゃれですよね。ドラム単体でいうと、これまでレコーディングの手法や音作りにおいて理想に届かない部分もあったんですけど、「風来」では今までのノウハウを寄せ集めて、かなり大好きなサウンド感を出せたと思っています。あと「風来」のサビに合う極上のライドシンバルを導入したんですけど、思いのほか良くて「PULSE」、「Cosmic Pillow」でも使っていて。マイネルというシンバルなんですけど、ほかの楽器に埋もれない存在感がありつつ馴染むし、モダンな感じでお気に入りです。
千葉:僕はリードトラックでもある「PULSE」ですね。Kroiとしてのステージが上がっていくにつれて鳴らすべき音も変わってくると思い、今回のEPは今までよりも派手に聞こえるけど、音数を減らすというテーマもあって。これまでの手法だと今のKroiには合わない部分を怜央と調整しながらやっていったのがこの曲でした。まだ心得たわけじゃないけど、「PULSE」は最後の方に録ったこともあり、制作中に試してきた手法の集大成が音にも反映されて、現状では納得いく質感に仕上がっていると思います。あと普通にメロが素敵ですね。
内田:僕は「Astral Sonar」ですね。一番気を抜いて作れたので、出来上がったときの感動やギャップが大きくて。遊び感覚で自然と出たものが最終的に良くなったのが嬉しいし、作り手からすると可愛いんですよ。開放されて考えずに出来た曲は、作り込んでいる音楽とは別の魅力があると思っているので、これはKroiの中でも稀有い曲だと思います。
関:こうなってくると、「Cosmic Pillow」が可哀想なので推し曲として(笑)。まず今回のEPは新しい試みが結構あって。みんなが言った通り、新しい機材の導入や楽曲ごとに録る手法を変えたり、「風来」なんかは生で在日ファンクのお三方にホーンを入れてもらって、テープで再録して質感を出したり。EP全体でKroiの新しさを表現できる作品になったんですけど、その中で「Cosmic Pillow」はミックスの段階から悪ふざけの中で出来上がった部分も多いので、自分で聴いても楽しい曲になっています。演奏する上ではフィジカルな曲ではあるので、今後ライブでどう化けていくか、というか俺たちがどれだけこの曲に太刀打ちできるか楽しみな曲なので、俺たちがどんなパフォーマンスをするのか想像して聞いてもらいたいです。
ーそれぞれの推し曲もありつつ、改めてどんな一枚になったと思いますか。
内田:我々は長く音楽をやっていきたい人間ですし、やっぱり売れたいという気持ちもありますが、もっと大きくなったときに革命を起こす余地を残しておくというか。我々のやりたいことを出し切らないバランスも考慮しつつ、バンドとして大きくなるチャンスも逃さない。そんな想いを込めたEPになっていると思います。
ーバンドとして大きくなっていく上で、ビジョンや目標はありますか。
内田:一番デカいこと言えるやついる?
益田:…世界に行く。
長谷部:(笑)。けど世界って意味では、最近ネイト・スミスやレッチリのライブを見に行ってワールドクラスの魅せ方に影響を受けたので、インプットしたものをアウトプットしていきたいです。とにかくライブが上手になりたい。
内田:最終目標的に長く音楽をやりたいというのと、最近考えていたのは納得いく曲を作ってから死にたい。それをできる身の振り方ができればと思いますね。
千葉:音源にしてもライブにしても、追い求めてるものがあるのでそれを突き詰めつつ売れたら嬉しいです。
関:行けるところまではいきたい。何かを定めるのではなく、俺らができる限界まではやりたいっすね。
ー4月からは全国11都市を巡るツアーが開催されます。最後に意気込みをお願いします。
関:これまでもライブを大切にしてはいましたが、次のツアーではさらにクオリティを追求して、お客さんをもっと楽しませたいです。それこそ前回のツアーでは、MCで間延びする場面もあったので、自分たちのパフォーマンスでお客さんを盛り上げるという本来のライブの形で、どれだけ魅せられるかの挑戦を考えています。そのために今みんなでいろいろと練っているので、楽しみにしてほしいです。
内田:最近のライブはシャウトすることが多くて。それはそれの良さもあるけど、もっと気張らない日があってもいいというか、Kroiの違う一面を見せれる日があるといいと思います。なのでガツガツ行くところは決めつつ、ちゃんと抜きどころも作る。緩急のあるライブを作りたいですね。
千葉:二人が真面目に答えたので、あえて別角度から。前回のツアーもそうだったんですけど、益田が変なタイミングで水を飲むので、それを禁止にしていきたいですね。
益田:先輩方のバンドとの対バンを通して、バンドごとの表現や自分たちのライブを客観的に見ることができて、Kroiが良しとしていた部分をブラッシュアップするきっかけになりました。なのでそれらを取り込んだアレンジや演出を詰めた状態でツアーに臨みたいと思っています。
一同:では、最後締めてください。
長谷部:(頭を抱えながら)ツアーの楽しみって音楽だけじゃないんですよ…!僕はグッズも手がけていて、今までのグッズよりかなりレベルアップしてるので、そこも期待していただけたら嬉しいです。
後日、ツアーグッズを手がけた長谷部氏とデザイナーによる対談も掲載予定!
・内田怜央
ジャケット¥82,500
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シャツ¥29,700パンツ¥28,600
(yoshiokubo/yoshiokubo 03-3794-4037)
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(YUICHI TOYAMA/Eye’s Press 03-6884-0123)
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(SHAREEF/Sian PR 03-6662-5525)
トップス¥14,300
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(STEALTH STELL’A/JOYEUX 03-4361-4464)
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ブルゾン¥69,300
(WILLY CHAVARRIA/JETTON SHOWROOM 03-6804-1970)
カットソー¥30,800
(BLACKBIRD/イーライト 03-6712-7034)
パンツ¥ 48,400
(UNDERCOVER / UNDERCOVER 03-3407-1232)
アイウェア¥37,400
(BJ CLASSIC COLLECTION/Eye’s Press 03-6884-0123)
その他スタイリスト私物
・千葉大樹
ジャケット¥61,600
(TAAKK/JOYEUX 03-4361-4464)
カットソー¥16,500
(yoshiokubo/yoshiokubo 03-3794-4037)
パンツ¥31,900
(DAIRIKU/DAIRIKU d.dairiku@gmail.com)
シューズ¥41,800
(UNDERCOVER / UNDERCOVER 03-3407-1232)
その他スタイリスト私物
INFORMATION
Kroi
Major 2nd EP『MAGNET』
発売日:2023年3月29日(水)
https://pony-canyon.lnk.to/magnet
CD Only/ PCCA-06194 /¥1,650(tax in)
CD+DVD/ PCCA-06193 /¥4,400(tax in)
CD +Blu-ray/ PCCA. PCCA-06192 /¥4,400(tax in)
収録曲
M1:PULSE
M2:Astral Sonar
M3:Cosmic Pillow
M4:Hard Pool
M5:cranberry
M6:風来
DVD/Blu-ray収録内容:
Kroi Live Tour 「BROADCAST」from LINE CUBE SHIBUYA(2023.01.08)