Photo Live Report: あたらよ ”季億の箱”~2023~ツアーファイナル 「悔いのないようなライブを」

あたらよの2nd Tour『”季億の箱”~2023~』ツアーファイナルが5月21日に渋谷のWWWXで開催された。開場時刻は17時頃で空はまだ明るく、気まぐれに初夏みたいな暑い日であったので、夕方というよりもお昼という心持ちでWWWXに入っていった。
会場を埋め尽くしているオーディエンスを見ると、年齢も性別もバラバラ。学生から、その親世代まで、さまざまな人が集まっていた。このフロアを見るだけで、あたらよの音楽が普遍的な魅力を持っていることを充分に体感することができた。中には正装というか、社交場を訪れるように綺麗な格好をしている人も少なからずいて、この日のライブを心から楽しみにしていたことが見てわかる。こういう会場で行われるライブは観る前からわかる。これから素晴らしい音楽体験ができるということが。
そんな予感はやはり的中で、ライブ本編13曲と、アンコールで演奏された4曲を通して、すっかりあたらよの世界観に食らってしまった。

最初のMCで、ひとみが「1st Tour『極夜において月は語らず』のときは初日だったWWWXが、2nd Tourではファイナル。なんか不思議な感じ。この1年、あたらよには本当に色々なことがありました。昨年よりも多くのお客さんが集まってくれて、ありがたく思います」と話していたが、このツアーが、あたらよにとって、2回目というのが驚きだ。そう思えないほどに、楽曲の繋がり、ステージングには貫禄があり、しっかりと歌をオーディエンスに届けようとする姿勢に感動させられた。

あたらよの大きな魅力の1つとして歌詞が挙げられると思う。ときに寄り添い、ときに背中を押し、あるいは気持ちを代弁したり、それをわかりやすく表現してくれたかと思えば、十人十色の解釈が生まれるようなリリックもあって、それを読み解くのが楽しかったりする。それがライブハウスという現場でダイレクトに歌として伝わってくると、またちょっと楽曲の解釈が変わるというか、その場にいる他のオーディエンスと、ある意味でシンクロしたような感動が生まれるから面白い。例えば、別れを歌っていると思っていた曲が、実は悲しみだけではなく、そこから生まれる未来への期待や高揚感の方を色濃く発信しているのかもしれないな、などと感じられたりする。ステージを見ていて、そういう考え方の変化が生まれるのことが、また楽しいのだ。

序盤から、「悔いのないように一緒に一緒にライブを作っていきたい」と話していたひとみだが、それだけツアーファイナルという日に対する思い入れが強かったのだろう。そこから「楽しいことでも嫌なことでも始まりが終わりがある。(それを)何か“こと”がある前に自分に言い聞かせているんです。始まれば終わるって言葉が好きで。嫌なことがあってもポジティブに捉えられるじゃないですか。いいことが起きたら、始まっちゃったら終わっちゃうから、一生懸命、悔いのないようにやろうねっていう気持ちになるんですよ」と後半のMCで繋げた。

その悔いを残すまいと真摯に歌に向き合う姿には覇気が感じられ、そのスタンスが「outcry」中盤における、ひとみのシャウトに結実していったのだと思う。「叫んだの初めてやった。ファイナルだからいいやって気持ちがあって」というMCにもあり、あたらよの直向きな姿に多くの人が勇気をもらったことだろう。

あっという間のライブ本編を経て、『ひとみ!』、『まーしー!』、『たけお!』と、アンコールを願う叫び声の中、白Tシャツに着替えた4人が再び登場。そのMCで、今回のツアータイトル『季億の箱』が8月23日にリリースされる2nd アルバムのタイトルであることが発表され、特典付きの予約受付がスタートしている旨が告げられた。そして、次の曲へいこうか、というところで一部のメンバーにも隠されていたサプライズが。
WWWXにバックスクリーンが登場し、VTRが流れたかと思えば、なんとそこに、桐谷健太が映し出された。
現在、放映中のテレビ朝日系 木曜ドラマ『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』のオープニングテーマがあたらよの「届く、未来へ」なのだが、その繋がりもあってのビデオ出演だったのだろう。また、桐谷健太のトークが実に見事で、収録されたムービーであるにも関わらず、タイミングやノリが、そのまま現場にいるほどのピッタリっぷりでフロアもメンバーも大いに盛り上がっていた。そこから桐谷健太のタイトルコールのまま、アンコールの1曲目「届く、未来へ」へと繋いだのだが、実にワクワクさせられる展開だった。
ーーと、真面目な部分ばかりピックアップしてしまったのだが、中盤にはステージとフロア混みで、たけおをイジったり、まーしーが興奮をそのままに「最高!」と叫ぶようにMCするシーンもあって、会場には、あたらよならではの多幸感に包まれていた。しっかりとライブの展開で引き込み、歌で魅了し、しっかりと笑わせるときは笑わせる。まるで、1つのドラマや映画を見ているように感受性を揺さぶられるライブであった。

SET LIST
晴るる
雪冴ゆる
青を掬う
眠れない夜を君に
outcry
ピアス
10月無口な君を忘れる
夏霞
差異
52
憂い桜
また夏を追う

encore.
届く、未来へ
悲しいラブソング
交差点
空蒼いまま