自分たちの今を作り出す音楽アーティストに注目する企画、FUTURISTIC SOUNDS 。中でも音楽シーンを騒がせているorこれから騒がせることになるであろうユースをEYESCREAMが独自の観点でピックアップ。インタビューを通して彼らのアイデンティティ、ルーツに迫る。ロックもHIPHOPも、今年から何かが変わり大きく動き出すはず。新たな音楽カルチャーを知り、サブカルチャーの未来がどんな姿なのかを知る1つの材料としたい。EYESCREAM選、注目の音楽アーティスト2017下半期。第7回目に登場するのはNAHAVAND。
ロックを更新せんと挑む、NAHAVANDの眼光
ヒリヒリとした緊張感みなぎる言葉と音が、鼓膜や心を突き刺すように迫りくる。オルタナティブな視線で、ロックを更新するべく突き進む二人組バンド、NAHAVAND(ニハーヴァンド)。2015年に1stアルバム『Two Of Strongest』をリリースしたあと、活動休止状態にまで陥った彼らだったが、今年1月にGotch(ASIAN KUNG-FU GENERATION)をフィーチャリングしたニューシングルを発表して帰還。トラップをロックに持ち込むという方法で見事、最前線に戻ってきた二人に聞いた。
次どうするのかもわからない状態が1年間続いた
ー1stアルバム以降、一時は活動休止となっていた状態から、今年1月に約1年半ぶりとなるニューシングル「Hold On feat. Gotch / Back Again」をストリーミング配信しました。その間の経緯から聞かせてください。
宮内凌平(以下、宮内):アルバムを出して、思ったより反応がよくなかったのもあって、よくないものを作ってしまった、と言ったら買ってくれた人に申し訳ないけど、そういう気持ちだった。次どうするのかもわからないまま、曲もいいのができない状態で1年間続いた。そんなときにGotchさんがメールをくれて。「あんまりうまくいかなくて」って返したら、「じゃあ一緒にやってみる?」って言ってくれて、そこから「Hold On feat. Gotch」と「Back Again」の2曲ができたんです。
NAHAVAND「Hold On feat. Gotch」
宮内:特に「Hold On」はフィーチャリングで参加してもらったのもあってか、一緒に作った感覚があったし、自分のなかですごく手応えもあった。歌詞についても、「もっと前向きなものにしたほうがいいんじゃない?」ってアドバイスをくれたり。作業もやりやすかったし、今までと違ったノリで作れた。
ーそもそも、Gotchさんとはどういった出会いだったんですか?
宮内:最初のMVを出したときなので、20歳の頃、2012年くらいですね。それをYouTubeで見てくれて、最初はツイッターでやりとりしていた。それまでは宅録というか、iPadで録ったりしていたんですけど、「もうちょっといい音で録ったほうがいいよ」って話の流れから、Gotchさんの個人スタジオに遊びにいったのが最初ですね。
ーその当時、アジカンは聴いていたりしましたか?
宮内:全然聴いてなかったですね。「アジカンのゴッチ」っていう感覚も無くて、「俺らの音楽活動をサポートしてくれる後藤正文さん」みたいな感じで。フットワークも軽いし、今の流れに対して敏感に反応している人だなって思いますね。
わざと群れないんじゃなくて、自然と孤立していく
ーNAHAVANDとして、「こういう音楽をしていこう」という共通認識はありますか?
宮内:元々、NAHAVANDをやるきっかけは、Veni Vidi Viciousという東京のバンドなんです。ちょうど海外でザ・リバティーンズとかザ・ストロークス、ザ・ホワイト・ストライプスが出てきた時期で、同じような音をリアルタイムで、日本語に落とし込んでたのが彼らだった。キャラクターもルックスも曲もフレッシュで、加藤マニさんが撮ってたビデオもかっこよくて。それまで、日本語でロックを歌うとのっぺりしていた印象があったけど、Veni Vidi Viciousのヴォーカルの乗せ方は軽快だった。最初はそれこそコピーみたいな感じで乗せ方を真似したりしていました。
ーでは、ラップの原体験は?
宮内:それがなくて。
ーじゃあ、表現の手段としてたまたまラップになっていった、と。
宮内:そうですね。
ー宮内さんのラップの仕方が、ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)に似ているなと感じたのですが。
宮内:それ、めちゃめちゃ言われるんですけど、全然通ってなくて。あえて聴かない、とかではないんですけど。
ーそうなんですね! ではご自身で、NAHAVANDはどういったバンドだと捉えていますか?
宮内:「バンドサウンドにラップを持ち込む」という形になると、有名なところではDragon Ashになってくると思うんですけど、どうしてもミクスチャーロックってイメージになってくる。もしくはKID FRESINOがペトロールズのメンバーと一緒に出してましたよね、そんな感じでファンク寄りになる場合。そのどちらかに分かれてると思うんですが、2014年に「最強のふたり」という曲を書いてから、僕らはどちらでもない、新しいものを作ってきてると思ってます。
宮内:あと、EYESCREAM(7、8月合併号)のTHE NOVEMBERSのインタビューでNAHAVANDのことにも触れてもらっていましたが、そこで「イケてるヤツらは、シーンに依存しない」みたいなことが書かれていた。まさにそうで、オリジナルなものを作っていると、どうしても孤立する。わざと群れないんじゃなくて、自然と孤立していくのかなと思いますね。
ーこれまでNAHAVANDは、ライブ活動に重きを置いてこなかったとのこと。そのあたりの思いも聞かせてください。
宮内:ライブは自分たちの曲の確認作業、くらいに思っていた。ただ、「Hold On」の歌詞を書いたときに、「この曲は人前で歌ったときに完成形になる」という感覚があって。それで、今年入ってからライブの本数を増やすようにしました。
ー最近では、そのTHE NOVEMBERSとも対バンしていました。
宮内:THE NOVEMBERSのライブは、圧巻でした。乱暴に表すとメロディセンスのある裸のラリーズ、みたいな感じでしたね。
ー裸のラリーズあたりも聴いてきたんですか?
宮内:ラリーズとか、INUとか、ノイズもパンクも聴いていた時期がありました。
ーそんな音楽遍歴も。
宮内:僕がずっと思っているのは「曲がよかったらライブがよくなるのは当たり前」というか。曲で評価されてないけど、ライブバンドとして評価されてるバンドって、ライブもよくないと思いますね。逆に「曲がいいけどライブはよくない」というのも、それは曲がよくないんじゃないですかね。だから、場数踏んでなかろうと俺たちのライブはいいですよ、と。
ーそれはなにより、曲がいいから、と。
宮内:はい。
おめえが言ってんじゃねえよ、って
ー「Hold On feat. Gotch / Back Again」以降に発表した楽曲「Made」は、ポスト・マローンの影響を受けて作ったことをツイッターでも公言していました。
宮内:最近、USのヒップホップがすごいおもしろいなと思っていて。チャンス・ザ・ラッパー、ヤング・サグ、ポスト・マローン、フューチャーとかを聴いていますね。今、どの音楽がおもしろいか? って言ったら、それはトラップミュージックだから。そこにいくのが必然というか。
NAHAVAND「Made」
時里悠也(以下、時里):僕は、トラップにしても宮内から教えてもらうことが多いですね。
宮内:Spotifyでプレイリストを作っていて、それをお互いが聴けるようにしてるんです。
時里:その影響はすごくある。そこから自分なりのかっこよさに落とし込んでいくというか。かっこいいギターのリフを探して、そこからドラムとベースを加えていく。
ー曲はどういうやりとりで制作するんですか?
時里:データ(のやりとり)ですね。全然会わないです。
ー二人で一緒にスタジオに入って、とかの作業はなく?
時里:はい。バンドの面倒くさいところがひとつない。
宮内:ライブも、リハしないです。
時里:曲ができたときには、ライブができるようになっているので。
ーでもロックバンドだ、と。
宮内:はい。気持ちは。
ー二人が考える、ロックとは? 「Made」には「俺こそロックの体現に相応しい」という歌詞もあります。
宮内:今はトラップ以外、聴いてないですけど、でも実際、3人とか4人が揃って音を出したときのロマンチックさというか、かっこよさっていうのはロックバンドが一番だなっていうのがあって。最近、ロッキング・オンの山崎洋一郎さんがブログで、「最近ロックバンドを自称する人たちが減ってきた、ロックバンドっていう言葉自体がダサくなっている」みたいなことを書いていて。それ読んで、「逆に俺はロックバンドって一生言おう」って思った。おめえが言ってんじゃねえよ、って。
ーいいですね。では最後に、今後の展望を聞かせてください。
宮内:昨日(取材は6月中旬に行った)、Gotchさんに「明日、インタビューがあるんで、一緒にアルバムを作ることになってるって話、言っていいですか?」ってLINEしたら「言ってもいいけど、引き返せないよ(笑)」って返ってきてましたね。Gotchさんのレーベル〈only in dreams〉から、出す予定です。
ーアルバムを! それは楽しみです。
宮内:今は曲のデモを作りながら、プロデューサーを探している段階です。今年中には完成させて、来年頭くらいにはリリースできたら、と考えています。
FUTURISTIC SOUNDS ARCHIVE
01. DATS
02. 集団行動
03. CHAI
04.MONO NO AWARE
05.PAELLAS
06.Aun beatz
08.JP THE WAVY
09.Weny Dacillo