Review:SixTONESが提示する「慣声の法則」とは

Text_Chie Kobayashi

Review:SixTONESが提示する「慣声の法則」とは

Text_Chie Kobayashi

SixTONESのライブ映像作品「慣声の法則 in DOME」がリリースされた。今年1月から4月にかけて全国8カ所31公演が行われ、のべ52万人以上を動員、グループ最大ツアーとなった「慣声の法則」。その中から4月23日に行われた東京ドーム公演がパッケージされたのが本作だ。

「慣性の法則」とは、「静止または一様な直線運動をする物体は、力が作用しない限り、その状態を持続する」(広辞苑)という運動の法則の第一法則のこと。つまり、動くにも止まるにも、他からの力が加わることが必要だということだ。

SixTONESの全国ツアー「慣声の法則」は今年1月4日リリースの3rdアルバム『声』を携えて行われるものであることから、「声」にかけたツアータイトルであることは間違いなく、また「慣性の法則」と掛けて“SixTONESはファンの声の力が作用して前に進む”という想いも込められているという。しかし本作を観ると、さらにもう一つ、“SixTONESメンバー6人の声や姿がファンに作用し、熱狂を生み出す”という意味合いも付け加えたくなる。

ライブは6人のアカペラから始まる「Overture -VOICE-」で幕開け。東京ドームの規模でありながら、最初に響くのは6人の“声”だけ。その潔さから、彼らが今回のツアーも、音楽を中心に据え、「慣声の法則」というコンセプトを表現することに終始していることが伺える。最初のMCで田中樹が「このでっけードームで、俺ら6人の声とみんなの声しかないのよ。こんな最高のシチュエーションないでしょ」と話していたが、まさにその通り。東京ドームという大きな会場でありながら、バックダンサーを付けることもなく、また音楽以外の要素を取り入れることもなく、ただただ6人(ファンを喜ばせるゲストはいたが)が音楽を届けていくというシンプルかつ洗練された内容であった。

ワイルドに椅子に座ってパフォーマンスした「Risky」や吊り下げられたマイクでマイクリレーを繰り出した「人人人」、森本慎太郎と田中樹による「OPA!」、ジェシーと松村北斗による「愛という名のベール」、京本大我と髙地優吾の「ラ・ラ・ラ・ラブストーリー」といったユニット曲など、最新アルバム『声』収録曲はもちろん、「IN TEHSTORM」「Mr.ズドン」といったデビュー前からの人気曲も披露し、グループの歴史の深さや想いの強さを見せるセットリストでライブが展開される。中でも見どころの一つは、King Gnu常田大希との共演だろう。「マスカラ」を作詞作曲したことで話題を集めた常田。東京ドーム公演最終日、つまり本作の映像収録日、SixTONESメンバーが艶やかに「マスカラ」をセンターステージでパフォーマンスしたあと、メインステージに戻ろうとすると、メインステージに歪んだギターを鳴らす常田が待ち構えるという形で登場して場内を沸かせた。しかもそれだけでは終わらなかった。髙地が運転するJeepで会場内を一周することになった6人と常田。常田はギターを手にしたまま乗車すると、King Gnuの「Vinyl」のイントロを弾き始める。すると、京本がそのまま歌い出したのだ。軽く鳴らしたギターにあわせてノリで歌ってしまうようなラフさがあり、まさに音楽好きの遊びといった感じ。言うなれば、音楽を始めたばかりの学生のような気軽さと喜びが溢れて出ていた。そのくせスキルの高さは、東京ドームで鳴らすに十分過ぎる実力だから堪らない。Jeepがバックステージまで進むと、次は常田が「NEW ERA」を演奏し始め、6人が今度はしっかりと歌唱した。さらに常田が「俺のうちわがないなぁ(笑)」とぼやいていたことを受け、客席にいたファンが「常田くん」と手書きで描いた即席のうちわを用意してみせるノリの良さもさすが。この常田と共に音楽を楽しみながらドーム内を一周する姿は、“SixTONESメンバー6人の声や姿がファンに作用する”と言いたくなる象徴的な一場面だ。メンバーが音楽を楽しむ姿に、さらに観客も興奮度を上げていく。

極めつけは本編終盤。「S.I.X」「Bella」「Special Order」「フィギュア」「Telephone」「RAM-PAM-PAM」「WHIP THAT」「Outrageous」を一気に畳み掛けたメドレーだ。ムービングステージやリフトといった立体的な装置も使い、またワイルドな衣装から深緑のスーツまで様々な衣装を身にまとい、クールにセクシーに、時に愉快にと、様々な表情を見せながらたっぷりと楽曲を届けてくれていた。なのに、ここから最後にこんなブチ上げメドレーが送り込まれたら、そりゃ熱狂せずにはいられない。正直、このテキストを読んでいないで今すぐBlu-ray(もしくはDVD)を再生して、該当シーンを見てくれと言いたいのだけど、せっかくなので、その熱狂の根源を文字にしてみたい。京本と髙地のユニット曲「ラ・ラ・ラ・ラブストーリー」が終わると、映像演出が始まり、場内は静寂と同時に緊張感と期待感に包まれる。すると照明が強く炊かれ、誰の姿も見えないステージから、メンバーの声だけが聴こえ「S.I.X」が始まる。真っ赤でこの日一番のド派手な衣装に着替えた彼らが<待たせたな 飛ばすぜ一晩中><盛大に Show time やりたい放題/明日の事なんて今は気にしない>と歌えば、クラップも熱狂もすべてがフロア中に響き渡る。ベールのようなもので囲まれた6人がリフトで場内をたゆたい妖艶さを演出したレゲトン「Bella」を経て、さらに6人はアグレッシブに。<壊す your ordinary><make your 常識 break down>と歌う「Special Order」ではレーザーと鋭利なラップが場内を駆け巡り、あえて「フィギュア」の<Replaceable figures><売る soul>といった言葉が並ぶラップパートのみを切り取るという大胆さを持って、「Telephone」へと繋ぐ。サウンドだけでなく、歌詞に乗せた強い意志も熱演に加わり、場内はさらにヒートアップ。「RAM-PAM-PAM」「WHIP THAT」とダンサブルな楽曲で本能をむき出しにした彼らは、しかし最後にはアッパーに盛り上げながらも<この道以外ない>と高らかに宣言する「Outrageous」を持ってきて、苦悩や葛藤もポジティブに変換しまっすぐに進むSixTONESの姿勢を東京ドームに見せつけた。

その後、切ないバラード「Again」をしっとりと聴かせて本編を締めくくった彼ら。<ただその声を聴きたくて>と、コロナ禍のライブも彷彿させる歌詞を綴った同曲を本編ラストに選曲をするところに、改めて「慣声の法則」を冠したツアーのコンセプトを感じさせる。ちなみにその後のアンコールではファンのシンガロングパートのある「この星のHIKARI」で、“その声”をたっぷりと聴くことができた。またアンコールでの「GoodLuck!」で、田中が自身のラップパートを「どうしようかな〜、じゃあ北斗!」と指名して歌わせる場面も印象的だった。ここもやはり、彼らが自分たちの楽曲をおもちゃのようにして、音楽で遊び楽しんでいるシーンだったからだ。

もちろん“見せる”や“魅せる”意識を持って作られてはいるとは思うが、SixTONESの言う「慣声の法則」とは、彼ら自身が自分たちの楽曲で遊び、そんな姿をブースターに、東京ドームを目いっぱい楽しませ熱くさせることなのだろう。そしてそんな彼らだから、常に自然体でステージに立つことができ、その姿が多くの人に愛される所以なのだろう。本作には、YOSHIKIが登場し、彼のピアノと共に「Imitation Rain」を披露した模様も収録されている。YOSHIKIしかり常田しかり、楽曲提供のみならず、その後ドーム公演にまで駆けつけるほどの愛情を持って接するアーティストと共に、SixTONESは今後も切磋琢磨していくのだろう。せっかくなら、まだまだ「慣声の法則」に揺られていくのも面白そうだ。

INFORMATION

SixTONES 「慣性の法則」

初回盤
3DVD、2Blu-ray
¥8,800

通常盤
3DVD、2Blu-ray
¥7,150

https://www.sixtones.jp/discography/d018/

・SixTONES公式HP
https://www.sixtones.jp/
・SixTONESOfficial YouTube Channel
https://www.youtube.com/c/SixTONES_official
・SixTONES Official Instagram
https://www.instagram.com/sixtones_official/
・SixTONESソニーミュージック 公式X(旧Twitter)
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