埼玉は越谷発のロックバンドKOTORI主催のライブイベント「TORI ROCK FESTIVAL’24」が10月29、30日の2日間にわたり、神奈川・CLUB CITTA’にて開催された。埼玉・東武動物公園にて行われた2021年以来、3年ぶりの開催となった「TORI ROCK FESTIVAL」。
今回、ハルカミライ、FOR A REASON、さよならポエジー、yonige、Age Factory、bacho、そしてKOTORIの計7組が出演し、火曜日と水曜日という、週の真ん中の平日開催にもかかわらず、2日ともSOLD OUTとなりこの日を待ちわびたファンの渇望が伺えた。会場内ではオリジナルのクラフトビールも用意され、学校や仕事終わりにライブハウスに駆け込み、絶品のお酒と音楽に酔いしれるという最高な夜が、そこにはあった。
-DAY1-
「俺たちを1番にするなんてさすがっすわ、間違っていないです」と自信をのぞかせたハルカミライが「TORI ROCK、開幕ー!」と主催者並みの開幕を告げて始まった1日目。橋本学(Vo)、関大地(Gt)はまだしも、小松謙太(Dr)までもが何度もドラムセットから離れてフロアダイブするダイナミックなライブで、ド派手にイベントを盛り上げていく。ビールが飲めない橋本が、オリジナルクラフトビールを飲んでご機嫌に登場してきただけで、すでに彼らの心意気は伝わっているのが、このイベントについて「もっとデカい規模を目指していたり、手の届く感じでやりたいとか、あいつらが何を考えているかわからないんだけど、どっちでもいい。来たいやつは来るだろうし、俺らも行く」と言いつつ、「もしめっちゃデカいところでやるんだったら呼んでもらいたいよね(笑)……なんてね、心意気だけで繋がっているバンドなんで」とKOTORI、「TORI ROCK FESTIVAL」への愛情に満ちた言葉を贈った。
photo by toya
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2日間で唯一の英語詞を歌うメロディックハードコアバンドは、FOR A REASON。思わず動き出したくなる泣けるビート、哀愁漂う情景を描き聴く者の心を震わせるFOR A REASONとKOTORIは、アウトプットの形こそ違うものの、ルーツは同じ。TAKUMA(Gt)も、KOTORIの佐藤知己(Ba)に「ハルカミライもFOR A REASONも、それぞれサウンドは違うけど、いろいろなことが繋がっているバンドを呼んでいて。それがTORI ROCKです」と言われたといい、自身の信じる音楽をしっかりとCLUB CITTA’ に響かせていく。そんな2組の関係性の深さを表すようにラストナンバー「Carry On」ではFARのTシャツを着た横山がフィーチャリングボーカルとして参加。横山は少年のようなうれしそうな表情で共演を楽しんでいた。
photo by suke
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<劣情たちのどうも時折見せる八重歯の光沢が 昧爽に見える錯覚は無いかい>(「邦学のススメ」)という歌詞と、会場を飲み込むほどの轟音で初っ端からぶん殴ってきたのはさよならポエジー。さよならポエジーは2016年にTHE NINTH APOLLOから1stアルバム『前線に告ぐ』をリリースし、KOTORIは同じく2016年にsmall indies tableから1stミニアルバム『tokyo』をリリースした、活動初期から近いところでしのぎを削ってきた2組だ。さよならポエジーはMCよりも音楽で伝えると言わんばかりに楽曲を次々と続け、彼らの激情的なステージに、観客はじっと釘付けになったり、拳を突き上げたりと、各々の感情で呼応していく。そして最後に「これからKOTORIがもっともっと遠くまで羽ばたいて行けるように贈ります」とオサキアユ(Vo, Gt)が告げると、「ボーイング」でそのステージを結んだ。
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そしていよいよKOTORIの登場だ。場内が暗転すると、白いライトが場内にゆっくりと差し込み、メンバーがステージに。まるで夜の野外ステージを思わせるような景色の中、「We Are The Future」でライブをスタートさせた。盛大なシンガロングと共に場内が明るくなり「秘密」「FOREVER YOUNG」へと流れ込む。さらにツービートに乗せた「涙があふれそう」や、佐藤のベースリフから16のビートで体を揺らした「Anthem」、横山と上坂仁志(Gt, Cho)による2本のギターのハーモニーによるイントロが印象的な「トーキョーナイトダイブ」など、多彩な楽曲群で場内のテンションを引き上げていく。どの曲を選曲しても、全曲で盛大なシンガロングが起こる。本当に全員が全曲を歌えるのだ。もはやライブアンセムというよりも、KOTORIの楽曲は、生活の、日々の、人生のアンセムになっているのだろう。
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この日のステージには夕陽をモチーフにしたセットが天井から吊るされていた。横山は、その制作費が高かったと笑っていたが、それでもどうしても「TORI ROCK」のステージには夕陽が必要だったのだ。大きな夕陽の下で、会場にいる全員が「RED」を歌う姿は、この日のクライマックスと言ってもいいだろう。さらに「素晴らしい世界」では横山から「唯一のタメのスーパーギタリスト」と紹介されたハルカミライの関がステージへ。音楽を預けられる仲間がいるということを証明するかのように、横山はギターを関に預けると、関はKOTORIメンバーと共に同曲をプレイし、横山はフロアへダイブした。戻ってきた横山は、まずハルカミライのMCを振り返り「(TORI ROCKを)デカいところでやりたいんで、そのときは一緒に花火を打ち上げましょう」と回答。FOR A REASONへは「人間性と音楽性がリンクしているのが大好きで、ずっと尊敬しています」、さよならポエジーへは「ラスボスでしたね。こういう日にあんなことしてくるんだよ、だから大好きです」とこの日を振り返る。そして「僕は自分の人生において、間違ったことをしてきていないと思っていて。その場にいる人が、その場にいないと、こうなっていないとすべてに思っている。KOTORIのライブにおいて、フロアにいてダメな人はいないと思っているので、何かあっても信じてもらって結構です」ときっぱり述べ、「Dive into your Dreams」で本編を終えた。アンコールではさよならポエジーのオサキからリクエストがあったという「Masterpiece」、「明日につながる爆音を鳴らして終わります」との言葉に続いて「YELLOW」をプレイ。その言葉通り、轟音と余韻を残して1日目の幕を下ろした。
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-DAY2-
2日目の一番手を担うのはyonige。インディーズ時代、共にsmall indies tableに所属していた姉弟のような関係性のバンドだ。ごっきん(ba, Cho)が「成長の過程を真横で見ていた後輩」と言えば、牛丸ありさ(Vo, Gt)も「一緒に成長してきたなって思う」と言う。そんな成長を見せるかのように、彼女たちは今年リリースのアルバム「Empire」に収録されている「walk walk」「DRIVE」や、2017年リリースの「girls like girls」収録曲「トーキョーサンセットクルーズ」「沙希」など新旧の楽曲を届けていく。現在のyonigeのライブを見せることで、後輩のイベントの花を添えた。そして最後に<ラッキーストライクの煙を>という歌詞で始まる「our time city」を選曲したのは、ただの偶然かはたまた。
photo by toya
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Age Factoryは1曲目から轟音と共に「GOLD」を投下。一気に観客を爆発させる。この日一番の盛り上がり……と言いたいところだが、彼らは「WORLD IS MINE」「CLOSE EYE」と次々にその到達点を更新していく。完全にその場を掌握しつつも、「KOTORIがくれた場所、KOTORIがくれたみんなだと思っている」と盟友へ感謝する。それにしても「TORI ROCK」に集まったオーディエンスはAge Factoryの曲を歌えすぎる。郷愁を歌った「TONBO」、パーティーの終わりを描いた「Dance all night my friends」、そして清水英介(Vo, Gt)が“愛を込めて”と添えてから始まった「See you in my dream」など、優しく抒情的な歌詞と強固かつ感情的なサウンド、そして盛大なオーディエンスの歌声をCLUB CITTA’に轟かせていった。
photo by Kazuma Kobayashi
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「KOTORIのメンバーがbachoを好きって言ってくれるおかげでバンドの寿命が10年くらい伸びた」、そう話すbachoは<あいつはきっとやれるって言ってくれた君の事 見る目がないなんて言わせないようにしないとな>と歌う「ビコーズ」でライブを始める。北畑欽也(Vo, Gt)曰く“KOTORIに送る名曲”「最高新記憶」はもちろん、11月にライブ会場で発売される最新アルバム「Boy Meets Music」の収録曲も披露し、最新のモードの強さも見せつける。「決意の歌」では北畑がマイクを手に、フロアのファンはもちろん、ステージ袖にも目を向けながら歌唱。するとステージ袖で拳を握りながら見ていた横山が耐えきれずに飛び出しフロアにダイブ。bachoの音楽が衝動を焚き付けるものだと、改めて証明された。なお、彼らの持ち時間35分間、場内の照明はステージとフロアをオフホワイトのシンプルな照明のまま。彼らは飾らぬ姿で胸の内を曝け出していったのだった。
photo by MIki Kamada
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前日はライティングされたステージへ厳かに入ってきたKOTORIのメンバーだったが、この日は打って変わって、ビールを片手にふらりとステージへ。フロアからの「最高だー!」という言葉をうれしそうに受け取って、同じように「最高だー!」と返すなど、すっかりリラックスモード。そして「愛してるぜー!」と叫ぶと今年リリースの最新アルバム『KOTORI』の1曲目「LOVE」でこの日のライブをスタートさせた。2曲目に自身の決意を歌った「1995」を選曲したこの日。上京してすぐの思いを綴った「ラッキーストライク」のあと、今年リリースのアルバムに収録されている、横山いわく“10年間住んだ東京の曲”「東京」を選曲。「ラッキーストライク」では<東京にやってきました><いつかきっと誰かの自慢になれたらな>と歌っていた彼らが、「東京」では<生まれ変わってもまたこの場所で 君と出会って歌いたい 東京>と歌う。歌い終えたあと、横山は「やりながら“マジで仲間が増えたな”って思ってうれしかった」と、この10年間を改めて振り返った。この日の「素晴らしい世界」では、ギタリストとしてフロアからファン2名を招集。さらに、ボーカリストにbachoの北畑を呼び込む。上坂がbacho「最高新記憶」のイントロのフレーズを織り交ぜるなど、隅々までリスペクトを込めたコラボステージとなった。
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この日の出演バンドについて横山は「bachoはトリロック皆勤賞。いつもそばにいてくれてありがとうございます。yonigeはずっとお姉ちゃんです。今のyonigeが好きです。Age Factory、ちょっとやばすぎです。俺が高校生だったら絶対にバンド始めてるわ」と言葉を送ったあと、前日の1曲目にチョイスした「We Are The Future」で本編を締め括った。
7月にバンドを脱退した細川千弘(Dr)と、最後に考えた企画がこの「TORI ROCK」だったという。アンコールでは1曲目に「ラストチャンス」を、そして2曲目に“けじめとして”「さよなら」を選曲した。そして2日間を締め括ったのは「遠き山に陽は落ちて」。ステージには大きな夕陽。バンドの10年間で訪れた出会いや別れ、すべてを真っ赤に照らして「TORI ROCK FESTIVAL 2024」は閉幕となった。
アンコールで横山は「TORI ROCK FESTIVAL」は来年も開催するとさらりと告知をしていた。会場も日程もすでに決まっているという。どうやら、さらに規模が大きくなるらしいTORI ROCKが次はどんな景色を見せてくれるのか今から楽しみだ。
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