12月1日、Tempalayが『“Naked 4 Satan” Tour 2025』の追加公演で、ツアーファイナルとなる東京公演をZepp DiverCity(TOKYO)で開催した。8月に新章の始まりを告げるEP『Naked 4 Satan』をリリースし、11月から全国6会場を回った今回のツアー。スタジオではないスペースを1ヶ月借り切った「Tempalay House」でのEP制作を経て、さらに相互理解の深まった現在のバンドの状態の良さを感じさせる、濃厚にして強烈なライブだった。

開演時間を過ぎて場内が暗くなると、タワーのような直方体のLEDスクリーンに映し出される映像、インダストリアルなサウンドFX、デザインされた照明が同期して、早速TempalayらしいSF的な世界観を作り上げる。そんな中にサポートメンバーを含む6人が姿を現して、ライブは『Naked 4 Satan』の収録曲である「かみんち」からスタートした。
『Naked 4 Satan』ではこれまで以上にポストプロダクションが重視され、「これライブでどう演奏するんだろう?」と思っていたのだが、サンプル音源をイマーシブな音響で鳴らしつつ、今年からサポートに参加し、サンプラーも担当する高田風が小原綾斗とツインギターを鳴らして、藤本夏樹が多彩なビートを叩き、音源以上にクラウトロック的なライブアレンジの「かみんち」は抜群にかっこいい。

そこからシームレスに「未知との遭遇」を続けると、序盤でいきなり「my name is GREENMAN」へ。スタジアムロック的な雰囲気を作り出すTemapaly随一のライブアンセムをこの位置に持ってくるという時点で攻めの姿勢が伝わるというものだが、ベースの榎元駿(ODD Foot Works)、パーカッションの松井泉、ギターの高田がそれぞれ個性的なソロを回し、綾斗のファズギターが唸りを上げる怒涛の展開からは、バンドの演奏がさらに凶暴さを増したように感じられた。

綾斗とAAAMYYYが交互に歌う「とん」やオリエンタルな旋律の「ああ迷路」にしても、ループの気持ちよさはありつつ、アンサンブルがより有機的になっている印象で、同期に支配されるのではなく、それを土台に6人の音が躍動的に蠢くのが何ともサイケデリックである。

ヒップホップビートにスクラッチが絡む「Booorn!!」から、榎元のベースラインがグルーヴを担う「Superman」に続いて、「Odyssey」の前半のインストパートもツインギターを軸とした重厚なライブアレンジが施されていて、高田の存在はすでにTempalayのライブに欠かせないものだ。そして、ここで披露されたのが『Naked 4 Satan』からの「動物界」。波の音と鳥の囀りが場内を包みこみ、牧歌的なメロディーとともに夏樹がアフロビートを叩いて、ユーフォリックな雰囲気を作り出していく。2000年代のフリーフォーク、あるいは『Naked 4 Satan』を作る上でのインスピレーション源の一つだったというフレーミング・リップスあたりを連想させる要素があり、USインディを愛するTempalayの原風景を今によみがえらせる曲と言えるかもしれない。

再びオープニングのような緊迫感のあるサウンドFXが鳴り響くと、そこからセッションに突入し、綾斗のギターリフで「SONIC WAVE」へ。「ナナナ」の大合唱が起きる中、ライブ中盤のさらなるハイライトになったのが「EDEN」だ。音源よりも明らかにアグレッシブな演奏によってバンド全体がトランス状態に突入し、間奏では松井がシンバルを打ち鳴らし、夏樹がそれ以上のテンションでドラムを乱れ打つと、ラストは綾斗と高田が2人してステージ前方に出て行ってのツインギターで締めくくるという、息もつかせぬ展開がまさに圧巻。続く「預言者」でのAAAMYYYの歌声とエレピが一服の清涼剤となったものの、「大東京万博」では再び「らっせーら!」の合唱で盛り上がる。ここまでをほぼほぼ一気に畳み掛け、すでに充足感はかなりのものだ。

MCパートでは綾斗が「ご覧の通り、まあまあの命を削ってやらせていただいてます。ちょっと裏行ってきます」と、一度袖に引っ込んだこともあり、夏樹がその場を回してサポートメンバーを紹介して、「最高!」と叫んだり、紹介を受けたAAAMYYYも「どーもでーす!」と笑顔で応えたりと、それぞれがこの場を楽しんでいることが伝わってくる。「Tempalay House」を使った制作ではこれまで以上にメンバーが長い時間を共有し、個々がそれぞれの活動で培ってきた経験や知識を改めてバンドに還元したそう。結成10周年を経て、このタイミングで改めて相互理解を深めたことによって、バンド内の風通しが良くなり、その雰囲気のよさがライブにも表れていたのではないかと思う。「飽きたらどっかいってもらって結構なんで、僕たちはどんどんおもろいことにチャレンジしていきたいと思っております。あなたたちも面白がって、適当に生きてください。どうもありがとうございました」という綾斗なりの感謝の言葉から「人生は長いぞ!いちいち考えんな!」と話したのも、次へと進んでいく現在の前向きなモードの表れだと感じた。

ライブ後半戦はこちらも『Naked 4 Satan』からの「Magic」でスタートし、多彩な展開やビートが盛り込まれながらも、ロマンチックで美しいメロディーが耳に残る。そこから一転してミニマルテクノのような雰囲気になると、「NEHAN」ではカラフルでポップな映像がクラブ的なパーティー感を演出し、そのまま「新世代」を駆け抜ける。二胡のオリエンタルな旋律が記憶の旅へと誘う「今世紀最大の夢」に続いては、ここで今回のツアーではこの日のみ、「革命前夜」を演奏するサプライズ。シンプルな照明がバンドの演奏の魅力をストレートに伝え、途中で手拍子が起こり、もうすぐツアーが終わるという寂しさと満足感が入り混じったような、特別な一体感が場内に生まれていた。ラストはTemeplayらしい美しさが凝縮された名曲「そなちね」。綾斗がギターソロからのシャウトを決めてまずステージを去り、残った5人が夏樹を中心に音を鳴らし終えると、それぞれがやり切った表情を浮かべて挨拶をして、ツアーファイナルが終了した。

終演後には『Naked 4 Satan』の残りの一曲、AAAMYYYがメインボーカルを務めた「Bye」が流れる。<薄らぐ記憶にご挨拶 どこかでまた 会えるといね 話すべきこと 話せてたかな いつかの日々に>。決して短くはない、決して楽しいことばかりではない日々を積み重ねたその先で、今また新たな境地を切り開きつつあるTempalay。その途中経過というにはあまりにも濃密で、壮絶で、胸がグッと締め付けられるような約2時間。こんなバンド、やはりTempalayしかいない。



INFORMATION
Naked 4 Satan” Tour 2025
◼︎Tempalay
小原綾斗(Gt.Vo.)、 藤本夏樹(Dr)、 AAAMYYY(Syn. Cho.)からなるバンド”Tempalay”。3人の才気が絶妙なバランスで融合あるいは攪拌され、唯一無二の音楽像を創り出す。海外シーンと同時代的ながらもさまざまなジャンルやシーンを自由奔放に飛び越えたそのサウンドは、サイケデリックかつノスタルジックで、どこか日本古来の情景を想起させる。2015年9月にリリースした限定デビューEP「Instant Hawaii」は瞬く間に完売。2020年12月にはワーナーミュージック/unBORDEより、メジャーリリース第一弾となる配信シングル「EDEN」をリリース。結成10周年を迎えた2024年には初の東京・日本武道館でのワンマンライブを開催し、チケットは即完した。
Official Site:https://tempalay.jp/
X:https://x.com/tempalay/
Instagram:https://www.instagram.com/tempalay_from_japan/
◼︎Live Info
Tempalay presents “Fusion-HA.”
2026.04.02(thu) KT Zepp Yokohama
Open 18:00 | Start 19:00
2026.04.05(sun) Zepp Fukuoka
Open 17:00 | Start 18:00
2026.04.23(thu) Zepp Nagoya
Open 18:00 | Start 19:00
2026.04.24(fri) Zepp Namba
Open 18:00 | Start 19:00
2026.04.28(tue) Zepp Haneda
Open 18:00 | Start 19:00
Ticket –
¥7,000-(1F Standing)
¥8,000-(2F Reserved Seats)
¥5,000-(Under-20)
オウンドメディアメンバー最速先行
12.01 (mon) 21:00 – 12.15(mon) 23:59
https://tempalaytheplankton.jp/contents/1014324