MUSIC 2026.05.22

Live Report:Suchmos「The Blow Your Mind TOUR 2026」開幕 IOと刻んだ“境界線のない音楽”

Text_Shoichi Miyake
EYESCREAM編集部

音楽は、時間を待つことができる。2020年に開催予定だったがしかし、パンデミックの波に飲み込まれた対バンツアーの構想が、6年の時を超えて「The Blow Your Mind TOUR 2026」として5月14日、横浜の夜に産声を上げた。

Suchmosがリスペクトを贈るアーティストを招いた対バンツアー。神奈川公演のIO、愛知のGLIM SPANKY、大阪のくるり、福岡の長岡亮介、北海道のcero、宮城のハナレグミ、広島のGRAPEVINE、新潟のThe Birthday、そして東京の藤井風 ——このバンドの音楽的な間口の広さをそのまま体現したラインナップが全国9都市18公演に揃う。その初日だ。

逆光気味の陰影の濃いステージに登場したのは、IOだ。MELRAW(Sax./Gt.)、大樋祐大(Key.)、熊代崇人(Ba.)、荒田洸(Dr.)、KORK(DJ / MP) という精鋭を揃えたバンドセット。そこにSuchmosの対バンツアーに招かれたことに対するIOの真摯な姿勢を感じる。

KANDYTOWNで育んだストリートの流儀をソロに昇華してきたIOの色気が、バンドという器を得てさらに深みを増していた。MELRAWのサックスとギターがステージの熱量を定め、熊代崇人のベースが低域をどっしりと支え、大樋祐大のキーボードが空間を艶やかに埋め、荒田洸のドラムが全体の骨格を引き締める。ジャズとファンクを軸に、緩急豊かに練られたアンサンブル。「Racin’」ではKohjiyaが、「Trust Me」ではMALIYA & Shurkn Papが、「Lowkey」では再びMALIYAが前線に立ち、その客演の顔ぶれに、IOというラッパーの求心力をあらためて思い知る。

クライマックスはKANDYTOWNの盟友・Ryohuとの2曲。松葉杖をついたRyohuがステージに現れたとき、フロアに温かいどよめきが広がった。

続く「All in One(feat. IO)」はRyohuの楽曲にIOが客演する形。

言葉は少なく、パフォーマンスは雄弁。ラストの「左利きのBenz」でMELRAWのギターを軸にバンドがグルーヴの渦を作り、IOはどこまでもクールに、その渦の中心に立ち続けた。

そしてSuchmosへ。

メンバー6人がステージに現れ、YONCEが静かに口を開く。

「Suchmosです。どう楽しむか見させてもらいます、ご自由にどうぞ」

2026年2月に正式加入となった新ベース・山本連を迎えた新生Suchmosが、「MINT」でゆっくりとエンジンをかける。その山本とOKによるタイトなリズム隊、隙間を縫うTAIKINGのギター、TAIHEIのキーボード、Kaiki OharaのDJプレイが一体となって静かに熱量を上げていく。「Alright」ではロックとジャズとファンクが溶け合い、横と縦のグルーヴが自然に交差する感覚がより鮮明に。明らかにバンドとしての強度を増している新生Suchmosの音楽像がどんどん立体的になっていく。

初披露の新曲は、エイトビートとフォーキーなメロディにソウルのニュアンスをまとった、グッドロックソングである。2026年のSuchmos、そのロックバンドとしてのすっぴんを見た、と言いたくなるような素直さがそこにあった。同じく 新曲は一転、レアグルーヴを経由してきたような80sのポップネスを帯びており、どちらも今まで見せてこなかった新しいSuchmosの輪郭を鮮明に刻んだ。

そして「A.G.I.T.」では、サイケデリックでノイジーな、ほとんどグランジに迫る轟音が空間を支配した。「YMM」では、実に腰にくる山本連のベースソロが響き、TAIKINGはジミ・ヘンドリックスの「Purple Haze」のリフを引用してみせる。あるいは、「STAY TUNE」のパフォーマンスに色濃く滲んでいた現在進行形の軽やかなマインドと遊び心。とにかく、あらゆる瞬間がフレッシュなのである。

アンコールのMCでYONCEが言った。

「ゲストアクトを招いた対バンツアーが8年ぶり。すごい貴重な、面白いツアーになってるんじゃないでしょうか」

オーディエンスの大きな拍手のなか、ここでさらなるニュースが発表される。2027年3月から5月にかけて、約8年ぶりとなる全国アリーナワンマンツアー「Suchmos BAY SIDE TOUR 2027」の開催だ。仙台、福岡、横浜、神戸──”港”にゆかりのある4都市をそれぞれ2DAYSで回るこのツアーが、この夜の余韻にさらなる奥行きを与えた。

アンコールでは、Ryohuが再びステージへ。エレピの音色を背景に、YONCEが静かに語り始めた。
「出会いは11年前だった。あの頃の俺たちは明日のことなんて知らない、何も持たない男たちだった。そして、今日立つこのステージはあの日とは少し意味を変えてしまったけれど、俺たちとおまえの絆は変わらないはずだよね」

10年以上ぶり、リハなし、山本連にとっては初めての演奏となる「GIRL feat. Ryohu」。その余白がそのままセッション然とした演奏の熱に転化し、YONCEのファンキーなボーカルとRyohuのスムースでエモーショナルなラップが絡み合った。

「ヒップホップもロックも同じ音楽として、ここにある」

YONCEはそう言った。その言葉通りのことが、この夜のステージでは起きていた。あらゆるジャンルを飲み込み、境界線を溶かし、気づけばただ”音楽”そのものになっている。それがSuchmosというロックバンドの本質であり、2026年の彼らがより自由に、より深くその場所へと到達しつつあることを、このツアー初日は雄弁に証明していた。最後の「Life Easy」を終えたYONCEの言葉が、すべてを締めくくる。
「すげえ楽しかったです。今日が初日でよかったぜ!」

盟友たちと音楽を濃密に刻む、Suchmosの2026年の旅が、横浜から始まった。

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