現在実施しているスペースシャワーTVの“POWER PUSH!”とのコラボ連載でフォーカスしたバンド、OddRe:が自身初となるワンマンツアー『CODA』を7月上旬に実施し、東名阪のクワトロを大いに沸かせた様子。さすがである。
このツアーでは、ライターとフォトグラファーがバンドに同行し各日の模様を記録している。その密着レポートがEYESCREAMに届いたので掲載していく。3ヶ所を巡ったツアーなのでレポートも全3回。ファイナル、渋谷クラブクアトロ編をチェック!
7月8日 渋谷クラブクアトロ
「CODA」、ループの先へ
11:54
SOIとAirAは会場へ入ると、荷物を置いてすぐにステージへ向かった。
フロアで目を引いたのは、名古屋や大阪では見かけなかったターンテーブルとミキサーだ。ツアー初日にSOIが仕込んでいたシームレスな音の演出や初導入のレーザー照明に続き、東京ファイナルでは新たな機材 がステージへ加わった。理想として描いていた景色へまた一歩近づいたことが嬉しいのか、SOIはAirAに機材を一つひとつ説明し始める。話は次第に専門的になり、AirAは途中から置いていかれ、気づけばSOIは近くのスタッフと 機材談義に花を咲かせていた。
その表情は、名古屋初日とはまるで違っていた。名古屋では会場入りしてからもライブ用の音源や曲間のSEを完成させるため、開演直前までパソコンに向かい続けていたSOI。しかし東京では、ライブで使用する音源や追加アレンジ、新曲のミックスなど、抱えていた制作作業を前日までにすべて終えて会場へ入ってきたという。SOIの表情には、この日ようやくライブだけに集中できる安堵が滲んでいた。
対照的に、1人残されたAirAはどうにも落ち着かない。
「眠れた?」という問いかけには、「so-so」 と短く返ってくるだけ。何か動いていないと気が紛れないのか、ステージでドラムを運ぶスタッフの作業まで手伝い始める。ひとしきり体を動かして楽屋へ戻ると、今度はスタッフからトローチを受け取り、「こうなるはずじゃなかったんですけど」とぽつり。どうやら、喉の調子が万全ではないらしい。
12:18
サダが会場へ到着する。お腹の調子が悪く少し遅れたというが、スタッフと話し始めると、それだけで楽屋の空気はすぐに明るくなった。
そんなサダ、前日は1人でスタジオへ入り、ベースを猛練習していたという。少し前に観たN.S.DANCEABLE(「東京ゴッドストリートボーイズ」のレコーディングやライブサポートで参加している松浦千昇が所属するバンド)のライブに、ぶん殴られるほどの衝撃を受けたのがきっかけだった。「今まで自分は何をしてきたんだ」と圧倒され、このままではいけないと突き動かされるように、Daft PunkやIncognitoの楽曲をひたすらループする ストイックな練習を繰り返したという。
そこまで熱く音楽に向き合っていたサダだが、その帰り道の電車内、隣に座っていた青年が、どうもこちらを気にしている。エメラルドグリーンの髪に、手元にはベース。『もしかして、OddRe:って気づかれた?』と自意識がよぎった瞬間、声をかけられた。
「すみません、バンドメンバーを探しているんですけど、興味ないですか?」
予想は見事に外れた。ついこの間まで素人だったものの、2月にメジャーデビューを果たし、今日まさにクアトロでライブをするバンドマンなのだと、自分を過信していたかもしれない。まさかの<バンドメンバーのスカウト>だったのだ。もちろん受けるわけにはいかないが、話を聞けばその青年はパンクバンドが好きで、サダのビジュアルを見て「もしかしたら気が合うかも」と声をかけたらしい。どうやってメンバーを探したらいいのかと純粋に悩む青年に、サダは親身にアドバイスを送った という。
楽屋でそんな面白おかしいエピソードを披露しながらも、やっぱりお腹の具合はまだ波があるようで、サダは太田胃散の粉薬を水で静かに流し込んでいる。フッと笑えるやり取りの裏側で、彼女がステージにかける執念は本物だ。
周囲からの評価が高かった大阪公演を経てなお、サダとAirA自身には「まだできる」という感覚のほうが強かった。だからこそ東京までの数日間、サポートの吉田を含めた3人でスタジオへ入り、課題をひとつずつ潰してきたという。「今日のほうが、できるかもしれない」――その確かな期待の裏には、ファイナル特有の緊張もあった。サダは数分に1回、緊張が溢れ出るタイミングで言葉にならぬ声を発していた。
先ほどから喉への不安を抱えるAirAは、相変わらず言葉数が少ない。
オフィシャルカメラがAirAをとらえ、ツアーについて聞かれると、「ライブが好き。ツアーが好き」 と小さく笑う。好きだからこそ、万全ではない状態でステージへ立つことが人一倍怖いのか、SOIはそんな彼女を気遣ってか何度もちょっかいを掛けるが、その表情はなかなか晴れない。本番の時間は刻一刻と近づいていた。
14:43
リハーサル前の打ち合わせ。名古屋、大阪と比べると驚くほど短い。
吉田はすでにステージでドラムチェックを始めており、SOIは必要な変更点だけを2人に共有する。
「今日は3人それぞれ話すMCもやってみよう」
名古屋、大阪でも案に上がっていた内容はすぐに受け入れられ、初日に山ほどあった確認事項が、東京では数えるほどになっていた。
15:16
サダがアップライトベースを鳴らす。名古屋では恐る恐る触れていた楽器を、今では自然に弾いている。そんな彼女の横でSOIはこれまでと変わらず、自身の耳ですべての音を入念に確認。ベースの音の硬さに耳を澄ませ、「もう少しシルキーにしたい」と音響スタッフへ具体的に伝える。AirAはいつも以上に念入りに身体を伸ばし、声を出していた。一音ずつ押し込むように歌を確認していく。
15:39
全員で音を合わせる。1曲終えると、SOIが笑った。
「一発でドンピシャ。ばっちりです」
初日の名古屋では全体のバランスを確かめるために幾度となく客席へ降りていた彼だが、この日はほとんどステージを離れようとしない。東名阪の2公演を経て、メンバーとスタッフの間にはすでに、言葉を交わさずとも通じ合う確かな手応えが共有されていた。
その安心感に背中を押されるように、最初はまだ歌うことに集中していたAirAの身体が、曲を重ねるごとに自然と動き始める。ステージをジャンプし、3人で向き合って音を鳴らすうちに、不安げだった声にも本来の伸びやかな力が戻ってきた。
そんな心地いいグルーヴの最中、突如SOIのギターの1弦が切れた。予期せぬトラブルだったが、張り替えを待つ間、彼は小学生の頃に母親から譲り受けたというFender Japanのギター を代わりに手に取る。ひとたびストロークすると、SOIの表情が変わった。
「こっちのほうが音がいい。太い」
子供の頃から家にあったという年季の入った1本が、このアクシデントによって、そのままツアーファイナルのステージへ急遽加わることになった。
東京公演で新たに追加される展開も相まって、爆音がクアトロに鳴り響くたび、3人のテンションはさらに一段へと跳ね上がっていく。
16:44
「やりたかったところは一通り終わった」
SOIのひと言でリハーサルは予定より早く終わった。必要な確認を時間内に終えられたのは、このツアーで初めてだった。
楽屋へ戻ると、次のツアーを告知するポスターが届く。初めてのツアーがまだ終わっていない楽屋で、すでに次のツアーの話が始まっていた。SOIはポスターを眺めながら、「ライブをずっとやっていたい」 と呟く。サダはエナジードリンクを飲みながら「あー!」 と叫び、再び緊張し始める。AirAは鏡の前で静かに座り続けていた。
18:36
開演まで約20分。AirAが立ち上がる。
「なんとかなるでしょう!」
その言葉を聞いた途端、今度はサダが落ち着かなくなり、楽屋を歩き回り始める。
「今日、緊張するね!」とSOIが煽ると、「いやー!」 と叫びながらサダは楽屋を飛び出していった。
18:57
ステージ袖。
サダは自分のフレーズを歌いながら声を整える。
AirAは「吐きそう……」と弱音を漏らし、SOIは「緊張してねえし!」と笑う。
そして毎公演のルーティン、円陣。
「ファイナル。この景色を忘れないように。緊張を捨てろ!」
誰より楽しそうに見えるSOIもまた、声を張ることで緊張を振り払っているように見えた。
開演前までフロアで流れるのは、メンバー自身が選曲した会場BGM。開演直前のタイミングで、Daft Punkの「Around the World / Harder Better Faster Stronger」のライブ音源が鳴り始める。全会場を通じて開演の合図となってきたこの曲は、本ツアーのテーマである<ライブハウスをクラブ空間にする>という演出と深くリンクしている。
曲の終わりとともに照明が落ち、暗転したクアトロのステージに3人が現れる。
AirA(Vo)
地鳴りのような歓声と共に、1曲目「FEVER TIME」が放たれた。待ちわびたファンの手拍子がクアトロを揺らす中、SOIは視線で観客を煽り、サダも最初から肩の力が抜けたリラックスした表情で演奏を楽しんでいる。
ユウキ サダ(Ba/Vo)
続いて披露された2曲目の未発表曲。背後からの鮮烈な照明がステージを突き抜けると、3人のシルエットが浮かび上がる。名古屋、大阪と回ってきたツアーを経て、そのシルエットには確かな厚みが加わっていた。輪郭を際立たせる光の中で、彼らはかつてないほど一体となって音を鳴らしている。
SOI ANFIVER(Gt/Comp/Trackmaker)
中盤、フロアを包む空気は大きく変化した。「睡る君」の繊細なメロディに続き、新曲を投下する頃、AirAの歌声はより一層の色彩を帯びていく。続く「shiori」を歌い始めた時には、彼女の声は完全に解き放たれ、開放的で伸びやかな歌声がクアトロの隅々まで響き渡った。<ひとつひとつ分かってくんだ>というフレーズは、まるでこのツアーの伏線を回収するかのように、静かに、力強く会場に響く。
そして本編終盤。このツアー最大の爆発点となる「CRASH OUT!!!」が投下される。低く唸るベースとともに、新たに加えられたDJパートがフロアを飲み込む。東京公演のために追加されたその展開は、音圧が幾重にも積み重なり、会場全体を巨大なダンスフロアへと変えていった。鋭いレーザーが無数に走り、客席を埋め尽くした観客は、その光に導かれるように一斉に跳ねる。誰ひとり取り残されない。名古屋、大阪で少しずつ磨き上げてきた<クラブ空間>というコンセプトが、この瞬間に完成したように思えた。
曲が終わっても歓声は鳴り止まない。その熱量を引き継ぐように「Revival」のイントロが鳴ると、むわっとした熱気がフロアを包み込む。ステージも客席も境界がなくなり、ライブハウス全体がひとつの熱量で脈打っていた。
そして本編ラストは「東京ゴッドストリートボーイズ」。名古屋や大阪の観客の反応から細かな修正を重ね、東京ではSOIと照明スタッフが最後までブラッシュアップを続けた1曲だ。リフと照明が完璧なタイミングで呼応し、その一瞬ごとに歓声が大きくなる。3日間かけて積み上げてきた試行錯誤が、東京ファイナルでようやく一つの形になった。
熱が冷めやらぬ中、本編が終了。
アンコールの拍手に導かれ、再びステージへ現れた3人。AirAが「最高の景色だと思う。この景色はずっと忘れないと思う」と静かに語り、サダも「夢みたいだ」と笑顔を見せる。
「このツアーは、僕の中では『Revival』のツアーなんです」
SOIはそう切り出すと、ツアータイトル「CODA」に込めた思いを、ゆっくりと言葉にし始めた。
「音楽って、基本的には大きな円を描くようにループしてる。でも、そのループを抜けて、楽曲の終わりへ向かう印が『CODA』なんですよ。俺らはライブを始めてまだ1年くらいだけど、こないだまでそっち(フロア)でライブを観ていたのに、いつの間にかここに立っていて」
SOIが音楽にのめり込むきっかけとなったのは、少年時代にライブハウスの最後列から見た、ステージに立つ大人たちの背中だったという。憧れを胸に音楽の道へ進んだSOIは、その後も夢を追い続けてきた。
「夢を追いかけたら何回も挫折するし、そのたびに立ち上がらなきゃいけない。その繰り返しだった。たぶん、これからも俺らはそのループの中にいると思います。大人だから分かるけど、この繰り返しはきっと終わらない。だけど今日くらいは、『夢は叶うんだ』っていうメッセージを掲げたかった。 だから『CODA』という名前をつけました」
「みんなも毎日のループがしんどいことはあると思う。でも、そのループをビートだと思って踊ってほしい」
本編終盤に披露された「Revival」は、今年2月にリリースしたOddRe:のメジャーデビューシングル。”復活”をテーマに掲げたこの楽曲を起点に、SOIは今回のツアーを構想していた。
そして、その先に掲げた一つの節目が「CODA」だった。
人生は繰り返す。夢を叶えてもなお、人は迷い、立ち止まり、また歩き出す。その終わらないループを否定するのではなく、音楽のようにビートとして受け入れ、踊り続けようとすること。それこそが、SOIが「CODA」に込めたメッセージだった。
リハーサルでのアクシデントから急遽ステージを共にする運命となった、母親のお下がりのギターを掲げたSOIが叫ぶ。
「耳かっぽじってよく聴けよ! 最後尾の俺! こっからがお前らのFEVER TIMEだ!!!」
その叫びとともに放たれたラスト2曲。彼らはループを抜け出し、自分たちが描いた物語を一直線に証明してみせた。
20:10
全編終了。ステージを降り、楽屋へ戻ってきた3人の表情には、出し切った者だけが持つ高揚感があった。SOIが「最高!生きてる!」と叫び、サダが「楽しかった!」と応じる。AirAはライブで全てを出し尽くしてヘロヘロになりながらも、充実した表情で楽屋のソファに座った。
ファンクラブ動画用のカメラが回り始めると、3人は燃え尽きたような笑顔を浮かべていた。SOIが「出し切りすぎて充電残り1%」とこぼすと、AirAとサダも大きく頷く。今夜の渋谷は、これまでのOddRe:史上でも屈指の熱気に包まれていた。その景色を目の当たりにした3人の表情には、大きな達成感が滲んでいた。
SOIは「自分のキャリアの中でもトップクラスのライブだった」と振り返り、AirAは「この景色は一生忘れない」と言葉にする。そしてサダは、「自分たちを見てバンドを始める人が増えたら嬉しい」と話した。初めての東名阪ワンマンツアーを走り切った3人には、この日の成功だけでなく、その先に広がる未来まで見据えているようだった。
ファンクラブ動画の撮影を終えると、サポートギターの吉田もメンバーに声をかける。「ライブ自体は3本とも同じセトリやったけど、初日にやったことを大阪で試して、東京ではさらによくなってた。これがツアーなんだなって」。その言葉にSOIも「こんなに上手くいくと思ってなかったですよ」と笑顔で応えた。
スタッフとの談笑の中で、AirAは今回のツアーで得た成長を振り返る。「MCもそうですけど、演奏面でもリズムの取り方や歌の強弱で学ぶことがたくさんあって。 今までは勢いでやっていた部分までちゃんと考えられるようになりました」。
一方のSOIは「今日はちゃんと寝ます。明日には新曲の作業があるので一旦寝る。でも止まってはいられない。止まる理由はない。まだまだ行きましょう」と笑った。
21:53
まずAirAとサダが、続いてSOIも会場を後にした。AirAは家族のもとへ、サダは「やっとぽむに会える」と約1か月ぶりに愛兎の待つ山梨の実家へ、SOIはスタッフとの軽い打ち上げへ。それぞれの帰路についた。
OddRe:とは何者か。心の揺らぎさえ隠さず歌へ乗せるAirA、音楽への尽きない好奇心と行動力でバンドを前へ押し進めるサダ。そして、挫折と復活という終わりなきループを、執念で音楽というビートへ変換するSOI。この三者が重なり合い、時にぶつかり、時に呼応しながら形成されたOddRe:という生き物は、このツアーを通じてより純度を増した。ループの終わりではなく、その先へ踏み出すための一歩。それが、この夜クアトロで刻まれた「CODA」だった。
VIDEO
Setlist
「OddRe: 1st ONEMAN TOUR “CODA”」
01. FEVER TIME
02. 新曲
03. 睡る君
04. 新曲
05. 黄泉還
06. shiori
07. CRASH OUT!!!
08. Revival
09. 東京ゴッドストリートボーイズ
アンコール
10. FEVER TIME
11. ai my me
INFORMATION
OddRe:
OddRe: JAPAN TOUR 2026
“UNDERGROUND MIRRORBALL”
2026年10月30日(金)
東京・LIQUIDROOM
開場18:15 / 開演19:00
2026年11月1日(日)
北海道・cube garden
開場17:00 / 開演17:30
2026年11月12日(木)
福岡・DRUM Be-1
開場18:30 / 開演19:00
2026年11月14日(土)
広島・SIX ONE Live Star
開場17:00 / 開演17:30
2026年11月26日(木)
宮城・MACANA
開場18:30 / 開演19:00
2026年12月11日(金)
愛知・THE BOTTOM LINE
開場18:15 / 開演19:00
2026年12月12日(土)
大阪・BIG CAT
開場17:15 / 開演18:00
【追加公演】
2027年1月8日(金)
東京・Spotify O-EAST
https://oddre.jp/