MUSIC 2026.11.04

Interview:荒田洸、ソロ再始動。視覚と聴覚の往来から。

Text_Momoe Hanatsumi,Photography_Hikaru Arata, Takumi Kawashita
EYESCREAM編集部

WONKのリーダーであり、ドラマー、サウンドプロデューサーの荒田洸が、約5年ぶりにソロ活動を再開する。
近年はバンド活動に加え、STUTS率いるMirage Collectiveへの参加、アーティストやブランドへの楽曲提供、サポートワークなど、幅広い領域で音楽に携わってきた。その一方で、映像監督としても活動し、音楽を生み出す側でありながら、音楽家を被写体とし映像で表現するという新たな一面を見せてきた。
2026年にはシングル3作を突如リリース。11月6日(金)に渋谷で開催される都市型イベント「MO ( ) TOKYO」(モー・トーキョー) で、久々のライブパフォーマンスを控える。ソロ名義での作品発表から約5年。その間に何を考え、何を見つめてきたのか。視覚と聴覚、それぞれの表現にのめり込む中での意識の変遷と、新たなステージへの意気込みを聞いた。

ーそもそも、「荒田洸」名義のソロ活動の初期衝動はなんでしたか?

荒田:多分2018年かな、早速記憶がない上に、だいぶあるあるな理由かもですが「バンドではできないことをやろう」という感じで始めました。音楽的に自分が通ってきてるフォーク、例えばJames TaylorとかPaul Simonとか、そのあたりをやりたいなと。YouTubeでPaul Simonの「Still Crazy After All These Years」のカバーをあげたこともありましたね。そういう路線を探求しようと思っていました。

荒田洸 – Still Crazy After All These Years(cover)

荒田:とはいえ、WONKでも『artless』(2022)、『Shades of』(2024)あたりで、自分の通ってきた音楽を消化できるようになってきたんです。あと、WONKの制作は毎回地獄を見るというか、マジでしんどい。自分自身をだいぶ追い込んできたので、ソロどころではなくなったんですよね。そういうフェーズから時間が経ったので、最近ソロで改めて作り始めた曲たちは、これまでとは、環境も心境も全然違う。再・再スタートという感じです。

ー今年リリースしたシングル3作を聴いても、その変化は歴然という感じがありましたね。

荒田:はい、過去作とは全然違いますね。でも、自分的には「第二章」と区切ってやってる感じではないです。前作のアルバム『Views of Panorama』(2021)に「Night Construction」という曲があるんですけど、そこと地続きで。この方向性は昔から自分の中にあったものなんです。前のアルバムの制作は、基本的に翔さん(小川翔/ベーシスト)と一緒にやったり、「バンドっぽい作り方」をしてました。制作中にそれぞれから影響を受けながら作るというか。それはそれで好きなんですけど、今回からのソロはだいぶ心機一転で、一人でずっと作る感じで、本当にソロ的というか。それと、打ち込みっぽいサウンド感になってきていますね。もともと、音楽を始めた時もビートメイク的にはじめたので、原点回帰でもあるし、巡り巡って、っていう感じもあるっすね。

ー5年ぶりの再始動ですが、「今」がなぜそのタイミングなんでしょうか。

荒田:理由のまず一つ目は、マネージャーからめちゃめちゃ煽られている。これが第一の理由です(笑)。それと今、映像を本格的にやりはじめて2年くらい経ったんです。音楽番組作ったり、MV作ったり、広告のディレクターやったり。それをやればやるほど、「自分の軸足は音楽にある」って強く気付かされるんですよね。軸足は音楽にある。だから、音楽やんないとって。いろんな現場で、「撮る側」として音楽家やアーティストと向き合う機会もあって、そこで受ける刺激が自分自身に返ってきた感じがあります。

Kohjiya – Lost Friends (Official Music Video)| Director – Hikaru Arata

REJAY – Hangover feat. Andr (Music Video)| Director – Hikaru Arata

荒田:番組企画の立ち上げから担当して、監督もしている音楽ドキュメンタリー番組「ONENESS」で、角野隼斗くん、MARK(NCT在籍当時)、YUTA(NCT127)、Yu Seki+Yohji Igarashi と様々なアーティストを迎えて、特にそういう跳ね返りを感じてきました。

Yu Seki & Yohji Igarashi – SUPERMARKET Live from ONENESS| Director – Hikaru Arata

ー自らも音楽を生む側でありながら「音楽ドキュメンタリーの監督をする」ってわりとレアケースですよね。特に印象深かったアーティストや現場はありますか?

荒田:どの回も強く影響受けてますけど、未だに記憶にめちゃくちゃ残っているのは、NCT127のYUTA君のソロの回です。造船場での撮影で「今からリハーサルです。一応、カメラで撮っておきますね」みたいな感じで伝えてからカメラを回したんですが、「あれ、俺、リハって伝えたよね?」って周りのスタッフに聞いちゃうくらい、完全に圧倒されました。最後、倒れ込んじゃうみたいな。YUTA君にはまた会いたいですね。

自分は、パフォーマンス系の音楽をやろうとは思っていないんですけど、そこを参考にするというよりは、YUTA君の姿勢がひしひしと伝わってくる感じ、自分も真摯に音楽と向き合わないとなとマジで思いましたね。

Photography_Takumi Kawashita

ー映像やスチールなど、この数年、特に視覚表現にのめり込んだきっかけはなんですか?

荒田:映像監督としての仕事はこの2年くらいですかね。元からずっと視覚表現には興味があったし、ずっと関わってきた感じがあります。WONKやEPISTROPHのアーティストのジャケットなども昔からディレクションしてきてますし、MVも制作段階のアイディア出しから、かなり入ってきました。この2年で一気に外の仕事として受けるようになったという感じで。結局のところ、多分自分はノンバーバルな、非言語的な表現が好きなんです。活字とかは読めないけど、アートブックとか写真集とかは猛烈に海外から取り寄せて、「こういう表現やってみたい」とか、撮りたい構図とか演出のことばかり考えてます。

ー大学時代は美学美術史学専攻に転向した経歴も。その頃から、表現への興味というのは明確にあったんですか?

荒田:転部する前、SFCの環境情報には1年しかいなかったんですけど、今振り返ってもすごくいい経験でした。学祭で音楽系の研究室の人が部屋を真っ暗にして、音楽を垂れ流してたんです。macから壁に図形を照射して、三角形とか四角形が2,3個あって、その外周に沿ってなんか小さい点が動いてるんですよ。それで頂点に達すると音が鳴るっていうシステムで、つまりはランダムに音が鳴るんですけど、その研究室の人たちが何のビートもないのに乗ってるんですよ。軽く踊ってるとかじゃなくて、踊り狂ってる感じ。それを見て「カオスすぎるやろ、もはやビートとか関係ないんだな」って衝撃を受けました。彼らにとっては、リズムってもしかしたら数値とか幾何学なのかもしれないし、音が鳴ること自体の捉え方ってこんなに広いのかと。美学科に行ったのは、「作ること」そのものじゃなくて、批評とか作家や作品研究を通じて「作ること」に対して、これまでどういう人たちが、どういう作品が、どういう背景や経緯で作ってきたのかを、一度勉強しようと思ったんです。親がグラフィックデザインの仕事をしていて、小さい頃から死ぬほど美術館とか展示に連れていかれていたので、その影響も知らず知らずのうちに受けてるんでしょうね。

ー音楽は、もうその頃から作ってましたか?

荒田:音楽は作ってましたけど、音楽に限らず、手を動かすのが好きで、よくシルクスクリーンとかやってました。友達との DJイベントがあったら、Tシャツ作ってみんなに配ったり。WONKの話になりますけど、最初「バンドの名前、どうしよう?」って命名会議があった時に、僕が大学時代に作ってた Tシャツを着ていて。そこに「WONK」って書いてあったんですよ。実は、幻のWONK Tがあって、WONKになりました(笑)。音楽にしろ、シルクスクリーンにしろ、ごく自然な所作というか、生活の中に「作ること」があった。今もその延長線上にいる感じです。

ー「手を動かす」というくだりで思い出したんですが、別の現場で荒田さんと映像仕事をした時に、監督という立場でこんなにも泥臭いことをやっているんだと驚きました。

荒田:そうですね、僕はおそらく「カラコレ(カラーコレクション)とカラーグレーディングとかを死ぬほどやってるミュージシャン」です(笑)。編集もがっつり入りますけど、もうとにかく全ての細部が気になる。このあたりも、めっちゃ音楽と繋がってんなって思ってるんですけど、よく「え、そこ、任せちゃうの?」って思うケースってあるんですよ。映像で言えば、グレーディングもグレーディング専門の会社がありますし、音楽もミックス作業をその領域のプロに委ねたりするわけなんですけど、いずれにせよ、そのプロに任せたからといって劇的に変化するという感じじゃなくて、まずこちらがしっかり作り込んで、それをプロの領域でさらに良くしてもらうのがいいんじゃないかと思ってます。「自分の作品なのに、自分の音なのに、大事なところを人任せにしていいのか?」と問いたくなる。

ーなるほど、そうやって「作る」こと自体を掘っているんですね。でも、細部まで自分で引き受けるとなると、唯一解があるわけではないし、結構しんどくないですか?

荒田:しんどいです。しかも、なんか最初の頃よりも迷うようになりましたね。もう何が正解かわからなくなってきてる。自分は野球をやってたんで、スポーツって圧倒的に「解」があったなと思ったりします。そこが潔いし、引退してからより一層憧れてしまう。それでも、それこそEYESCREAMで佐藤卓さんと話をさせてもらった時(https://eyescream.jp/culture/135790/)に、卓さんクラスでも「迷ってる」って言っていたんで「じゃあいっか」と思ってます。それなら自分も楽しく迷おうと。しんどいけど、しんどくて楽しい。それがやり続ける意味かもしれないですし。
それと、迷う時ってたいてい「外」を意識しちゃってる感じがする。外の理由からきている。ソロは、もう自分が作りたいから作ってるんで、お客さんがたまたま喜んでくれたらラッキーというか、ありがたいなと思いますけど、自分が好きで作ってる、純粋な感じなんですよね。自分がテンション上がるか、自分がいいと思うかだけに集中できるようにと思ってます。どう見られたいか、どういう意味があるべきか、から脱却する。いずれ、人は死ぬので。そういう意味で、いろんな現場で「音楽は趣味です」って言っていたんですけど、最近は明確に「音楽は使命」だと思ってますね。それでソロの曲を作り貯めてます。

ー11月6日にはソロ再始動後初のライブも控えていますが、どんな構想があるんですか?聞いてよい範囲で教えてください。

荒田:今回出演する「MO ( ) TOKYO」のイベント自体が、センターステージなんですよね。なのでできる限り「外」を意識しないで、好き勝手やれたらいいなと思っています。メンバーは、MELRAW(安藤康平)、小川翔、角田隆太(モノンクル)、あとはMirage Collectiveで一緒になった高橋佑成くん。佑成くんはレコーディングはご一緒してますけど、ライブは初めてです。イベント自体も、DJとか生け花のパフォーマンスがあるし、ご一緒したことがない人が多いので面白くなりそうですね。

ー最後に読者に一言お願いします。

荒田:そうですね。WONKメンバーの井上幹からの言葉を借りるんですけど、「みんな、ものづくりをした方がいい」です。「ものを作ったほうが楽しい人生だよ」って幹さんが言ってました。僕もそう思います。(終)

荒田洸 Hikaru Arata

サウンドプロデューサー / フィルムディレクター
日本のエクスペリメンタル・ソウルバンド「WONK」のリーダーであり、ドラマー。バンドのコンポーザーとして中心人物の役割を果たす傍ら、サウンドプロデューサーとして数多くのアーティストへの楽曲提供やブランドの音楽タイアップを手がける。
近年は音楽活動と並行し、映像監督(フィルムディレクター)としての活動にも本格的に注力。独自の音楽的感性とリズムへのアプローチを視覚表現へと昇華させ、ミュージックビデオやブランドのクリエイティブディレクションなど、音と映像をクロスオーバーさせるマルチクリエイターとして活動の幅を広げている。

■ RELEASE INFORMATION
最新シングル『Fade into Silence』が11月4日より配信開始。
配信リンク:https://linkco.re/yt8zZCFu

9月25日リリース シングル『Water Trace』
配信リンク:https://linkco.re/SFNZbrqy

■ LIVE INFORMATION
11月6日(金) 渋谷ストリームホール 5F/6F MO( ) TOKYOに荒田洸がバンドセットでのライブ出演が決定!

INFORMATION

「MO( ) TOKYO」(モー・トーキョー)

開催日:2026年11月6日(金)
時間:17:00 open, 22:00 close
会場:SHIBUYA STREAM HALL(渋⾕ストリームホール)
価格:ADV:¥5,800 + 1DRINK ORDER、DOOR:¥6,800 + 1DRINK ORDER
U-30 ¥2,000 CASHBACK
※30歳未満の前売りチケット購⼊者を対象に、当⽇受付で⾝分証明書をご提⽰いただくことで¥2,000をキャッシュバックいたします。
※別途1ドリンクオーダーが必要です。

◼︎LINEUP
・5F・6Fの有料エリア
< LIVE > Hikaru Arata (WONK) / Mariana Matsui × Ryota Hagiwara / es the showy steez
< LIVE + DJ > Elle Shimada b2b SAMO feat. NAGAN SERVER
< BEAT LIVE > 3icrowave / vq / Of The New World
< DJ > DJ Quietstorm + Zen Masuta / YUVIE b2b BAKU / SAKURA b2b Tamanaramen + Secret Guest
・4F MARKET FLOOR ̶ FREE ENTRY
FLEA MARKET / USED CLOTHING / GOODS / TATTOO / DJ and more
※4Fマーケットエリアはチケット不要・⼊場無料です。5F・6Fへの⼊場には有料チケットが必要です。

販売サイト:https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2671564

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