MUSIC 2018.07.15

FOCUS : cero 膨大な生命力を放つ 2018ジャパニーズポップス
from EYESCREAM NO.166

Photography—Kiyotaka Hamamura Text—Ryo Tajima
EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

去る5月16日に4作目となるニューアルバム『POLY LIFE MULTI SOUL』をリリースしたcero。現在発売中のEYESCREAM 7月号では、約3年ぶりのリリースとなった今作について、彼らから話を伺った。ダンスミュージックでありオルタナティブ。そんなトラック群について語られたインタビューをWEBでも公開。今一度、彼らが奏でる軽快かつ繊細なサウンドに酔いしれていただきたい。

ーアルバムを通して、歌詞にダンスを連想させる言葉が多くありますが、そこに至った経緯を教えてください。

髙城晶平(以下、髙城)「今作『POLY LIFE MULTI SOUL』には、ポリリズムの構造が入った音楽が数多く収録されているのですが、その音楽性を追究していく方向としてダンス、つまり体を動かすということに着目するのが、もっとも整合性が取れていると思ったんです。」

ーそれはライブも想定されてのことだったんですか?

髙城「いえ、ダンスの様式を僕らから決めるような意図はないですね。横ノリ系、縦ノリ系といった型には収まらないダンスミュージックが詰まった作品だと思うので、体の動かし方は聴いてくれる皆さんに委ねたいです。ライブに来てくれた人が、各々違う動きをしているフロアをステージ上から見ることができたら嬉しいな、と考えていますよ」

ー前作『Obscure Ride』と共通していると感じたのですが、作品を通して聴くと、どこかノスタルジックに感じる部分がありました。

髙城「そう感じられる印象もあるかもしれないのですが、僕の中では、前作と今作ではキャラクターが違うように捉えています。どちらも同じ境界線を取り扱っている作品ではあると思うんですけど、前作は生きている世界から死んでいる世界へ向かっていく感じ。今作は逆に、死んでいる世界から生きている世界へ。死んだ人が子供に転生して、元の世界に戻っていくような、そういうベクトルを無意識に感じるというか。楽曲がすごく生命力に満ちていて熱量を感じるんですよね。ぐーっと流れに遡るような、抗うようなパワーというか。そういう意味で舞台は一緒だけど決定的に異なるものだと思います」

ー前作から今作までの約3年という期間で、制作のスタイルに変化はありましたか?

荒内佑(以下、荒内)「ここ3年ではないんですが、前作から作品ごとにコンセプトを立てて、そこに則すような楽曲を制作する、ということを意識的にやっていて、今作には、その意思が強く表れていると思いますね。1stや2ndを制作していた時期は、自分が良い音楽を聴いたら、それを取り入れたいと感じる部分も多かったのですが、今は良い音楽をリスナーとしては聴くけれど、作り手としては別のものとして考えています。作品自体のプレゼンとして伝わりやすいように考えて制作しているので、そこは変わった部分かな、と」

ループさせていくことで色んな言葉が聞こえてくる。意味が変化していくような表現ができたら面白いな、と。

ーceroの音楽は和製ブラックミュージックと称される表現をしていますが、そこを追究することはバンドのテーマとして捉えているんですか?

荒内「単純に、好きだからやっているというのが根本にあります。自分たちが好きなブラックミュージックを紹介しようというつもりはないんですよ。海外の音楽を聴いてローカライズするんじゃなくてハイブリッド化し、ワールドスタンダードなものをつくりたい。歌詞が日本語だから国外では通用しない、というのはほとんど日本人の思い込みだと思うんですよね」

ー日本語で歌うということにはceroとしてのこだわりが?

髙城「今に始まったことではないですけどね。ブラジルの音楽などを聴いて、やっぱり言葉が変わると音楽の性質自体がすごく変わるものだと思うんです。例えば、ブラジルにビートルズに触発されたバンドがいて、自国の文化であるサンバやボサノバを取り入れて、ポルトガル語で新しいポップスを作ろうとした結果、ビートルズとは、まったく違う音楽ができあがったとするじゃないですか。そこには言葉が1つの強い要因になっていると思うんですよね。何か魔法をかける秘密がそこにあるような気がしていて。それは日本語でも言えるんじゃないか、と考えているので、日本語で歌うことの可能性の方を探っていこうと思っているんですよ」

ーアルバムのラストの楽曲ですが、歌詞の最後にある「かわわかれわだれ」という言葉が強く耳に残りました。あれはどういう意味なんですか?

髙城「アルバムの最終曲『Poly Life Multi Soul』ですね。最初はその部分の歌詞が空いていたんですよ。ただ、タタタ・タタタって3つの言葉で区切られる音が入っている状態でした。そこに3つで収まらない良い言葉を入れ、ループさせていくことで、どんどんアクセントが変わり、意味合いも変化していくような仕掛けを作れないかってことを皆で話して考えていたんですよ。この言葉をずっと繰り返すと、『川は枯れ、彼は誰、誰かは別れ』と、色んな言葉が聞こえてくる。ループさせていくことで意味が変化していく、というのはアルバム全体に言えるテーマと近いですし、それを端的に表した手法で面白いと思ったんです。アルバムの制作を進めていくうちに、最終的に、それが随所に現れるようにしていったんです」

荒内「視点を変えることで、それまであったものが変わって見えてきたり、違うものに聴こえてくる、そういうことを音楽で表現できたら面白いと思うんですよね」

ー今作『POLY LIFE MULTI SOUL』には総じてceroにしか表現できないポップスが表現されていますが、バンドとして、現代のポップスとはどういうものだと考えていますか?

髙城「昨日もそういったことが話題にあがって、皆でなんなんだろうねって話をしていたんですけどね。自分がリスナーとして聴いていて思うのは、世界的に全体的な傾向としてすごく細分化されているし、色んな時代の音楽に簡単にアクセスできる状況だから、何か同じ傾向を持った大きいムーブメントが起こりにくくなっているのかと思いますね。表現する器に自分の好きな時代の音楽を入れ込んだりして今っぽさを乗せ、そこに自分の社会的な状況だったりをまぶして、ジャンルを意識せず作っていくことが当たり前に行われているというか。だから、ひとくちにポップスと言っても、よく見ると全部出来方が違くて括れないですよね。でも、この状況は面白い方の状況だと思っています。今作についても、ポリリズムやクロスリズム、ジャズらしいコードやceroが辿ってきた道筋だとかも取り入れつつ、多少の今っぽさ、という受け口も作りつつ出来た結果でもあるので、そういう意味でも2018年らしい作品だと思います」

INFORMATION

『POLY LIFE MULTI SOUL』

発売中
http://kakubarhythm.com/special/polylifemultisoul/

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