平均年齢18歳ながら90年代をリアルに体験した世代をうならせる爆音サウンドを鳴らす、2018年大注目のバンド、ニトロデイ。そんな彼らが、高校在学中に発表した『青年ナイフEP』に続く新作『レモンドEP』をリリースした。これを記念し、ニトロデイの小室ぺいが敬愛してやまない“Base Ball Bear”の小出祐介と“BOY”の奥冨直人を迎えたスペシャルな鼎談を敢行。世代を超えて、そして感性を超えてオルタナティブの今を語り合う。
ーまずは、それぞれの関係性から聞いていければと思います。トミーさんと小室さんはもう面識がありますよね。小出さんと小室さんはお会いしたことはありました?
小出:今日が初めてですね。
小室ぺい:すごく憧れてたので楽しみにしてきました。少し緊張してます。
ートミーさんと小出さんも初対面ですか?
小出:いや、下北沢にGARAGEっていうライブハウスがあるんですけど、僕にとっては半ば家みたいな場所で。そこで奥富君に会ってるよね?
奥富:そうですね。会ったのは一年半前くらいですかね。
小出:まぁサロンって言うとかっこいいんだけど、割といろんな人が集まってくる場所で、ミュージシャンだけじゃなく、モデルさんとかファッション関係の方も最近やんわり出入りしている感じなんですけども、そこの屋上でフリマをやってた時に、確かミニモニ。のトートバッグかな?
奥富:モー娘。ですね(笑)
小出:とにかく、やべぇもん取り扱ってるなと思って(笑)。話したのはそれが最初。でも、そもそもはあれなんだよね。NUMBER GIRLのシブヤROCKTRANSFORMED状態っていうライブ・アルバムがあるんですけど、それの「シブヤは炎上するか?」っていう有名な広告があって、そのプリントTシャツ?
奥富:実はプリントではなくて。当時の記事を破って、貼っただけっていう。独立前のBOYのショーウィンドウに置いたものなんですけど、お客さんから小出さんがインスタグラムあげてましたよって教えてもらいました。
小出:それを僕が見たのが2012年。6年前。洋服屋さんに貼ってあるっていうのが時代が半周した感がありました。だってNUMBER GIRLってそういうバンドじゃないって思ってたから。ナチュラルに面白がってる人がいるんだろうなって気配がし始めた頃だったんでしょうね。
ーNUMBER GIRLっていうのは、今日一つキーワードになってくるのかなと。Base Ball Bearもニトロデイも影響を受けているバンドだと聞いています。
小室ぺい:バンド始める前に、今のメンバーからCDを借りたんですよ。それまではそういうロックバンドとか聞いたことがなくて、初めてNUMBER GIRL聞いた時、音も歌も全然自分が知らない感じで、なんかそれが他の音楽に対して、満足してなかった自分にすごくしっくり来たというか。
小出:いま18歳ってことは、NUMBER GIRLの解散が2002年だから、その時に、1,2歳ってことになるのか。すごいな(笑)
小室ぺい:自分、NUMBER GIRLをずっと聴いてたことで、趣味が結構偏るようになったんです。昔の曲を聞いてたから、最近の音楽は全部つまらないって硬い考えでした。でもBase Ball Bearは、なんと言うかNUMBER GIRLとかと比べると新しい音楽になると思うんですけど、『ドラマチック』を聞いた時にすごく良いなと思えて。
小出:でも、NUMBER GIRLと『ドラマチック』なんか全然違う曲だけどね(笑)だから、多分偏見があるだけで別にポップなものはそんな嫌いじゃないってことだよ。
小室ぺい:なんか、逆にポップなものはすごい好きです。自分が聴いてる感じだと、ポップで分かりやすいけど、それでいて、かっこいいことしてるなってイメージ。そこはNUMBER GIRLと違うとこですけど。
小出:ありがとうございます。そこはうちのバンドが大事にしてるところで。ちょっとシーンの歴史の話になっちゃうんですけど、90年代終わりくらいの邦楽のロックは、NUMBER GIRL、スーパーカー、くるりっていうバンドが席巻していて。現代の邦楽ロックバンドの人たちが出て来る土台、音楽のフォームみたいなものが本格的に出来上がったのがそれくらいの時期だと思ってるんだけど、僕らがライブハウスに出始めた2002年くらいの頃って、間もなくアジカンとかがメジャーに行きますよっていうタイミングだったのね。で、その頃下北沢には、もうまさにNUMBER GIRLとか、スーパーカーとかくるりの影響をもろに浴びてる人たちで溢れかえっていた、と。そこからどうやったら首一つ抜けられるのかって、すごい考えて出した結論が、ちゃんとポップにすること。ある程度の型ができてきた邦楽ロックのテイストを踏襲しながら、ちゃんとポップスとしても適用するだろうものに仕上げる。そういう音楽を作らなきゃいけないなって思ったんだよね。
小室ぺい:自分は前作を出した時、本当バンド初めてすぐくらいだったんですけど、その時は、結構モロ洋楽ばっかり聴いてて、その影響が強かったりもして。でもそこから色々バンドでも考えて、自分たちのバンドでしかできないことやりたいなって。もともとメロディーとかにはこだわってはいたんで。そこを強めようとしてます。
奥富:今回のレモンドEPも詞はちょっとダウナーなとこもあれど、音の印象はポップの方向にうまく混ぜ込んでできてる音楽って印象でした。初めて聴いた時から、とにかくライブがいいバンドだと思ってるんで、大きいステージとか面白い場所で聴いてみたいなという気持ちで、これからも応援していきたいな。邦楽オルタナシーンには、僕も物凄く影響受けてきたこともあって、ニトロデイはドタイプ。自分が見てる範囲の中では、ここ数年いなかったバンドで、当時とはまたちょっと違う2000年生まれの独特の空気感というかそうゆう部分も楽曲に入っていると思います。
小出:僕らは近い上の人たちから直で影響を受けるのをなるべく避けてきた世代だし、僕らの後も多分そういう流れって続いてたと思います。でも、そういう余計な事情を抜きにすれば、めっちゃかっこいいし音楽だから。ピュアに影響を受けられる若い世代が、凄く羨ましいと思う。ニトロデイもそうだよね。オルタナを凄くコアに聴いてた世代の人たちって、「オルタナはこうじゃないと!」みたいな人たちがちょっと多い気がするんだけど、「なんか好き」くらいにフランクに聴いて、フランクに影響受けたって良いじゃん? そういう風にオルタナが消化されたときに、どうなるのかってやっぱり気になります。
小室ぺい:普段曲を書く時っていうのは、結構自分は現実逃避的であって、自分が居心地の良い音と歌詞を書いて、それを歌にするってことが割と多いです。
小出:はいはいはい、その時期ね(笑)。というのは、音楽がビジネスになってくるとそういう部分がどんどん遠ざかっていくからって意味で、今のうちにいっぱい書いておいた方がいいよ。っていう先輩からのアドバイスです(笑)。
これは僕がうちの事務所に所属する時に当時のボスに言われたことなんですよ。どんどん時間に追われるようになるし、締め切りに追われるし、タイアップとか、自分じゃない外的な要素で音楽を作るっていう作業もやっていかないといけない。そういうものと向き合いながら、自分の納得できる音楽を作って、勝負しなくちゃいけない。初期衝動的な曲ってほんとに作りにくくなってくるかも。この後知っていくことが色々あると思うけど、今こうやって自由に作っている感じが懐かしく思うかもしれないから、色々やっておいた方がいいよ多分。
小室ぺい:失礼かもしれないんですけど、商売になる前となった後で、どっちが楽しいですか?
小出:今の方が全然好きだよ。今では昔作った曲ってすごい荒いし雑だなって思う。今はすごい時間に追われて制作しなきゃいけないけど、その方が何を歌いたいかとか、どうゆうメロディーだとかサウンドにしたいかとか、感性が研ぎ澄まされるからさ。作っていくのが昔より全然楽しい。それこそ『ドラマチック』とかはそういう意味で骨組みがすごいしっかりしているから、ずっと演奏してても飽きないですね。まだ育っている感覚がある。
今のニトロデイは、曲の外の世界とかあんまり見えてこないよね。内省的…って、あんまりいい意味で使われない言葉だとは思うんですけど、いい内省さだと思う。
小室ぺい:やっぱ暗いですか・・・?
一同(笑)
奥富:暗さがあるのは確かなんだけど、そもそもロックというもの自体に暗い部分があるいうか。暗いことを歌っているわけじゃないんだけどね。青春って誰しも明るいわけじゃなくて、むしろ影のある時代だと思うし。その影は得体の知れないものですよ。リアルタイムで影響を受けた90年代の世の中もその空気でした。
小出:特に終わりがね。1999年にNUMBER GIRLは『透明少女』でデビューしたわけだけど、90年代っていう激しいグラデーションを描いた時代の終わりには、暗いムードとか、閉塞感が待っていてさ。そのヒリヒリした感じを纏いながら出てきたんだよね。そんな明確な時代の色味が2000年代に入ってから急に希薄になったんですよ。で、たくさんの選択肢があって、様々なものに簡単にアクセスできちゃう時代に突入していった。だから多分ニトロデイが、偏見なく時代のムードとかに一切関係なく、ピュアにいろんなバンドの影響を受けて音楽やってるっていうのはすごい腑に落ちる。
小室ぺい:確かに、時代とかそんなに意識してないですね。
小出:だってわかんないでしょ? 社会に対してとか怒ってないでしょ?
小室ぺい:そういうの全然ないです。
小出:人に対するメッセージとかは?
小室ぺい:ないです。自分だけで作ってる。でも、周りの人たちとのズレみたいなのは感じてます。
小出:それも自分の見渡せる範囲内で感じることでしょ? 決して広い世界の話ではないというか。でも、すごくいいと思う。身の丈から無理に飛び出そうとしてなくていい。17、18で漠然とした世界平和を歌われた方がなんか嫌だもん(笑)。それはそれでしっかりはしてるのかもしれないけど、「誰が何を歌ってるか」っていうのはすごく大事だからね。背伸びしてる感じが見えた時のダサさってすごいありますから。そういう風になるくらいだったら、自分が思ってることだけ、自分が見えていることだけで歌ってる方が人には伝わると思う。
ーファッションの話も少し聞かせてください。BOYはミュージシャンたちの溜まり場だったりすると思うんですが、最近は古着をナチュラルに着こなせるようなお洒落な方々が多い気がします。
奥富:ニトロデイに関して言えば、今そういうことに一番興味を持ってる時期なのかな。
小室ぺい:服は好きですね。流行りとかは分からないですけど、古着が安心します。女子メンバーの二人は全く興味ないみたいです。目の前にあるものを着るぐらいの。だからうちのバンドは男の方が興味あるかもしれないです。ファッションは。
奥富:ナチュラルというか自然体ですよね。好きなアーティストが海外にもたくさんいるから、意識してなくても頭に入ってるスタイルがあるんだと思います。世間的には90年代リバイバルが、もう今はだいぶ2000年代リバイバルになってきている。やっぱファッションもだいぶ柔軟になったなっていう。例えばラッパーもストリートブランドだけ着るわけじゃないし、音楽をやってる人は、むしろコスプレになっちゃうことに逆に抵抗感があるみたいな。
小出:昔は、それこそ90年代終わりとか、2000年代頭は、こういうものが今流行っています!みたいなのがきっちりあって、それに適応できるかできないかみたいなところがあって。どんどん俺はそれにハジかれていったのね。高校時代もこのまんまの見た目でブレザー着てただけだから(笑)。今は自分に好きな時代のファッションにアクセスしたって全然変じゃない。俺レイジとか見ててこいつすげーなーとか本当に思うもん。オシャレ上級者すぎて、なんなんだろう(笑)
奥富:だって金歯入れてますもんね。
小出:あんな、よくわかんないミクスチャーになってる人もいるわけだから、それに比べたらちょっとナードな服装なんか全然手を出しやすいよね。
奥富:店を今トータル9年やってるんですけど、ここ数年でファッションのナードなアイテムを上手に着こなせる人がすごく増えたという印象で。うまくミックスできるファッションアイコンだったりブランドだったり、そういう提案を上手にできる人の存在が大きいかなって。
小出:日本のカルチャーで2000年代初頭の感じはいいよね。一番好きかもしれない。今ならPIKOとか着られる気がするもん(笑)。ラグランとかもう一回くるかなあ。
奥富:ラグランきてほしいっすね~(笑)。今見たらちょっといいかも。
小出:うちのドラムに初めて会った時に、ダボダボのラグラン着ててすげぇダサかったな(笑)。2000年代初頭で、当時すごい流行ってて。
奥富:流行ってましたよね。ニトロデイの次の物販でラグラン作ろう(笑)。
小室ぺい:(笑)。
ーそれではそろそろまとめに入りましょう。最後に、せっかくなので、これだけは言っておきたいってことがあれば。
小室ぺい:小出さん、今度ライブを一緒にやってください。
小出:スケジュール次第ですかね(笑)。
奥富:さっきも言いましたけど、僕はニトロデイはとにかくライブがいいバンドだと思ってるので、皆さん是非これから始まるツアーに足を運んでもらえればと思いますね。
INFORMATION
『レモンドEP』
2018年7月25日(水)発売
価格:1,500円(税込)
PECF-3205
1. レモンド
2. グミ
3. 向日葵
4. 氷菓
5. ユース
http://artist.aremond.net/nitroday/
『レモンドEP』 RELEASE TOUR
■2018年8月14日(火) 名古屋 CLUB UPSET
出演)ニトロデイ / The Wisely Brothers / Layne / THE STEPHANIES
■2018年8月30日(木) 下北沢THREE
出演)ニトロデイ / uri gagarn
OTHER LIVE
■2018年8月21日(火) 下北沢THREE
「サンダーボルト多摩」
出演)ニトロデイ / betcover!!
■2018年9月8日(土) 下北沢MOSAiC
「MUSIC GOLD RUSH First」
出演) ニトロデイ / The Songbards / aint / 鳴ル銅鑼 and more、、、 オープニングアクト NiM2
■2018年9月17日(土) SHIBUYA WWW
「TOKYO CALLING 2018【SPACE SHOWER NEW FORCE STAGE】」
出演)ニトロデイ / Attractions / ズーカラデル / SUSHIBOYS / ムツムロアキラ(ハンブレッダーズ) / MONO NO AWARE / Rude-α / PELICAN FANCLUB (FROM NEW FORCE 2016) / The Wisely Brothers (FROM NEW FORCE 2017)
INFORMATION
Base Ball Bear Tour「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」
■10月13日(土)大阪府 なんばHatch
開場17:00/開演18:00
出演:Base Ball Bear / キュウソネコカミ
キョードーインフォメーション/0570-200-888(全日10:00~18:00)
■11月11日(日)愛知県 名古屋DIAMOND HALL
開場17:00/開演18:00
出演:Base Ball Bear / the pillows
JAILHOUSE/052-936-6041
備考:the pillowsサポートベース・関根史織
Base Ball Bear Tour「LIVE IN LIVE~I HUB YOU~」
『日比谷ノンフィクションⅦ』
■10月21日(日)東京都 日比谷野外大音楽堂
開場16:30/開演17:30
出演:Base Ball Bear / ペトロールズ / RHYMESTER
ディスクガレージ/050-5533-0888(平日12:00~19:00)
(備考)
※一般発売日:9月8日(土)10時
※10/13(土)なんば公演チケット代:スタンディング/2F指定席 ¥4,500-(税込/1D代別)
※10/21(日)日比谷公演チケット代:指定席/¥4,700- 後方立見/¥4,200-(税込/D代無し)
※11/11(日)名古屋公演チケット代:スタンディング/¥4,500-(税込/1D代別)
※3歳以上チケット必要
Official HP:http://www.baseballbear.com/