MUSIC 2025.04.25

AAAMYYY × chelmico、新しい。その先は、HAPPY。

EYESCREAM編集部

AAAMYYYがおよそ2年8カ月ぶりのEP『THANKS EP』をリリースした。
本作は、chelmico、鎮座DOPENESS、Neetz、MONJOE、Pecori、Yohji Igarashi、Zattaと、気心知れた面々と共に作り上げた全5曲が収録されている。

「chelmicoの明るいバイブスが入ったらいいな」という思いがきっかけで「HAPPY」という楽曲を完成させたAAAMYYYとchelmicoに、制作過程について、『THANKS EP』について語り合ってもらった。
まさに明るくハッピーな3人の会話を楽しんでもらいたい。

──最初にAAAMYYYさんに伺いたいのですが、今回chelmicoをフィーチャリングゲストに迎えようと思ったのはどうしてだったのでしょうか?

AAAMYYY:私はそれまで暗い作品が多かったのですが、最後にEPを出した2年8ヶ月前(『ECHO CHAMBER』)から今までの間に、子供が生まれたり子育てをしたりして、「明るくて楽しいものを作りたい」という気持ちになって。そう考えたときに、「chelmicoの明るいバイブスが入ったらすごくいいな」と思ってお願いしました。

──chelmicoのお2人は、AAAMYYYさんとのフィーチャリングの話を聞いたときはどう思いましたか?

Rachel:素直にうれしかった! 知り合ってからは長いんですけど、曲を一緒に作るのは初めてだったので、「うれしい! やりたいやりたい!」って思いました。

Mamiko:私も、一緒に曲を作りたいと思っていたので、めっちゃうれしかったです。曲についてはあまり会話はしなかったんですけど、受け取ったときに「こういうことを言いたいんだろう」というのが伝わってきたし、聴きながら「今だから書けるものがあるよな」って思いながらいろいろ考えて。結果、すごく満足いく作品になりました。

──「chelmicoと作りたい」というところからの曲作りだったということですが、そこからどのような曲を作ろうと思って進めていったのでしょうか?

AAAMYYY:そもそも私はchelmicoのファンなので「このアプローチを入れても面白くなりそうだな」という下心もあったし、私自身chelmicoのバラードが好きなので、アップテンポな曲とも、バラードとも感じられるようなものにしたくて。
私はいろんな方とフィーチャリングをするときに、一緒にやってくれる人に対して「こういう曲で」とか「こういうリリックがいい」といった前情報は伝えないようにしているんです。
受け取ったその人のそのときの心情やファーストインプレッションを入れてもらうことでいいものができると思っているから。
chelmicoにもそれを楽しんでほしかったので、トラックと自分の言葉を先に作って「あとはよろしく」という感じで丸投げしました。

──お2人はAAAMYYYさんからその状態のものを受け取ったときはどう感じましたか?

Rachel:「あー、なるほど、そう来るか!」と思いました。AAAMYYYが言ってくれたように、chelmicoとしてあまり乗ったことのないビートだったので、chelmicoをよく聴いてくれているなと感じました。
ちょうど合間を塗ってくれているというか。「chelmico、こういうのどう?」みたいな提案にも感じたし。具体的にやりとりをしていないのに、音から全部伝わってきて面白いなと思いました。 

──歌詞ではどのようなことを歌おうと思ったのでしょうか?

AAAMYYY:バースの通り、本当に温泉に入っているときに思いついたんです。

Rachel:えー、そうだったんだ!? 「急に温泉出てくるな」とは思ってたんだよね(笑)。

AAAMYYY:一度、子供を預けてゆっくりしようということで、お正月にパートナーと草津に行ったんです。そこで温泉に入っているときにちょうど雪が降ってきて「わぁ、きれい」と思ったんですけど、「たぶんこの状況で入るから、よりきれいだと思うんだろうな」と思って。
これがchelmicoと出会った20歳くらいのときだったら、たぶん「わぁ! 雪だー!」みたいな、また違う感動だったと思うんです。そう思ったときに、ふと「今まで頑張ってきてよかったな」って温泉の成分が沁みて。

Rachel:確かに20代前半のときは疲れていないから、そこまで沁みないよね(笑)。

AAAMYYY:そうそう(笑)。そこから発展して、私もchelmicoも大人になったし、どんどん輝きを増していったな〜ということを書きました。

──付き合いが長いchelmicoとだからこそ歌う意味のある曲に。

AAAMYYY:はい。

──chelmicoのお2人は、AAAMYYYさんがどんな状況や心境で書いた曲なのかは説明されていなかったということですが、受け取ってご自身のバースはどのようなことを書こうと思いました? 

Mamiko:本当にこの10年近くのことを走馬灯のように思い出して……って感じでした。Rachelもそうですけど、結婚したり子供を産んだりと、形が変わってもAAAMYYYもchelmicoも続いていて。続けることってマジでムズいじゃん?

Rachel・AAAMYYY:うん。

Mamiko:やりたいことはずっと変わらないけど、そのためにはちょっとずつ変わらなきゃいけないな、とかちょうど考えている時期でもあったので、そういうことを落とし込めたらと思いました。

Rachel:私はちょうどこういうテーマで歌詞を書いてみたかったんです。だから「よっしゃきた!」と思いました。
というのも、特に女性は、女性として生きていくうえで分岐がめっちゃ多いですよね、結婚するしないとか、子を持つ持たないとか。
それ以外にもいろいろな分岐があって、そのたびにみんなバラバラになっていく。だけど、連帯することはできる。連帯というか、横目に見ておくというか。
そのなかで、自分が選ばなかった道を悔いることもあると思うんですけど、そうじゃなくて、お互いに横目で見ておきつつ「自分は自分でいい感じ」って思えるようなパワーを、聞いた人に届けられたらいいなって。
なんか「年を重ねるって意外といいよね」って言ってくれる人がいたらいいなって思っていたから、だったら自分が言おうって。

──温泉で思いついたテーマだとおっしゃっていましたけど、AAAMYYYさんもそういうことを歌いたかったんでしょうね。

AAAMYYY:そうですね。まさにタイムリーなタイミングの中だったし。それこそ昔なんとなく抱いていた「何歳までに結婚したい」とかそういうものが、年齢を重ねて具体化してきて、そうすると理想と現実の違いが明確になりますよね。
もともと暗い曲が多かったと言いましたけど、前は、そういうものを悔いちゃうスタンスだったんですよ。だけど、子供が生まれて子育てする中で、「みんな幸せになれ」っていう気持ちがどんどん芽生えてきて。
あの頃の自分も幸せになってほしいし、自分の子供もchelmicoも、聴いてくれる人もみんな、年を追うごとに幸せを感じていってほしいなと思うようになって。
だから、理想と違う現実を悔いるんじゃなくて「今あるのはあのときのおかげ」とか「理想とは違うけど、今は最高!」みたいな曲にしたいなっていうのは思いましたね。

──この曲自体、明るい曲を作りたいというところからのスタートだったとおっしゃっていましたけど、ご自身のマインド自体が明るくなっているからだったんですね。

AAAMYYY:そう。私ももっと形式的なもの……「暗いものを作ってきたから、真逆の明るいものを作ってみたい」みたいなことになるかもなって最初は思っていたんだけど、曲を書いていくと、自分の内面が色濃く出ちゃって。それがいいなと思いました。

──心の底から明るいものが作りたい、明るい曲を歌いたくなってきていると。

AAAMYYY:そう。その気持ちが全部入ったのがこの曲です。だから書けてめっちゃうれしい。

──chelmicoのお2人のバースが入ったものを聞いたときはどう感じましたか?

AAAMYYY:心の中で超拍手しました。

Mamiko:うれしい!

Rachel:やったー!

AAAMYYY:何も言っていないのに2人の視点と考え方を載せてくれていて。chelmicoの曲って、言葉のパワーがすごいから、その言葉をもらえたことが超うれしかったです。

──レコーディングは3人で一緒に?

AAAMYYY:はい。

──いかがでしたか?

一同:楽しかった〜!

AAAMYYY:TempalayのRecって割とサクサク、淡々と進んでいくんですけど、2人は「ムズ〜!」とか思ったことを全部言ってくれて(笑)。 

Rachel:だって「HAPPY」ムズすぎるんだもん。メロディが難しすぎる。「なんでこんなん思いつくんすか!」とか言ってたよね。

Mamiko:言ってた!

AAAMYYY:その言葉がうれしかった。

Mamiko:ガヤの部分は5回くらい録ったよね。私たちの声が目立ちすぎちゃって(笑)。3人で1本のマイクで録ったんですけど、AAAMYYYの声がちっちゃいから……。

Rachel:「今、なんて言った?」とか、ちょっと揉めている様子とかも録音したよね(笑)。

Mamiko:ガヤのレコーディングは一番笑ったし、一番楽しかった!

──それこそ一緒にレコーディングするのも初めてですよね?

Rachel:はい。新鮮だったよね。やっぱり人とレコーディングすると得るものがあるよね。「こうやってやるんだ」とか。

Mamiko:レコーディングって、ライブを見ているときより“仕事している”っていう感じしない? だから友達が仕事しているところを見ているみたいな感じがあって。

Rachel:職場見学ね!(笑)

Mamiko:小さいことだけど「何テイク目がよかった」の書き方とかも私たちとは違うし、そういうのを見られるのが面白かった。

AAAMYYY:chelmicoのレコーディングは“バイブス”だなと思いました。「ここ、めっちゃいい!」「イエーイ!」みたいなことを言い合っていて、「普段の2人のレコーディングってこういう感じなんだろうな」って。

Rachel・Mamiko:ふふふ(笑)。

──MVもすごくかわいいですが、MV撮影はいかがでしたか?

AAAMYYY:あれも楽しかったね。 

Rachel:楽しかったね〜! みんなでワイワイして。

AAAMYYY:みんなでバスで移動したんですけど、降りるときにマミちゃんが寝ていてかわいかった(笑)。

Mamiko:目を開けたらみんなが降りているところでびっくりしました(笑)、

AAAMYYY:MVは私たちが歌っているところにモニタが映し出されていると思うんですが、そのモニタの中の映像から撮影したんですね。で、実際にその映像をその場で編集して、モニタに写した状態で、それを見ている3人を撮影して……という流れで。

──そうだったんですね。てっきりモニタの中の映像はあとからはめ込んだのかと。

Rachel:その場で写しているんですよ。

Mamiko:そうやってその場で作っていくのもあまりこれまでにない経験だったから面白かったです。

AAAMYYY:監督のGROUPNも仲が良くて。曲のことも彼なりに解釈して分析してくれて、chelmicoとの関係性も汲んでくれた。それによって、より10年くらい一緒に頑張ってきた感じが伝わる映像になったなと思います。

Mamiko:誰も監督の話を聞いていなくて「え、何すればいいの?」とか言ってたよね(笑)。

Rachel:言ってた、言ってた!(笑) そういうのも込みで、肩肘張らずにラフな感じで、すごく楽しかった。

──この曲に「HAPPY」というタイトルを付けたのはどうしてですか?

AAAMYYY:タイトルを付けたのは最後なんですけど、ずっと「これは『HAPPY』だな」って思っていました。ほとんど第一印象です。

──お話を伺っていると、制作過程もずっとハッピーですしね。

AAAMYYY:確かに。ぴったりなタイトルになったなと思います。

──せっかくなので、『THANKS EP』の収録曲のうち、chelmicoのお2人が「HAPPY」以外で特に好きな曲を教えてもらっても良いですか?

Mamiko:全曲好きですが、私はリラックス (Feat. 鎮座DOPENESS, Neetz)が好きです。AAAMYYYと鎮さん(鎮座DOPENESS)の良さがめちゃめちゃ出ていて「フィーチャリングってこういうことだよな」って思いました。

AAAMYYY:えー、うれしい!

Mamiko:「HAPPY」からの流れもいいなって。

AAAMYYY:この曲はKEIJUのライブに客演したときに、Neetzと「なんかやっちゃう?」って話したのがきっかけで。そこから歌いたいテーマが決まるまでかなり寝かしてしまったんですが、歌いたいテーマが決まってから、ダメ元で鎮さんにお願いしたら快諾してくれて。
そこからは一気に完パケまで進みました。まさに育児中に作った曲で、リラックスしたい欲が溜まっていたんですけど、「この状況は今しかないし、楽しんでいく方向に切り替えていこう」という曲にしました。
鎮さんも何も言わずとも汲んでくれて、救いになる言葉をいっぱい入れてくれました。 

Rachel:私も日によって一番好きな曲が変わるくらい全部好きですけど、今は「そのまさか (Feat. Pecori, Yohji Igarashi)」が一番好きです。
テンポも曲調も内容もフロアライクで、AAAMYYYが今こういう曲を歌ってくれるのはエンバーされるなって。あと「そのまさか」っていうタイトルも、よく言う言葉なのに歌詞としてはあまり使われない言葉で、そういうところにもハッとしました。

AAAMYYY:渋谷のBOUNCEっていうミュージックバーでDJさせてもらったときに、Yohji Igarashiと一緒になって。そもそもBOUNCEに出るときって、昔から知っている子と一緒になることが多くて同窓会みたいな気持ちになるんですよ。

Rachel:わかる! 告知画像見るたびに「おー、全員集合してる!」みたいな気持ちになる(笑)。

AAAMYYY:そうそう。それで「また一緒にやろうよ」って言っていたらすぐにトラックを作ってくれて。そのときに推しのトラックと保険のトラックの2つを渡してくれたんですが、そのうちの保険のトラックがこれ。
ちょうどEPの雰囲気に合うのがこっちだったので。フィーチャリングにはYohjiとも仲の良いPecoriを召喚して。Pecoriとは一時期家が近かったので、そのときの近所の景色や、みんなで遊んでいるバーの名前も潜ませて。いろんなところに友達が出てくる曲になりました。

Rachel:私が好きだと思ったの、だからかも!

AAAMYYY:そうかもしれない。それこそchelmicoの曲名も入れさせてもらって。

Rachel:それもうれしかった!

──同窓会的に集まったところから始まったことが、そのまま曲の内容にもつながっているんですね。

AAAMYYY:うんうん、そうですね。

──今作はchelmicoをはじめ、全曲が仲良い人たちとのフィーチャリング曲ですが、最初からその構想で作り始めたんですか?

AAAMYYY:はい。前作『ECHO CHAMBER』でコライトする楽しさを知って。さらに育児などもあって、0から曲を作るのがしんどい状況だったので、みんなの助けが必要で。助けてくれて「ありがとう」の気持ちを込めたEPになりました。

──「そのまさか」で<2児のマザーで次のチャプターへ>とありますが、次のチャプターはどのようなチャプターになりそうですか?

AAAMYYY:レベルアップしたチャプターに。今歌いたいことは全部『THANKS EP』に込められたので、この先は、より内省的な、自分の脳内宇宙を旅するようなものを、この先の人生をめいっぱい使って作りたいなと思っているところです。

──chelmicoは現在、どんなチャプターにいますか?

Mamiko:長く音楽を続けるために、ちょうど事務所も変わって最新のチャプターになったところです。

Rachel:しばらくまとまった単位で作品を出せていないので、アルバムを作りたいなと思っています。そしてそれが大ヒットし、家を建て……(笑)。わかんないけど(笑)、新しい環境と新しいチームでいいものを作れたらいいなと思っています。

──ちょうど2組とも新たなチャプターに切り替わるタイミングだったんですね。そう考えると、そのタイミングで過去にも思いを馳せるような「HAPPY (Feat. chelmico)」を作ったのはどこか運命的というか。

AAAMYYY:確かに。なんか写真のアルバムみたいな曲になったね。

Rachel:本当だね。

INFORMATION

AAAMYYY『THANKS EP』

Release Date:2025.03.26 (Wed.)
Label:Warner Music Japan
【Tracklist】
1. HAPPY (feat. chelmico)
作詞・作曲:AAAMYYY, Rachel, Mamiko
2. リラックス (feat. 鎮座DOPENESS, Neetz)
作詞:AAAMYYY, 鎮座DOPENESS
作曲:AAAMYYY, 鎮座DOPENESS, Neetz
3. 救世主 (feat. MONJOE)
作詞:AAAMYYY
作曲:AAAMYYY, MONJOE
4. そのまさか (feat. Pecori, Yohji Igarashi)
作詞:AAAMYYY, Pecori
作曲:AAAMYYY, Pecori, Yohji Igarashi
5. 拝啓生きとし愛おしきあなた (feat. Zatta)
作詞:AAAMYYY
作曲:AAAMYYY, Zatta
【HP】
https://aaamyyy.jp/

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