AI×Ren Yokoi、やりたいことのためにすべきこと。:Motivators Vol.03

Ren Yokoi(※)が“今もっとも話したい人”を迎える対談シリーズ「Motivators」も第3回目。今回登場するのはシンガーのAIだ。アメリカから帰国後の2002年にヒップホップ / R&Bの殿堂レーベル〈Def Jam〉が日本に立ち上げた〈Def Jam Japan〉と契約、Ren Yokoiの父であるZeebraとの共演なども経て、国民的なアーティストとなった彼女。その思いに迫って見えたのは、ハッピーであることの強さ。それはいつの時代も変わらない“伝える”ことの真髄なのかもしれない。

(※2017年9月より、アーティスト名がこれまでの「REN」から「Ren Yokoi」に変更となった)

Ren Yokoi(以下、Ren):この間、「WREP」(日本初となるヒップホップ専門ネットラジオ局。発案者はZeebra)でAIが喋ってるのを親父と一緒に聴いてたんだけど、「AIは鹿児島弁がチャーミングだよな」って言ってたよ。

AI:そうなの? 普段はそんなこと全然言われないんだけど。うれしいなあ。「WREP」は最高だよね。ああいうヒップホップ専門のステーションってなかったから。

Ren:「WREP」で喋るようになったのはなぜ?

AI:Zeebraさんから電話がかかってきて、「ヒップホップのラジオをやるんだけど、週1回でも月1回でもいいから」って。自分にも子供が生まれたから、やり続けるのはほんとに大変だって、身に染みて感じている時期だね。帰ったらママやらなきゃいけないし、なんでもかんでもできるわけじゃない。でも、アーティストとしても人としても大好きな人からの話だから、力になれることがあるならやろうと。Renも大きくなったよね。いつかパパにもなるんだよ。

ーRenさんが幼い頃からご存じなんですよね。

Ren:初めて会ったのは、AIが日本に戻ってきて〈Def Jam Japan〉に入った頃だよね?

AI:そうだね。イベントとかに行くとRenが必ずいて、「おばちゃ~ん」って寄ってくるんですよ。私もまだ20歳くらいだったのに(笑)。

Ren:小学生の俺がね。

AI:そう、ボールとか投げつけてきて逃げていく(笑)。

ーAIさんとZeebraさんとの出会いは?

AI:日本に帰ってきて、最初は〈BMG〉にいたんですけど、そこを出るときにJESSE(RIZE/The BONEZ)と出会ったんです。そこからファミリーみたいになって、よく一緒にいるようになった。みんなでマックとかに集まってご飯食べてから適当に「どっか行こうぜ」みたいな。そこにはトモ(※Zeebraの実弟であるSPHEREのこと)もいて、渋谷のasiaとかeggmanとかでよく一緒にライブもやってた。みんなイカつくて、シャイな部分があったりするんだけど、トモだけは「イェーイ!」みたいな軽いノリで、接しやすかった。今思うと「あいつ、私のことナメてたな」って思うけど(笑)。でもRenにそっくり!

Ren:ハハ! そこは冗談でだけどよく心配される。「トモと一緒じゃん」って。

ートモさんも〈Def Jam Japan〉所属で、レーベルメイトでもありました。

AI:先にトモが〈Def Jam〉に入って、社長のRIKOから、トモの曲にフィーチャリングで入ってほしいっていう話をもらって。

Ren:あの時はラップじゃなかったよね?

AI:そうだね。当時フィーチャリングで入る時はラップが多かったけど、トモの時は歌だった。で、私も〈Def Jam〉に入って、彼と一緒にクラブツアーみたいなことをして、最高だったよ。あの頃は気楽にクラブを回ったりもできて、いい時代だったなあ。

Ren:そのあと、親父の「GOLDEN MIC」だよね?

AI:そう。当時アメリカから帰ってきてそんなに経ってなかったし、日本の音楽ってあまり聴いてなかったんだけど、日本でラッパーと言えばZeebraさんだったし、声もすごいかっこよくて、「私、ダサいと思われたらどうしよう」って緊張したのを覚えてる。でもうれしかった。

Ren:このあいだ、AIのライブを観に行ったじゃん? 今でもステージの作りとか演出とか、ヒップホップしてて、「やっぱそこだよね」って思った。

AI:「伝説NIGHT Ⅱ」だよね。来てくれてありがとう! でも、今も昔も自分はそんなにラッパーのつもりはなくて。歌が好きだから。

Ren:昔も? そうなの?

AI:自分がラップするのが嫌いとかじゃないし、ヒップホップはもちろん大好き。でも私の場合、ラップのリリックを書くのにほんとに時間がかかるの。「GOLDEN MIC」には般若もいたし「ダセえんだよ」とか言われんじゃないかって思ってたかな。でも楽しかった。ああいう時代があって、いろんなお兄ちゃんたちと知り合えて、〈Def Jam〉にいることでディスられた時期もあったけど、そのうえで仲良くなったり。いい場所にいたなって思う。

ー〈Def Jam〉にいることでなぜ厳しい目にあったんですか?

AI:私のことなんて当時は誰も知らなかったからですかね。いきなりアメリカから帰ってきて〈Def Jam〉に入って調子に乗ってるって思われていたのかも。歌ってたらマイクを取られるとか、普通にありましたよ。その一人が般若なんですけど(笑)。DABOともそういうことがあって、本人は覚えてないって言うんですけど、でも今はほんとにみんな大好きだし、ケンカするだけしたら、あとはめちゃくちゃ仲良くなるような現場を肌で感じられたのは、ほんとによかったと思います。

Ren:男の現場だよね。

AI:私はイヴとかミッシー・エリオットとか、そういうハードコアな、男に混じって戦ってる女の子のラッパーがおもしろいと思っていたけど、そういう人ってほとんどいなかったから。

ーAIさんから見た、今のRenさんはどういった印象ですか?

AI:小さい頃から現場も見てるし、そこにいる人たちの扱いと言ったら失礼だけど、空気はわかってる。早い時期から大人になりすぎた部分もあったかもしれないけど、顔もかわいいしね! そういう自分の持ってるものを使って、ちゃんと自信を持ってやれる人ってなかなか少ないから。ヒップホップでも演歌でも、なんでもそうだと思う。ハードなところってあるじゃないですか。そこにいる人を面倒くさいと思っちゃったりして、誰もなかなか行きたがらない。でもそういうことを超えていける人だと思う。

Ren:ありがとうございます!

AI:私も人が好きだし、ハッピーでいたいんです。人は結局同じというか、みんな生まれた時は赤ちゃんだし、泣くこともあるし、弱いところもあるし、かっこつけたいときだってある。

ーおっしゃっていることはよくわかります。とはいえ、行動に移すのはなかなか難しい。

AI:昔はクラブでライブをやっても、人は来ないし見てもくれない。たまにホイットニー・ヒューストンとかの曲を歌うとちょっと振り向いてくれる、みたいな。そういうときに「だから日本はダメなんだ」って、人を斜め上から見てた部分も正直ありました。

Ren:そもそも見てもらえないとどうしようもないのに、という。

AI:そうだね。なのにみんなが見てないとマイク置いて帰る、みたいな。そういう性格だから余計に人も寄ってこない。そういうのって伝わっちゃうんですよね。でもそんななかで、唯一来てくれた人からもらった手紙とか、そういうことで気が付いて変われた。

AI – Music Is My Life

Ren:今はヒップホップのシーンも大きくなったけど、自分がいるクラブミュージックのシーンって、一概には言えないけど、かつてのAIがそうだったように“伝わらない壁”みたいな部分があるのかもしれない。だからこそ、どういう気持ちでやっていくか。親父やAIがやってきたことを見てきた分、やれることはまだまだあると思う。

AI:有名になったらなったで、いいこともあるけどディスられることもどんどん出てくるし、面倒なことも増える。実際「金貸してくれない?」みたいな人も出てきて、そういうのってほんとにショックなんです。そこで心が痛んで辞めていく人もいるし、一生アンダーグラウンドがかっこいいって思う人も出てくる。それも間違いではないんだけど、現状を広げるには外に出て知られないと、そもそも自分のやりたいことも見てもらえないから。有名になるためにやることって大事。だからRenがテレビに出てるのとか、いいことだと思う。そこでああだこうだ言われることに負けないで続けてほしい。

ーAIさんはどうやって逆境を跳ね返してるんですか?

AI:見ない、聞かないがまず一番。自分がいいことをやってると思えてるなら、それは絶対にいいことだから自信を持ってほしい。どうこう言う奴らに罰が当たると思って戦わない。ムカつくし傷つくけど、いちいち戦わずに進んでいくことですね。

Ren:それ、親父に言ってやりたいよ(笑)。ツイッターでよくやり合ってるから。

AI:ほんとに言ってあげて(笑)。

Ren:このあいだなんて夫婦喧嘩も。

AI:それはある意味最高だよね。リアリティショーみたいな。

Ren:それを息子はYahoo!ニュースで知るっていう(笑)。

ーAIさんが、ご自身のやっていることを”いいこと”だと思える基準はどこにあるんですか?

AI:やっぱり歌を聴いて感動したっていう声とか、家族の存在もそう。別に自分が最初からいい人間だったとは思わないけど、うしろめたいこともないし、誰がどう来たって堂々と包み隠さずいられるように頑張ってる。そうしていたら誰かが助けてもくれるし、嫌なことも乗り越えていけるんです。

ー先ほどの話に戻りますが、Renさんが今いる環境について。テクノやハウスといったクラブミュージックが、現在のヒップホップのように、濃度はさておきそれが“ヒップホップである”ことが認知された状態で大きくなっていくか、“ポップ”として大衆化していくか、Renさんにとってどちらが理想でしょう? かなり強引な分け方ではあるのですが。

Ren:どっちもですね。強い精神とシームレスななにか、そこの混沌とした感じが必要かなって。パーティーもDJも、いったんお客さんに渡るとそこは自分ではコントロールできない。どう評価されるかわからないからいいんです。

ーAIさんは、ご自身の軸にあるヒップホップやR&Bに対して今はどう思われているのでしょうか?

AI:かつては誰かがやっていることに対して「あんなのヒップホップでもR&Bでもねえ」ってよく思ってました。でもそれって、自分の器の中で思ってるだけだから。「これはヒップホップじゃない」とか、決めるつけるのはなんか違うなって。最近のラッパーのファッションを見てると、パンクみたいな人もいるし、でもかっこいい。私の時代のヒップホップはどうだったとかじゃなくて、表現は自由であるべきだから。

2017 AI New Song Medley (WHAT I WANT – Right Now – Sweet Nothing’s)(AI『和と洋』YOメドレー)

Ren:「これだからこうじゃいけない」って決めちゃいけないと思うんです。そこでいろいろ言われることもあって、その中にはもちろん貴重な話もあるんですけど、やっぱり「そこまで気にしなくていいかな」って。

AI:そうね、人は登っていこうとしている時が一番いろいろ言われるからね。抜ければ誰も何も言ってこなくなるよ。私は本当に面倒くさいタイプで、相手が説教しにきても、自分が納得するまでとことん話すんで、みんな疲れちゃって「もういい。お前行け」みたいな(笑)。そこは私が人としてちゃんとしてる自信があるから折れない。相手の人が悪いわけじゃないんだけど、自分が目指すところがあってやりたいことがあるなら、どんどんやればいいと思う。

Ren:励みになります。

AI:そして何よりお客さんがいてこそ、なんだよね。盛り上げたいという気持ちがあればお客さんだって育てることができるし、育てられることもある。あまりに濃いところは伝わりにくいっていう現実もあるけど、それもこれも結局やってみなきゃわからないし、間違ってたら変えればいい。私だって何を好きになってもらえるかなんてわからないから。でもやっぱり、まずは自分が好きであることが一番かな。そうでないと全部が嘘になるからさ。

Ren:そうだよね。間違いないと思う。今日はありがとう。

「Motivators」

Vol.01 : JESSE
Vol.02 : 野村周平
Vol.03 : AI
Vol.04 : 村上虹郎
Vol.05 : 安澤太郎(TAICOCLUB)
Vol.06 : Ryohu × KEIJU as YOUNG JUJU
Vol.07 : DJ DYE(THA BLUE HERB)
Vol.08 : CHiNPAN
Vol.09 : Daichi Yamamoto

INFORMATION

■ AI

<リリース情報>
AI『和と洋と。 DELUXE EDITION』
2017年10月25日発売 / 3,500円+税
話題の新曲「キラキラ feat. カンナ」をはじめ、数々のタイアップ曲、未発表新録ボーナストラックをプラスした豪華デラックス盤!

TBS系火曜ドラマ「カンナさーん!」主題歌
AI「キラキラ feat.カンナ」配信中
◇iTunes:http://po.st/itkirakira
◇レコチョク:http://po.st/rekirakira
◇LINE MUSIC:http://po.st/lmkirakira

AI『和と洋』
発売中 / 2枚組 / 3,240円+税
スペシャルサイト:http://sp.universal-music.co.jp/ai/watoyo/

LIVE Blu-ray/DVD『THE BEST TOUR』
Blu-ray:発売中 / 5,800円+税
DVD:発売中 / 5,000円+税

<ライブ情報>
AI TOUR「和と洋」
9月より全国ツアーがスタート
http://aimusic.tv/live

<More Information>
AI Official Site http://AImusic.tv/
AI Official Instagram @officialai

■ Ren Yokoi

2017年9月18日(月) ULTRA JAPAN OFFICIAL RESISTANCE AFTER PARTY @ 渋谷WOMB
2017年9月21日(木) TIKINI Presents FUNKTION @ 渋谷Trump Tokyo
2017年9月23日(土) Patrick Russell @ 渋谷Contact
2017年9月28日(木) BLACK ON IT @ 渋谷Music bar BPM
2017年9月29日(金) ACCUTRON #03 Loco Dice @ 渋谷Contact
2017年10月2日(月) World Connection @ 渋谷Contact
2017年10月14日(木) THE OATH @ 青山OATH

Instagram @renyokoi