Breakthrough Music for 2019 #10 Naz

Photography-Mitsuru Nishimura Text-Keita Miyazaki

Breakthrough Music for 2019 #10 Naz

Photography-Mitsuru Nishimura Text-Keita Miyazaki

気づけばテン年代、最後の年。音楽シーンを振り返ってみてもいくつもの潮流/トピックスがあって、そろそろ総括もしたくなってくる頃だけどそれよりも“これから”に目を向けたい。「未来は過去のなかにある」とも言うけれど、いやだからこそ未来を見据えることが結果、過去(やそこに横たわる文脈)を知れることにもつながるんじゃなかろうか。ということで、本特集「Breakthrough Music for 2019」では、来たる2020年代に向けて、EYESCREAMが追いかけていきたいホットな新世代たちにフォーカス。その音楽や存在そのものでもって、今という時代をブレイクスルーしていくミュージシャンの動向から、2019年とその先を眺めていくことにしよう。

#10 Naz

沖縄から新たな才能が登場した。彼女の名はNaz(なづ)。13歳の頃に出場したオーディション番組「X Factor Okinawa Japan」での歌唱動画がキッカケになり、冨田ラボの「OCEAN」のヴォーカリストに抜擢。そして7月24日に初のソロEP「JUQCY」をリリースすることになった。彼女の魅力は憂いのある声と、それを自在に操る歌唱力。ブルージーで大胆な歌を聴かせたとかと思えば、一転して19歳らしい少女のような繊細さも見せる。彼女はエイミー・ワインハウスのようであり、韓国のシンガー・イ・ハイのようでもある。今回はそんなNazのルーツ、そしてデビューEPについて話してもらった。

アデル、ビョーク……。音楽好きの両親に影響を受ける

ーーEPのタイトル「JUQCY」はどういう意味なんでしょうか?

(パンチをするフリをして)「ジュクシッ!」みたいな。「JUQCY」はその擬音にアルファベットを当てた造語です。あと私は本名もなづなんです。この名前は両親が大好きだったボクサーのナジーム・ハメドが由来。その人の愛称がNazなんです。

ーーナジーム・ハメドは90年代に活躍したイギリスのボクサーですよね。

そうです! ボクシングは全然詳しくないけど、両親の影響でナジーム・ハメドだけは大好き(笑)。

ーーNazさんの地元・沖縄市はどんな場所ですか?

米軍基地が近くにあります。私は基本的にあまり外に出ません。子供の頃から家にいるのが好きでした。絵を描いたり。一人で集中して何かをすることが好きです。

ーー内向的なタイプ?

そうですね。極度の人見知り……(笑)。あとちょっとしたことで傷ついちゃったりとか。 

ーーそんなNazさんが歌手になろうと思ったのはなぜですか?

もともと子供の頃は獣医になりたかったんです。でもその後、幼いなりにいろいろ考えて、自分が影響力のある人になったら、もっと沢山のものの力になれると思い、シンガーを志しはじめました。うちは両親がともに音楽好きだったので、そこから自然な流れでシンガーを目指すようになりました。

ーー人前で歌うことに抵抗はありましたか?

両親とよく一緒にカラオケに行ってたので、そんなにないですね。父はカラオケに行くとスティングとオアシス、コールドプレイを必ず歌うんですよ。そういう両親にものすごく影響を受けているので、小学校の頃からカラオケで洋楽を歌ってました。

ーーナジーム・ハメドも90年代に活躍したイギリスのボクサーだし、オアシスやコールドプレイがお好きというということは、ご両親はかなりUK好きなんですか?

私が赤ちゃんの頃、夜泣きするとスティングを流してあやしてたそうです(笑)。両親の影響で、小さい頃はビョークのPV集「Volumen」のDVDをよく観てました。今でもゴリラズやマッシヴ・アタックが大好き。友達とは音楽の話をほとんどしなかったので、私の中では音楽といえば洋楽。主にUKかな。そういえば、小学校1年生の頃、家族と親戚で一緒にカラオケに行ったんです。従姉妹が当時流行ってた日本人の曲を歌っていたので、私も歌ってみたら「似合わない」と母に言われて(笑)。母は好き嫌いがすごくはっきりしてる。昔から「人に流されないで、自分の意見をしっかり持ちなさい」とよく言われてました。

ーー本格的に歌いはじめたのはいつからですか?

10歳くらいです。腹式呼吸みたいな歌の基礎を教えてもらいたかったので、沖縄市にある合唱団に入れてもらいました。あとその時期に映画「バーレスク」が公開されたんですよ。映画の中で歌うクリスティーナ・アギレラに衝撃を受けました。こんなふうに歌いたいと思って、また一人でYouTubeをずっと観て練習してました。

Burlesque – Tough Lover

オーディションに出てた時は「早く落ちたい」と思ってた

ーー13歳の時に「X Factor Okinawa Japan」のオーディションに参加してますね。

思ったよりステージを進むことが出来て、自分でもびっくりしました。課題曲をちゃんと歌えるようにするのに必死でした。レパートリーも全然持ってなかったし。オーディションの雰囲気が苦手なので本当のことを言うと、早く落ちて終わりたかったんですよ(笑)。

山田なづ Nazu Yamada STAGE2 – X Factor Okinawa Japan

ーーでもその映像がきっかけで冨田ラボさんの作品に参加することになったんですよね。

はい。ビクターのA&Rの方がYouTubeに上がってる「X Factor」の映像を見て興味を持っていただいて。たまたま冨田さんが女性ヴォーカルを探していた時だったので、声をかけていただきました。

冨田ラボ – 『OCEAN feat. Naz』 MV YouTube EDIT

ーーいきなり日本を代表するコンポーザーと仕事をするのはどんな気分でしたか?

お会いするまではものすごく怖い人だと思ってました。しかも仮歌のレコーディングは、冨田さんのご自宅にあるスタジオ。ものすごく緊張してたんですが、私はプレッシャーを感じすぎると歌が変な感じになっちゃうので、良い状態で歌えるように気を引き締めてレコーディングに臨みました。そしたらもうびっくりするくらい優しくて。

ーーレコーディング自体はその時が初めて?

いえ、「X Factor」の時と、あとNABOWAさんの「My Heartbeat (Belongs To You)」にも参加してました。他にもカバー曲を何曲か録ったり。でもライヴのリハーサルとレコーディングが一番苦手……(笑)。みんなが見てる前で、自分だけ歌うのがプレッシャーなんですよね。自分に自信がないので。

Nabowa | My Heartbeat (Belongs To You) feat. Naz Yamada (Official Music Video)

EP制作を通じて、自分の考えを言葉にして相手に伝えることができた

ーー「JUQCY」にはプロデューサーとして冨田ラボさんと江﨑文武さん(WONK)が参加してますね。

「JUQCY」のレコーディングでは、お二人が私の歌いやすい環境を作ってくれたので、本当にすごく楽しかったです。リラックスして自分を出すことができました。

ーー「White Lie」はどのようにして制作したんですか?

江﨑さん曰く、曲はエイミー・ワインハウスが歌ったマーク・ロンソンの「ヴァレリー」をイメージしたそうです。その時はまだちゃんとお会いしてなくて、私がこれまで参加した曲や「X Factor」を観たイメージで作曲したとおっしゃってました。

ーーこの曲の歌詞はWONKの長塚健斗さんが書かれていますね。

はい。長塚さんが作詞される前に、お電話をいただいたんですよ。私がどんな音楽を聴いてきたのか、どんな性格なのか、みたいな。そこから「White Lie」というキーワードを見つけてくれて。

ーー「White Lie」とは「ささいな嘘」という意味ですね。

私、子供の頃から「通う」のが苦手なんです。同じ時間に、同じ場所で、同じことをしに行くのが嫌で。学校もバイトもとにかく通うのが嫌でした。気持ちがコロコロ変わるので、どうしてもルーティン化に馴染めない。でも「嫌だな」って思いながら何かをするのも嫌で。だから子供のことからずっと自分に嘘をついてきました。「これは楽しいことなんだ」って。

ーー2曲目の「Clear Skies」と3曲目の「Rain Wash」はどちらも天気がテーマになっていますね。

うん。私は雨が好きなんです。というか嵐。ともかく太陽が苦手。台風の後は海も綺麗になるんですよ。

ーー「Clear Skies」はLori Fineさんが作詞されていますが、どんなやりとりをしたんですか?

冨田さんのデモを聴いて感じたことをお伝えしました。この曲は感情よりも景色が浮かんだんです。そこから歌詞を起こしていただいています。この曲に限ったことではないんですが、今回のEPでは自分の考えや意思をちゃんと相手に伝えなきゃいけない場面が多かったんです。さっきも言った通り人見知りということもあって、私は今までそういうことをほとんどしてこなかったんですよ。話すことは好きだけど、コミュニケーションが苦手で。

ーーなぜコミュニケーションが苦手だったんですか?

自分の答えに自信がなさすぎて、意見を言うのが怖かったんです。でも今回のEP制作では、自分の考えを言葉にして冨田さんや江﨑さんたちに伝えなきゃいけない場面が多くて。そこで頑張って気持ちを伝える経験ができたのは、私にとって大きかった。ちょっとだけ強くなれた気がします。あと「Rain Wash」の制作も。この曲は父から買ってもらったギターをつま弾きながら私が作った曲なんです。冨田さんにアレンジしてもらったんですが、私が最初に作った状態に近い。冨田さんがアレンジすると、デモと完成版でガラッと違うイメージになることが多いんです。この「Rain Wash」もきっとすごい変わるんだろうなと思ってたら、意外とそのままで。それがすごく嬉しかった。自分を肯定されたような気持ちになりました。

ーー個人的には4曲目の「Fare」が一番好きでした。

この曲は2年くらいに作ったけど、曲として完成させることができなかったデモがベースになっています。デモというかパーツです。すごく気に入ってたけど、曲の状態まで持っていけなかったものがあって。当初は江﨑さんに新しい曲を作ってもらう予定だったんですよ。でも江﨑さんから「1フレーズだけでも良いので、デモとかありますか?」と聞かれて。なんとなく選んだのがこれで、聴いてもらったら、これを気に入ってくれたんです。

ーーそれは結構嬉しい体験ですね。

はい。でもこの曲に関しては当初パーツでしかなかったから、「何を歌うか」とかまで考えてなくて。本当にパッと頭に浮かんだメロディや出てきた声を録っただけの状態だったので。だから江﨑さんと一緒に作業にしていく中で、自分はこの曲で何を歌いたいのか考えながら形にしていきました。

ーー作曲も昔からやってたんですか?

そうですね。でも作るスピードが遅いのと、自分が納得できるものがなかなかできなくて。だからサビだけとか、イントロだけ、みたいなパーツのままで曲として完成させられなかったものが結構たくさんあります。

Naz-「Fare」 Music Video

環境の変化にも集中して

ーーものすごく環境が変化している時期ですね。

たまに「今私はどこにいるんだろう?」って感じになりますよ(笑)。でもこうやってソロEPを作らせてもらえることにはものすごく感謝しています。私にできることは歌うことだけだから、今はとにかく歌うことだけに集中することにしています。

ーー最近はどんな音楽を聴いていますか?

トゥエンティ・ワン・パイロッツが好きです。ハマってます。

ーーでは共演してみたいアーティストはいますか?

OZworld a.k.a. R’ kumaさん! 音楽もスタイルもすべてものすごく私の好みなので、機会があれば是非共演してみたいです。

ーー今後トライしたいことはりますか?

10月から3カ月間、ロンドンに留学する予定です。英語を話せるようになりたい。かなり勉強したので、英語の歌を聴いて、普通に意味を理解できるようにはなりました。でも海外の人と普通に意思疎通ができるようになりたい。どんな経験ができるかまだわからないけど、そこで得たものを音楽制作にフィードバックできたらと思っています。

INFORMATION

Naz

イベント情報
■SENT presents JUQCY NIGHT
8/2(fri)20:00 START at hotel koé
-ACT-
冨田恵一(TOMITA LAB / Music Selector)
江﨑文武(WONK / Music Selector)
※入場無料のイベントになります。フードドリンクは通常通りの営業となります。
 
<インストアイベント>
■東京・代官山 蔦屋書店
Naz “JUQCY“リリース記念インストア ミニライブ&サイン会
開催日時:2019年8月5日(月) 20:00~
場所:蔦屋書店3号館 2階 音楽フロア
*観覧フリー
イベントに関するお問い合わせ:代官山 蔦屋書店 TEL:03-3770-2525
 
■沖縄・タワーレコード那覇リウボウ店
Naz “JUQCY“リリース記念インストア ミニライブ&サイン会
開催日時:2019年8月24日(土) 14:00~
場所:タワーレコード那覇リウボウ店 店内イベントスペース
*観覧フリー
イベントに関するお問い合わせ:タワーレコード那覇リウボウ店 098-941-3331