BEAMS × スペシャの共同プログラム「PLAN B」Highlight : Season 7
from EYESCREAM No.172

Photography—Ryuichi Taniura [P086-087, P090-091], Kazuhiko Fujita [P088-089], Cho Ongo [P090-091] text—Kentaro Okumura

BEAMS × スペシャの共同プログラム「PLAN B」Highlight : Season 7
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Photography—Ryuichi Taniura [P086-087, P090-091], Kazuhiko Fujita [P088-089], Cho Ongo [P090-091] text—Kentaro Okumura

KID FRESINO × Kazuhiko Fujita
“いつもの「遊び」の感覚で”

ーはじめに、自己紹介をお願いします。

Kazuhiko Fujita(以降 藤田):アーティストとして絵を描いています。また、そのアーティストのプライベートブランドという形で〈Marfa by Kazuhiko Fujit〉というアパレルブランドをやっています。

ーKID FRESINOさんと知り合ったきっかけは?

藤田:もともとFla$hBackSのFebbが共通の友達で、ある時彼が連れてきたのがフレシノでした。その時フレシノはスケボーを持っていて、僕もずっとスケボーをしていたし音楽もすごく好きだから意気投合して。その頃から一緒にいることが多かったですね、二人とも暇で(笑)。

ー出会った頃から気が合ったんですね。

藤田:はい。いいと思う感覚が近いから楽だし、話が早い。余計な説明が要らないんです。

ーその頃は2人でどんな遊びを?

藤田:遊ぶというか、僕らは遊びながら何かをつくることが好きで、一緒にMIX CDをつくったり、フレシノがPOP UPをやる時には空間演出やデザインといった制作を一緒にやったりしてきました。今でこそそれが仕事になっていますし、その頃だってもちろん仕事なんですけど、いつも「何かおもしろいことやろう」という、遊びの感覚で取り組んでいます。

ー今回のPLAN Bを藤田さんがやることになったきっかけは?

藤田:フレシノがPLAN Bの打ち合わせをしているところにたまたま僕が居合わせたんです。「フジタくん、どう?」と言われたので「やるよ」って。僕はもともと映像に興味があって、脚本を書きたかったんです。実際、フレシノに近い人たちのビデオに関わったり、個人的に短編の物語を書いたりしていたので、“第一歩”は踏み出してはいたんですが、自分で映像をちゃんとディレクションするチャンスがあるならやりたいと、ずっと思っていました。

ーKID FRESINOさんが山で2泊3日のサバイバルをする、というテーマはどのように決めたのでしょうか。

藤田:「キャンプに行く」というフレシノのアイデアを、僕が脚本に落とし込みました。ただ、脚本は当日まで見せませんでした。いわゆるモキュメンタリーのスタイルでリアルなフレシノの姿を描きたかったので、脚本は伝えないようにしないといけなかったんです。

ーマネージャーさんも付かず本当に二人きりのキャンプで、かなり過酷そうな撮影ですね。

藤田:雪も降るくらい寒くて、結構過酷でしたね。もともとの脚本では山を舐めた姿勢でキャンプに行って全く成立しない、何もできないという状況から努力する彼の姿を撮ろうと思っていたのですが、テントの組み立てや火起こしが予想以上に簡単にできてしまって(笑)。そこで脚本を書き直して、キャンプは当たり前にできる設定とし、フレシノが山に入って行って挑戦していく方向にしました。

ーどこまでが演技なのか分からなかったです。

藤田:今回の制作を通して気づいたんですが、本当に彼は演技が上手くて。セリフのダイアログは全く作ってないんですよ。当日にその日の全体の流れを教えて、シーンごとにおおよそのイメージを伝えるだけで、だいたいワンテイクですし、セリフはアドリブです。本人は終始めちゃくちゃ高いテンションで、ちょっと危険なこともやる積極的な姿勢で、逆にこっちが心配になるくらいでした。3話目の最後、湖に飛び込むシーンは、フレシノがやろうと言い出したから撮り始めたんですけど、飛び込んだ瞬間に「横丁〜!」(※藤田さんのあだ名)って叫び声が聞こえたのでまだ演技してるのかと近づいたら、普通に溺れていて(笑)。「そういえば俺泳げないんだった。撮影で来ているから忘れてた」って。まず浮かんだのは、この高いカメラをどこに置こうかということでしたね(笑)。

ーそういったお話も含めて、お二人の関係性だからこそ作れるトーンがでていると思います。

藤田:映像では険しい山で喧嘩するようなシリアスなシーンが続きますが、カットのあとは2人でゲラゲラ笑ってましたよ。僕は初めての映像作品だし、彼も仕事なのに全く周囲の大人がいない状態だから、異様に撮れ高を気にしたりとか、新人の気持ちで謙虚に頑張りました。

ーそもそもなぜモキュメンタリーかつ、コメディタッチの作風にしようと思ったのでしょうか。

藤田:正直に言うと、僕が映像初心者だからです。低予算で撮り方も分かっていないやつが映像作品を作るときに一番いい方法が、モキュメンタリーかなと。「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」や「グレイヴ・エンカウンターズ」といった作品は参考になりました。コメディーにしたのは、単純に僕らが好きだから。今回の作品では「シリアスで過酷なんだけど、見てる方は笑えてしまう」というトーンを狙っていて、「電波少年」や、エド・スタッフォードが過酷な環境で約1週間の間、何も持たずにサバイバルするシリーズ(※「ザ・秘境生活」)を参考にしています。どちらも主人公が置かれている状況は大変なんですが、その必死さや過酷さがおもしろさになっている。また雪が降った白い景色を見てパッと頭に浮かんだのは「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(監督・若松孝二)」と、クリストファー・ノーランの「インソムニア」辺りの作品です。シリアスな、という意味ではこれらが参考になりました。

ーモキュメンタリーと知って再度観ると、また違った楽しみ方ができそうですね。

藤田:本編のYouTubeのコメント欄を見ると、結構たくさんの人が本当だと思ってるっぽいですからね。過酷そうなロケ地ですが実際は普通のキャンプ場ですし、2日目も普通にホテルに泊まって、おいしいハンバーグを食べて、温泉に入ってゆっくり過ごしました。早くネタばらししたかったんですが、やっとできました(笑)。

ー今回の制作を通して、普段の仕事=A面にフィードバックしていけることはありますか?

藤田:シンプルに、僕にとって初めての映像作品だったから、映像を成り立たせるための構成づくりを真正面から勉強できました。今後もし今回の映像を見て仕事したいと言ってくれる人がいればいいなと思います。めちゃくちゃ勉強になりましたよ。編集の段階でも「ジャンプカット」って単語すら知りませんでしたから(笑)。

ー最後に、KID FRESINOさんへ一言。

藤田:仕事くれてありがとう。また次回も待っています。

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