[Interview]オレンジスパイニクラブ:パンク精神を貫きながら日々の葛藤を歌い、掻き鳴らす

photography_Shiori Ikeno, styling_kawase 136, hair&make_Kazuhiro Sugimoto, text_Takuya Nakatani

[Interview]オレンジスパイニクラブ:パンク精神を貫きながら日々の葛藤を歌い、掻き鳴らす

photography_Shiori Ikeno, styling_kawase 136, hair&make_Kazuhiro Sugimoto, text_Takuya Nakatani

スズキユウスケ(Vo/G)、スズキナオト(G/Cho)の兄弟とゆっきー(Ba)、ゆりと(Dr)からなる4人組バンドとして、パンクへの初期衝動のまま10代の頃にザ・童貞ズを結成。その後、歌とメロディーの立ったサウンドへと変化するなかで、バンド名をオレンジスパイニクラブへと改名。2020年に「キンモクセイ」がチャートを賑わせ一気に話題となって…というのがこれまでのところ。日常のなかでふと口ずさみたくなるポップな歌ごころと見え隠れするヒリヒリとした熱量と姿勢、これからが期待される彼らの“今”に迫る。

—ザ・童貞ズ〜The ドーテーズというバンド名を経て、オレンジスパイニクラブに至るまで、これまでの活動から振り返れたらと思います。影響を受けたのは銀杏BOYZ、The ピーズ、KiNGONSなどとのことですが。

ナオト:そうですね。あと、The ドーテーズの頃は「SET YOU FREE」というイベントに出ているバンドに憧れていました。自分たちもそう見られたいところがあったというか。

ゆっきー:ビッグアーティストからというよりは、対バンした先輩バンドから影響を受けている部分が大きい気がします。

ユウスケ:2016年に「タルパ」という曲ができたあたりから、いわゆるパンクからジャンルが変わってきたのかなという感じはしますね。結構、重要な曲だった。その頃から今のオレンジスパイニクラブっぽくなってきた。そして、今に至るって感じですかね。

—パンクという出自を今も大事にしているとのことですが。

ユウスケ:ライブは激しくいたいっていうのはあります。音源とのギャップは大事にしている。どうしても今はまだ「キンモクセイ」のイメージが強いので、そこをうまくひっくり返せたらとは思っていますね。

ナオト:意地で「パンクバンド」って言い続けているところは若干あります。今はパンクじゃない曲のほうが多いんですけど、それも意識しているわけではなくて。逆に「激しい曲を作ろう!」ってなると露骨になっちゃう。

ユウスケ:パンクスピリットというか。フジロッ久(仮)ってバンドが昔から好きなんですけど、最初はパンクだったけど、今はサウンド的には全然パンクじゃないんですよね。それでもパンクバンドって言っているあたりがかっこいい。あと、LAUGHIN’ NOSEと名古屋で対バンしたことがあるんですけど、目つきからかっこよかった。パンクって媚びてない。媚びたくないなと思いますね。別に嫌いなら嫌いでいい。ついてこいよ、みたいなのがあまり好きじゃない。

—パンクという形式ではなく、精神こそ大事だと。

ユウスケ:放り出す感じが好きなんですよね。「自分で考えろ、自分で汲み取れ」みたいなスタンスがいい。「コイツなに言ってんだ?」って歌詞が好きなんですよ。共感させないのがパンクだと思っている。

—「キンモクセイ」のヒットで状況は一変したかと思いますが。

ユウスケ:今日、インタビューがあるので「キンモクセイ」を聴き返してきたんですけど、俺らの曲っぽくなくて、他のバンドの曲を聴いてるみたいだった。

ナオト:個人的には2ndミニアルバムの『非日常』のほうが好きで、「リンス」や「またあとで」のほうが曲としてはいいはずなんですよね。でも、「キンモクセイ」だけが聴かれるというのは単純に実力不足なのか、悔しいですね。

ゆっきー:流行りものとして扱われると難しいですよね。『非日常』のほうがクオリティーは上がっているはずなのに。

—それでも生活は続いていく、という無常観を伴った歌詞の世界観も印象的です。

ユウスケ:ハッピーな曲もあるので矛盾してるところもあるかもしれないですけど。どう?

ナオト:汲み取り方によっては、そうじゃなく聴こえるというのは意識しています。

ゆっきー:聴き手に委ねるような。

ナオト:歌詞のなかで、ピンポイントでわかる人がいるといいですよね。

—「これは自分のことを歌っている」みたいな?

ナオト:そうですね。そう錯覚するというか。The ピーズはそう感じる歌詞が多い。わからない人がほとんどだけど、わかる人にはわかるというのが一曲のなかでも何フレーズかあればいいなと思いながら書いている。

ユウスケ:たぶんバカにはわかんないですね。バカが作ってんだけど(笑)。

—バカが作っているのに、だからこそ? バカにはわからないと。

ユウスケ:そうそう、変に難しく考えちゃうような(笑)。

—今夏にリリースも控えているとのことですが、制作はいかがですか?

ユウスケ:今、曲を書いているところで、レコーディングはまだこれからです。

—制作にあたって、事前にコンセプトを設けたりはしていますか?

ナオト:曲を作るときは、(ユウスケとナオトが)二人バラバラで作るので、ひとつに決められないんですよね。コンセプトとかがあると、それに向けて曲を作っちゃうことになる。『非日常』のときも二人バラバラに作っていたけど、結果、方向性は一緒だったというか。それを狙っては作りたくない。

ユウスケ:でも、「どんな感じで作ってる?」というのは頻繁に話し合っています。ナオトが作ってきているのは、結構暗い曲が多いですね。

ナオト:自分としては暗いものを書いているつもりはなくて、捉え方によるのかなって。一日で歌詞を丸々書けるわけじゃなくて、一曲を作るのに2〜3ヶ月かかるんですね。そのあいだに他の曲も平行して作っているので、書いているうちに変わってきちゃう。前半と後半でまったく違ったことを言っていたりする。そこもおもしろいなと自分では思っているんですけど。だから今はまだどういう曲になるのかは自分でもわかってない。

ユウスケ:「誰も救われてほしくない」って以前は言ってましたけど、今はやっぱハッピーにいきたいですね。ナオトは暗いんで。陰と陽じゃないですけど。

—ハッピーなんですね。

ユウスケ:前は、精神的な面もあってそういうこと言っちゃったんですよね。『非日常』の頃はあまりハッピーじゃなかった。だからジャケットも、こういう不気味な感じにしたいって言ったんです。俺の精神状態ですね。今はハッピーなんですけど、これから五月になっちゃうんでどうなるかわからない(笑)。

ゆっきー:曲の作り方は今まで通りで、それをどうパワーアップさせていくか。変に変えずに、でもチャレンジはしていきたいですね。

—ちなみに最近、なにしてますか?

ナオト:明後日、引っ越すんですよね。だから家具を見にいったり、どうしようかなっていろいろ考えています。

ユウスケ:大事大事。

ゆりと:最近は食事制限と筋トレをしています。でも体調が悪くなるんで止めちゃうんですけど。このあいだも免疫が落ちたのか風邪を引いちゃいました。先日のツアーのときも、コンディションが演奏に影響出てくるのを感じたので、体調管理したいなと思っています。

ゆっきー:キャンプと、あと知り合いのバンドのMVを撮ったりしています。

ユウスケ:キャンプ楽しい? 面倒臭そう。虫もいるし。

ゆっきー:楽しいよ。焚き火を見ながらゆっくり考え事もできるし。

ユウスケ:俺は……散歩くらいしか出てこない。30〜40分くらい歩いて、バカみたいにドンキにばっかり通っている。部屋の芳香剤とか買ったりします。吊り下げるやつ。

—散歩で曲が生まれたり?

ユウスケ:生まれないですね。家帰ってギター持たないと入り込めない。ボイスメモでメロディーを録ったりはしますけど。

—今後の展望も聞かせてください。

ユウスケ:メンバー抜けないでほしいですね。

(一同笑)

ユウスケ:この4人で羽ばたきたい。売れたいです。

ゆっきー:収入が安定するようにね。あと、流行りとかじゃなくオレンジスパイニクラブとして聴いてもらいたい。「コイツらどの曲聴いてもいいバンドだな」ってなりたい。あとは時代が来てくれれば、完璧ですね。

ユウスケ:時代がまだ俺たちについてきてないだけ。

ゆっきー:うるせえ。

ゆりと:でも高校生のとき、お客さんとして観ていたときから先をいってるなって感じていました。だから「キンモクセイ」で(時代が)追いついてきたのかもって思った。

ゆっきー:そういえば、ゆりとがバンド辞めるときに(註:ゆりとは一度バンドを脱退して再加入している)、「なんでバンド辞めるの?」って二人で車乗りながら話したことがあって。そのときに「いや、絶対売れると思うよ」って言いながら辞めていった。

ユウスケ:そんなことあったんだ。はじめて聞いた。でもほんと、この4人でやりたいようにやって、離れていくなら仕方ない。わがままなんでしょうけど、そうでしかないんですよね。

[ユウスケ]
カーディガン¥28,600(LEMONTEA / LEMONTEA tel_03-5367-2407)、スラックス¥8,690(used / BUD tel_03-3401-7246)、その他スタイリスト私物
[ナオト]
サイクリングシャツ¥5,280(used / Terrace by Lemontea tel_03-6407-1345)、リフレクタージャケット¥24,200(ADANS / Sakas PR tel_03-6447-2762)、その他スタイリスト私物
[ゆっきー]
スウェット¥14,190(used / BUD tel_03-3401-7246)、ペインターデニム¥21,780(used / BUD tel_03-3401-7246)、ネックレス¥17,600(COGNOMEN / Sakas PR tel_03-6447-2762)、その他スタイリスト私物
[ゆりと]
シャツ¥35,200(COGNOMEN / Sakas PR tel_03-6447-2762)、ジャケット¥75,900(COGNOMEN / Sakas PR tel_03-6447-2762)、スウェットパンツ¥7,480(used / Terrace by Lemontea tel_03-6407-1345)、キャップ¥3,300(used / Terrace by Lemontea tel_03-6407-1345)、その他スタイリスト私物

INFORMATION

1st Mini Album『イラつくときはいつだって』
発売中

2nd Mini Album『非日常』
発売中


POPULAR