Interview:空音
3rd EP『Alcoholic club』で示す
怒りを凌ぐ新たなスタンスと選択肢

photography_Ryohei Obama Text&Edit_Maho Takahashi

Interview:空音
3rd EP『Alcoholic club』で示す
怒りを凌ぐ新たなスタンスと選択肢

photography_Ryohei Obama Text&Edit_Maho Takahashi

ジャンルの枠に捉われない独自のスタイルで突き進む空音が、新作EP『Alcoholic club』を本日6月23日(水)にリリースした。ティーンエイジから成人。二十歳という人生の節目を迎えた彼が綴った今作は、タイトルの通り“お酒”をテーマにしながらも、大人になる過程で生じる葛藤と成長、新たなステージに向けたスタンスを示している。KMプロデュースの楽曲からBOAT RACE 2021 TVCM イメージソングまで。叙情的かつストーリーテリングなリリックから探る、空音の今の心情とは。低迷した時代を駆け上がるニューヒーローが見据える、これからについて訊いてみた。

干渉せず今をもっと楽しんだ方がいい

ー学生時代はダンスをされていたそうですが、音楽をはじめたきっかけは何ですか?

小2〜高2までロックダンスをやっていたので、もともと踊るための音楽として、ファンクやヒップホップなど好みに関わらずいろんなジャンルを聴いていました。ちょうどダンスを辞めたタイミングで、周りでラップが流行りはじめたのもあり、特に唾奇さんとSweet Williamさんのアルバム『Jasmine』に影響を受けて、自分でもやってみようと思ったのがきっかけです。

ーリリースサイクルが短い印象ですが、そのインスピレーションの源は何ですか?

たしかに、他の人より制作は早い方かもしれません。その曲に対してのモチベーションが高いときは、3時間くらいで書き上げたりもしますね。もちろん時間がかかるものもありますが。僕はあまり映画や小説からインスピレーションを受けないので、聴いた音楽を自分なりに昇華してそこから歌詞を書くことが多いです。

ー二十歳を迎えたこともあり、今回のEP『Alcoholic club』は“お酒”がテーマですね。

さまざまなジャンルの音楽に触れて、ヒップホップの幅だけじゃなく、もっとオールマイティに活動したいと思う中で、音楽活動において大事にしてきた一つでもある、“身近なことを歌う”ことについて改めて考えたんです。お酒を飲める年齢になり、アルコールが身近な存在になったこと、僕自身飲むことが好きなので題材にしようと思いました。普段から友達と飲んだり、ひとりで飲むことも結構あります。コロナ禍で外出しづらくなったこともあり、家で晩酌することが楽しみだったりしますね。

ー早くお店で普通に飲める日々が戻るといいですよね。ここからは各楽曲について伺っていきたいと思います。表題曲となった1曲目「Alcoholic club」は、怒りもがきながらも突き進む力強さを感じました。

ネガティブになっている世の中に対して、みんなの思う空音のかっこよさのようなものを前面に出し、ポジティブに歌いたいと思って書きました。僕も嫌なことがあったときにお酒を飲みますが、そこに頼りすぎて失敗しないように、程よく付き合おうぜって裏テーマもあって。

―今作もそうですが、空音さんの歌詞は日常的な内容とSFっぽい表現を混在させた世界観が特徴的ですよね。

サビの“きっと抜けれない Nightmare”や“夢で見た夢に踊らされて”は、先の見えない不安や明けては繰り返す緊急事態宣言といった、まさに現在のコロナへの怒りを表現していますが、ユーモアとして陰謀論やスピリチュアル的な要素も入れていて。“人間は地球の実験体さ”とかは、地球から見たら人間は小さいし、地球自体も誰かに監視されているかもしれないといったことを描いています。そのバランス感を楽しんでいます。

ー今回、「Alcoholic club」に加え「crayon」にもKMさんがプロデューサーとして参加されていますね。

KMさんは元々作品が好きでずっと聴いていました。家庭を持ちながらも、国内でトップレベルのプロデューサーとして活躍されている姿勢がかっこいいなと思っていて。僕も「Daddy feat. yonkey」などの歌詞では、そんな将来の姿を綴っていますが、実際にはまだ到達していないので憧れますね。基本的に一緒に曲を作るときは、僕の好きな人にお願いするので、今回KMさんに声をかけさせていただきましたが、まさか実現するとは思ってもいなかったので、一ファンとして光栄でした。一緒にやっていく上でさまざまなヒントをもらえました。

ー2曲目「TSUMAMI」は、外野の声を酒のつまみに昇華していますよね。前作『TREASURE BOX』に収録されている「scrap and build」では、ヘイトに対し怒りを抱いている印象でしたが、今作ではそれを超えた余裕のようなものを感じました。

元々「TSUMAMI」というタイトルの曲は作りたいと思っていて、何を“つまみ”にするかを考えていました。音楽を始めたばかりの十代は、ヘイトの声に対してネガティブになったり、気にしてないようで気にしてしまう節があったんですけど、徐々に気にならなくなっていった今だからこそ、ヘイトをつまみにした今作ができたんだと思います。ヘイトに対して怒りではなく、干渉せず今をもっと楽しんだ方がいいよという感覚で作りました。

ー怒りやディスじゃない姿勢って、意外と取れない気がします。その心境の変化には、何かきっかけがあったんですか?

コラボや客演を経て、周りにいる人々の音楽への向き合い方を見ていくうちに、そういう声は気にしていられないと思うようになりました。関わってくれる人間を裏切ってはいけない気持ちが強くなったから、自信を持って音楽でメイクマネーするスタンスが示せたんだと思いますね。そういう意味では大人になれたというか、自分に余裕ができたのかもしれないです。

ーなるほど。ボートレースのTVCMにも起用された3曲目「SPLASH」は、夢に向かって頑張る若者の背中を押すCMイメージともマッチしていました。

いつも通りの感覚で制作したので、あまりイメージソングということは意識していないんです。今後もこういう仕事をさせてもらう上で、このバランスは難しいと思いますが、変に意識すると自分の好きな制作ができないので。ただ、自分自身も頑張っている同世代の姿に励まされてきたので、今度は自分が伝えたいという想いを込めて作りました。基本的に僕が同世代に向けて発信することが多いのは、そういう面もあります。

ートラックは空音さんの楽曲ではお馴染みのRhymeTubeさんが担当されていますよね。

今回は僕のイメージに近いトラックを最初の段階からいただいていたので、サビにドラムのフィルを入れたり、サウンドの面を少し変えた以外は、ほぼこのままで。僕がリクエストした通りの構成で作ってくれたので、そこは今までの積み重ねと信頼が、制作にも繋がったと思います。

強制的に夢を与える伝え方は間違っている

ーラストを飾る「crayon」は、大人への過程をうまく表現していると思いました。歌詞の“Campus に白は1つも残っちゃない 見たくないもの見て ガキは大人”はまさに、二十歳を迎えた今の空音さんを歌われているようにも感じました。

それはありますね。大人になるにつれて、知らなくてもいいことが嫌でも入ってくるなと感じていて。プライベートや仕事に関わらず、きっと今後も不本意な場面が増えていくと思うんです。けど、それを経てみんな大人になっているし、今はその階段を登っている途中なんだと感じています。なので、真っ白なキャンパスがぐちゃぐちゃになったとしても、最終的にはその人の色になっていくという感覚です。

ー死というワードが繰り返し出てきますが、これはどういった心情ですか。

死ぬ前の走馬灯のようなイメージで作りました。今の状況にも通じることだと思いますが、人っていつ死ぬかわからない。コロナの影響で仕事も私生活も行き詰まって、誰か死んでしまうかも、いつか自分も死んでしまうとか、最終的には死にたいと考える人も増えたのではないかと思っていて。だから毎日一番楽しい日を生きないともったいないという想いを、“毎日が最終回”という歌詞に乗せています。

ーそういうポジティブな想いを抱きながら、“生きてる方が よっぽどマシね”など直接的に鼓舞しない言葉選びが素敵です。

自分の言葉で強制的に夢を与える伝え方は間違っていると思っていて。僕がどれだけ言ったとしても相手の本質は変わらないし、自分自身も他人に言われたことを受け止めはしても、すぐに変われるわけじゃない。それは音楽の面にも通じると思うんです。価値観の押し付けではなく、純粋に背中を押す立場であって、最終的な選択は聞く人のもの。“生きてる方が よっぽどマシね”という歌詞も、死の選択肢もあるかもしれないけど、生きてたら楽しいこともあると伝えたくて。僕は生きてて楽しいと思う瞬間が、恋愛の中に多く感じるんです。だから“君を自転車の後ろに乗せて”は大切な人との描写で。漠然とした希望より、大切な人がいるから明日も楽しみだと思えたり、生きていこうと希望を持てるという気持ちですね。なのでそういう選択肢を増やしたいと思って音楽をしています。

ー思い描いていた大人にはなれていますか。

好きなことをやって生きている人に憧れていたので、やりたいことを続けているという点では、理想に近いところにいる気がします。ただ、もっとやりたいことはあるし、見たくないものに対する抵抗もまだあるので、そういう面では大人になりきれていないのかも。でもここまで来られたのは純粋に凄いことだと思っています。小さい頃に想像していた姿とは少し違うし、音楽をやっているとは思わなかったけど、好きなことをやり続けていてよかったです。

ーこれから空音さんに憧れる下の世代も増えていくと思います。今、同世代や下の世代で気になるラッパーはいますか?

今は特に思いつきませんが、フックアップはしていきたいですね。まだ埋もれている人はいると思うし、自分が見つけることで、下の世代にも音楽への可能性や、この時代でも頑張る希望を与えられるんじゃないかと思います。偉そうなことを言いましたが、今は自分のやるべきことを全力でやっていきます。

ーユースの希望ですね。十代のうちにすべきことはありますか。

周りの人間とクリエイティブすることを楽しんだ方がいいと思います。先日撮影した「crayon」のMVを、「Hug feat. kojikoji」から手がけてもらっている監督のシンイチローさんにお願いしていて。当時は事務所にも属さずに細々とやっていた彼が、たくさんのスタッフに囲まれている姿を見て、自分たちで作り上げていく方が楽しいし、周りのフックアップにもなると実感しました。有名な人に手がけてもらいたい気持ちもわかるけど、周りにいる人を大切にすることが大事な気がします。これは音楽に限らず、制作する立場として、仲間と一緒に作り上げていく楽しさを今から知ってほしいです。

ー今後のビジョンを教えてください。

さっきの話にも通じますが、仲間と共に成長していきたいですね。あとは空音と一緒にいてよかったと思ってもらえたらベストです。これはチームだけではなく、親や恋人、友達にも誇ってもらえる存在で居続けられたらと思います。特に親に対して、活躍の姿を見せられたら嬉しいですね。それ以外は自分がこれまで向き合ってきた音楽への姿勢のまま、やりたいことを続けていけば結果はついてくると思うので。仲間たちから一緒に作ってきたことを誇ってもらえるような、二十代を過ごします。

ー来月にはリリースツアー『TREASURE BOX TOUR』も控えていますね。前作の振替公演となりますが、意気込みをお願いいたします。

まだツアーという実感は沸かないですが、いろいろ準備は進めています。歓声を上げてはいけなかったり、いろいろ制限がある中で、視覚的な部分で楽しんでもらえるように、今回は舞台の美術も入れています。前作のツアーでできなかったことと、今作でやりたいことの総まとめ的なライブになると思うので、楽しみにしてほしいです。

INFORMATION

空音 『Alcoholic club』

発売:2021年6月21日(水)
https://jvcmusic.lnk.to/Alcoholic_club

空音 -TREASURE BOX TOUR- 振替公演
7月3日(土):@名古屋ボトムライン (OPEN 17:00/START 18:00)
7月11日(日):@東京LIQUIDROOM (OPEN 17:00/START 18:00)
7月17日(土):@宮城Live Studio Ripple (OPEN 17:00/START 18:00)
7月21日(水):@大阪なんばHatch (OPEN 18:00/START 19:00)
7月31日(土):@福岡BEAT STATION (OPEN 17:00/START 18:00)
8月9日(月祝):@北海道cube garden(OPEN 17:15/START 18:00)

[受付 URL]
https://eplus.jp/sorane2021/

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