Chilli Beans.の1st EP『d a n c i n g a l o n e』 が頭から離れない。ポップな言葉たちが織りなすカラフルなリリック、その世界観を拡げる骨太なサウンドと芯の通った歌声に、思わず“踊り出したくなる”そんな作品だ。アーティストを志し音楽塾ヴォイスに入塾、そこで出会ったMoto(Vo)、Maika(Ba&Vo)、Lily(Gt&Vo)によって2019年に結成。キュートな3人の魅力はSNSを中心に広がり、ジワジワとシーンを席巻している。Chilli Beans.にとって初のインタビューとなったこの日、3人はMaikaお手製のお揃いのビーズアクセサリーを身につけ、はにかんだ笑顔と共に登場。ひとつ一つの質問に丁寧に答えてくれた彼女たちの、等身大の想いをお届けする。
「作りたい世界観がパッと浮かんで、
それにストーリーを乗せていく感覚」ーMoto
ーまずは皆さんの音楽的なバックグラウンドから伺っていきたいと思います!
Moto(Vo):シンガーソングライターのYUIさんが好きで、特に「Kiss me」や「Get Back Home」とか、不思議な雰囲気を持った曲をよく聴いていました。それがきっかけで、YUIさんも通っていたヴォイスに入塾し、授業を通していろんなジャンルの音楽に触れる中で、特に自分の好きなジャンルはポップスなんだと気がつきました。最近ではメラニー・マルティネスをよく聴いています。
Maika(Ba/Vo):私は小学校3年生の頃に、ディズニー・チャンネルの「ハイスクール・ミュージカル」にハマったのがアーティストを志すきっかけでした。でも当時は音楽をやるにしても、何から始めればいいのかわからなくて。転機になったのは中学の頃に参加したヴォイス主催の大会です。音楽室にポスターが貼ってあって。塾の主宰者でもある音楽プロデューサーの西尾芳彦先生による「西尾賞」を獲ると入塾できる大会で、当時の私にとって、音楽をする上でそれが一番の近道だし、両親を説得する材料にもなると思って参加しました。最初に出場した年とその次の年は特別賞で、3年目で優秀賞。結局念願の「西尾賞」を獲ることはできなかったけど、毎年出場する私のことを西尾先生が覚えててくれて、今に繋がります。入塾後にベースと出会い、そこからはファンクやディスコをよく聴くようになりました。憧れのベーシストは、ヴルフペックのジョー・ダート。ベースが体の一部なんじゃないかってくらい、かっこいいフレーズを弾くんです。あの技をどうにか盗めないかなと思って。
Lily(Gt/Vo):私も音楽にのめり込んだきっかけは、小学生の頃に観た「シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ」でした。あんな風になりたくて、中一からボイストレーニングに通いはじめました。ギターを始めたのは、韓国の音楽が好きな母と一緒に観たIUさんの影響。アーティストを目指して、いろんなオーディションを受けたりもしたけど、なかなか上手くいかなくて。そんな姿を見兼ねた母の勧めで、ヴォイスに入塾しました。今はジョン・メイヤーやジミ・ヘンドリックスが好きで、昔の音楽から結構影響を受けています。
ーヴォイスがきっかけで、みなさん音楽の幅が広がっていたんですね。それではMotoさん、Maikaさん、Lilyさんの3人でバンドを組むことになった経緯を教えてください。
Moto:ヴォイスの先生が「3人で組んでみたら?」って、私たちを引き合わせてくれました。元気で何事にも前のめりな2人とバンドを初めてみたら、すごく楽しくて。
Lily:3人で初めて合わせた曲は、レニー・クラヴィッツの「Are You Gonna Go My Way」だったよね。2人はシンガーソングライターを目指していたと思うけど、私はギターと出会ってからはどんどん弾くことに魅了されて。だから、集中してギターを弾くことができるバンドを組みたかったので、声をかけてもらえて嬉しかったのを覚えています。
Moto:3人で指標となるようなバンドを掘っていたときに、みんなが共通して衝撃を受けたのがレッド・ホット・チリ・ペッパーズでした。曲の内容もソウルフルだし、パフォーマンスも唯一無二な感じがして、なのでレッチリからチリをもらってバンド名はChilli Beans.に 。ビーンズにはいろんな意味があって、まだまだひよっこな私たち自身のことや、楽器サウンドを大切にしたいというオーガニックな部分とかを込めています。
ー楽曲はどなたが中心になって制作しているんですか?
Moto:それぞれが作詞も作曲もするので、例えばワンコーラスできたとかでも共有して、3人でアイディアを出し合いながら、広げていってます。歌詞を書く人も曲によってバラバラ。
Lily:私の中で制作活動は、日々の中で気持ちがすごく沈んだときや、辛いことがあったときとかの逃げみたいな感じです。音楽が吐口になってる気がする。
Maika:私は何か新しい刺激を受けたときに、スイッチが入るタイプかも。例えば、新しく聴いた曲がめっちゃかっこよかったりすると、自分もこういう作品を作りたいって感化されます。
Moto:私もきっかけはMaikaと同じ。作りたい世界観がパッと浮かんで、それにストーリーを乗せていく感覚です。最近はドラムのトラックでベースを作って、そのイメージに合わせてメロディーや歌詞を乗せていくと、自分的にやりやすいことに気がついて。曲の雰囲気が掴みやすいから、ストーリーを展開しやすいんです。
Lily:私はアコギで弾き語りからが多いかな。
Maika:私も最初はアコギでやってたけど、最近は結構ベースのリフかも。それかDTMでコード打ってかな。
「等身大の思いを込めたEP」ーMaika
ーみなさんの個性が混ざり合った1st EP『d a n c i n g a l o n e』には、さまざまな表情を持つ4曲が収録されていますよね。改めてどのような作品に仕上がったと思いますか?
Lily:チリビ(Chilli Beans.)が一歩踏み出すきっかけになった、大切な作品です。4曲とも雰囲気は似てるけど、どれもそれぞれに個性のある楽曲で、今の私たちの存在証明のような作品になっています。
Maika:まさに、等身大の思いを込めたEPだよね。EPを出すという段階に自分たちが立てていることも嬉しいし、ありがたい。
Moto:感じていることや、言いたかったことをそのまま詰め込んでいるので、フラストレーションが溜まってる人も、このEPを聴いたら、スカッとしてもらえると思う。
ー1曲目の「lemonade」は、Chilli Beans.としてはじめて作った楽曲なんですよね?
Maika:結成してすぐくらいに、お互いのことをもっと知ろうみたいな感じで作った楽曲です。Lilyが持ってきてくれたコード進行に、みんなで話し合いながら歌詞やメロディーを乗せていきました。
Moto:“lemonade”にはいろんな意味を込めてるんですけど、聴いてくれた方がそれぞれのシチュエーションを想像して、自分のものにしてくれたら嬉しいなと思っています。
ー作曲とアレンジには、Vaundyさんも参加されていますよね。どんなやりとりがあったんですか?
Maika:Vaundyもヴォイスに通っていて、私が同じクラスなんです。授業中に「lemonade」のデモを流したら、Vaundyがいろんなアイディアをくれて今の形になりました。なので、授業の延長みたいな感じ。高校生で入塾してきたVaundyは、個性的なキャラでヴォイス内でも一際目立つ存在でした(笑)。
ー流石ですね(笑)。それでは「See C Love」の制作の裏側を教えてください。
Moto:西尾先生が曲の土台を作ってくれて、私たちが演奏を見せるってところにフォーカスしてアレンジした曲です。
Lily:ラストにギターソロをつけてるんですけど、それは自分的に結構挑戦でした。楽器で持っていくって曲もこれが初めてだったので、試行錯誤が詰まった楽曲ですね。
ー確かに、ライブですごく盛り上がりそうな楽曲ですよね。ちなみに「See C Love」のCは何を表現しているんですか?
Moto:Aさん、Bさんとか言うじゃないですか。でもそこにも当てはまらないくらいのCさんやなんでもない存在、日常だったりをこの曲では歌っていて。歌詞でも「今日は全部どうでもいい〜」みたいなことを言ってるんですけど、無理せず、ありのままの感情を歌っています。
ー“孤独が最高に楽しい”と歌う「シェキララ」もみなさんの今のリアルな想いが詰まっているのかなと感じました。本EPのテーマ楽曲でもあるんですよね?
Lily:「シェキララ」で表現したかったのは、孤独と向き合う時間が長い、10代や20代の葛藤でした。孤独すぎて一周回って逆に楽しいかも、っていう感覚を表現しています。サウンドも海外のインディーズの感じを意識して取り入れているので、親しみやすい感じに仕上がったと思います。
Maika:このEPを作る上で選んだテーマが「孤独」でした。だけど、ネガティブになるのではなく「ひとりでも楽しく踊っちゃおう!」みたいなところから、EPのタイトルも『d a n c i n g a l o n e』に。
「この時代に存在しているバンドだから、
今の想いをちゃんと作品に残したい」ーLily
ー今って世界中の誰しもがひとりで過ごす時間が増えましたよね。この時代背景は、みなさんの音楽にも影響を与えていますか?
Moto:かなり影響を受けていると思います。「Digital Persona」もまさに今の時代に感じることを、素直に歌った曲なので。
Lily:コロナ禍がデジタル化を加速させてしまい、そのことに対する恐怖心みたいなのを「Digital Persona」では描いています。この時代に存在しているバンドだからこそ、今の想いをちゃんと作品に残したいっていうのがあってできた曲。たくさんの人に伝わって欲しいなって思います。
ー「Digital Persona」は電子音のアレンジも印象的ですよね。
Lily:生身の人間が奏でるサウンドと、デジタル音の共存みたいなのを意識しました。みんなでスタジオに入って、一発録りでレコーディングしているんです。初めての経験だったので、思い出の一曲ですね。
ーその他にも、今作の中で初めてチャレンジした曲や、印象的な作品はありますか?
Lily:「シェキララ」は自分のイメージしてた世界観を歌詞に落として表現できたので、思い入れのある曲です。この曲はドライブなどでみんなで聴いてもいいし、曲の通り、ひとりで退屈しているときに、とりあえずかけても楽しめる作品だと思う。
Moto:私も「シェキララ」かな。インディーズっぽい曲の雰囲気が好きだし、Lilyの言うように、どんな状況でも聴くだけで盛り上がれる曲。
Maika:「Digital Persona」は今の叫びたい想いをそのまま詰め込んだので、私にとって大事な曲ですね。今の状況のように少し我慢を強いられてるなってときにこの曲を聴いて、自分の中だけでもフラストレーションを解消させるのか、もしくは爆発させるのか。どっちにしても、やり場のない感情の吐口みたいな感じで聴いて、少しでもスカッとしてもらえたら嬉しいです。
ー最後に、Chilli Beans.の活動を通して今後叶えたい目標を教えてください。
Moto:自分たちの世界観を表現しつつ、私たちらしく、ひとつずつ超えていきたいよねっていうのは、3人でよく話しています。
Lily:いつか、コンセプトを決めたショーのような規模のライブ演出をやってみたいなと思う。
Maika:エンターテイナーでいたいよね。Chilli Beans.っていう世界観を確立したいなって思う。その上で、ワンマンやツアーができるってなったときに、最大限のパフォーマンスをしていきたいし、何事にも限界を作らずに、挑戦し続けていきたいと思います。
INFORMATION
Chilli Beans.
1st EP
『d a n c i n g a l o n e』
2021.8.25 Digital Release
https://chillibeans.lnk.to/dancingalone
Artwork by keigo inamoto