橙 [dai-dai]as photographed by TAIGA vol.01 池松壮亮

vol.01 池松壮亮 / 役者

平成という時代は、どんな色をしていただろう。
俳優 太賀がカメラを構え、平成に生まれた表現者たちの素顔と向き合う。

橙[dai-dai] vol.00 太賀

“平成に何もなかったとか言われたら嫌だもんね”

ー今回からゲストを招いての撮影&対談となりましたが、初回の撮影を終えてどうでした?

太賀:1回目のゲストで壮亮くんを撮るっていうのは、はなから決めてました。でも、正直やってもらえると思わなかったです。こういうの好きじゃないかなと思って。

池松:う~ん。好きじゃない(笑)でも、太賀のお願いだから。知らない人から声かかっても絶対やらないけど。太賀は親戚みたいなところがあるから特別な存在ですよね。

太賀:今回のコンセプトが平成生まれの人物縛りで……

池松:太賀、絶対考え直した方がいい。太賀が、この人は平成を見てきたな~って人と話せばいいじゃん。平成生まれじゃなくて。

太賀:1回目からちゃぶ台返しにあいましたけど、どうしましょう(笑)俺、正直壮亮くんに言われたら、不安になっちゃいます。

池松:絶対その方が面白いよ。俺は別に時代とともに歩んだ感覚は全くなくて。

太賀:でも、見過ごせない何かもあるわけじゃないですか。

池松:まぁ、そうだね。平成に何もなかったとか言われたら嫌だもんね。何もないのかもしれないけど。

太賀:平成という時代に溺れている人ではなく、僕が思う平成生まれのかっこいい人を撮りたいっていうのがあって、その一回目が池松壮亮でした。

池松:ありがたいです。

太賀:飲みの席とかは多いけど2人で表に出るのは出会った頃ぶりな気がします。

池松:他の俳優と喋ることと太賀と喋ることがあまりにも違いすぎて恥ずかしい。すごいやりにくかった。

太賀:俺としてはそれが面白みになればいいなと思うんですけど。

ー二人の出会いは?

壮亮:あんまり覚えてないけど、ちゃんと共演したのは10年前ぐらいか。NHKのスペシャルドラマで、ほぼ二人がメインの内容だったよね。親友同士の役で太賀が戦争行っちゃって死んじゃって。僕は視力が悪くて行けなくて、それを後悔するって話。でもその前から結構近いところに居て、友達に会えばそこに太賀が居てって感じだったから、いつの間にか。

太賀:そうですね。ドラマ始まる時も、一緒に鹿児島の知覧特攻平和会館行きましたね。

池松:その撮影も2ヶ月くらい、名古屋に泊まりで隣の部屋だったな。帰り際ドアの下からAVがでてきて、お世話になりましたって。

太賀:そんなことありましたっけ(笑)壮亮くんが俺の2つ上で。2つしか変わらないとはいえ、何をするにも一番最初に教えてくれるのは壮亮くんだった。

池松:あ、そっちの話する?

太賀:やめましょう(笑) でも、そっち方面も教えていただいたことはたくさんありますね。

壮亮:まぁいろいろしたね。

太賀:でもあれ以来、がっつり共演ってないじゃないですか。それが来るのがものすごく楽しみでもあるし、怖くもあるし、一番ドキドキします。壮亮くんにいろんなアドバイスをもらって、いつもかなりえぐられて、はっとさせられる。ここ数年でそういうのを経て自分なりに研ぎ澄まされています。

池松:普段絶対言わないんだけどね。同じ仕事をしている人に。

太賀:そうなんですか?

池松:上も下も絶対作らないし、上が言っても聞かないし下にも絶対言わない。ましてや、歳下なんてこんな時代に生まれて、もう行き着くところ、敵でいてあげるしかないから。ちょっと特殊だよね。ところで、なんで太賀そんな真面目になったの?真面目はずっと真面目だけど、もっとクッソ生意気だったじゃん。

太賀:そうですかね。そんなに壮亮くんに対して生意気だったかな……

池松:いや俺に対してじゃなくてさ。でも優しくなった感覚はあるでしょ?

太賀:はい。いろんな現場に行って、自分が信じているものだけをやれる環境じゃなかったりして。好きなこと以外もやったので。

池松:たくさん折れた?

太賀:たくさん折れた。でもここで信じてやらないと本当に自分が好きなことはやれないんじゃないかなっていうのが20代前半にあって。そう思った先に、気づきもたくさんあって。映画俳優に憧れた10代から、演劇もやってみたら、この作家さん素敵だなって人に出会えたりとか。だから昔はまだいろんなことを毛嫌いしてて、それを口に出していたと思うんですよ。でも、ちゃんとリスペクトできるようになりました。

池松:そっか~。大人になったんだね。それより俺らのことだけじゃなくて、もっと平成の話とかした方がいいんじゃないの?

太賀:そうですね。平成が終わったらどれくらい世間は変わると思いますか?

池松:結構変わるんじゃない?大きな節目になるはず。日本人て節目を気にするし、節目って人が死ぬし、生まれるし。だから、東京オリンピックのあとは怖いね。もっと不遇の時代がくると思う。

太賀:バブルが弾けるみたいな?

池松:そんな分かりやすく変わらないけど、俺らがやってる映画もどうなるかわかんないし。だからいいんじゃない?手に職。

太賀:あ、カメラ? 職になるか分かんないですけど。

池松:いや今もうなってんじゃん。いいと思うよ。俺は何にもないもん。

太賀:でも役者で一本筋通ってるから。

池松:いや、それが崩れた時にね。ギターかな~やっぱ男はギターだよね。

太賀:ギターっすね(笑)

池松:俺も太賀もしばらく気を使いすぎたから、好きにやってくださいよ太賀さん。

太賀:はい。壮亮くんの言葉に勇気付けられました。

池松:まぁリスクは取って欲しいな。みんな保険しか打たないから。安心するし、リスクは犯したくないよ俺だって。でもこんな時こそ誰かがリスクを負わないと。世界はどうなるか分からないし。

太賀:やっぱり、先陣切ってそれをやっている先輩を見ると感化されるな。

池松:でも俺は二歩くらい引いてね、今の日本映画を見ていると、日本映画はもっと太賀に頼らないといけないと思う。それをなんでかな? ってずーっと考えていたんだけど、太賀のせいだと思う。太賀がまだ日本映画に頼っているから。それは俺にも言えて、それこそ死っていうものにも繋がるんだけど、もういいじゃん十分やったじゃないって思えるかってこと。知覧で見た、特攻で死んでいった人たちの遺影を見てると、彼らと目が合って何かを語りかけてくる。太賀もそういう写真撮ってよ。特攻しなきゃってことじゃなくて、こんな時代に甘んじて生きてるのもつまらないし、生きがいと死にがいみたいなのを持っていないとねって話なんだけどさ。

太賀:ぐうの音もでないです。ありがとうございます。

池松:そろそろ太賀が締めてよ。そういえば最近モテないって言ってたじゃん。

太賀:いいじゃないですかそれは~(笑)

池松:昔はモテモテだったのにね。10代はね、2秒くらい太賀に抱かれてもいいかもって思ってたもんな。

太賀:言ってくれれば抱いてたかもしれないです。なんなら抱かれたい。

池松:モテる太賀を取り戻そうよ。

太賀:頑張ります! 次会う時にがっかりさせたくない。第一回目のゲスト間違いないですね。自分にとって、これほど勇気をくれる人はいない。会う度に最も背筋の伸びる先輩です。

池松:全然伸びてないじゃん(笑)

太賀:伸びてますよ!やっぱシビれるな~!

アウター¥201,000、シャツ¥55,000、パンツ¥56,000、シューズ¥64,000 (すべてPIHAKAPI) Diptrics tel 03-5464-8736

池松壮亮

平成2年生まれ、福岡県出身の俳優。役者デビューは10歳。昨年公開された映画『斬、』では、第33回高崎映画祭最優秀作品賞&最優秀主演男優賞を受賞した。


太賀

平成5年生まれ、東京都出身。13歳で俳優デビュー。カメラに魅了されたのは小学生の頃。3月9日より公開される映画『きばいやんせ!私。』に出演する。