CULTURE 2024.05.22

祝・UMBRO生誕100周年!
ブランドを紐解くイギリス遊覧記

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

予てからお伝えしているUMBROの生誕100周年を祝うポップアップストア「UMBRO x BENE POPUP STORE」が、5月23日(木)からスタート。サッカーのセレクトショップBENEが厳選したUMBROのヴィンテージユニフォームをはじめ、今シーズンの新作ウェア「THE THIRD by UMBRO」や、先日発表された「UMBRO100周年限定コレクション」が展開される。

その開催に先駆けEYESCREAMは、UMBRO100周年の盛り上がりを現地で体感すべく、イギリスに向かった。

まずは、UMBRO生誕の地であり、本拠地があるイギリス・マンチェスターにて、ブランドのカルチャーを継承する3名のブランドキーマンへの取材を決行。1924年に誕生したUMBROの歴史やオリジナリティーについて話を聞いた。

(左)コリン・ローマス/UMBROプロダクトカテゴリー責任者
(中央)アンソニー・リトル/UMBROブランド最高責任者
(右)ヘレネ・ホープ/UMBROグローバル・ブランド・マーケティング最高責任者

ーーUMBROというブランドについてどのようにお考えでしょうか?

アンソニー:UMBROは100年という長い歳月を駆け抜けてきたこともあり、フットボールだけでなく、スポーツシーンにおいて、豊かな歴史と遺産を持つブランドです。

ヘレネ:UMBROは手に取りやすく大衆的で、親近感のあるブランドです。また個の力を伸ばすことにフォーカスする他のブランドとは異なり、“チームでフットボールを楽しもう”という考えが強いことも特徴です。美しい試合には団結力がつきもの。その考え方はブランドにも反映していて、常にグループや家族、チームのことを第一に考えいます。

ーーUMBROのイノベーションやテクノロジーの変遷について教えて下さい。

コリン:以前までは、耐久性とファブリックの重さはイコール関係にありましたが、テクノロジーの進化に伴い、軽くて丈夫なユニフォームが誕生しました。それに加え、例えばモイスチャーウィッキング(注2)や熱調節などの機能性も高まり、アスリートは、試合中に最高のパフォーマンスを発揮するユニフォームを選べるようになりました。UMBROは創業当初から、彼らのニーズを理解し、期待に沿えるように製品を企画・開発してきました。プロダクト開発における鋭い洞察力は時代とともに受け継がれ、次の100年後も変わらずに持ち続けることでしょう。

(注2)汗や水分をすばやく吸収し繊維の外に水分を逃がす素材。

UMBROの創業者・ハロルド・ハンフリーズ

ーー昨今のヴィンテージユニフォームのトレンドに関して、どのように感じますか?

コリン:UMBROのようなブランドにとって非常に良い流れです。UMBROは、これまでイングランド国内の多くのクラブをスポンサードしてきたので、フットボールにまつわる歴史と遺産、膨大なアーカイブが強みですからね。我々の財産(過去のアイテム)に今も価値があることを誇りに思います。トレンドというのは常に移り変わるものなので、そういった今の流れを大切にすると同時に、スポーツの試合に熱中するひとりの人間として、あと数年は見届けたいと思っています。

ヘレネ:ただ、UMBROの良いところは、トレンドに大きく左右されないことです。トレンドは循環するもので、自分がスポーツシーンにで働く間、さまざまなトレンドが来ては去り、また来てはメインストリームに組み込まれていく様子を見てきました。その中でUMBROは、100年という背景があるので、いくらでも過去を掘ることができるのが強みですね。

ーー最後に、それぞれが思うUMBROらしさについて教えて下さい。

アンソニー:スポーツシーンにおいて100周年を迎えたことはとても珍しく、これこそがUMBROらしさだと思います。先ほどヘレネも触れましたが、大衆に寄り添っていることもUMBROの核です。フットボールひいてはスポーツは、全ての人に開かれていると信じていますし、我々もできる限り、人々に寄り添うブランドであろうと努めています。

ヘレネ:この100年間、UMBROは常にブランド自身を刷新し続けてきました。だからこそ、消費者の動向や歴史的な変化に適応できたのだと思います。また、ブランドの“人間らしさ”も大きな強みです。UMBROは常に家族のような一体感やパートナーシップ、コラボレーションに基づいたビジネスをしてきました。家族のような温かみもあるし、ハロルド・ハンフリーズが今もオフィスのどこかにいるような雰囲気すら感じます。私たちはチームで、今でもハロルドとも一緒に働いていることは、UMBROの特性の1つだと思います。これは、消費者に対しても同様です。私たちは消費者の友達であり、ブランドとしてではなく、同等の立場で話している。これこそが、UMBROが他のブランドと一線を画す理由だと思います。

コリン:アンソニーとヘレンの言う通り、歴史と遺産こそがUMBROの強みだと思います。スポーツについての深い知識が、ブランドを独自の存在にしてくれています。一方で、ブランドで働く人も重要です。UMBROには勤続年数の長い人が多いのですが、これは家族のような関係性の社風や彼らの情熱によるものが大きいです。長いことビジネスの世界に身を置くことは健康的ではありませんが、社員の多くはUMBROで働くことを楽しんでいます。彼らはビジネスの知識を深めながら、ブランドと共に成長している。社員こそが、UMBROがUMBROらしくあり続けることに貢献してくれています。

マンチェスターから飛行機で約1時間30分。ロンドンに移動した我々はその足で、ウエストミンスター大学へ。多くの世界的ファッションデザイナーを輩出した名門校で、UMBROの100周年の歴史を振り返るエキシビションが催されていたのだ。これまでにUMBROがコラボした世界的ブランドやアーティストとのアーカイブピースが彩る会場で、同イベントの主催者である大学教授のアンドリュー・グローヴスとダニエル・シュプレッヒャーに話を聞いた。

(左)アンドリュー・グローヴス
(右)ダニエル・シュプレッヒャー

ーーUMBRO創業時の1924年以前、またその当時のスポーツウェアシーンの状況とUMBROが与えたインパクトについて教えて下さい。

アンドリュー:ブランド設立前に2つの重要な出来事がありました。まず1つが、前年の1923年に「ウェンブリー・スタジアム(注1)」が建設されたこと。もうひとつは、マンチェスター・シティFCが85,000人ものサポーターを収容できるホームグラウンド「メイン・ロード」を建てたことです。つまり、このふたつのスタジアムの存在により、突如としてフットボールは大観衆が観戦するスポーツとなり、UMBROがスポーツを楽しむ人たちに向けたビジネスを始める原動力になったのです。

(注1):現在のものではなく、2002年に建て替えられた「ブリティッシュ・エンパイア・エキシビション・スタジアム」、別名「旧ウェンブリー・スタジアム」。

ーーフットボールサポーターたちの間でスポーツウェアの需要が高まったことについて、UMBROはどのように影響を与えていますか?

アンドリュー:UMBROが初めてレプリカユニフォームを製造したのは1955年で、しかも子ども用だったんです。1980年代から大人用も生産するようになり、それがとても好評を博しました。1990年代には、サポーターたちはフットボールの試合の観戦時に着るだけでなく、ナイトクラブへ行くときや、普段着としても着るようになりました。こうして、レプリカユニフォームはスポーツウェアとしての本来の用途を越え、ファッションアイテムの一部にもなっていったのです。

ーーこの100年におけるUMBROのデザインの変遷についてどのように考えますか?

アンドリュー:UMBROは、もともと技術的な知識を持ち合わせていましたが、プレイヤーやデザイナーと組むことで、より専門的な知識の恩恵を受けることに成功しました。早い段階では、1950年代にテッド・ティンリングやマット・バスビーと協業したアイテムでそれが見て取れますし、後年にはPaul Smith、VETEMENTS、PALACE、Supremeといったブランドとも組んでいます。人々がUMBROのアイテムをスポーツ用に着るのか、それともレジャーに着るのかということも含めて、UMBROはカスタマーの購入動機をよく理解しているのです。そして、会社が100年生き残るということは稀なことで、立ち止まることなく絶えず変化し、革新的であり続けていることを表します。ある意味、UMBROを成功したスポーツチームとして捉えることもできるでしょう。

ーーこれまでに、さまざまなファッションブランドとのコラボを発表してきたUMBROですが、その変遷について教えてください。

アンドリュー:2002年の日韓W杯にあわせて発売された、Paul Smithとのコラボレーションが初だと思います。それまで、スポーツブランドとデザイナーとのコラボは、スニーカーやTシャツ、トップスなどが主流でしたが、Paul Smithとのコレクションでは、ホームとアウェイのフットボールシャツから、ポロシャツやレジャー用シャツ、レザーグッズ、アクセサリー、ラゲージ、アイテムまで、フルレンジで展開した革新的なものでした。当時、UMBROがどんなブランドやデザイナーよりも先駆けており、スポーツウェアを更なる高みへと押し上げる先見性があったのです。

ダニエル:Paul Smithという典型的なイギリスのデザイナーと、同じくイギリスのスポーツブランドのコラボだったことも、非常に重要だったと付け加えておきます。

ーー今回のエキシビションにおける個人的なフェイバリットアイテムについて教えて下さい。

アンドリュー:マンチェスター・シティが初めてプレミアリーグで優勝した2011/12シーズンのユニフォームですね。私はマンチェスター・シティのサポーターなのですが、シーズンの開幕前にこのシャツを購入していました。サポーターにとって、数カ月後にどんな結末を迎えているか分からないシーズンのはじめに、期待に胸を膨らませてユニフォームを購入することは、感情的で意味のある瞬間なのです。なので、このエキシビションに訪れたシティズン(マンチェスター・シティのサポーターの愛称)は、このシャツを見て特別な感情を抱くことでしょう。エキシビションのキュレーターとしては、専門的な視点を持つように努めたいところですが、これだけは譲れないのです。

ダニエル:1930年代後半のグラスゴーのフットボールシャツがお気に入りです。この時代のスポーツウェアは発見するのが困難だったという過程だけでなく、当時のグラスゴーの労働階級の若者向けにデザインされている背景が気に入っています。スポーツ、そしてフットボールは、労働階級のカルチャーにとって非常に重要なのです。

最後に、同エキシビションの初日にウエストミンスター大学にて行われた、UMBRO100周年を祝すパーティの様子をお届けする。世界各国から集ったインフルエサーやUMBROヘッズにより会場は大いに盛り上がり、改めてUMBROがスポーツブランドの垣根を超え、ファッションシーンにおいても多大な影響力を持つブランドであることを実感した。

イギリス・ロンドンでも開催され、大盛況を博した「UMBRO x BENE POPUP STORE」。生誕100周年という偉業を成し遂げたUMBROのヒストリーを、ぜひ会場で体感していただきたい。

INFORMATION

UMBRO ×BENE POPUP STORE

日程:2024年5月23日(木)〜5月26日(日)
営業時間:13:00-20:00
住所:東京都渋谷区渋谷1丁目22-5 1F
渋谷駅B1出口より徒歩3分
https://store.descente.co.jp/umbro/feature/umbro-pop-up-store/

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