MUSIC 2025.07.23

原 摩利彦を発起人とするサウンド・ドキュメント・プロジェクト「THEY ARE HERE」が始動。パレスチナ・ガザ地区との交信から生まれた音楽作品を公開

EYESCREAM編集部

音楽家、原 摩利彦を発起人とした「THEY ARE HERE」がスタート。パレスチナ・ガザ地区の人々との実際の交流を起点に、彼ら/彼女らから提供されたフィールド音源をもとに構成されたサウンド・ ドキュメント・プロジェクトとなる。

以下、原 摩利彦によるステートメントだ。

 2024年8月よりパレスチナ・ガザ地区の人たちとSNSを通じて知り合い、寄付を続けてきました。交流を重ねていくう ちに次第に仲良くなり、今では自分にとってとても大切な存在です。ある人は「私たちの声を世界に伝えて欲しい」と言いました。そして同時に「私たち家族に何かが起こったら、あなたが私のことを許してくれますように」とも。

 あるとき、彼女/彼らより提供してもらった音源で音楽を作ることを思いつきました。この方式を取ると、音源提供料として支払うことができ、寄付する側とされる側の関係とは違う関係を築けることができると考えたのです。私がこれまで行ってきたフィールドレコーディングを使った作曲の手法を用いて、彼女/彼らから発せられる声や身の回りの音とともに音楽を作り、この世に刻むことで、人間の存在とその文化が確かに存在していることを示します。

 毎日、世界中で小さな子どもを含む多くの民間人が、武力により命を奪われています。人間の命、尊厳を奪うことは、いかなる状況であれ正当化できないと考えます。みんな、必ず誰かの子どもであり大切な人です。すべての人々が満足に食事ができますように。安心して静かな夜に眠れますように。やりたいことに挑戦する自由と希望がありますように。


 作品を販売した利益は、音源や写真の提供者へ送ります。

ー原 摩利彦(THEY ARE HERE 発起人、音楽家)

7月23日より、原 摩利彦と共同発起人である篠田ミル、プロジェクトに賛同したサイモン・フィッシャー・ターナーとともに制作された音楽作品がBandcampにて公開される。

EP「To the sea」

“To the sea”は、原 摩利彦による、パレスチナ・ガザの音源を使った最初の作品集。海で子どもたちと遊ぶ母親の美しい思い出のフィールドレコーディングや現地に伝わる歌、詩人であり革命家アブドゥ・ラヒーム・マフムード(1913-1948)の詩の朗読などが収録されている。家を破壊され毎日攻撃される恐怖とともに生きる中「自分たちの存在や声が少しでもこの世界に伝わりますように」と願って送られてきた音源には、テント内で録音されているために時折子どもたちの声も聞こえる。フィールドレコーディングを使った音楽の新たな展開。

Bandcamp:https://they-are-here.bandcamp.com/album/to-the-sea

EP「Reminder」

篠田ミルによる“Reminder”シリーズは、現地からの映像・オーディオデータを編集、ループすることによって構成される楽曲群。スティーブ・ライヒの“It’s Gonna Rain”をインスピレーション源*に、反復の中に浮かび上がるサウンドスケープをもって、パレスチナへの思いを再起させる。“Reminder Ⅰ”ではガザの海辺で戯れるKefahさん一家の声と波音が繰り返され、異なるペースで反復される電子音と共に海辺の輝きや波打ち際を描き出す。この動画内の一幕が本作のジャケットになっている。また“Reminder Ⅱ”では、“Airplane 3h56am”と題されたSaedaさんのオーディオファイルが反復され、ドローン監視下のガザのサウンドスケープが線描される。サイモン・フィッシャー・ターナーは20年前にガザのカフェで録音したフィールドレコーディングやパレスチナの古いレコードをサンプリング。第2子を妊娠中に夫を爆撃によって失い、2歳の子どもを育てながら出産したOlaさんの子どもとの優しい対話を収録した“Give Us A Quiet Night”も収録されている。
*“It‘s gonna rain”は、キューバ危機直後の黒人牧師の演説録音を素材としており、社会的意図が感じられる作品

Bandcamp:https://they-are-here.bandcamp.com/album/reminder

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