MUSIC 2025.09.10

Report:過去と現在を繋ぎ、未来を示すEYESCREAM NITE VOL.1が描いた一夜

EYESCREAM編集部
Photography_Hiroki Asano, Edit&Text_Chie Kobayashi

陽が落ちたとて蒸し暑い空気がまとわりつく。お盆休みも終わり、気だるい空気が町中に漂う体8月20日。煌びやかな代官山の街を背に、階段をぐるぐると降りると、ざわついた人混みが広がる。代官山UNITのライブフロアに到着だ。右手にドリンクカウンター、左手にはEYESCREAMのバックナンバーが並ぶ。創刊から21年を迎える雑誌・EYESCREAMが初めて主催するライブイベント「EYESCREAM NITE」だ。

オープニングアクトはHALLEY
ステージの上手に清水直人(Dr)、下手に西山心(key)、後ろに登山晴(G)と高橋継(B)、そして中央に張太賢(Vo)という、ボーカルをぐるりと囲む形の立ち位置でステージに立った彼らは「EYESCREAM NITE」初めての音を鳴らしていく。
張は5人で音を鳴らすことだけを楽しむようにメンバーのほうを向いて歌唱したかと思えば、フロアに向き直り、その世界を会場にいっぱいに広げていく。

「Sugary」「Set Free」のあとには、「自分たち史上最も元気に作った曲」だというファンキーな新曲「DON’T MIND」を
チョイス。新曲でありながら、クラップにシンガロングにと、次々と観客を巻き込み、文字通り会場を温めて本編へと繋いだ。

「夏の全部を置いていこうと思っている」とこの日への並々ならぬ思いを口にしたのはALI
さっそく「Summertime」艶やかな歌声で届けるという、夏を感じさせるセットリストでライブをスタートさせた。

LEOは「隣の人とぶつかったとしても、あとで『愛とリスペクトがあって楽しかったね』って言えるそんな空間にしたい」と話していたが、ステージにはLEOとプレイヤーの計8人が所狭しと並び、フロアにも多くの人。
人々はそのぎゅうぎゅうな距離感すらも愛おしむように音を楽しんでいく。

ALIのライブを初めて見た人や、ライブの楽しみ方を知らない人がいたとしても、彼らの姿を見ていれば自然と体を動かしたくなるはず。そんなハッピーな空間が出来上がっていたところへ、LEOが「ウォーミングアップ終わってもいいかな?」とさらに焚き付け、「GABBA GABBA HEY HEY」へ。「GABBA GABBA」「HEY HEY」との観客との掛け合いで、すっかり温まったフロアをさらに盛り上げていった。

昨年からLEOのソロプロジェクトとなったALI。LEOはこれまで共に音を鳴らしてきながらも離れてしまったメンバーを許せなかったが最近水に流せるようになったという。
そんな自身の心境の変化を経て「今、周りにいる人に感謝できるようになりました」と愛おしそうに語る。
それは21年間続けてきたEYESCREAMについても言えると言い「改めて音楽を信じてくれてありがとう」と続けた。
「LOST IN PARADISE」では歌詞の一部を「EYESCREAM NITE」と変えるなど、終始EYESCREAMへの愛情も感じさせるステージングを見せた。

YU(Vocal)の伸びやかなボーカルで、代官山UNITを一気にスタジアムに変えてしまったのはI Don’t Like Mondays.
「Beautiful Chaos」でそのステージを始めると、ダークな「Shadow」を続け、あっという間にその世界へ。

跳ねるビートに乗せた「WOLF VIBES」ではCHOJI(Gt)、KENJI(Ba)、SHUKI(Dr)が3人で向かい合って楽しそうにプレイ。そんな彼らの生み出す音楽を乗りこなすYUはコール&レスポンスでフロアとコミュニケーションを取っていった。
各々がかけていたアイウェアを外して素顔を見せると、素顔でMCへ。初開催となる「EYESCREAM NITE」について「“初夜”を君たちと迎えられてうれしいです」と喜びを語るのも彼ららしい。

また、このイベントはスマートフォンによる撮影は自由となっていたのだが、YUはその理由を「みんなは撮りながらも盛り上がれるから」と推論を口にし、フロアにその期待を寄せると「PAINT」をプレイ。
するとフロアからは多数の手が上がり、彼らの推論を証明してみせる。さすが“初夜”を共に過ごしているフロアとステージ。
その信頼関係は確かだ。「jealous」「kiriがないですわ」と今年リリースした楽曲を艶やかに届けたあとは、CHOJIのからりとしたギターリフで一気に空気を変える。

巧みなソロを次々と繰り出し、音だけでなく目でもアイドラの音楽を届けていく。
そして最後は「Change」。フロアのクラップが並走し、希望に満ちた空気のなかで、「EYESCREAM NITE」を締めくくった。

この日、平日の夜の東京の地下には幸せな時間が広がっていた。ALIのLEOがMCでこう言っていた。
「毎回(ライブに)来てくれなくて良い。ただ、生きるのがつらくなったときにもしよかったらライブに来てくれ」と。

I Don’t Like Mondays.は、この日の最後に選曲した「Change」で「この痛みは生きている証だ 僕たちの想像力は唄うよ」と歌う。音楽やファッション、映画や文学というカルチャーが、どうしようもなく辛い夜、抜けない痛みに苦しんでいる夜をいつも助けてくれていたことを思い出す。地下のライブハウスにひっそりと灯るカルチャーの光こそが「EYESCREAM NITE」だ。

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