MUSIC 2026.08.03

Documentary OddRe: バンド初ワンマンツアーCODAの密着レポートVol.01 NAGOYA CLUB QUATTRO,2026.07.01

EYESCREAM編集部
Photography_Kyoto Tanaka, Text_Kie Katsura

現在実施しているスペースシャワーTVの“POWER PUSH!”とのコラボ連載でフォーカスしたバンド、OddRe:が自身初となるワンマンツアー『CODA』を7月上旬に実施し、東名阪のクワトロを大いに沸かせた様子。さすがである。
このツアーでは、ライターとフォトグラファーがバンドに同行し各日の模様を記録している。その密着レポートがEYESCREAMに届いたので掲載していく。3ヶ所を巡ったツアーなので、レポートも全3回。1回目は名古屋クラブクアトロ編!

2024年に結成、初ライブから約1年。OddRe:は初のワンマンツアー『CODA』で、名古屋、大阪、東京のクラブクアトロを巡った。
音楽塾ヴォイスで出会った3人は、それぞれの個性を掛け合わせながら、驚くほどのスピードで歩みを進めてきた。今年2月には初のワンマンライブを成功させ、そのわずか5か月後に迎えたのが今回の初ワンマンツアーだ。既発曲だけでなく、複数の新曲、初導入のお立ち台やレーザー照明など、ステージにはいくつもの新しい試みが盛り込まれていた。
このレポートでは、東名阪3公演すべてに密着。初めてのツアーで積み重ねた試行錯誤と、ライブを重ねるごとに変化していく3人の姿をお届けする。

初日、7月1日の名古屋クラブクアトロ。
開演まで、まだ8時間以上ある。そう思えるのは、始まる前だけだった。

7月1日 名古屋クラブクアトロ

「初めて」は、想像以上に忙しい

10:56

楽屋で待っていると、遠くからサダの声が聞こえてきた。続いてAirAの笑い声。OddRe:が到着したことは、姿を見るより先に分かる。そんな声に反して、最初に楽屋へ入ってきたのはSOI。前日に整えたばかりという赤髪のパーマヘアとは裏腹に、どこか疲れた表情を浮かべていた。朝まで制作を続け、移動の車へ乗り込む直前までパソコンに向かっていたという。荷物を置くと、楽屋でもすぐにノートPCを開いた。
SOIはOddRe:におけるコンポーザーであり、音源制作からライブのSE、演出の細部にいたるまで、バンドの音楽的な土台を一手に担っている。今回のツアーは、ライブハウスを丸ごとシームレスなクラブ空間のように演出するというテーマがあった。そのために曲間を繋ぐノンストップのSEやライブ全体のフローを、SOI自身がすべて裏側で組み立てていたのだ。そしてライブ本番当日もなお、細かな調整は続いていた。

SOI ANFIVER(Gt/Comp/Trackmaker)

彼がそうして作業の準備をする横で、AirAとサダは「お腹すいたー!」とケータリングの味噌カツ御膳に向かう。「美味すぎる……」と時折小さく漏らしながら黙々と箸を進めるAirA、一方のサダは10分ほどで平らげ、早くも顔のリンパを流し始めた。そんな2人の賑やかさをBGMに、SOIは机に突っ伏して束の間の休息を取るものの、数分後には再びPCに向き直り、カタカタとキーボードを叩き始める。同じ楽屋にいながら、彼らに流れている時間は驚くほど違う。

11:32

AirAとサダは照明チェック中のステージへ向かった。
「クラブ空間化」の演出の第一歩として、今回のツアーではレーザー照明が初めて導入されている。光が放たれるたびに2人は「あー!」と歓声を上げ、「これって目に当たったら危ないですか?」とスタッフへ無邪気な質問。その場の空気が自然と温かくなる。
ステージをひと通り見終えると、2人は物販エリアへ向かった。OddRe:でグッズの監修を担うサダは、グッズスタッフと終演後のポスター手渡しについて最終確認を行う。アイテムの企画やデザインにも携わる彼女にとって、物販もライブを構成する大切な要素のひとつだ。ライブ中は思い切り踊ってほしいという想いから、希望者にはポスターは開演前ではなく終演後の受け取りも可能な運用となっていた。イレギュラーな対応を担うスタッフに丁寧に挨拶をしながら、当日の流れを確認していく。ところが、そのすぐ横でガチャガチャを見つけると、「ガチャガチャあるー!」とAirAと共に一直線。真剣な打ち合わせから遊びへ切り替わるまで数秒もかからない。その軽やかさが、2人のいる場所を自然と明るくしていた。
ひとしきり笑ったあと、2人は再びステージへ戻る。

この日、サダは新しい楽器を新曲で初披露する。きっかけは半年前にSOIから「新曲でウッドベースを弾いてほしい」と言われ、レコーディングまでわずか1ヶ月 という中で練習を始めたことだった。フロアに置かれていたのは、コントラバスの響きをライブハウスの音響でも扱いやすいよう電気的に増幅できる仕様にしたアップライトベース。これもそのレコーディングがきっかけでサダ自身が即購入したものだという。
サダはこれまで、吹奏楽部の強豪校でサックスを吹き、琴を習い、音楽塾ヴォイスでは当初ギターの弾き語りをしていたが、そこで出会った先生に勧められベースへと転向した過去を持つ。新しい環境や未知の楽器にも臆することなく飛び込み、自分のものにしていく適応力の高さが、今回の新たな挑戦にも表れていた。

ユウキ サダ(Ba/Vo)

――そんなことを考えながら2人を見ると、アップライトベースを構えたサダとウクレレを持ったAirAの姿がなぜか戦隊ヒーローのように見え、思わずポーズをリクエストすると、2人は楽しそうに応えてくれた。一方、SOIはまだPCの前から動いていなかった。

12:42

 
会場入りから約2時間。
SOIはイヤホンを外し、「できましたよー!」と声を上げた。ようやく、この日のライブで使用する音源が完成したらしい。しかし休む間もなく、今度は新曲のレコーディングについて、サポートドラマーの吉田雄介(tricot)やスタッフと話し始める。ようやくひとつ終わったと思えば、次の準備が始まる。ライブ、制作、リリース。どれも止めることなく進めていくのが、今のOddRe:だった。

13:40

リハーサル前。
楽屋前のソファでは、SOIがメンバーを待っていた。リハーサル前に、その日のセットリストを順番に確認する時間だ。初めて導入するお立ち台、新曲、レーザー演出、MCの流れ。ツアー初日だからこそ、確認事項は多い。SOI、AirA、サダ、吉田の4人は、1曲ずつセットリストを追いながら、落としてはならないポイントを丁寧に共有していく。
「ここは忘れないようにしようね……いや、忘れてもいい。やってみたら、どうとでもなるから」SOIは進行を仕切りながらも、最後には少し力を抜くように、自身にも言い聞かせるように付け加えた。綿密に準備を重ねながらも、本番ではその場の空気を大切にしたい。その考えはメンバーの間でも共有されているようだった。各々、セットリストの用紙へ気になった点を書き込んでいく。サダは終始ペンを回しながらどこか落ち着かない様子でメモを取り、AirAは腕を組みSOIの話へ耳を傾ける。言葉数こそ多くないが、気になることがあれば2人とも遠慮なく口を開く。初めてのお立ち台について話が及ぶと、サダは「テンションが上がったら乗ろうかな」と笑う。細かな段取りは確認しつつも、すべてを決め込みすぎない。そのさじ加減を、4人は探っていた。
SOIの「ボルテージを上げすぎて、空回りはしないように」というひと言で、打ち合わせは締めくくられた。

14:08

リハーサルが始まる。
この日のリハーサルは、予定より1時間前倒しで始まった。本番前最後のリハーサルで全体を通した確認までたどり着けず、少しでも時間を確保する必要があったためだ。さらに、この日は衣装のボトムに着替え、本番に近い状態でリハーサルを進めていく。普段は私服のまま行うことが多いが、お立ち台での動きや衣装の見え方まで確かめておきたかった。
初めて乗るお立ち台は想像以上に高い。レーザーがSOIの頭上を通り、振り返った際に視界へ入らないかをスタッフと確認する。続いてサダの立ち位置でも確認が行われるが、「サダの目線には当たらないから大丈夫」と言われると、本人はなぜか悔しそうに「あ゛ー!」と雄叫びを上げる。
サウンドチェックが始まると、SOIは何度もステージから客席フロアへ降り、再びステージへ上がる動きを繰り返していた。ステージの上からでは分からない「客席の耳にどう届いているか」を、誰よりもお客さんと同じ目線で、自身の耳で確かめるための往復だ。
そして、サダがベースを鳴らすと、SOIはすぐ違和感に気づいた。
「なんか歪み過ぎてない?」
もう一度弾いてもらい、客席で聴き、音響スタッフへ伝え、再びステージへ戻る。そしてまた客席へ降りる。音響スタッフへ任せきるのではなく、観客へどんな音が届くのかを、自分の耳でも何度も確かめていた。

AirAは自分の出番までストレッチと発声を繰り返し、サダはアップライトベースの感触を確かめている。しかし、SOIがアコースティックギターを鳴らし始めると、フロアのムードがふっと和らいだ。その新鮮な音色に反応し、AirAとサダはフロアで小躍りを始める。張り詰めたリハーサルの最中であっても、そこには彼ららしい柔らかい時間が流れていた。

AirA(Vo)

3人は同じ方法でライブへ向かうわけではない。それぞれの役割を自分のペースで果たし、必要となった瞬間に、音を合図にして同じ場所へ集まる。その繰り返しの中で、まだ誰も見たことのないツアータイトル『CODA』のステージが、少しずつ、しかし確実に形になっていった。
新曲、お立ち台、照明、MC。確認は続く。MCは決め込みすぎず、その場の空気を信じる。一方で、照明や演出は数秒単位まで詰めていく。自由にする部分と、徹底して設計する部分。その境界が明確になる3時間強だった。

18:10

開場。
楽屋のモニターには、次々とフロアへ入ってくる観客の姿が映し出されていた。
名古屋でライブを行ったのは、対バンイベントで一度だけ。それでも初のワンマンはソールドアウトとなった。
「こんなに早くから集まってくれてるんだ」
AirAはモニターを見つめながら、少し驚いたように声を漏らす。

18:40

開演20分前。衣装を整え、イヤモニを装着するようスタッフから声が掛かると、楽屋の空気が一段階引き締まる。鏡の前でヘアメイクのチェックをするAirAの横で、サダは謎の奇声を上げ、SOIは突然鼻歌を歌い始める。三者三様のテンションで、彼らは迫ってくる緊張をそれぞれに散らしていた。

18:56

ステージ袖で吉田を含めた4人が円陣を組む。OddRe:のライブルーティンのひとつだ。
「始めていきましょう!」
SOIの掛け声を合図に各々が思い思いに声を重ね、OddRe:にとって初めてのワンマンツアーが幕を開けた。

暗転と同時に響いた歓声は、数百人規模のライブハウスとは思えないほど大きかった。
天井や壁に反射した歓声がさらに膨らみ、ステージへ返ってくる。
その声に背中を押されるように、3人は最初からアクセルを踏み込んだ。
リハーサルで何度も高さを確かめていたお立ち台にも迷いなく飛び乗る。背後から照らされたシルエットは、OddRe:というバンドの輪郭を一瞬でフロアへ浮かび上がらせた。
初披露となる新曲では、冒頭こそ観客が音を探るように耳を澄ませていたが、曲が進むにつれ身体が揺れ始め、自然と手拍子が広がっていく。用意されていたのは、新曲を静かに”披露する”時間ではない。知らない曲であっても、その場で受け取り、一緒にライブを作ろうとする空気が、すでに会場に生まれていた。
予定ではそのまま次の曲へ進むはずだった場面で、SOIがマイクへ近づく。
「曲をポンポンやるの、寂しくなっちゃった」
リハーサルで話していた通り、その日の空気を優先する。AirAとサダも自然に会話へ加わり、3人の表情が少しずつほぐれていく。AirAが「今日、OddRe:を初めて観る人」と問いかけると、客席の半数以上から手が上がった。各地で自分たちを待っている人がいる。その事実を、3人はステージの上で初めて実感していた。
中盤以降、レーザーが客席を切り裂き、会場全体が跳ねる。数時間前まで何度も調整していた音と光が、演奏と観客の熱量によってひとつの空間になっていく。
序盤にあった緊張は、いつの間にか高揚へ変わっていた。

ライブを終えて楽屋へ戻ると、SOIは開口一番、大きく笑いながら叫んだ。
「脳汁出るねー!」
「やっぱライブは楽しいね。これをやるために俺は曲書いてるから! 部屋で一人でさ」
客席から届いた歓声は、楽器用マイクを突き抜け、イヤモニにまで入り込んでいたという。
「本当にいじってるわけじゃなくて、ガチで声デカすぎ」
SOIが笑うと、AirAも頷く。
「イヤモニにまで声が届いてたもんね」
「マジで突き破ってきてた」とサダ。
ライブ中、何度も起きた大きなジャンプで、ステージの足元から地鳴りのような振動も伝わってきていた。初めてのツアー初日とは思えないほどの熱量だった。
しかし、興奮はすぐに反省へ変わる。
「でも、諸々できなかったことが多すぎるな」
SOIが口にすると、
「お立ち台、乗れたら乗ろうって言ってたところ、できなかったね」
とサダが振り返る。
ライブが終わったばかりにもかかわらず、3人の視線はすでに明日へ向いていた。初日は、勢いだけで終わったわけではない。歓声の大きさに興奮し、その日のうちに課題を見つけ、次のライブをどう変えるかを考え始める。

ツアーは、ここから始まった。

INFORMATION

OddRe:

OddRe: JAPAN TOUR 2026
“UNDERGROUND MIRRORBALL”

2026年10月30日(金)
東京・LIQUIDROOM
開場18:15 / 開演19:00

2026年11月1日(日)
北海道・cube garden
開場17:00 / 開演17:30

2026年11月12日(木)
福岡・DRUM Be-1
開場18:30 / 開演19:00

2026年11月14日(土)
広島・SIX ONE Live Star
開場17:00 / 開演17:30

2026年11月26日(木)
宮城・MACANA
開場18:30 / 開演19:00

2026年12月11日(金)
愛知・THE BOTTOM LINE
開場18:15 / 開演19:00

2026年12月12日(土)
大阪・BIG CAT
開場17:15 / 開演18:00

https://oddre.jp/

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