東京・町田で育った友人同士が、コロナ禍の2020年に結成したBillyrrom。Rin(Gt/Rap)が声をかけたMol(Vo)、Taiseiwatabiki(Ba)、Shunsuke(Dr)に、Yuta Hara(DJ)とLeno(Key/Syn)が加わった6人の多くは、当時、楽器の経験すらほとんどなかった。関係から始まったバンドは6年で、渋谷WWWからFUJI ROCK FESTIVAL、アジアへと歩みを広げ、2026年、ユニバーサルミュージックとのグローバルパートナーシップ契約を経てメジャー1stアルバム『P‘I’CTUS』(10月21日発売)を完成させた。テーマは「素直」と「愛と自己の追求」。6人はなぜ、互いの理解ではなく、それぞれが自分自身と向き合うことを選んだのか。アルバムに刻まれているのは、6人がバンドとして生きてきた時間そのものだ。全員に語ってもらった。
──コロナ禍の渦中にバンドを結成して6年。ここまでの動きの多さを思うと、タイム感がバグっているんじゃないかという気もします。この6年の体感はどうですか?
Mol:ちょうどアルバム制作が終わって過去のことを反すうしていたんですけど、思い返すことは多いのに、6人で初めてライブをしたことも昨日のことのように思えて。「バグっている」という表現が正しいのかもしれないです。いろんな出来事がショートスパンでたくさんあって、それをそしゃくする時間がなかった気がします。ずっと吸収、吸収みたいな。駆け抜けている実感は今もありますね。
Rin:自分もマジで同じで。「これ、めっちゃ前のことじゃなかったっけ?」という記憶と、「これは昨日のことじゃなかったっけ?」という感覚が2つ同時に存在している。ずっと駆け抜けてきて、後ろを振り返る時間もなかったからかわからないですけど、マジで「バグってる」がいちばんピンときますね。
──最初にふたりでバンドを立ち上げるとき、未来のロードマップ的なことは話しました?
Mol:話す間もなく、Rinが勝手に年表を作ってきたんですよ。向こう5年間のプランみたいな。「2年後、渋谷WWWでワンマンライブ」「3年後、フジロック」「5年後、武道館」みたいな感じで細かく目標が書いてあって。最初に見たときは「何を言っているんだろう?」と思ったんですけど、それがことごとくかなっていくにつれて怖くなってきたというか(笑)。でも、その感覚も徐々に不思議じゃなくなってきて、こうなるために進んでいる気がしてくるし、自分で決めたことなのに、どこかに連れていかれているような感覚もありますね。
──自分の預かり知らない力に導かれているというか。
Mol:Billyrromという別の生命体がいるような気がします。
──Rinさんがそこまで具体的な計画を掲げられたのは、行動が追いついていく確信があったから?
Rin:いや、全く怖いもの知らずというか。そもそも音楽をやったことがないし、ライブハウスも1回くらいしか行ったことがない。何も知らないけど「これがやりたい」という気持ちがあって、バンドをやるからにはこれくらいデカくなりたい。それで勝手に年表を作ってメンバーに送りつけていました。うまくいかないことのほうが多いと思うので、やっていて本当に奇跡だなとも思うし、必然だった気もする。その2つを同時に感じながら活動している感覚です。
Mol:とにかく人に恵まれているんですよ、このバンドは。このメンバーも同じ地元ということもまれなことだと思うし、いま一緒にやっているチームのカメラマンの新谷隼人だったり、映像監督の山田虎太朗だったり、事務所の方々だったり。「来る者拒まず去る者追わず」的なスタンスは最初からあって、ご縁はとにかく大事にしていました。
──技術で人を集めたのではなく、友人から始まったバンドですよね。Lenoさんはもともとヒップホップのビートを作っていたんですよね。バンドで自分がこうなる人生は想像していなかったのでは?
Leno:中学生のときに自分とYutaでバンドを組んでいて。ちゃんとライブもしたことがない、バンドごっこみたいなものでしたけど、バンドに対する憧れはあったので。
──どういうバンドに憧れてたんですか?
Leno:ロックとかメタルとかですね。ONE OK ROCKとかCrossfaith、リンキン・パーク、Slipknotとか、その辺に憧れがあったヘッズみたいな感じで。大学に入っていったんそこから離れて、当時すごくヒップホップシーンが盛り上がっていたので、自分もトラックを作ってみようかなと。全然本気ではなく、遊びでやっていた延長線上で他のメンバーと出会って、「入りたいな」と思っていたら、本当に「入ってくれ」と言っていただけて……。
Mol:言っていただけて(笑)
Leno:お誘いいただいて、おかげさまでいまに至る感じですね。一度あきらめたバンドというものが、もう一度自分の前に現れたといううれしさはありましたね。
──それが巡り巡って、バンドのメンバーとしていまがある。
Leno:奇跡に近いというか。本当に「ありがとうございます」って感じです。
Mol(Vo)
Mol(Vo)
テーラードジャケット ¥66,000 semoh(semoh)
スラックス ¥85,800 SHIEK YERBOUTI (STUDIO FABWORK)
ネックレス ¥48,400 DAIRIKU(DAIRIKU)
その他、スタイリスト私物
Rin(Gt/Rap)
Rin(Gt/Rap)
ストライプジャケット ¥59,400
ストライプパンツ ¥35,200 以上2点 KANEMASA PHIL.(KANEMASA PHIL.)
シルクシャツ ¥73,700 DAIRIKU(DAIRIKU)
その他、スタイリスト私物
──Yutaさんはもともと、写真を撮っていたんですよね。
Yuta Hara:写真を撮ったり、Billyrromに入ってからは最初、DJじゃなくてVJの役割をやっていました。ただ、自分は90年代のヒップホップがめちゃくちゃ好きで、影響を受けたジャミロクワイだったり、バンドセットの中にDJがいることが自分にとっては当たり前だったので。VJをやっているときにRinから「バンドを一緒にやろうよ」と言われて、どうせやるなら音を出したいなと。それで自分のルーツにあったDJを選択しました。
──Shunsukeさんは、ほぼ未経験でドラムを任された。冷静に考えたら、すごい話ですよね。バンドのグルーヴを構築していく上でいちばんハードルが高いパートとも言えるし。
Shunsuke:それこそ加入して3カ月後にライブが決まっているみたいな状態で。結構無理やりでしたけどね(笑)。そんなことの連続だったんですよ、ずっと。もちろん、最初はできていないことばっかりでした。
──どこかのうまい人ではなく、近くにいる仲間とやることを優先していたわけですよね。
Rin:そうですね。うまい人とバンドをやりたいというよりは、「友だちとバンドをやりたい」が優先だったので。だったら最初は下手でもいいし、最初から結果を優先するよりは、ちゃんと1個ずつ過程を踏んでやっていきたいという気持ちがありました。
──それに応えたShunsukeさんもすごい。しかもバンドの音楽性がブラックミュージックを軸にしているわけで、ひたすら8ビートで突っ走る音楽ではない。
Shunsuke:最初からドラムが好きではあったんですよ。始める前から、曲を聴いて「この曲のドラム、カッコいいな」というのが感想にあって。感性としてドラムが好きで、好きだったからやれたところはあるかもしれないです。あとは父親が70年代のソウルがめっちゃ好きで、家でずっとソウルが流れていたのはありましたね。
Leno:ライブにめっちゃ来るんですよ、Shunsukeの親父。
Shunsuke:そうそう(笑)。父親はベースをやっていて、最初のころは一緒にスタジオに入って、練習のやり方を教えてくれたりもして。
Rin:俺、誘ったときはそのことを知りませんでした。ただ「顔がドラマーだ」という理由で誘ったので。ふたを開けてみたら、お父さんがベースをやっていることは知っていたけど、俺らがやろうとしているブラックミュージックを昔から聴いていたことは全く知らなくて。本当に偶然で、びっくりしました。
──一方でTaiseiさんは、軽音部でベースの経験があった。
Taiseiwatabiki:ただ、ベースをやっていたのは1年くらいで。当時はブラックミュージックのことはわからなくて、基本的にはONE OK ROCKとかMAN WITH A MISSION、UVERworld、ELLEGARDENとか、いわゆる邦ロックのカバーバンドしかやってこなかったので、Billyrromに入ってベースを弾いたとき、「何これ?」って。8ビートでバババッと弾いていたものとは全く違うリズムで、自分の引き出しにないし、未知のものすぎて最初は理解不能でした。
──そこで前のめりになれたのはなぜだったんですか?
Taiseiwatabiki:やらなきゃいけない目標がバンドに常にあったからですね。始めてすぐにライブが決まって、次は渋谷WWWで、みたいになって。常に達成しなきゃいけないものがあったので、「やるしかねえ」という感じでした。自分ひとりだったら絶対無理ですね。友だちであり仲間であるメンバーがいるから、そこに楽しい時間があって。しんどいときはメンバーもそうだろうし。そう考えているから継続できているのは間違いないと思います。あと、うちも親父が山下達郎さんのことがめっちゃ好きで、車の中では常にラジオか山下達郎さんが流れていたので、ブラックミュージックへの素養は知らず知らずのうちに父親のおかげであったのかもしれないなと、いまとなっては思います。
Shunsuke(Dr)
Shunsuke(Dr)
テーラードジャケット ¥81,400 semoh(semoh)
チェックシャツ ¥39,600
コーデュロイハーフパンツ ¥36,300
以上2点 JOHN MASON SMITH (JOHN MASON SMITH JANE SMITH STORE)
その他、スタイリスト私物
Taiseiwatabiki(Ba)
Taiseiwatabiki(Ba)
テーラードジャケット ¥60,000 JIEDA(JIEDA)
ニット¥180,000 NICENESS(ELIGHT Inc.)
デニムパンツ ¥17,800 vintage(00)
その他、スタイリスト私物
──その6年を経てメジャーと契約し、このタイミングで初めてのフルアルバムを作った。リリックも含めてポップ一辺倒に開くことだってできたはずなのに、『P‘I’CTUS』は「人は他人を完全に理解することはできない」という重いテーマとバンドのドキュメントとして向き合い、その上で、人をいかに踊らせるかを導き出している。どういう流れでこのテーマになったんですか?
Rin:メジャー1stアルバムであり、通算2枚目のアルバムを出すとなって、自分たちがこのアルバムで何を表現したいか、どういうバンドでいたいかを、1個のテーマから枝分かれさせて最後に何へたどり着くか、みんなで話し合ったんです。最終的に行き着いたのが「素直でいる」、自分たちが自分たちにうそをつかないという部分で。それは6年間走り続けて、いろんなことがあった中で見つけ出したテーマなんですよね。この過程はバンドじゃないと経験できないと思うし、すぐお金を稼ぎたいのであれば、別にバンドで音楽をやらなくてもいい。バンドってこんなに非効率な……。
──バンドほど非効率な集団ってあまりないですよね。
Rin:(笑)そう、マジでないけど、そこで作り出せたものには化学反応が起きて、何よりも美しいものができたりする。それをバンドとして、メジャーデビューして1stアルバムを出すとなったら表現したいなと。
──ある種のロマンですよね。
Rin:バンドのロマンと、なぜバンドをやっているのかというリアルな過程を表現したい。となったときに、いまは1曲ずつサブスクで聴ける時代だけど、自分たちはアルバムという、1枚で意味を持ったものを聴いて育ってきた。だから1つの物語を作りたくて、「小説」というコンセプトをとって、『P‘I’CTUS』にたどり着きましたね。
──アルバム資料に書かれているステートメントを要約すると、根っこには「人と人は完全には同化できない」という実感がある、と。同じ方向を目指していても、本当の意味で1つにはどうしたってなれない。何に不満を抱き、何に希望を持つのかは一人ひとり違う。それを実感したからこそのステートメントだと思うんですが。
Rin:めちゃくちゃそうで。6人もいれば、当たり前ですけど生まれも育ちも違うから、考えていることも違う。6人でやっていく中で「自分と同じ」と思ってはいけない、人は一人ひとり違う。でも、それってバンドをやって人と向き合っていないと忘れてしまうというか、気づけないことなんですよね。自分たちがバンドを進める上でそこに気づいたとき、歯車が一気に回った感覚がありました。
──それはいつくらいに?
Rin:明確に「ここ」というより、小さいきっかけがたくさんあった感覚です。
──Molさんはボーカリストとして、「同じバンドだけど、やっぱり違う人間なんだ」という実感をどう考えて制作に臨みました?
Mol:Rinと一緒で、制作期間に入る前までを思い返すと、昔はみんな1つになろうとしていた時期があったんですよ。最初の3〜4年はお互いを変えようとしていた。でも結局、自分は自分でしかないし、相手は相手でしかない。人のことは変えられないけれど、その代わり自分を変えることはできる。そこにバンドが気づいたんですよね。それが各々のタイミングで見つかったから、このアルバムが作れたと思います。
──変えようとしていたというのは、音楽的な方向性も含めて?
Mol:もう全部ですよね。ここまで来ると家族よりも一緒にいるような、1カ月のうち25〜26日は一緒にいる時期もあったので。それぞれ「自分はこの人にこうしてほしいけど、その人はこうしてくれない」ということも当初はあって、みんな、いまでも言っていないストレスがあったんだろうと思う。だからこそ、変えられることと変えられないことがはっきりした。「ここからここまでは変えられて、ここから先はどうしようもできない」という、バンド単位で1つの答えが出た気がしていて。ステートメントにRinが「愛と自己の追求」と書いていることに僕も100%同意なんですけど、結局、自分を追求して自分と仲良くならないと、人とは仲良くなれないと僕は思うので。
──自分のことを愛してあげないと、人を愛せない。
Mol:そうですね。それで初めて、人の痛みをわかることはできないけど、思うことはできる。そういうことにみんなで気づけた感じがすごくあって。それがそのまま出たアルバムかなと思います。
──Lenoさんはどうですか?
Leno:いやあ、本当におふたりのおっしゃる通り。
──敬語なのが面白いんだよな(笑)
Leno:あはは(笑)。このアルバムは「素直」をテーマに掲げてはいますけど、個人的にはBillyrromの鏡のようなアルバムだと思っていて。経験してきたことをそのまま反映しているし、自分たちにしかわからないネタも歌詞のいろんな部分に含まれているので、聴くと内省的になる部分もある。それと「自分を大事にすること」については、自分もすごく思うことがあって。インターネット世代以降の人たちって、SNSで常に誰かとアクセスしている環境に身を置いているわけじゃないですか。でも「まず自分を見ろよ」と思ってしまう部分があって。他人の目ばかり気にして、みんな自分のことをあまり大切にできていないんじゃないかなと。6人がそう感じていたこともあったと思うし、だから結局たどり着いたのが自己愛だったのかなと。自分を愛することができれば、他人も愛することができると信じています。
──人の言動ばかりを見てやじ馬的に燃やそうとしたり。「ところでお前は誰なんだ?」という。
Leno:本当に思いますよね。いまおっしゃっていただいたことも、曲の中で表現しているので。
──Shunsukeさんはどうですか? 「まず自分を」という視点と向き合いながら制作に臨んだ感覚はありますか?
Shunsuke:さっきのバンドの話に戻っちゃうんですけど、自分たちはBillyrromというバンドを1つの生命体として俯瞰して捉えているんです。自分の人生を生きつつ、バンドをやることで、人生の中にもう1つの人生を作っている感覚があって。そういう生き方をしていると、主観と客観で人生を行き来するので、人生の構造みたいなものに気づけてくるんですよね。それが、他者とわかり合えないことだったり、自分自身を愛することだったり、素直になることだったり、踊ることだったり。リリックやステートメントで言っていることだったり。このバンドという活動をしているからこそ気づける、気づけるからこそ伝えたい。それが今回のアルバムでより具体的にできたし、生活の中で大切にするべきだと信じていることの解像度が上がって、伝えられるようになってきた。そこが前作からワンフェーズ上がったなというのがあります。
Leno(Key/Syn)
Leno(Key/Syn)
スエードジャケット ¥132,000 semoh(semoh)
ストライプシャツ ¥26,000 JIEDA(JIEDA)
スラックス ¥63,800 DAIRIKU(DAIRIKU)
その他、スタイリスト私物
Yuta Hara(DJ)
Yuta Hara(DJ)
テーラードジャケット ¥130,000
リネンパンツ ¥81,500
以上2点 NICENESS(ELIGHT Inc.)
ネクタイ ¥19,800 DAIRIKU(DAIRIKU)
ベルト ¥34,100
アームウォーマー ¥14,300
以上2点 JOHN MASON SMITH (JOHN MASON SMITH JANE SMITH STORE)
その他、スタイリスト私物
──その実感があることがデカいですよね。
Shunsuke:もっと解像度を上げて伝えて、そこに共鳴してくれる人がいるのかはわからないですけど、自分たちは真実だと思って向き合っていることなので、いろんな人と共鳴できればうれしいなという感じですね。
──Yutaさんはどうですか?
Yuta Hara:素直に、1stアルバム『WiND』に比べてやりたいことがよりできるようになった感覚があって。Billyrromらしさの解像度が、一人ひとり上がった感覚がありましたね。『WiND』のときは、自分がDJとして何をやったらいいのかわからない瞬間が結構あったんですよ。でも今回は、そういう迷いが全くなくて。それはみんなが素直になっていったからだと思います。僕は思っていることを人にうまく伝えられないタイプで、気を遣ったりもするんですけど、みんなが素直に意見を出すようになったというか。音楽だけじゃなく、映像や写真、グッズ周りとか、全体的に真面目に話すことがすごく増えて、自分も素直に意見を出しやすくなったがゆえに、アウトプットがうまくいくようになって、いい作品ができたなと素直に思います。これを繰り返していけたら、もっともっとヤバいアルバムができるんじゃないかなって思ってます。
──それはデカいですね。Taiseiさんはどうですか?
Taiseiwatabiki:さっきRinが言っていた「素直」というテーマが根幹にあって。俺、アルバムを作る前に、ABEMAの『千葉雄喜の勇気、貸します。』という番組に無性にハマったんですよ。めっちゃオモロいんですけど、あれってどう考えても起承転結がないじゃないですか。千葉雄喜さんがいろんなところへ行くけど、本人はあまりしゃべっていないみたいな。でも、千葉雄喜さんが度を超えて素直というか、めちゃくちゃ人間味があるからこそ、1本30分、起承転結がなかろうが観る側はめっちゃオモロい。それを考えたとき、自分たちが憧れてきた人、例えばロックだったら甲本ヒロトさんとか、飛び抜けてヤバいこともしているけど、それ以上に人に対して素直だからこそ。それって、人に対しての最大のリスペクトじゃないですか。みたいなことを思っていて。
──わかる。超ピュアってことですよね。
Taiseiwatabiki:超ピュアで。それって言うのは簡単ですけど、正直、俺には絶対にできないことだと思うし。
──演じようとしたらバレるしね。
Taiseiwatabiki:そうっす。だから、そういう考え方が自分の中にあるだけで、人に対してもリスペクトを持って接することができる。アルバムを作る際に自分の中で感じていたことで、正直、活きたのかはわからないけど、「みんなで素直」というテーマに通じるものがあるな、ということは考えていました。
──この内容なら、いくらでも内省的な作品にできたと思うんです。ただ、Billyrromはバンドサウンドで踊らせることが出発点にあって、踊らせることは人に対して開いていくことと同義だと思う。ある意味「ポップから逃げない」ということでもある。そのあたりの意識について聞いてもいいですか?
Rin:まさに内省的に書こうと思ったら、いくらでも書けるし、いくらでもサウンドを合わせられると思うんです。でも、自分たちでメジャーに行くことを決めて、なおかつ、はっきり言いますけど、飯を食わなきゃいけない。音楽をやる、音楽を仕事にする。音楽をよりビジネス的に捉えたとき、このアルバムはそこから本当に目を背けないことを意識しました。だからこそ、もう1つの軸で「小説」を作ったんです。これだけテーマを広げると、受け手の日常と離れていく感覚があって。自分たちのことを書いているから、リスナーが共感しやすいかと言われたら、共感しにくいと思うんですよ。だから「小説」という軸を作って、シーンごとに、1曲1曲に情景が浮かびやすいようにした。要するに、ポップスが作りたいがために「小説」を選んだ側面もあるし、ポップスをちゃんと作ろうというのは、そもそも根底にありました。
──始めたときから?
Rin:始めたときもそうだし、アルバムの出発点もそうですね。
──Molさんは、旋律と言葉を届ける立場として意識したことはありますか?
Mol:ポップスという部分が、僕のボーカリゼーションやメンタリティーに大きく影響したことは、このアルバムではなかったんですけど。あえて言うなら、今回のテーマと同じ線上にあるものとして、Billyrromは「主体的である」ということをすごく大事にしていて。結成当初から、人間は主体的であるべきだというポリシーがあって、それをどう音楽で表現するかを考えました。脳の働き方や体の使い方、自分の内側からどう声を出し、どう存在を伝えるのか。そうした部分まで含めて、主体的な人間が歌っていると感じてもらいたい。そこは今回、すごく向き合った部分でしたね。それと、さっきのSNSの話ではないですが、いまって当たり前のように人に価値がついている時代というか。「この人が上で、この人が下」という考えが当たり前のようにあると、生きていて感じるんですよ。でも、それは違うと思うし……月が太陽になれないように、その逆もしかりですけど、それぞれの存在があって、輝き方があって、事実があるじゃないですか。そこを僕はこのアルバムで表現したかったんです。
──それを表現しないと、ポップスとしての説得力が生まれない。
Mol:そのポリシーをポップにしたい。その捉え方でポップス性に向き合いました。
──最後に。このアルバムを携えて、海外も含めたツアーが始まります。言語を超えて会場が踊る様を観て、音楽でつながれていることをリアルに実感する瞬間が、もっと増えていくと思う。「共鳴」という言葉も出ましたが、ここからどんな景色を見たいか、代表してRinさんに答えてもらっていいですか?
Rin:俺らはリアルを書いていて。最初からデカいところでライブをすることを目標にしているんですけど、それって結局、俺らが書いた作品、提示したものに対して、共感してくれた人、「そうだな」と思った人、ついていきたいなと思った人、単純に俺らの音楽で心も体も踊らせたいなと思った人たちが共鳴して、同じ会場で踊るということで。そういう共鳴した人たちが結果的に何万人も集まって、合唱して声を出してもいいと思うし、それぞれ好きな踊り方をしてもいいと思うし。実際、俺らのライブは、それぞれがそれぞれの踊り方で踊っているし。
──このアルバムの本質でもありますよね。
Rin:そうですね。本当にばかっぽいですけど、たくさんの人数で、大きい場所で自分たちが音楽を鳴らして、それをみんながそれぞれの受け取り方で、それぞれの踊り方で踊っている景色を見るのは、1つ夢だなと。そこに向かって、これからも走り続けていきたいなという感じですかね。

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