ART 2023.01.24

どこかに取り残されているけれどずっとそこにあるもの。anccoによる個展「Baby.zip」が開催

EYESCREAM編集部

アーティスト、anccoによる個展「Baby.zip」が西麻布CALM & PUNK GALLERYにおいて開催中だ。

可愛らしく色とりどりなキャラクターたちが登場する、いわゆる「Kawaii」カルチャー的な特徴と、インターネット文化や現代社会・政治の様相、使い古されたぬいぐるみや細部への愛情などの要素が混じり合った作品を発表するancco。そのルーツは、小学校低学年の頃からインターネットの「お絵かき掲示板」に自身の描いた絵を投稿していたことにある。当時の「お絵かき掲示板」には、簡易版Photoshopのようなツールがついており、anccoは小学生の時からすでに、⌘Z（=元に戻す）が可能で、1mm単位でコントロールすることのできる環境で画像作りをしており、それは彼女の偏執的とも言える細部へのこだわりの下地になっている。

本展で発表される新作群のほとんどは、作家にとって初の試みとなった４ヶ月に渡る滞在制作の結果によるもの。頭の中にあるイメージを寸分の狂いなく、画面をコントールして描き出すことで作品を作り出していたanccoにとって、陶芸という技法は、これまで扱ってきた素材のようには自身の統制を受けないことを知ったという。

繊細ながらも大胆な存在感を放つ約１mの大型陶器作品のほか、立体作品と平面作品で構成。「子を持つ適齢期と言われる年齢に自分が近づいたことで心の隅に置いておいた気持ちに目を向けるようになった。未だに自分のことで、毎日を生きるのに精一杯な自分が、自分の無力さを受け入れながら日々駆け抜ける重い鎖のついたおしゃぶりを咥えた自分自身を作ったのかもしれない」と、anccoが示す「赤ん坊（＝Baby）」を象徴的なモチーフとした展示となっている。