ART 2026.03.30

Yoshinari Nishikiの個展「BANANA STOCK」が開催。経済や⽣存の仕組みをユーモアと批評性を交えながら問い直す。キュレーターは⽯⽑健太

EYESCREAM編集部

ロッテルダムを拠点に活動するアーティスト、Yoshinari Nishikiによる個展「BANANA STOCK / バナナで備える未来」が、⽯⽑健太キュレーションにより、4⽉25⽇から馬喰町parcelにおいて開催される。

Yoshinari Nishikiは奈良⽣まれ。ロンドン⼤学ゴールドスミス校カルチュラル・スタディーズセンターでインタラクティブメディアの修⼠号を取得後、現在は奈良先端科学技術⼤学院⼤学で博⼠後期課程に在籍中。2009 年よりテクノロジーとアートの領域で活動を開始し、お⾦の効率性や⽣産性の概念に揺さぶりをかけるプロジェクトに取り組んでいる。

これまでに、バナナの無限増殖を題材にした「Banana Multiplier」(2013年)、ハトを⽤いた合法的な乗⾞券リサイクルシステム「Homing Pigeon Unused Ticket Delivery System」(2014年)、宅配便を介さない無料輸送システム「Contingent Cycle Courier」(2019 年)、外来植物から作られたエナジードリンク「EROI Drink」(2020年)など、既存の制度や流通経路を転⽤した多様なプロジェクトを発表。2023年以降は「(un)making」という、リサイクルやアップサイクルとは異なる、気候変動に対する予防的アプローチを提唱している。

作家にとって⽇本で初めての個展となる本展では、新作「Banana Fallout Shelter」(2026年)が発表される。現在世界中で消費されているバナナの品種「キャベンディッシュ」が近い将来絶滅するという仮説のもと、⽸詰バナナへの代替投資を⾏い、バナナの備蓄=「Banana Stock」を形成。こうして⽣まれた(un)madeのバナナストックは、絶滅後の未来において新たな価値を帯びる可能性を持つこととなる。Nishikiの実践は、資源、流通、投資、そして未来の価値を前提として成り⽴つ現在の経済や⽣存の仕組みを、ユーモアと批評性を交えながら問い直す。

以下は、本展キュレーターの⽯⽑健太の言葉だ。

イナリさんとは去年キプロスで初めて会いました。
彼はロッテルダムを拠点に、伝書鳩を⽤いた”合法的な”キセル乗⾞のシステムの提案、侵略的外来種を原料に使⽤したエナジードリンクの製造、⼈⼀⼈で外部動⼒なしで運べる海上コンテナで運べるコンテナの設計・製造、その他思弁的な実践や実装を多数⾏ってきたアーティストです。
キプロスでは1週間の短い交流プログラムを共に過ごし、プログラムの終盤に時間を持て余したのでキオスクでビールを買って⼤きい公園の中にある閉店後のカフェテリアのオープンテラスに座って酒盛りをしました。会話を続けていると、公園に常駐している警備員に幾度となく注意され、そのうち彼らと⼀緒に世間話をして、結局朝までカフェテリアでビールを煽り続けることになりました。

イナリさんは「(un)making」という⽣産の⽅法を模索している作家で、現在、奈良先端科学技術⼤学院⼤学で、誰もが「(un)made object」を制作し、それにエコラベルであ「(un)made certificate」を付与する⽅法についての博⼠研究を⾏っています。
消費活動における消費者と⽣産者、物流におけるコンテナ輸送と個⼈配送、現代の鉄道輸送と前時代の郵便⽅法、深夜の公園での警備員と我々、そういう⾮対称なものごとをイーブンに変える(どころかときには逆転させる)(かつ元から敷設されているルールの中で可能な)仕組みを考案しては実践してきた作家といえるでしょう。
それらの取り組みはしばしば既存のスペキュラティブデザインという枠組みで語られるかもしれませんが、イナリさんの取り組みにおいて最も重要なことは実践の先の実装を⽬指す、という点において⼀線を画していて、かつ、その活動は複雑に分裂した関係性やシステム、ひいては社会を串刺し我々を⾃由にするためのものであり、僕はイナリさんをほとんど⾰命家のように⾒ています。

会場では現在最も広く流通しているバナナであるキャベンディッシュの絶滅に賭け、投機可能な形へと加⼯をするプロジェクトが展開されます。イナリさんの⽇本での初個展を企画できて嬉しいです。みなさん是⾮、⾜を運んで⼀緒にバナナの絶滅に備えましょう。
ー⽯⽑健太

INFORMATION

BANANA STOCK / バナナで備える未来
A Solo Exhibition by: Yoshinari Nishiki (aka Inari Wishiki)

会期:2026年4⽉25⽇(⼟) – 5⽉24⽇(⽇)14:00 – 19:00
会場:parcel(東京都中央区日本橋馬喰町 2-2-14 まるかビル 2F)
休廊:⽉・⽕・祝⽇

*オープニング・レセプション:4月24日(金)18:00 – 21:00

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