洋服や音楽作品のジャケットのデザイン、はたまた幅広いアート界隈について語られる言葉はたくさんあっても、文字のデザインやいわゆるフォントのデザインにおける重要性を意識している人というのは、決して多くはないのでは無いだろうか。しかし、多くのブランドや企業が、自らのロゴに対して文字を用いていることを考えれば自明な通り、言葉や文字が持つイメージを増幅させるデザインの力はとても偉大だ。文字を描きだすレタリングという手法を大きな武器とし、日本の人気ファッションブランドであるJOHN LAWRENCE SULLIVANとのコラボレーションや、ウィーン国際空港のサイン、様々なブランドのロゴデザインなどを手がけるリカルド・フェロルに話を聞いた。
レタリングにはフォトデザインより自由でクリエイティブな部分がある
ーまず最初に、あなたのバックグラウンドを教えてもらえますか?
リカルド・フェロル:自分は、現在はドイツのミュンヘンを拠点にして活動しているグラフィックデザイナーでありアートディレクターです。シュヴェービッシュ・グミュント造形大学でビジュアル・コミュニケーションを学び、アート・ディレクションの修士号を取りました。また、スイスのローザンヌ州立美術学校でもタイプ・デザイン、文字のデザインについて学びました。ミュンヘンに引っ越すまでに、ドイツ、フランス、オランダ、アメリカのスタジオで働いていました。
ーどのようにしてデザインの世界に進んでいったのですか?
リカルド・フェロル:学校を卒業した後、学んできたことをどのような方向に活かすべきか、はっきりと決めかねていました。結果的に、働きながら、同時に色々な国を回ることに決めたんです。アイスランドの首都であるレイキャヴィークで過ごした時間で、沢山のアーティストやライターと知り合いました。そこで出来た友人たちの影響によって、学校で学んできたデザインにをどのように仕事として応用していけば良いかが分かるようになってきたんです。
ー子供の頃はどんなことに興味を持っていましたか?
リカルド・フェロル:決して日本のメディア向けに答えている訳ではないんですが、日本についていつも大きな関心を持っていました。子供の頃どれだけの時間をTVゲームやアニメに注いだかは、決して人には言えないですね(笑)。
ーあなたが今住んでいるミュンヘンはどんな街なんですか?
リカルド・フェロル:ミュンヘンは最高ですよ。特に夏が。街自体は決して大き過ぎないけど、たくさん見所もあるし。自転車でほとんど回ることができるし、もし君たちが自然が好きだったら周りの地域もとても素晴らしいと感じると思います。
ー現在のあなたのスタイルにとって、レタリングという要素は欠かせないモノだと思います。レタリングを始めたのは何が切っ掛けだったんですか?
リカルド・フェロル:僕は古い本や雑誌が大好きなんです。書体のデザイン、フォントが書物の中でどのように進化をしてきたかということに夢中になっていました。フォントにもトレンドみたいなものがあるんですよ。時々そういうトレンドや過去のアイデアを、自分の仕事の中でも特別なプロジェクト用にリバイバルさせたりもするんです。また、博士号を取る間に文字を描くことやタイポグラフィーの歴史について沢山学びましたね。2017年の春夏と秋冬の2シーズンにかけて、JOHN LAWRENCE SULLIVANのコレクションのためにフレーズのデザインを描かせてもらっているんですが、彼らと僕でコラボできたことは、僕にとってもとても幸せなことでした。彼らと仕事をすることができて、とても嬉しかったです。
ーあなたをレタリングというものの何に惹きつけられているのでしょうか?
リカルド・フェロル:レタリングが書体のデザインと異なるのは、より自分が作りたいように自由にデザインできるところですね。レタリングはフォントデザインでは無いですし、その逆もまたしかりです。レタリングにも勿論ロジックは内包していますが、フォントデザインよりももっと自由でクリエイティブな部分があると思います。
ー今でもミルコ・ボルシェさんと共に働かれているのですか?
リカルド・フェロル:はい。私は今でもボルシェさんのアシスタントをしていますよ。沢山のプロジェクトで一緒に働きました。それはほとんどがとても概念的であり、様々な内容に渡るものでした。ある時は本の仕事で、またある時はブランディングに関わるものだったりと。
ーあなたの現在手がけている仕事、次の仕事に関して教えてもらえますか?
リカルド・フェロル:ミルコ・ボルシェの事務所で仕事をする際、ほとんどの仕事は、ラグジュアリーやファッションの業界における、大きなブランディングに関わるプロジェクトです。彼の事務所はとてもインターナショナルに仕事をしていて、クライアントが世界中にいます。それ以外にも、東京の友人である、1729 Agencyの戸村直広と一緒にいくつかのプロジェクトを進行中です。BlackEyePatchのzineへの作品提供など、僕らはいくつもの面白いプロジェクトを共に手がけています。
ー最後に、あなたの将来的なプランを教えてください。
リカルド・フェロル:未来のことは分かりません。プランを立て過ぎないようにしているんです。僕はただ幸せでいたいだけです。
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