ART 2017.09.06

日常から生み出される非日常と違和感。とんだ林蘭の創作の原点

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
photography_Takao Iwasawa, text_Yuri Matsui

女の子や食べ物、化粧品などの日常的なモチーフを用いながら、本来の意味からはみ出したフレッシュなイメージをイラスト、コラージュ、ペイント等の多様な手法で生み出す、アーティストのとんだ林蘭。東京スカパラダイスオーケストラ、木村カエラ、大橋トリオ、jan and naomi、あいみょんら、多数のミュージシャンへのアートワーク提供や、ファッションブランドとのコラボレーションも行うなど、精力的な活動を続けている。そんな彼女の創作のルーツはどこにあるのだろうか。VOILLDでの新作個展を間近に控えた彼女に話を聞いた。

ー『とんだ林蘭』として最初に作った作品はどんなものでしたか?

とんだ林蘭(以下、とんだ林):もともとは漫画家になりたくて。漫画家ってほとんどの人がペンネームじゃないですか。それで、知り合いだったレキシの池ちゃん(池田貴史)に名前を付けてもらったんです。イラストから始めてたら、名前をつけてなかったかもしれない。そこから、漫画の持ち込みに行ったんですけど、初めて描いた漫画だったから、めちゃめちゃ下手だしストーリーも意味が分かんなくて、ボロクソに言われて。悔しくて、帰り道にすごい泣きました(笑)。その後もう一作描いたんですけど、やっぱり漫画って難しいなと思って。気持ちを切り替えて、とりあえずイラストをやってみようと思って描き始めたんです。

ー制作のアイデアはどういうところから得ているんですか?

とんだ林:食べ物のビジュアルが好きだから、スーパーマーケットにいるときに思いついたりしますね。あとは最近、プールに通ってるんですけど、水の青さや、プールの中に引いてある黒い線が、泳いでいると揺れてグニャグニャになることにハッとしたり、水中で手を伸ばすと、それだけですごくきれいだなと思ったりして、そういうことを形にしたくなるんです。だから、日常がインスピレーション源みたいな感じですね。「日常の中の非日常」みたいな、ちょっとシュールだったり、怖かったり、おかしかったりするものがもともと好きで。自分が表現するときにも、ストレートにきれいなものを出すのは、照れがあって恥ずかしいんです。

ーとんだ林さんの作品は「毒がある」と形容されることも多いんじゃないかと思いますが、自分ではどんな風に感じていますか。

とんだ林:よく分からないですね。「違和感」みたいなものはすごく好きなので、そういう部分を言っているのかなと。生肉を(作品のモチーフとして)よく使うんですけど、「生肉だとちょっと毒が強すぎますね」って言われたことがあって。かわいいと思って使ってたのに、「生肉って毒なんだ」と(笑)。

ーヤン・シュヴァンクマイエルが好きだと聞きましたが、ほかに影響を受けたアーティストはいますか?

とんだ林:詳しいわけじゃないんですけど、(アンディ・)ウォーホルは人も含めて大好き。いろんな手法で作っているから、自分も自由でいいんだなって。単純に作品のビジュアルがかわいいっていうのもあるし、アーティストだけど、商業的な制作にも面白さを感じている部分はすごく影響を受けてるかもしれないです。あとは、横尾(忠則)さんも好きだし、最近、蛭子(能収)さんの漫画を買ったんですけど、人がそもそもやばいじゃないですか。漫画も結構狂ってて、かなり暴力的で。久々に漫画を読んで、もともとこういうのを描きたかったんだっていう初期衝動を思い出しました。やっぱり漫画家になりたいっていう夢を捨てきれてないので。

ーその他に影響を受けたカルチャーはありますか?

とんだ林:うーん、漫画しか思いつかないですね。『ちびまる子ちゃん』とか『ドラえもん』とか『美味しんぼ』とか。『オッス!トン子ちゃん』もすごく好きだし、楠本まきさんの『Kissxxxx』も最高ですよね。『ONE PIECE』も、矢沢あいの漫画も持ってるし、あとは、絵を描き始めたくらいのころに丸尾末広の漫画を買って、影響を受けた記憶があります。過激な表現だけど、ちょっと笑えるっていうのが、かっこいいなと思って。加賀美(健)さんとかもそうですけど、めちゃめちゃかっこいいのにちょっと笑えるものが、すごく好きかもしれない。

ー『VOGUE』の表紙をモチーフにしたコラージュなど、自身でも笑いの要素を取り入れた作品を制作していますよね。

とんだ林:自分では面白いのかどうかマジで分からないんですよね(笑)。最初は面白いと思って作ってるんですけど、手を動かしてると冷静さがなくなるっていうか。大真面目に作ってるんで。とりあえずInstagramに出してみると反応があるから、「そっか、よかったー」みたいな。

VOGUE no.7

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ー9月9日からは、VOILLDで4回目の個展『Dressing』が始まりますね。去年までの個展との違いなどはありますか。

とんだ林:毎年、今年で最後かもと思いながらやってます(笑)。最初、今年は絵の具の作品だけにしようとしてたんですけど、せっかくだったら立体もやろうかなと思って、結局今年も盛りだくさんになって。でも今回、コラージュ作品は思い切ってやめたんです。これまでの個展は、自分が今作れるものを全部見せようと力んでたんですけど、やっとちょっとだけ力を抜けるようになれたので、今年は絵の具とか、生で見に来る意味がある作品だけにしようかなと。でも今回、一番準備が追いついてなくてやばいです(笑)。


ー『Dressing』というタイトルはどこから来ているんですか?

とんだ林:(タイトルには)いつもあまり意味はないんですけど、『Dressing』って、サラダにかけるものでもあるし、「飾る」とかいろんな意味があるじゃないですか。響きがいいなと思って、気になる言葉をメモしてた中のひとつだったんです。今までタイトルが結構長かったから、一言にしたいというのもあって。

ーとんだ林さんにとって、自身の活動の中で、個展はどんな位置付けにありますか?

とんだ林:わざわざ足を運んでもらうってすごいことだと思ってるので、思い入れが違いますね。あとは、自分に向き合うきっかけというか。展示がないと絵の具の作品をなかなか描かないんですけど、絵の具で描くっていうのは大きいことで。毎年ほぼ1年ぶりにやってる状態だから、いつも一から始める感じなんですよ。普段の作品はまったく悩んだりしないんですけど、絵の具だけは「今の自分に何が描けるのかな」とか考えるし、一枚描き終わるまでにすごく悔しい思いもする。毎回慣れてないことだから刺激的ですね。

ーこれから作ってみたい作品はありますか?

とんだ林:映像と漫画かな。最近、刺激を求めてるかもしれないです。コラージュやイラストも楽しいけど、ちょっとだけ慣れちゃった部分もあって。数をこなしてくると、だんだんすぐにイメージが出来ちゃうというか。イメージしづらくて、うまくいかないかもしれないことをもっとやりたいですね。うまくいかなかったとしても、自分が夢中になっちゃうような機会があることが大事だなと思ってます。

INFORMATION

TONDABAYASHI RAN EXHIBITION

“Dressing”

会期:2017年9月9日(土)~10月1日(日)
開廊時間:水〜金 14:00-20:00、土・日 12:00-18:00 ※月・火・祝日休廊
会場:VOILLD
東京都目黒区青葉台3-18-10 カーサ青葉台B1F
※OPENING RECEPTION:9月8日(金) 18:00-21:00
http://www.voilld.com/post/164207345174/tonda2017

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