ART 2019.02.21

新たな試みによる空間構成で見せる、奥山由之の写真展が開催

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

過去にはEYESCREAM誌上で写真連載もしてきた写真家/映像作家の奥山由之写真展「白い光」が、3月7日からキヤノンギャラリー Sで開催される。
2011年『Girl』で第34回写真新世紀優秀賞を受賞、2016年には『BACON ICE CREAM』で第47回講談社出版文化賞写真賞を受賞し、多くの写真集出版や展覧会での作品発表に加え、映像作家としても活躍している奥山由之。かつてない新たな試みによる展示会場内は「写真を見る」という行為について再認識できる空間構成となる。

以下、展示に寄せた作家からのメッセージ。

白い光

どこまでも深い海の水面を撫でるようにして、漆黒の闇を進む。
聞こえるのは、波の呼吸と、エンジン音。
夜の茂みに目が慣れるころ、遠くにちらほらと見える、白い光。
そろそろだろうか。揺られ続けて小一時間。
目を凝らして探したあの景色と肌寒さを、よく思い出す。

白い光は、夜明けを待たずして、1隻、また1隻と集まる。
やがて聞こえる演歌の合図と共に、網を投げ入れ、仕事が始まる。
時折視界を晴らすカメラの閃光…。

ふと、目を凝らして認識しようとする行為に、懐かしさを感じた。
僕らはいま、空間のみならず自己を取りまく全ての情報や環境を照らし出し、にも関わらず、受け身の
姿勢で、時折現れる「分からない」という感情から目を背けている。やがて加速する周辺視野への
散漫とした意識は、局所への注力を緩ませ、深度の浅いカラフルな大地を眼下に広げるのだろう。

未だ視覚や知覚は、” 視ること” と” 見ること” の境界を認識出来ているだろうか。
詩的に言えば、視えることで見えなくなったものがあるのではないか。
果たして、写真はいま、認識の対象にあるのか。

目を凝らし、光を照らす。

その光の先には、何がある。

INFORMATION

奥山由之写真展「白い光」

2019年3月7日(木)- 4月15日(月) 10:00 – 17:30
休館日:日曜・祝日

キヤノンギャラリー S
東京都港区港南2-16-6 キヤノン S タワー1階
入場料:無料

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